2005年の読書日記

書名・作者・出版社 感想・内容など
天使たちの華劇
 茅田砂胡作
 中央公論新社
一月二十二日
 歯医者の帰りに久しぶりに図書館に寄って本を何冊が借りて、いの一番に読んだのがジョブナイルというところがなんとなく今年の読書傾向を彷彿させ、なおかつ去年も一番初めに読んだのが同じ作者の同じシリーズの本編であった…。なんだこの偶然は。
 これはその「暁の天使たちシリーズ外伝2」、短編集で平和な一般市民の学生生活がつづられているのだが、主人公の金銀天使が二人してミニのメイド服を着てウエイトレスをしていると話とイラストがなんというかもう、おもしろいんだけど、萌え萌えなんだけど、いいのかそれで!
地獄めぐりのバスは往く
 中村うさぎ著
 フィールドワイ
一月二十五日
 いろいろな雑誌などに載ったエッセイをテーマごとにまとめたエッセイ集、そのテーマとは「浪費地獄」「借金地獄」「悪口地獄」「博打地獄」である。語るも地獄、読むも地獄なのだ。
 どうせ読むならもう少し高尚なエッセイにしろよ、と思いつつも読んでしまうのは、やはり身につまされ、納得できる部分も多いからではないだろうか。浪費も借金も博打もやらないけれど、他人に厳しく自分はやりたい放題ってのは案外私に似ているからかも。
ダヤンのお祭りの本
 池田あきこ著
 中央公論新社
一月二十七日
 「ダヤンシリーズ」で有名な著者のお祭り体験記というかお祭りのスケッチとエッセイなのだが、そのお祭りがねぷた祭りと三社祭と御柱祭であって、ダヤンともわちふぃーるどともなんの関係もない。わざわざ「ダヤンの」をつける必要がどこにあるというのだ!
 そりゃあ「ダヤン」の名を冠したほうが売り上げは伸びるであろう、しかし何でもつければいいってものでもないだろうに。エッセイとスケッチはこの作者だけあってそう悪くはない、しかしこれではそのせっかくの内容の良さも台無しだと思う。
人魚の鱗 ファンタジーの玉手箱1
 全日出版
二月三日
 タイトルにひかれて借りてみた本、産経新聞生活面児童書コーナーに毎週載ったさまざまな作家のショートショートである。
 「思わず元気が出て明るくなる話」がテーマで、各作家原稿用紙三枚ずつ、そういう話がだーーーーっと山のように載っている。
 疲れた日、寝る前に少しずつ読むにはいいかも。
ライラエル・氷の迷宮
 ガース・ニクス作
 原田勝訳
 主婦の友社
二月七日
 「古王国記2」、前作の「サブリエル」を読んだ時にはそう思わなかったのだが、この本はすごくおもしろかった。
 まず主人公の少女の職業がいい、司書助手なのだがここの図書館のなんと魅力的なことよ、冒険と秘密と危険に満ち溢れている。そらにその相棒の犬、「不評の犬」と自ら名乗る正体不明の精霊犬なのだが、作者は相当の犬好きと見た。主人公に忠実で愛嬌があって、後に旅の仲間となるもうひとりの主人公(こちらは人間の王子)よりはるかに役にたっているし、犬のちょっとしめった暖かい毛皮の感じなんかが犬スキーにはたまらない。
 物語の設定や状況は最悪といってもいいくらいなのに、主人公二人と犬のおかげで青春小説か、よく出来た少女小説のような読後感がある。続きを借りてこなかったことが悔やまれる。
龍臥亭幻想 上
 島田荘司作
 光文社
二月八日
 悔しいことに図書館には上巻しか置いていなかったので、後半どうなるかは分からないのだが(吉敷と御手洗さんが出てくるそうだし)石岡くん、きみはなんて立派な人間というか大人というかナイスミドルになったんだ。死体を引き上げるはめになっても文句言わず弱音をはかず、若者を諭し、正義に燃える(?)、御手洗さんにべったりだった過去から考えると別人のように成長した!
