2001年版「アイヌ民族は同化していなくなった」
という発言に関する和人の立場からの抗議文・要望書


焦点のムネヲ発言の全容
この発言に関する新聞記事(同時多発テロ関連記事)この発言に対するアイヌ・ウィルタからの抗議文
国連の会議で発表された声明文
西日本タケヲとムネヲをケトばす会oripakEsamanからの呼びかけ
ダーバン2001(国連主催の人種差別に反対する世界会議)
武者小路さんの抗議文(ダーバンに政府代表の一人として参加する人)


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ピリカ全国実行委員会の決議文

2001年7月7日
内閣総理大臣 小泉純一郎様
経済産業大臣  平沼赳夫様
衆議院議員   鈴木宗男様

「『アイヌ史資料集』の復刻者・河野本道を弾劾する!
放送大学はアイヌ民族差別講義の放映中止を7・7集会」
参加者一同

連絡先 「北方領土の日」反対!「アイヌ新法」実現!
全国実行委員会関東グループ
東京都 渋谷区 恵比寿 4-19-5-103
03(3446)9058

決議文

 さる7月2日、鈴木宗男衆院議員は都内での日本外国特派員協会主催の講演で「日本は一国家一言語一民族といっていいと思う」、「北海道にはアイヌ民族というのがおりまして、(一国家一言語一民族というと)嫌がる人もおりますけれど、今はまったく同化されている」等述べました。
 また、平沼赳夫経済産業相は同日、札幌市の中川義雄参院議員のセミナー席上、日本の経済成長に触れた中で「(日本は)小さな国土にレベルの高い単一民族でぴっちりと詰まっている。この人的資源があったからこそ、大東亜戦争に負けて原爆まで落とされて、いまだに世界第2位の経済大国の座を守っている」と述べました[いずれも北海道新聞(7/3)による]。

 平沼議員の「レベルの高い単一民族」=「経済大国」発言は、日本民族はレベルが高く優秀であるという優越観にもとづいて他民族を劣等とみる優勝劣敗の優生思想です。同時に、アイヌ民族は劣等であるが故に「社会進化」に「適応(順応)」できず、必然的に「滅亡」、あるいは和人(日本人)に「同化」するとの考え方を内包しているととらえざるをえません。

2議員の発言はアイヌ・モシリ(アイヌ民族が住む静かな大地)を暴力的に奪い取り、土地と資源を略奪し、植民地支配のもとに行なってきたアイヌ民族絶滅政策−同化攻撃を無反省に肯定するものです。アイヌ民族の抵抗にもかかわらず、明治政府は1871年アイヌ民族に民族語、民族名、風習に対する禁止令を出して民族文化を破壊し、アイヌ民族を先住民族と認めないで民族性の抹殺、日本人意識の形成をはかったのです。
 2議員の日本民族優越意識にもとづく他民族否定、排外主義に彩られた単一民族国家観と「アイヌ民族は同化した」との発言は、現に生きて闘っている民族の存在そのものを否定するばかりか、先住民族の自決権を否認し、世界各地の民族解放と自立をもとめる運動を否定するものです。

一方、アジア・太平洋諸国との関係に目を転じれば、日本政府と独占資本は戦争責任を追及されつづけているではありませんか。そのような関係のなかで、立場ある代議士が近隣諸国の人民が憎悪する「大東亜戦争」という言葉を用いたということは、過去の侵略の歴史を肯定し、戦争責任を否定するとの「政府見解」を表明したことを意味します。さらに、それらすべての侵略は、明治期に激化したアイヌ民族の同化・抹殺政策をひな型として行われたことも問われなければなりません。

このような事実を踏まえ、本日の「『アイヌ史資料集』の復刻者・河野本道を弾劾する!放送大学はアイヌ民族差別講義の放映中止を7・7集会」に集まった私たちは、2議員の発言は個人的な失言ではなく、日本国家の意志を体現したものととらえます。

