ヒプノの世界 5






●いま何をしているか


イメージの世界は、現実以上に現実をうつしだします。そこにはいまその人が感じていることの本質があわられてきます。


たとえば同じ職場で仕事をしていても、イメージでみると、人によってさまざまなバリエーションがありえます。「戦争をしている」、「激流をカヌーでスイスイ進んでいる」、「桜の木のまわりで踊っている」、「幻の湖を探す旅をしている」とか、さまざまです。


人間関係もイメージの中ではさまざまなバリエーションになりえます。イメージのなかでは「親子」、「君主と奴隷」、「みなしごの兄弟」、「兵隊仲間」だったりするふたりが、現実の世界では夫婦をしていることもあるでしょう。イメージのなかでは現実以上にその特徴があらわれるのです。


イメージが現実と大幅にずれていることもあります。周りに人がいても孤独を感じることはだれにでもありますね。たとえばヒプノ中に、<ビル街とか市場にいるのにほかに誰もいない>というイメージがでてきたとします。そういう場合、そのとき実際に周りに人がいなかったのではありません。心の中にまで存在するような深いつながりのある人がいなかった、ということです。そういうときに「みんないるじゃん」と言っても意味がありません。諭す人が、たんに外側の状況を述べているだけだったり、諭す人自身のイメージについて語っているだけだからです。


相手のイメージを感じてみれば、その人の感じているきもちを共感できます。たとえイメージが現実とかなり違っていたとしても、ネガティブなイメージのまま、HAPPYでいろといっても無理なのです。


もしもわたしたちがイメージで語り合って、相手がどういう世界を生きているかを絵で感じることができれば、お互いのことが今まで以上に理解できるようになるでしょう。その人がどういう物語を生きているのか理解すれば、さまざまな行動のつじつまもあいます。そして抜け道を見つけることもできるのです。その人が生きている物語が自然ななりゆきで変容していければいいのです。これがヒプノの世界です。