 これにはやはり里美ちゃんの影響が大きいのであろうか、里美ちゃん、先生を立派にしてくれてありがとうと心からお礼を言いたい。
 後半もこの調子でぶいぶい言わして欲しい、相談するのはかまわないが、御手洗さんにあまり頼らないでね。
デルトラクエスト1・沈黙の森
 エミリー・ロッダ作
 岡田好恵訳
 岩崎書店
二月十一日
 エミリー・ロッダの代表作の一つなので読んでみたのだが、「ちょっとまてこの行と行の間にもう少しなにかあるだろう」という感じ、簡単に書かれすぎているのだ。
 ゲームばかりやっていて本をあまり読まない小学校中学年くらいの子供の読書へのとっかかりには最適であると思われるが、いかんせん大人にはものたりないかも。同じ作者なら「ローワン」シリーズの方がお勧め。
アブホーセン・聖賢の絆
 ガース・ニクス作
 原田勝訳
 主婦の友社
二月十二日
 「古王国記2」、続きが気になって気になって借りてきてしまった。
 昔から本を読むのは好きなのだが、「おもしろい」と思える物語には実際のところなかなか出会えない、しかしこのシリーズはおもしろかったのだ!
 主人公たちも頑張ったが、最後の最後に一番おいしいところをかっさらっていったのは犬と猫であった。猫の大昔の姿は分かったけれど、犬はどんな姿をしていたのだろうか。死霊と冥界死者の群れ、道具立てや世界観は悲惨きわまりないけれど、とてもきれいな終わり方をしている。最後の犬の後姿が特にいい。
名探偵 木更津悠也
 麻耶雄嵩作
 光文社
二月十五日
 作者の推理小説はずいぶん前に何冊か読んで、そのあまりのややこしさとわけの分からなさとインパクトのありすぎる一人の人物によってほとんど内容を忘れてしまったのだが、彼、木更津がメルカトルの弟でやはり探偵だったことは覚えている。(違っていたらすいません)
 半径2キロ以内には絶対近づきたくもないメルの影にかくれてしまってあまりぱっとした活躍は出来ていなかったような印象のある木更津であるが、彼もまた名探偵だなーーと思わせる一冊であった。名探偵のそばにはワトソン役が必ず存在するものなのだが、このワトソンは勘がよすぎる。しかしそこをあえて抑えて、名探偵の活躍を盛り立てているところが並みのワトソンではないのだ。
 その点、メルと美袋の仲の陰惨きわまりなかったことよ…。
ぐるりのこと
 梨木香歩著
 新潮社
二月十七日
 自慢ではないが私は物事をよく考えない、ほとんど習慣と常識と脊髄反射で育児と家事を行っていて、それが私の世界のすべてである。ぼっとしている時間はないかというとほとんどなく、子供と散歩していても車が通らないか不審人物はいないかチェックしているわけだ。だってそうでしょう?ぼっと世界のことについて考え込んでいて、子供が自転車にひかれたり田んぼに落ちたりしてはなんにもならない。
 何も考えない人間が何かを考えている作家の考えていることについてのエッセイを読むというのは、妙な気分であった。作家は文章を書くのが仕事であるのだけれど、表にでてこない部分でこれだけのことをいつも考え続けているのかと思うとその大変さに頭が下がるし、ぞっともする。
知のビジュアル百科・魔術事典
 ダグラス・ヒル著
 高山宏監修
 あすなろ書房
二月二十三日
 原稿の参考にでもなるだろうか、と思って借りてさっくり読んでみたのだが、とりあえず魔法物を描く予定がないのであまり参考にはならなかった。
 世界各地の魔術に必要な小物の写真がカラーでたくさん載っているので、その手のものを描く場合には大変役に立つと思われる図鑑である。
150cmライフ2
 たかぎなおこ著
 メディアファクトリー
二月二十四日
 図書館でふと見つけて借りてきた本、1は未読。
 身長150センチの生活と悲しみ(?)をうたったイラストエッセイ風の日常漫画、身長153センチの私としては、うんうんそうだよねと同意できることばかりであった。
 どんな身長の人も、「こうだったらよかったのに」という理想はあるであろう、しかし、身長が低いということははっきりいって損だ!一番困るのは私の場合洋服を買う時である。なんでみんなあんなにサイズが大きいんだーーーー!