2議員の発言に怒りをもって抗議すると同時に、発言の取り消し、アイヌ民族への謝罪を要求します。
 右決議します。


さっぽろ自由学校「遊」の講座参加者からの抗議文

衆議院議員 鈴木宗男 様
経済産業大臣 平沼赳夫 様

抗議文

私たちさっぽろ自由学校「遊」は、市民がつくる市民のための学びの場
として、講座活動を行っているNPOです。今年4月からは、「聞こう!
アイヌ民族が切りひらこうとしている未来」と題して、アイヌ民族の現状と
課題、先住民族をめぐる国際的な動向などを学ぶ連続講座(全6回)を開講し、
7月3日にはその最終回としてパネルディスカッション「アイヌ民族の自律
→自立に向けて〜これが私(たち)の生きる道」を開催しました。
 20代・30代の4人のアイヌ民族のパネリストの方々は、自分たちの民族の
未来に向けての夢や希望を口々に語ってくれました。アイヌ民族を含む約30名
の参加者の方々はパネリストの発言に熱心に耳を傾け、参加者を交えて熱い
議論が繰り広げられました。
 このパネルディスカッションが開催された7月3日、各紙に鈴木宗男衆議院
議員の「(日本は)一国家一言語一民族と言っていいと思う」「北海道には
アイヌ民族というのがおりまして、嫌がる人もおりますけれども、今は全く
同化されております」との発言、平沼赳夫経済産業大臣の「(日本は)小さな
国土に1億2600万人のレベルの高い単一民族でぴちっと詰まっている」との
発言が掲載されました。この新聞記事は、パネルディスカッションの会場で資料
として配られ、参加者全員の知るところとなりました。
 北海道に生きる草の根の市民が、それぞれの立場は違いながらも、アイヌ民族
の未来を一緒に考え、つくりだしていこうとしているまさにその時に、国の政治
を担う大臣や議員がアイヌ民族の存在を無視・否定するような発言をしている
ことに、私たちは驚き、あきれ、そして怒りを感じざるを得ませんでした。
 鈴木宗男氏は地元北海道選出の議員であり、また平沼大臣の発言は札幌市内に
おけるものでした。これらの発言が、単なる「無知」のなせるわざとはとうてい
思えません。
 「先住民族の権利」に関しては、現在、アイヌ民族を含む世界各地の先住民族
の間で議論が重ねられており、国連においても「先住民族の権利に関する国連
宣言」の採択が急がれています。国内においても、道内各地におけるアイヌ語
教室の実践や、アイヌ民族の歴史・文化を学ぶ副読本の作成など、アイヌ民族の
権利回復に向けての動きはじっくりと浸透しつつあります。
 鈴木、平沼両氏による公の場における上記の発言は、こうしたアイヌ民族の
復権に向けての社会的な努力に水を差す悪質なものです。両氏が発言を撤回し、
すみやかに謝罪することを私たちは求めます。

2001年7月23日
さっぽろ自由学校「遊」
パネルディスカッション「アイヌ民族の自律→自立に向けて」参加者有志


日本基督教団北海教区から鈴木宗男と平沼赳夫へ宛てた抗議文

「『単一民族国家』発言の撤回と謝罪を求める声明」

経済産業大臣 平沼赳夫様
衆議院議員  鈴木宗男様

 去る7月2日、平沼赳夫経済産業相は札幌市内で開かれた政経パーティーで、「小さな国土に1億2600万のレベルの高い単一民族できちんとしまっている国。日本が世界に冠たるもの」と発言しました。また、鈴木宗男衆議院議員も同日、東京・外国特派員協会での講演で「(日本は)一国家、一言語、一民族。アイヌ民族は今はまったく同化された」との発言をしました。
 私たち日本基督教団北海教区はアイヌ民族の復権と差別撤廃を教会の課題と受けとめ、1985年にアイヌ民族委員会を設置し、87年の教区総会以来、毎年度「アイヌ民族の権利を回復する運動の推進に関する件」を決議し、取り組みを進めています。私たちはこのたびの両氏のアイヌ民族の存在そのものを否定し、日本のアイヌモシリ侵略と同化政策を正当化する発言を到底見過ごすことはできません。
 1986年、当時の中曽根康弘首相が「日本は単一民族」と発言してから15年を経ました。その間に、アイヌ民族の地道な権利回復運動もあってアイヌ民族の存在を公式に認めなかった政府は91年、国連への報告書でアイヌ民族を少数民族と認め、95年には人種差別撤廃条約を批准するなど、多少なりともアイヌ民族への理解を示す動きを見せました。
 しかし、内実は15年たった今も日本の閣僚や政治家には他民族を否定する相変わらずの認識しかないことに呆れると共に憤りを覚えます。そして今回の両氏の発言は閣僚や政治家の失言や資質の域を超えて、人種差別撤廃条約という国際人権法違反の問題とみなされるのは明らかです。
 私たちは今も差別を受けているアイヌ民族の復権と解放を願って、この度の両氏の差別発現に厳重に抗議し、発言の撤回とアイヌ民族に謝罪するよう求めます。
2001年7月26日

