コミュニケーションについて
VOL-10







 「親の言葉と真意のズレ」


親子関係のすれちがいのひとつの原因は、言葉が正確ではないからです。言葉と真意が違うのです。

親が「お前たちのためにがんばってるのに感謝がたりない」というとき、実際は感謝というより、家族に愛されている実感がほしいのかもしれません。親も家族関係への夢があったし、家族といて幸せを感じたい、話しかけてもらいたい、優しくしてもらいという気持ちがあります。でも「感謝しろ」と言って、子供にうっとおしがられ避けられたら、親の望みとは真逆の効果です。

「あなたを育てるために不自由をしのんできた」と言うとき、親の真意は「ほかのことを犠牲にするほどあなたは大切でかけがえのない存在なんだ。「ありがとう。大好き」と努力を認めてほしい。この愛を糧に前向きに生きてほしい」という願いかもしれません。でも子供が感じるのは被害者意識や恩きせがましさ、結婚や育児への悪いイメージだったりします。「自分がいなければ親は幸せだったのかな」「生まれなきゃよかったのかな」「親のような人生は送りたくない」と思われたら本末転倒です。



お金を使うことをグチグチ言うとき、親は不安なのかもしれません。給料と生活費を計算しては頭をかかえ、将来への不安でいっぱいのとき、お金に無頓着な子供に感情的になってしまうのでしょう。「心配なんだね。節約するよ。働いたらお金入れるね」と言われたら親は安心するでしょうが、そんな反応はふつう無理で、「いちいち文句言うんだもんな。早くでていきたい。バイト代で払えば文句ないでしょう」と思われてしまうかもしれません。

フリーターをしている子供に親が「ちゃんと働け」というのは「ちゃんと見返りのある、自分にとって得になる働き方をしてほしい」という意味であって、「あなたはちゃんとしていない」とか「バイト先でまじめに働いていない」という意味ではありません。

「この先どうするんだ」とか「はやく結婚しろ」というのも不安からです。宝くじが当たっり大儲けしてるなら言わない。自給自足の村で一族ずっと一緒に暮らしていけるなら言いません。安全で幸せを感じながら生きてくれれば、ほんとうはそれで十分なのだけど、それがけっこう難しくて、沢山の条件が必要だと思うから、子供をせかしてしまうのでしょう。でも子供が受け取るのは「お前はできそこないだ」というメッセージかもしれません。「社会的にできそこないの自分は人間失格で、存在しないほうがましなのだ」「親は私を嫌いで、私がいるのが迷惑なのだ」と思われたら逆効果です。親に認めてもらえないことで自信を失って社会にでるのが怖くなってしまったら逆効果です。

なるべく伝わりやすい表現を心がけたらお互いの辛い思いはへるのかな、と思います。でもそうできないことも致し方なくあるのだろうな、と思います。「バウリンガル」があったらいいなぁ、と思います。

追記。書いていて明らかなのは、私たちが進む道を本当にさえぎろうとする権力などは存在しなくて、安全を願う不安な気持ちが行く手をはばんでいるのです。反対する人の真意を理解すればするほど、わたしたちはその通りに生きなくてよくなります。超えていく準備ができてきます。不安はそれなりの根拠があり、無視すべきではないけれど、不安につきうごかされて、確かともいえない安全の可能性を求めるだけでよかったのでしょうか。子供は、親の思うとおりにならなくてよいのです。過去にもとづいた判断ではなく、本当に新しいものにたいして心をひらいていいです。親もまた愛する子供によって、思い込みの世界をひきさかれ、心をひらいていきます。




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