恋愛の国のアリス
 嶽本野ばら著
 朝日新聞社
三月四日
 前半はトランプのカードになぞらえた恋愛エッセイ、後半はタロットカードの大アルカナをモチーフにした短編恋愛小説の二部構成の本である。
 私は非恋愛体質だからして、恋愛体質の人のことはよく分からない、よく分からないのだが恋をしている人がはた迷惑なことだけはよーーく分かっててよ。いつもいつも思うことなのであるが、作者の書く女の子というのは私の大嫌いなタイプであることが多い。自分はけしてこうなれない、こういうタイプじゃないからこそ嫌いなのだが、つまりはちょっとうらやましいんだろうな。
終の神話・人祗の章
 霜島ケイ作
 小学館
三月七日
 封殺鬼シリーズ28巻にして最終巻である、十一年、二十八巻の物語がとうとう終わったかと思うと大変感慨深い。
 結果としてはこれ以上ないくらいにきれいに終わった。登場人物達のこれまでの苦労が報われてよかったと心の底から思う。
 ちなみに物語中私が一番好きな人物は聖である。家事全般に有能な鬼、何があっても人間を信じ前しか向かなかった鬼、いいなあ!その次は桐子様、旦那様とのなれそめとか是非読みたいものである。その次は佐穂子かな。
魚の名前
 川崎洋著
 田口哲写真
 いそっぷ社
三月十一日
 川崎洋さんの詩と初めて出会ったのは大学時代のことであった、サークル(コーラス)で初めて歌った合唱組曲が氏の「やさしい魚(うお)」だったのだ。それから本屋で「魚名小詩集」を偶然見つけて買ったり、図書館で借りた本を読んだりしたものだが、昨年十月に亡くなられた。
 この本は魚の名前が日本各地でどのように呼ばれているかをつづったエッセイかつ研究書のようなものなのだが、氏がどれだけ魚を愛し、日本語を愛し、海や釣りが好きだったかがものすごく伝わってくる。
 美しく楽しいたくさんの言葉をどうもありがとうございました。
魔法使いになるための魔法の呪文教室
 ビアトリス・フィルボッツ文
 ロバート・イングペン絵
 神戸万知訳
三月十二日
 漫画のネタになるかなーーと思って借りたのだが、ちょっとネタにはなりそうもない。しかし、この手の本としては挿絵も美しく(時々ラファエロ前派だのなんだのから借用があるが)読みやすくものすごく怪しいんだけどくどくなくて楽しんでさくっと読めた。
 歴史に名を残している実在の魔法使いの行状が書いてあるのがおもしろい。いろんな人がいたんだねーー。
庭師 ただそこにいるだけの人
 ジャージ・コジンスキー作
 高橋啓訳
 飛鳥新社
三月十二日
 友人の日記に紹介されていたので読んでみたのだが、表紙カバーの見返しに載っていた作者の経歴がすさまじかった。第二次世界大戦の混乱期といってもこれは酷いし、その後作家として成功(?)してからの人生の終わらせ方もこれまたすさまじい。
 けれどもこの物語は、時としてホモにせまられたり人妻に誘惑されたり東西諜報合戦のマトとなったりもするのだが、ありえないほどおだやかである。
 物語の続きが気になるところなのだが、結末はあかされないままおだやかに終わった。
尾崎翠集成(上)
 中野翠編
 ちくま書房
三月十七日
 アマゾンで取り寄せたこの本、やっと読み終わってまた最初から読み直しているところである。
 谷山さんの新譜「月光シアター」の前半分がこの本の最初に載っている「第七官界彷徨」のための曲であり、またこれが美しいながらもわけが分からない曲が多かったので、理解の助けになるかもと思って読んでみたのだが、まだまだ読みが浅いわ!