日本基督教団北海教区アイヌ民族委員会
委員長 三浦忠雄アイヌ民族情報センター
主事  宮島利光


単一民族発言は二本列島住人に対する挑戦だ
シサム通信123号(2001.7/26発行)より抜粋、アイヌ民族と共に生きるシサムの会・木戸宏

平沼氏の単一民族発言に対して、北海道ウタリ協会副理事長阿部ユポ氏は
「わざわざアイヌモシリで、こあした発言をするのはアイヌ民族に対する兆銭ではないのか」
と述べている(毎日新聞夕刊7/3)。
ただ、もうひとつの問題がある。それは、こうして性懲りもなく繰り返される単一民族発言は、
アイヌ民族に対するだけのものではないことだ。
こま発行数500のミニコミ(シサム通信)でさえ、アイヌ民族、沖縄・奄美・八重山の人々や
在日韓国・朝鮮人、ウィルタ民族、さらにはエミシ系など、多様な出自をもち日本列島に暮す読者
の方々がおられる。単一民族発言はその人たちの民族としての存在を否定するものだ。
そして日本列島で、ふつう日本人と呼ばれる、多種多様な列島各地の風土の中に根をはって生きて
きた人々の、その多様性を否定していることにこそ、もっとも本質的で重要な問題があると思う。

かつて海を渡り日本列島に住み着いた人々の、その土地の風土が列島住民をそれぞれに育み、各地
に多様で独自の文化を創り出してきた歴史がある。私たちに誇るものがあるとすればそれは、その
多様で異なる文化や歴史を持つ人々がこの列島に生きてきたという事実ではないだろうか。

歴史を検証すれば、3世紀の邪馬台国は、さまざまな小国の連合体であった。徳川幕藩体制でさえ、
三百近いさまざまな小国の連合体であり、クニとは、薩摩や土佐や信濃や会津などのことで、国境
には関所が設けられていた。ヤマトという言葉はあっても日本人という言葉は機能していなかった。
当時「ヒノモト」とはエミシの土地つまり奥州を意味していた。

「大日本帝国」という中央集権国家の誕生により、教育勅語を柱として皇民化教育という国民統合・
同化政策が展開されたが、21世紀の今日でさえ多くの日本人は帰省を「クニに帰る」などと言う。
もし、シャモとかナイチャーとか言われて悔しかったら、自分のルーツを調べてみるとよい。
シャモやナイチャーもその土地土地のネイティブなのだ。

皇民化教育が徹底された戦前においても、「単一民族国家」という言葉はなかった。
たとえば勧業博覧会で、アイヌ民族や琉球民族、台湾原住民族が「展示」されるという人類館事件が
あった。植民地政策によってそれらの先住民族を「土人」と呼んで支配すること、つまり多民族国家
であることが天皇制国家の「権威」として利用されたのである。

「単一民族国家」という言葉は、戦後つくられた極めて新しい言葉であり、それもここ数十年のことだ。
このことに留意する必要がある。そもそも「民族」とは、多種多様な人々の集合体が生み出した文化概
念であり、それはもともと「雑多で多様な人々の集団」なのである。また「単一民族国家」なる国は地球上
には存在しないのだから、ことばとして成立しない「死語」である。それがなぜ最近になって頻繁に発
せられるようになったのか。そこには列島住民への均質化、没個性化を求める国家主義的な意思が働
いているように思う。「単一民族」とか「民族の純粋性」が持ち出されるとき、そこにはファシズムへの
レールがひかれている。

