直子のヨーロッパ美味しいものこぼれ話

クルテン直子さんご夫妻

パーダーボルン市庁舎
大聖堂


このページは現在ドイツ・パーダーボルンに在住の主婦 井上クルテン直子さんのヨーロッパ在住日本人の目から見た 食文化、中でも季節の郷土料理、季節の素材、リーズナブルなワイン情報、それにヨーロッパ人 の気質、人情、やヨーロッパで暮して変だと感じるところなど、バラエティーに富んだ話題を投稿 していただく企画です。定期的な更新はできませんが、直子さんからの投稿文をそのまま掲載させていただきます。 皆様からのご感想・ご質問・励ましなどのメールをお寄せ下さい。[ E-mail : rtpb@alles.or.jp ]

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第5回 ドイツの赤ちゃんあれこれ


2001.12.4.

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皆さま、ご無沙汰しております。4月の出産をはさん で、ほぼ1年にも渡る長いお休みを頂きありがとうご ざいました。要領が悪いのでずいぶんと時間がかかっ てしまいましたが、おかげ様で、やっとまた時間が取 れるようになりました。「ヨーロッパおいしいものこ ぼれ話」を再開させて頂きますので、これからもどう ぞ宜しくお付き合い下さいますようお願い申し上げま す。

それでは、身近におこった大事件(???)というわ けで、まずは「ドイツ赤ちゃんあれこれ」をテーマに お伝えしようと思います。所変われば品変わる…。育 児も変わる…。けっこう日本と違っていたりして「え えっ!!!」というような事があるんですよ。
最初は、生まれる前の妊娠中のところからお話しまし ょう。こちらでは、女性は婦人科のホームドクターを 持つのが普通なんですね。年に1回から2回は検診に 訪れます。で、妊娠した場合もその先生がずっと担当 して下さるのですが、出産は別なんですね。どうして 最後まで面倒見てくれないの? という感じなのです が、そういうシステムになっています。私も、出産時 には総合病院の産科に行きました。だいたい6、7ケ 月目くらいに病院見学をして、どの病院で出産するか を決めておきます。そうして心積もりをしておいて、 10ケ月に入る所で正式に病院に出産の申し込みをし ました。その後、出産の前日までホームドクターの所 で検診してもらって、陣痛が始まると同時に病院に行 きました。病院にいる間はホームドクターはノータッ チです。経過の全てを記入した母子手帳があるので、 それで問題はないのですが、病院では面識のない新し い先生にお願いする様になったのでちょっと心許無い 感じがしました。もちろん、病院の先生に不安があっ たというわけではありません。ただ、心理的なもので いつものホームドクターだったらよかったのに…と思 っただけです。専門分野をきっちりと分けるドイツの 医療システムの良い面でもあり悪い面でもあるのでし ょうね…。

そして、もう1つ、医療システムで大きく違うところ があるんですよ。出産に健康保険が適用されるんです ね。通常の出産形態だけではなくて、無痛分娩や水中 出産にも保険が利くのです。それじゃあ…と、水中出 産に挑戦しようと希望したのですが、あいにく先客有 り…でダメでした。出産がかさなってしまうと早い者 勝ち…ということだそうで…。残念でした。
赤ちゃんが生まれたら「すぐに」絶対必要な物って何 だと思いますか? 産着だのおむつだのが必要なのは もちろんドイツでも同じですが、同じ重要度で「乳母 車」と「おむつ替え台」なる物が必要だっていうんで すよ。


「乳母車ってそんなにすぐ必要なの?」と思って最初 は保留にしておいたのですが、あまりに周りから「絶 対いるわよ」と言われたのでしぶしぶ出産1ケ月前に 買いました。それにしてもドイツの乳母車の大きくて 重い事といったら…。さすがベンツの国!という重量 感です。この乳母車に生後1週間くらいから赤ちゃん を乗せてお散歩するんです。(日本の育児書には外気 浴は生後1ケ月くらいからって書いてあるのですが… )外の空気を吸うと肺が丈夫になるから…というのが 理由だそうで、毛布などでグルグル巻きにして顔だけ 出した状態で1時間も2時間もお散歩するんです。何 といってもまだホヤホヤの新生児ですから身体もグニ ャグニャです。それを保護する為にこんな頑丈な乳母 車がいるんですね。あんまり重いので最初は押すだけ でよろついてしまいました。