 しかし少なくとも物語の時代や人物の背景、小道具についてはだいたいの謎が解けた。
龍臥亭幻想 下
 島田荘司作
 光文社
三月十九日
 中島みゆきの「怜子」のふしでこう歌いたい、「石岡君、いい男になったね。ほれられると男はこんなにも変わるんだね。石岡君御手洗さんに頼ってばかりいたあなたが嘘のよう」とな。本当に石岡くんは変わった、齢五十にしてなんて素敵なおじさまになったんだ!是非私とスターバックスでコーヒーを!ではなく、彼がこんなに立派になったのは、やはり御手洗さんに置いていかれたおかげなのだろうか、当初はなんて酷い事をするんだと思っていたが、ありがとうありがとう御手洗さん。
 この物語で何よりもうれしかったのは、御手洗さんも吉敷(よびすて)もたどりつけなかった真相に石岡くんだけがたどりついたというその事実である。実行者からの手紙という最終兵器ではあったものの、彼がそれを受け取ることが出来たのは彼が彼だったからこそである、頑張ったかいがあったね。
 もう石岡君なんて呼べない、石岡先生と呼ばせていただこう。
纏足の発見
 東田雅博著
 大修館書房
三月二十日
 副題は「ある英国女性と清末の中国」である。特に纏足に興味があるわけではなく、その時代の英国女性について関心があるので読んでみたのだが、これがビンゴであった。商人の旦那の仕事の都合上清末期の中国に住んでいた女性が、纏足廃止運動の中心となり英国に帰ってからは女性参政権運動にまで加わったりするのだが、普通の中流家庭の婦人である彼女がいかにそこまでするようになったかが、当時の英国女性の立場身分物事の考え方とからめて論述してある。
 あくまで「リトル夫人」という一人の女性に関しての研究なのだが、この時代の空気というか時代背景を学ぶにはいいかも。
六つのルンペルシュティルツキン物語
 ヴィヴィアン・ヴァンデ・ヴァルデ作
 斎藤倫子訳
 東京創元社
三月二十二日
 「ルンペルシュティルツキン」といえば意地の悪い小人の名前、または「西のよき魔女」シリーズに出てくるルーンの本名を連想する人が多いと思うのだが、この本はその「ルンペル…」伝説(?)を応用した児童文学である。
 基本となるのは「一晩のうちに部屋いっぱいの藁を金糸につむがないと殺される」という粉引きの娘と王の物語、ここまでは昔話でよくあるパターンなのだがこの活用形がおもしろい。「ルンペル…」もトロルだったりエルフだったりそもそもそんなものいなかったりするのだが、私が一番気にいっているのはこの本の中の最後の物語、おしかけ花嫁とその撃退法である。これが一番気の毒で笑えた。
ターシャ・テューダーの言葉3 今がいちばんいい時よ
 ターシャ・テューダー著
 食野雅子訳
 メディアファクトリー
四月二十三日
 アメリカの片田舎で十九世紀のような暮らしをしているおばあさん(絵本作家でイラストレーター)の言葉とその生活を写した写真集であるが、これがじつに美しいのだ。特に、それっぽい道具や台所風景を描かれる方にとっては資料になること必須である。
 そしてその洋服もとても素敵で、ごくごく地味な木綿のプリントワンピースなのだが、色といい形といいその組み合わせ方といいこれがカネコで出ないかなーー、出たら絶対欲しいのになーーといつも思ってしまうほどである。しかし、目の玉が飛び出るほどのお値段であろうことはこれも必須である。
時の旅人
 長野まゆみ
 河出書房新社
四月二十四日
 長野まゆみ作品はツボにはまるものとそうでないものとの落差が大きいのだが、この本はおもしろかった。
 タイトルどおりタイムスリップパラレルワールド、ホタテとカメの争いの物語なのだが、出てくる少年がくどくなくてちょうどいいかんじ。物語によっては「いいかげんにせいや、お前ら!」ってのもあるものね。
なつかしのわらべ歌
 川原井泰江著
 いそっぷ社
五月五日
 子供向けの童謡CDを聴いていると、どうしてこんな歌詞なんだ?と不思議に思うような歌がたまにある。その謎を解明(?)すべく二冊の本を読んでみた。あまり参考にはならなかったけれど、どちらも読みやすく面白かった。