「単一民族国家」という言葉は「アイヌ民族問題」としてのみならず、日本列島の全住民への兆戦として
受け止めていくべきた。


真宗大谷派の声明文
平沼赳夫・鈴木宗男両議員の「単一民族発言」問題に対する受けとめ

去る7月2日、平沼赳夫経済産業大臣ならびに鈴木宗男衆議員の相次ぐ「単一民族発言」
がありました。真宗大谷派は、この問題に対して以下のとおり受けとめるとともに、抗議
の意を表明いたします。

平沼大臣の発言は、日本経済の将来像について語るなかで、
「日本は天然資源に恵まれないが人的資源は豊富だ。日本ほどレベルの高い単一民族で
詰まっている国はない。あの大東亜戦争に敗れ、傷ついて帰ってきた。惨憺たる状況の
中で人的資源を最大限に駆使し、先進国なみになろうと目標を掲げ、歯を食いしばって
頑張った。そして、アメリカに次ぐナンバー2を守っている」
というものでありました。

また、鈴木議員の発言は、「自民党は一枚岩である」ことを述べようとする文脈で、
「私は一国家、一言語、一民族と言ってもいいと思うんです、北海道にアイヌ民族とい
うのがおりましてですね、嫌がる人もおりますけれども、今はまったく同化されており
ますから…」
というものであります。

これらの発言は、明らかに日本における先住民族・少数民族の存在とその尊厳を否定す
るものであります。さらにこれらの発言に対するアイヌ民族やウィルタ民族などからの
抗議の対応も、「差別的な意図は無い」、「アイヌの方々の誤解を生じた」などと答え
るのみで、誠意ある対応とは言えないものであります。また国・政府も、この発言に対
して何らの対応もしていないと言わざるを得ません。

私たちは、このたびの発言を目にしたとき、強い怒りを感じました。それに加えて言い
知れぬ憤りと悲しみを覚えたのは、その発言によって傷つけられた人たちからの問いか
けの声に真摯に向き合うことができない在り方でありました。

また今回の問題は、突発的に起こった問題ではありません。

1986年の中曽根首相(当時)の単一民族国家発言以来、幾人もの政治化が繰り返し
同様の発言を行い、その都度に厳しい問題提起を受けながら、またしても起こった問題
でありました。

その意味で今回の問題を、私達真宗大谷派は、発言者個人の問題にとどまらず、
「和人社会」が生み出したものであると受けとめ、これら一連の事柄が提起する問題を、
真正面ら自らの課題としていかねばならないと強く考えるものであります。

なぜなら、この発言を見過ごすことは、私たちの国の歴いなわち明治維新以来、国家政
策としてアイヌ民族の大地を侵略し、またそれに続く朝鮮半島植民地化や、「大東亜」
の虚構のもとにアジア諸国を侵略してきた歴史を肯定し、させなる過ちを繰り返すこと
につながるからであります。

その侵略の歴史は、アイヌ民族をはじめとする諸民族を劣等視し、民族の言葉を奪い、
名を奪い、文化を否定するという同化至上主義のもと、日本は単一民族であるという幻
想を国民に植え付けてくものでありました。さらに優秀な国民こそ国の資源であるとの
考えから、優劣思想を神道させ、「劣等な国民」というレッテルを貼られた人たちを社
会から排除するという極めて非道な歴史であったと言うほかありません。


そしてその歴史が、いかに人間の尊厳そのものをも奪い取ろうとするものであったのか
を私たちに気付かせてくれたのは、これらの所為により人権を奪われてきた人びとの、
人間回復に向けての闘いでありました。

その人間回復の闘いのなかで、「われアイヌ」という名告りを取り戻そうとする人たち
がおられます。その名告りにき、長い差別と虐待の歴史のなかで、その名あるが故に深
い苦悩を強いられ、自らの生までも呪わねばならなかった現実を、逆にその名に誇りを
見出し、それを力として起ち上がってきた人たちの願いが込められています。それは人
と人とが差異を認め合って生きることができる、共生の世界への力強い希求であります。