健康にいい…と言われるとやはり「そうかな」という 気分になるので、この新生児お散歩文化(?)は受け 入れたのですが、おむつ替え台文化は受け入れないま ま押し通してしまいました。「おむつ替え台」って何 ? ヴィッケルコモーデ(Wickelkommode)という のですが、おむつを替える為の家具があるのですね。 タテヨコ80センチ×80センチくらいで高さも約8 0センチ。正方形のタンスといった感じです。大抵、 下に引出しか棚が三段くらい付いていて、おむつをし まえるようになっています。で、この80センチ×8 0センチの台の上でおむつを替えるんですね。ドイツ の人は身体が大きいからでしょうか、どうも屈んだり するのが苦手なようです。だからおむつを替えるのも こういう立ったままの状態を好むのだな…と思いまし た。「床の上で充分じゃない…」と言ったらあまりに もビックリされてこっちがビックリ! しょうがない ので「落ちたりすると怖いから…」とにごしてこのタ ンスは買わないまま済ませてしまいました。実際、こ のタンスから赤ちゃんが落ちて大怪我をするケースも よくあるんだそうです。育児準備学級で「台の上に乗 せたらくれぐれも目を離さないように!」と何度も注 意を受けました。こちらは、落とすくらいなら最初っ からいらないじゃないって思ったのですが…そんなこ と言われたってしゃがめないんだもの! というのが 本音のようです。それにしても、おむつを卒業してし まったらこの変型タンスじゃ部屋の中で収まりが悪い でしょうに…。どうしているのか不思議です。

さて、ドイツは乾燥しています。だからかどうか、赤 ちゃんの入浴は週に1回で充分です…と入浴指導を受 けました。楽です、はい。毎日入浴の日本とは大違い 。この夏はかなり暑かったので、息子もけっこう汗を かいていましたが、それでもあせもは出来なかったで すね。逆に、週2回お風呂に入れていた知人は、小児 科の先生に「肌が荒れていますね。週に1回で充分で す」と言われてしまったんだそうです。で、週に1回 にしたら肌荒れが治ったというので、これまたビック リ! この話を聞いた後、何の気兼ねもなく週1回ペ ースの入浴となりました。それまではちょっとだけ「 これでいいのかなあ?」と疑問に思っていたのですが 、お医者さまのお墨付きですから、ね。日本の母はい まだに「なんだかねぇ。かわいそうな気がするんだけ ど…」と納得していませんが。

洗わない…といえばこれもです。このデッカイ毛糸の パンツ。おむつカバーです。もちろんこちらでも大半 が紙おむつ使用ですから、どちらかというとクラシッ ク派という感じですが、何ともいえない素朴な感じが よかったのでこの毛糸のおむつカバーを使ってみまし た。どうやって使うかというと、おしりを布おむつで くるんで、上からこのパンツをズボッとはかせるだけ 。しっかりしているのでおむつはズレません。そして なんとなんとこのおむつカバー、濡れたら振って(! )乾かすだけ(!!)という代物。それでも不衛生じ ゃないんだそうです。なんでも羊毛には自浄化作用が あるからとかなんとか…。ふーむ。確かにおむつカブ レなどはいっさいありませんでしたが…。そして、い よいよ汚くなってきたらラノリンを入れた水でやさし く手洗いすればOKとのこと。とてもエコロジーです 。しかし、あまりにもぶ厚いので上に着せられるベビ ー服が限られてしまうのが難点。動きが活発になって きてロンパースタイプのベビー服を着せるようになっ たら、もう、まるっきりボタンがとまらない! そこ で残念ながらエコロジーおむつカバーはリタイアとな ってしまいました。

とまあ、日本とは違う所を紹介してきましたが、「人 類皆兄弟、人間みんな一緒なのね」と思ったことも沢 山あります。「あらまあ、お腹がとがってるわね。こ れは絶対男の子が生まれるわね」…日本でもよく言い ますよね? なんとこちらでも言われたのは1度や2 度ではありません。この、お腹が前に出ていると男の 子が生まれるという判断方法は世界共通なのでしょう か? 確かに男の子が生まれましたが…。興味深いで すね。そして、予定日を過ぎた頃(結局、5日遅れて 生まれました)「歩いて、歩いて! 階段がいいわよ 。たくさん歩くと産気が付くからね! 大丈夫よ!」 とも言われました。これもよく聞くフレーズですよね 。みんな似たような事言うんだなあ…と思ったら、身 内のいないドイツでの出産で感じていた不安が、ぐっ と安らぎました。なんだか日本の母が励ましてくれて いるみたいでうれしかったですね。

最後に、少しだけ食べ物の話題を…。これはオランダ のパンのトッピングなんですよ。アニスの種の砂糖が け。まるい乾パンにバターをたっぷり塗ってこの砂糖 がけをのせて頂きます。で、これ、オランダでは赤ち ゃん誕生のお祝いに欠かせないんだそうです。「生ま れましたよ」のお知らせがあるとこのトッピングと乾 パンを持って病院に駆けつけるんだそうです。そして みんなで一緒に頂くのだとか…。ドイツにはない習慣 です。オランダ出身の友人が実家に帰った時に買って きてくれました。同じ物でピンクと白の組み合わせも あって、女の子が生まれたらそちら。我が家は男の子 だったのでブルーと白を頂きました。オランダではど このスーパーでも売られているらしいのですが、これ といって特別ではないこんな身近な物でお祝いするの がとても気さくですね。アニスの独特の風味が効いて いてとてもおいしかったですよ。


それでは、また次回に…。

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