 この本は「わらべ歌」と呼ばれる類の歌が中心、作詞者も作曲者もよく分からず地方によって細かい詩も異なっていたりする歌の由来とエッセイが中心なのだが、一番の収穫は「あぶくたった煮え立った」と「となりのぼたんはよいぼたん」の歌詞が全部分かったことである。この二つが昔からお気に入りなのだ。
「となりのぼたん・・・」の正確な歌詞は「お耳をからげてすっぽんぽん」であった。「すっとんとん」って描いていたよ…。
名作童謡ふしぎ物語
 上田信道著
 創元社
五月六日
 こちらはぐっと堅くてまじめな研究モノ、文部省唱歌が中心である。驚いたのが「我は海の子」の続きの歌詞、歌が作られた時代を反映してすごく軍国調であり、他にも案外こういう曲が多い。
 わらべ歌とは違って、昭和のはじめに政府の依頼で作られた歌が多いから仕方がないのだが、それでも美しく現代まで残っている曲は多い。
江戸東京の噂話 「こんな晩」から「口裂け女」まで
 野村純一著
 大修館書店
五月十一日
 私はこういった都市伝説や流言飛語の類をあつめた本が好きである。これは読売新聞に掲載されたコラムをまとめたものであるのだが、「件」や「こんな晩」などお好きな人にはたまらない物語の噂話、つまり本当にあったとまことしやかにささやかれるバージョンが載っていて興味深い。
 「件」は人間の頭に牛の体の妖怪だし「こんな晩」は漱石の「夢十話」に決まっているじゃないか、と思うなかれ、これが真実だと少しでも思われていたとしたら?なんで、と思うでしょう?
よろず春夏冬中
 長野まゆみ
 文藝春秋
五月十三日
 長野まゆみさんは好きな作家だし、新刊が図書館に入っていればとりあえず借りて読んでみるのだが、今回は私的にはいまいちで前読んだ本のほうが趣味に合う。
 というかボーイズラブ小説ってのはほとんど読んだことがないのだが、叙情的で上手に書けたBLってかんじがして、おもしろいことはおもしろいのだが後に残るものはない。
ターシャ・テューダーの言葉 思うとおりに歩めばいいのよ
 ターシャ・テューダー著
 食野雅子訳
 メディアファクトリー
五月二十二日
 ほぼ二週間前に図書館で借りた後何度か読み返した本、読み返したといっても写真と短い言葉ばかりであるが、人生の先達の言葉は力強いし写真は文句なしに美しい。創作少女系の人にはお勧めできます。
ターシャ・テューダーの言葉2 楽しみは創り出せるものよ
 ターシャ・テューダー著
 食野雅子訳
 メディアファクトリー
五月二十二日
 上に同じく、ついでに山羊やニワトリやコーギー犬もかわいいぞ。
150cmライフ。
 たかぎなおこ著
 メディアファクトリー
五月二十九日
 この前「2」を読んだのだが、「1」も見つけたので読んでみた。
 身長が低いことは特別なことでもなんでもないのだが、実生活においてはもう少し高ければよかったのにと思うことも多い、不便なのだ。けれどそれなりにおもしろく工夫してやっているよと胸を小さく張って主張しているかわいい本。
秘密の花園 上下
 バーネット作
 山内玲子訳
 岩波少年文庫
五月三十一日
 おもしろい児童文学はたくさんあるけれど「萌え」のはいる作品はそんなにない、しかしこの物語には萌えの要素がてんこもりである。
 かわいくない令嬢にイギリスのムア、メイドに庭師にとどめに閉ざされた庭園ときた日にはもうたまらないのだ。
 子供の頃から何度も読んできた物語ではあるのだが、後半、あれ、こんな展開だったっけ?と思うこともしばしば。前半のほうが断然萌える。
暗黒館の殺人 上下
 綾辻行人作
 講談社
六月四日
 これを読んでいたがためにこの四日間というもの家事と育児以外何も出来なかった、原稿もパソコンもほったらかして空いている時間はひたすら読み続けた、「館」シリーズの最新作である。
 おどろおどろしい設定と仕掛けが満載でさすがにおもしろかったのだが、「浦登(うらど)」という人名から物語のだいたいの行く末が連想できてしまって、さらに館シリーズのお約束どうりだったのはよかったのか悪かったのか…。
嘆きのサイレン
 茅田砂胡作
 中央公論新社
六月五日
 こりない馬鹿というのは確かに存在し、私もまたその一人だとしみじみ思った。昨日「暗黒館」を読み終えてさあ、これで原稿にとりかかるぞと思ったものの、今日また図書館へ行き貴重な時間を使って一冊読んでしまった。馬鹿馬鹿ばかーーーーー、原稿やれよ自分!