さまざまな形でなされる人間回復の闘い。
その願いを受けとめ、自らの場所で具体的な動きにしていく歩み、そのことこそ、今私
たちに認められていることであります。


1997年、「旧土人保護法」が廃止され、新しい法律ができました。しかし、この国
の本質、そして私たち一人一人の在り方、本当に「同化政策」と決別できているといえ
るのでしょうか。それは否といわざるを得ません。

今回の発言があらあわにするもの、それは異なることを認めない、異なりに対して差別
でもって臨む優生思想に基づく「同化政策」が今も私たちのうえに機能し続けていると
いうことであります。差別する意図がなくとも無意識裡に口に出るほど自然に、「単一
民族国家」が私たちのなかに浸透しているのです。


今回の出来事を機縁として、今度こそ私たちは本当に変わりたい。

変わるとは、異なるものとして排除されてきた人たちの声を聞き届け、どこで生活して
いようと、何を営みにして生きようと、その自らの生活のうえに「差別を認める世界」
「共生の世界」を発見し続けていく道を歩むものとなるということだと受けとめます。

真宗大谷派はあらためて今「北海道開拓・開教」という歴史に真摯に向き合い、その歴
史が人と人とのちながりにもたらしたものは何かを問い直し、新たな歴史を生み出して
いきたいと思います。そしてその歩みを世の思潮にさらしていく、そのことを通して一
人ひとりのうえにアイヌ民族復権の願いを受けとめていきたいと思います。


一人ひとりが変わり続けていく、そのことが二度とこのような発言を生み出さない社会
を顕現していくことにつな゛ると、私たちは確信しております。

2001年9月3日
真宗大谷派同和推進本部 里雄 康意


アイヌ民族の権利回復を求める会の、鈴木宗男衆議院議員に対する要望書

2001年9月9日
衆議院議員 鈴木宗男 殿

「同化」発言に対する要請書

拝啓 貴下におかれましては、ますますご清栄のことと存じます。

貴殿の発言に関して首都圏でアイヌ民族の権利回復を求める活動をしている私たちの
考えをぜひお伝えしたく、本状を差し上げます。ご多忙とは存じますが、大変重要な
案件ですので、ぜひお目通しいただき、適切な対応をとられるようお願いいたします。
なお、本状はすべて貴殿の発言およびその後の対応に関するものであり、平沼経済産
業相の言動との混同はないことを、あらかじめ明記しておきます。

まずアイヌ民族に関する基本的見解を確認しておきます。アイヌは固有で独自の文化
をもった民族であり、現在でも決して日本人と同一民族ではありません。

以下に貴殿の言動、およびその問題点を列挙いたします。

1.7月2日の東京・有楽町の日本外国特派員協会での講演における「私は(日本は)一
国家一言語一民族といっていいと思う。北海道にはアイヌ民族というのがおりまし
て、嫌がる人もおりますけれど、今はまったく同化されている」との発言について

アイヌ民族は、決して同化されてはいませんし、国連でもその存在が認められていま
す。私たちの周囲には、自らの歴史と文化に誇りを持って生きていこうという意識を
持ったアイヌ民族が、たくさんいます。

2.「差別する意図はなかった」との説明について

差別する意図がなければ差別発言をして良いということにはなりません。むしろ貴殿
の発言が差別になることに気付かない鈍感さを問いたいと思います。当のアイヌ民族
が差別されたと感じ、発言しています。社会的に影響力のある方が公の場で講演な
さっているのですから、話す際にはご自分の趣旨が伝わる言葉を選んで、世の中に混
乱を与えないようにする義務があります。

3.7月16日、衆議院第一議員会館にある貴殿の事務所に、首都圏のアイヌ民族5団体の
代表が『抗議と申し入れ』書を持って訪れた際、「わたしは、まともなアイヌをたく
さん知っている。」と発言した件について侮蔑的暴言であり、撤回と謝罪を求めます。