 「クラッシュ・ブレイズ」という新シリーズなのだが、またおなじみの面々が出てくる。今度は何巻まで続くかな?
ダヤンとハロウィーンの戦い
 池田あきこ作
 ほるぷ出版
六月十二日
 ダヤンシリーズといえばほのぼのファンタジーというイメージが強いのだが、絵本ではなく物語の中では戦いがずっと続いている。
 たしか大昔に戦いがあってアルスとわちとが別れたはず…のまさにその戦いの真っ最中であり、しかも途中で終わっている。
 ほのぼのファンタジーの割には死傷者多数、血なまぐさい歴史があるわけやね。
むかしのおしゃれ事典 名作でひもとく古きよき日本のよそおい
 文化ファッション研究会
 青春出版社
六月二十二日
 カジュアルな装丁にイラストたくさん、なにげなく借りてみたのだがこれがまた大ビンゴの本であった。タイトルからも分かるように、明治から昭和初期にかけての和服と洋服、小物の移り変わりを文学上の例をひいて説明してあるのだが、そのなんと分かりやすく親切でよく調べてあることよ!全くもって感服した。このあたりの時代物を描かれる方には参考になることうけあいである。一家に一冊あってもおしくはないぞ!
小公女
 バーネット作
 川端康成・野上彰訳
 角川文庫
六月二十五日
 もちろん子供の頃、児童書で読んできた本ではあるのだが、ハウス劇場の「小公女セーラ」以降一度大人向けの本で読んで見なければと思っていた。
おもしろい、おもしろすぎる、モエモエであるのは当然なのだが、アニメに比べると細かいエピソードが少なくて少々ものたりなかった。アニメ版がオリジナルの話を加えたのか、訳がエピソードを削ったのかはこの本ではよく分からないので、もう少し細かく訳してある本があるのならば是非読んでみたい、ただし原書は無理だが。
 アニメ版のラヴィニアの性格はすばらしく、心の友と書いて心友になれそうな気がするのだが、小粒になってしまっているのが残念。
「心理テスト」はウソでした。
 村上宣寛著
 日経BP社
六月二十六日
 細かいデータその他はすべてすっ飛ばして読んだのだが、なんとも人を食った本である。
 血液型に始まりロールシャッハ、クレペリン(会社の採用試験で私もやったよ…)などの心理テストを一刀両断、ばっさりばっさり切り捨てているところが大変気持ちよい。ちなみに副題は「受けたみんなが馬鹿を見た」である。
 この人の言っていることが本当に正しいかどうかは分からないが、こんな人の授業を受けてみたかった、ような気がする。大学教授なのだが、学生全員をだます技術と根性はすばらしく、授業もきっとおもしろいだろうな…多分。
Missing11 座敷童の物語・完結編 
 甲田学人作
 メディアワークス
七月七日
 前の巻を読んだのがいったいいつだったのか…すっかり話を忘れてしまっていた。
 誰もいない学校は怖い、とりわけ夜の学校となると、なにもなくてもとにかくホラーなのにこのシリーズではこれでもか!というほど怖い話をぶつけてくる。
ちょっと前の巻までは、どんなに怖い話でも少しも怖くなかったのだが、作者の演出が上手くなったのか雰囲気でている。
ロード・ロス
 ダレン・シャン作
 橋本恵訳
 小学館
七月三十日
 ダレン・シャン氏の新作児童文学で、一巻は友人に借りたのだが、続きを買うか図書館で借りるか非常に迷うところである。買うとなると一巻からそろえないと気がすまないし、前作ほどのモエモエ要因はないし、どうしようかなーーー。
 ただし、やはり読んでいておもしろかった。容赦のなさはあいかわらずなのだが、ダレン少年と違って主人公にはさしたる非がなく運命にまきこまれ、なおかつ強かった…。
 
今日からマのつく自由業!