4.8月24日の札幌市中央区の札幌プリンスホテル国際館パミールで開かれた後援会総
会での講演での「私の言った『一国家一言語一民族』の一民族とは国民のことで、英
語で言えば『ネーション』。日本人、アイヌ人、パキスタン人という時の民族は『エ
スニック』で私の言った『民族』とは違う。アイヌのみなさんは日本語を使ってい
る。日本の国民じゃないですか」「血の同化をしたと言ったのなら批判されてもしか
たがないが、『仲間』と言う意味、一緒に生活をしているという意味で言ったもの
だ」との発言について

アイヌ民族が現在日本語を使っていることは事実です。しかし、この事実こそが、
アイヌ民族に対してとられた苛酷な同化政策の結果であり、貴殿の発言は、その歴史に
対して、何の痛みも感じていないことを示すものです。貴殿も尽力なされた1997年制
定の「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統に関する知識の普及及び啓発に関する法
律」の目的には「アイヌの人々の民族としての誇り」と明記されており、これは日本
の単一民族性を否定する文言です。「ネーション」と「エスニック」の使い分けはこ
の場合適切ではありませんし、また同化には「仲間」という意味はありませんので、
そういう間違った言葉遣いはなさらないようにお願い申し上げます。

5.北海道新聞の取材に「私が言った一民族とは、あくまでも国民という意味。笹村二
朗前理事長はこの説明で納得しており、この問題は決着済みだ。執行部が変わったか
ら見解が違うと言われても、(質問状は)受け取れない」と答えた件について

北海道ウタリ協会の前理事長は発言への対応を問われて、会員から解任されたので
す。北海道ウタリ協会の承認を得られない、前理事長の独断とも言える見解をもって
決着済みにはできません。

以上、問題点を書き連ねました。貴殿は「小さい頃はアイヌの人々と遊び、イモシト
も食べた」等、事あるごとに言っていますが、民族の存在を否定した「同化」発言、
それに連なる発言の数々はアイヌ民族を侮辱していることにほかなりません。即刻認
識を改め、

1.7月2日の東京・有楽町の日本外国特派員協会での講演における「私は(日本は)一
国家一言語一民族といっていいと思う。北海道にはアイヌ民族というのがおりまし
て、嫌がる人もおりますけれど、今はまったく同化されている」との発言が誤りで
あったことを認め、これを撤回し、謝罪する
2.ご自身の後援会総会での反論、北海道ウタリ協会の質問状受取り拒否などの高慢な
対応を反省、謝罪し、質問状を受理して真摯に対応する
3.今回のような発言が生まれる温床となっている、アイヌ民族その他の民族に対する
ご自身を含む社会全体の認識不足を改善し、理解が促進されるように積極的な方策を
とることを求めます。
末筆ながら貴殿のますますのご発展をお祈りいたします。
敬具

アイヌ民族の権利回復を求める会


アイヌ民族の権利回復を求める会の、平沼赳夫経済産業相に対する要望書

2001年9月12日
経済産業相 平沼赳夫 殿

「単一民族」発言に対する要請書

拝啓 貴下におかれましては、ますますご清栄のことと存じます。

上記の件で首都圏でアイヌ民族の権利回復を求める活動をしている私どもの考えをぜ
ひお伝えしたく、本状を差し上げます。ご多忙とは存じますが、大変重要な案件です
ので、ぜひお目通しいただき、適切な対応をとられるようお願いいたします。

まずアイヌ民族に関する基本的見解を確認しておきます。アイヌは固有で独自の文化
をもった民族であり、現在でも決して日本人と同一民族ではありません。

以下に貴殿の言動、およびその問題点を列挙いたします。

1.7月2日の札幌市内のホテルで開いた自民党の中川義雄参議院議員のセミナーにおけ
る「レベルの高い単一民族という人的資源があったからこそ、大東亜戦争に負けて
も、世界第二位の経済大国の座を守っている」との発言について

1993年に日本政府は国連機関に対する報告書で、アイヌ民族を「少数民族」であると
承認しています。このため政府としても「単一民族」との認識は誤りであり、撤回す
べきものです。

2.同月12日、北海道ウタリ協会の質問状に対し「アイヌの方々の誤解を生じたとすれ
ば遺憾だが、アイヌの方々の民族としての誇りを傷つける意図はみじんもない」
「アイヌの方々がさまざまな障害を乗り越え、アイヌ語やその独自の風俗慣習をはじめと
する固有の文化を発展させてこられた民族と認識している」と回答した件について

回答したことは評価できますが、差別する意図がなければ差別発言をして良いという
ことにはなりません。むしろ貴殿の発言が誇りを傷つけることになると気付かない鈍
感さを問いたいと思います。誤解は「生じた」というより、「生じさせた」のではな
いでしょうか。社会的に影響力のある方が公の場で講演なさっているのですから、話
す際には適切な言葉を選んで、世の中に混乱を与えないようにする必要があります。
発言の撤回もなく、自らの間違いを認める姿勢が見られません。

3.北海道ウタリ協会の質問状に「『単一民族』の発言は不本意で、本意は『日本国
民』」と説明し、アイヌ民族について「独自の言語などの文化とともに、民族として
の帰属意識を有する集団で、一つの民族である」と回答したことについて

上述と重複しますが、講演で本意を伝えるのは、話し手の責任です。認識や意図だけ
ではなく、問題となった発言そのものについてどうお考えなのか、明確にお聞かせい
ただきたいと存じます。

アイヌ民族についての根本的認識を即刻改め、

1.発言が誤りであったことを認めて撤回し、アイヌ民族その他の民族の誇りを傷つ
けたことを謝罪する
2.今回のような発言が再発しないように、アイヌ民族その他の民族に対する正しい
理解を促進するように積極的な方策をとることを求めます。

末筆ながら貴殿のますますのご発展をお祈りいたします。
敬具

アイヌ民族の権利回復を求める会


アイヌ民族の権利回復を求める会の、小泉純一郎内閣総理大臣に対する要望書

2001年9月12日
内閣総理大臣 小泉純一郎 殿

経済産業相平沼赳夫氏の「単一民族」発言に対する要請書

拝啓 貴下におかれましては、ますますご清栄のことと存じます。
貴殿の選ばれた閣僚のお一人である平沼赳夫氏の発言に関し、首都圏でアイヌ民族の
権利回復を求める活動をしている私たちの考えをぜひお伝えしたく、本状を差し上げ
ます。ご多忙とは存じますが、大変重要な案件ですので、ぜひお目通しいただき、適
切な対応をとられるようお願いいたします。
まずアイヌ民族に関する基本的見解を確認しておきます。アイヌは固有で独自の文化
をもった民族であり、現在でも決して日本人と同一民族ではありません。
以下に平沼氏の言動、およびその問題点を列挙いたします。

1.7月2日の札幌市内のホテルで開いた自民党の中川義雄参議院議員のセミナーにおけ
る「レベルの高い単一民族という人的資源があったからこそ、大東亜戦争に負けて
も、世界第二位の経済大国の座を守っている」との発言について

1993年に日本政府は国連機関に対する報告書で、アイヌ民族を「少数民族」であると
承認しています。このため政府としても「単一民族」との認識は誤りであり、撤回す
べきものです。また、1995年に批准した「人種差別撤廃条約」の監視機関である人種
差別撤廃委員会(CERD)による日本政府への勧告として、最終見解の13段落に次のよ
うに記されています。
「13.(人種差別撤廃)委員会は、高位の公務員が行った差別的発言と、とくに、条約
第4条(c)違反の結果として、当局が取るべき行政上または法律上の措置を取っていな
いこと、またそうした行為は人種差別を助長、扇動する意図があった場合にのみ処罰
されるという(日本政府の)解釈に、懸念をもって注目する。締約国が、こうした事件
の再発を防ぐための適切な措置を取り、とくに、公務員、法執行官および行政官に対
し、条約第7条に従って、人種差別につながる偏見と闘う目的で適切な訓練を行なう
よう求める。」
ここに明らかなように、日本政府は日本社会の人種差別(民族差別、門地などの社会
的差別を含む)に対して積極的に対処することが求められています。今回の平沼氏の
発言はこれに該当します。
2.同月12日、北海道ウタリ協会の質問状に対し「アイヌの方々の誤解を生じたとすれ
ば遺憾だが、アイヌの方々の民族としての誇りを傷つける意図はみじんもない」
「アイヌの方々がさまざまな障害を乗り越え、アイヌ語やその独自の風俗慣習をはじめと
する固有の文化を発展させてこられた民族と認識している」と回答した件について