 たかばやし知
 角川ビーンズ文庫
七月三十日
 作者のたかばやしの「たか」という文字が出せません…ごめんなさい。ついでに「マ」も正しくはマル「マ」です。
 友人から山のように借りたジョブナイル文庫を山のように読む読書月間の始まりである、とはいってもゆっくり本を読んでいられる時間があまりないので、のんびりいこうっと。
今度はマのつく最終兵器!
 同
七月三十一日
 ジョブナイルの欠点は、読み終わるまで他のことが何も出来ないことである。
今夜はマのつく大脱走!
 同
八月一日
 やっと三冊目、パソコンが終わったら四冊目にいけるか?
明日はマのつく風が吹く!
 同
八月一日
 こういうジョブナイルはお気楽お気軽に漫画感覚で読めるのだが、一日に二冊くらいしか読めないのがなんともくちおしい。子育て前だったら一日五冊はいけたものを!
閣下とマのつくトサ日記!
 同
八月二日
 これは短編集、王佐ギュンターの壊れぐあいがなんともすごい…。
きっとマのつく陽が昇る!
 同
八月二日
 この物語の中で一番強くて役に立つのはアニシナではないだろうか。女性の強い物語ってのはやっぱりいいよね。
いつかマのつく夕暮れに!
 同
八月三日
 だいたい一作につき一度おぱんつネタが入るのが、黒のヒモパンにはやはりなじめないな。
天にマのつく雪が舞う! 八月四日から六日
 何日にどれを読んだのかすっかり分からなくなってしまったのだが、とりあえず「マルマ」シリーズはここまでしか借りていないのでここで打ち止めである。いや、おもしろかった…手軽にさくさく読めるのだが、まじめそうに見える超絶美形の魔族の皆様がそれぞれの壊れ方をしていくのがなんとも気の毒というか笑えるというか、ジョブナイルもたまにはいいなっと。
 毒女アニシナと、白衣の天使にして鬼軍曹ギーゼラ、主人公のお母様などが非常に強くて(前の二人はほぼ最強)いい味を出している。世の女性はやはりこうでなくてはな。
地にはマのつく星が降る!
お嬢様とは仮の姿!
めざせマのつく海の果て!
息子はマのつく自由業!
これがマのつく第一歩!
やがてマのつく歌になる!
彩雲国物語
 雪乃紗衣作
 角川ビーンズ文庫
 はじまりの風は紅く
 黄金の約束
 花は紫宮に咲く
 想いははるかなる茶都へ
 漆黒の月の宴
 朱にまじわれば紅
八月六日から十日
 マルマがやっと終わったにもかかわらずしょうこりもなく読み出した角川文庫であった…。幸い六冊しかなかったのでそんなに時間をかけずに済んだ。
 イラストは「アンジェリーク」の由羅カイリさん。
 貧乏貴族のお嬢様が、最初は期限付きで後宮にあがりのちにはアルバイトで宮廷の事務仕事のお手伝いをしその後女性としてはじめて科挙をとおってお役人になる物語なのだが、このお嬢様、庶民的というか貧乏が板につきすぎているというかお金で動くというか、とにかく頑張りやさんなのである。周りをかためる男性陣もいい男ぞろいなのだが、最後の最後まで本格的な恋愛にはいたらなかった。
 恋よりも仕事を選んだどちらかというと珍しい(そうでもないか)ヒロインなのだ。
 
スペシャリストの誇り
 茅田砂胡作
 中央公論新社
九月十五日
 初めてポチを前に座らせて自転車で図書館に行ってきた。ポチはおおむねお利口にしていて、絵本も自分で選んで借りた。最初にしてはおお出来であるが、この先どうなるかなーーー。
 「クラッシュ・ブレイズ」シリーズ二冊目、今回はレティシアの話が中心である。レティシアといえば「デルフィニア」では王妃の宿敵だったのだが、今回は仲良くデート(偽装)、ほとんどキの字の入った殺人鬼だったのだが、今回はいたって常識派(何人も殺しているけれど相手が相手だったし)、いい少年になったものよのうと感心してしまう。絶対近寄りたくないけれど。