回答したことは評価できますが、差別する意図がなければ差別発言をして良いという
ことにはなりません。むしろ氏の発言が誇りを傷つけることになると気付かない鈍感
さを問いたいと思います。誤解は「生じた」というより、「生じさせた」のではない
でしょうか。社会的に影響力のある方が公の場で講演なさっているのですから、話す
際には適切な言葉を選んで、世の中に混乱を与えないようにする必要があります。発
言の撤回もなく、自らの間違いを認める姿勢が見られません。
3.北海道ウタリ協会の質問状に「『単一民族』の発言は不本意で、本意は『日本国
民』」と説明し、アイヌ民族について「独自の言語などの文化とともに、民族として
の帰属意識を有する集団で、一つの民族である」と回答したことについて

上述と重複しますが、講演で本意を伝えるのは、話し手の責任です。

内閣の性格を決める重要な存在である閣僚がこのような問題発言及び不適切な対応を
とっていることの重大性を認識し、
1.発言が誤りであったことを認めて撤回し、アイヌ民族その他の民族の誇りを傷つ
けたことを謝罪する
2.今回のような発言が再発しないように、アイヌ民族その他の民族に対する正しい
理解を促進するように積極的な方策をとるように指導されることを求めます。

末筆ながら貴殿のますますのご発展をお祈りいたします。
敬具

アイヌ民族の権利回復を求める会


日本基督教団北海教区から尾身幸次ヘ宛てた抗議文

「『単一民族』発言の撤回と謝罪を求める声明」

沖縄及び北方対策担当大臣 尾身幸次様

 去る11月29日、尾身幸次沖縄・北方担当相は都内で講演し、日本社会の特徴について「日本は単一民族だ。日本人といえば大和民族だ。多少の例外はあるが、人種と国が大体合っているという意味で、日本の実情は世界の規準から見たら全く特殊な国だ」と発言しました(北海道新聞11/30)。
 私たちはこの度のアイヌ民族の存在そのものを否定し、日本国家のアイヌモシリ(アイヌの土地)侵略と同化政策を正当化する差別発言を到底見過ごすことはできません。
 今回の差別発言は突発的なものではありません。15年前の1986年に当時の中曽根康弘首相が「日本は単一民族」と発言して以来、同じような差別発言が政治家によって幾度もなされ、その度に厳しい問題提起をされて来ました。日本の国会は1997年に「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」を制定し、日本が単一民族であることを否定しました。しかし、つい数ヶ月前の7月2日にも平沼赳夫経済産業相が日本は「レベルの高い単一民族できちんとしまっている国」と発言し、同日違う場所で鈴木宗男衆議院議員も「(日本は)一国家、一言語、一民族。アイヌ民族は今はまったく同化された」との発言をして問題となり、多くの発言の撤廃と謝罪要求を受けたばかりです。これらの一連の発言と今回のあなたの発言は閣僚や政治家の失言や認識不足の問題だけではなく、人種差別撤廃条約という国際人権法違反の問題とみなされるのは明らかです。
 私たち日本基督教団北海教区は、アイヌ民族の復権と差別撤廃を教会の課題と受けとめ、1985年にアイヌ民族委員会を設置し、87年の教区総会以来、毎年度「アイヌ民族の権利を回復する運動の推進に関する件」を決議し、取り組みを進めています。
 私たちは、今も差別を受けているアイヌ民族の復権と解放を願って、この度の差別発言に厳重に抗議し、この発言が誤りであったことを認め、これを撤回し、アイヌ民族に謝罪するよう求めます。そして、この度のような発言をされたご自身を含む社会全体の認識不足を改善し、理解が促進されるように積極的な方策をとることを求めます。


2001年11月30日日本基督教団北海教区
 アイヌ民族委員会
 委員長 三浦忠雄アイヌ民族情報センター
 主事 宮島利光


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