十二ヶ月のおてつだい
 きたやまようこ作
 理論社
九月十六日
 実はポチが生まれて初めて図書館の棚から自分で選んで借りた本なのだが、どうせ読んであげるのは私の役目なので数にいれてしまおう。
 きたやまようこさんの犬が出てくる本は結構好きである。さらさらっと描いてあるように見えるけれど、仕草がとても犬っぽいのだ。
生きる 
 中村うさぎ著
 マガジンハウス
九月十六日
 副題は「悩み相談で解き明かす「人生って何?」」、女性雑誌の悩み相談コーナーに著者が答えたものである。中村うさぎでなかったらこんな本は読まなかったな、この人のことだからさぞかし愉快な解答をするだろうと考えていたのだが、いたってまともでまじめであった。
 ひとっつも似たところがないのにこの人に親近感を覚えるのはなぜだろうと思っていたのだが、物事に対する一刀両断ぶりが案外似ているかもしれないと判明した。いやそんなこともないか。
彩雲国物語
 欠けゆく白銀の砂時計
 雪乃紗衣作
 角川ビーンズ文庫
九月十七日
 続きである。
 恋愛の要素をもう少し削ったら、案外児童文学でもこの話はいけるのではないだろうかと思った。
 この巻でもヒロインは仕事を選んでいる、大変立派である。でも結局はお約束としてあの人と結婚するんだろうなーーと思うのだが、最後まで誰も選ばなかったらすごいのに。
モービーディック航海記
 たむらしげる作
 ソニー・マガジンズ
九月三十日
 手のひらサイズの鯨の入れ物に設計図どおりに機械をいれて水槽にはなして育てる、あたりが個人的なツボであった。
 白髪のおじさんではなくもう少し若いとよかったかな。 
夕凪の街 桜の国
 こうの史代作
 双葉社
十月一日
 漫画だけど、図書館に置いてあったしあまり漫画らしくない内容なので入れてしまおう。
 今年のアサヒ新聞社の漫画賞(?)をとった作品、原爆投下後のヒロシマに生きた女性の物語である。憲法九条改正なんて言っている人にまず読んでいただきたい。
「エロイカより愛をこめて」の創りかた
 青池保子著
 マガジンハウス
十月五日
 漫画化が自分の作品について文章で事細かに語ってしかもそれが結構読みやすくておもしろいなんてことは珍しいのではないだろうか、しかも「エロイカ」だし。
 こんな本を読むと漫画の「エロイカ」三十巻をイッキ読みしたくなるではないか!たしか何巻まで読んだのだったか、忘れてしまったことだし。ちなみに「イブの息子たち」ならば文庫版で全部持ってます。
本当は恐ろしいグリム童話 Deluex
 桐生操作
 KKベストセラーズ
十月八日
 私は悪趣味な本も下世話な本も結構平気で読むけれど、この本の悪趣味で下世話であったことよ…。この読書日記を読んでいる皆さんはこんな本読まなくてよろしい、と言っておこう…。
 グリム童話が本来恐ろしいものであるということは、よーーく分かっているので、童話を基にした物語ならば、もう少し違った切り口から書かれたものを読みたいなあ…。
ヴェロニカの嵐
 茅田砂胡作
 中央公論新社
十月十六日
 「クラッシュ・ブレイズ」シリーズ三冊目、今回は遭難ネタである。
 林間学校に来たつもりが降ろされたのは人っ子一人いない無人星、子供たちはサバイバル生活を生き残ることが出来るか!という話…が表向きの大筋ではあるのだが、そこんところはリィとシェラがいれば問題はない、むしろ後の法廷でのやりとりの方が後味が悪い。


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