標準TTLだけ(!)でCPUをつくろう!(組立てキットです!)
(ホントは74HC、CMOSなんだけど…)
[第111回]

●試作2号基板の仕様などについて

前回は、試作2号基板のアートワーク図をお見せしました。
まだ図面の段階なので、実物は存在しないのですけれど、仕様だけはほぼ固まったわけですので、その内容についても少し紹介をしておきたいと思います。

基板のサイズは前回は310mm×480mmと書きましたが、本当はほんの少し横が短くて、310mm×450mmです。
プリント基板は1m×1mの定尺をカットして作ります。
その際にロスが出ると、その分がコストに上乗せされてしまいます。

加工のための作業スペースとして縦横とも20mm必要です。
その分を加算したうえで、1m角の定尺から何枚取れるかで基板のコストが決まります。
310mm×480mmの基板の場合、縦横にそれぞれ20mmを加算すると330mm×500mmになります。
すると、このサイズの基板は1m角の定尺からはちょうど6枚取れることになります。

たとえば、もしも縦横がほんの少し、それぞれ5mm長くなって、315mm×485mmになってしまったとすると、そこに20mm加算すると、335mm×505mmになりますから、1m角の定尺からは、たった2枚しか取れないことになります。
たった5mm長くなっただけでコストが3倍になってしまいます。
(向きを変えて、残った板からもう1枚取ったとしても、合計3枚なので、コストは2倍です)
310mm×480mmというなんともハンパな寸法なのは、そういう理由からです。

図面作成にとりかかった段階では、この寸法でもおさまるかどうか心配だったので、できるだけ詰めるように配線してきましたが、最後の方で余裕がでてきました。
取寸の上からは長さを多少縮めてみても、コストは変わらないのですけれど、なにしろこれはさすがに大きい基板です。扱いの上からはできるだけ小さくしたい。
ということで、余裕が出てきた段階で長さを3cm縮めることにしました。
それでもまだA3よりも大きいのです!(A3は30cm×42cm)

●メモリとスイッチをつけました

前回お見せした試作2号基板配線図の左下にある28pinがRAM(62256相当品)です。
「つくるCPU」は8080がベースになっていますから、本来ならばRAMは当然CPUの外にあるべきなのですが、そんなことを言っていると、せっかくこれだけの大基板を作っても、それこそウドの大木で、これだけではなにひとつできません。
むしろこれだけ大きな基板になってしまったのですから、CPUとして動作するために最低限必要な回路は一緒に作ってしまおうと考えました。

当然としてプログラムやデータを入力するためのスイッチも基板上に配置しました。
RAMの右側、基板下部にずらりと並ぶのが、そのスイッチです。
コストを考えて、アドレス入力A15〜A4はDIPスイッチにしました。
アドレスの下位4ビット、A3〜A0とデータ入力D7〜D0はトグルSWです。
アドレスとデータのスイッチをパチパチとやって設定してから、WRITE用PUSHスイッチを押して、1バイトずつメモリに書き込んでいきます。
なんともローテクなマシンですが、昔はコンピュータでも同じようなことをしていました。

余談になりますが。
その昔、私が勤めていた会社にコンピュータが導入されることになりました。
何をかくそう、途中入社のこの私めが上司と社長を口説いて、導入させてしまいましたのです(もちろん責任者はこの私)。

コンピュータの選定にあたって、各社のコンピュータから選ぶことになったのですが。
最有力候補は、IBMか富士通の最新鋭小型コンピュータです。
ですけれど、そこに某外資系のコンピュータ会社がレンタル落ち物件を格安の再レンタル料金で、という話を持ち込んできました。
富士通やIBMの小型コンピュータに比べると一世代前といった代物で、前者が大型のコピー機くらいの大きさだったのに対して、なんと和ダンス2さおくらいの大きさで、それを稼動させるために、専用のコンピュータ室を用意して、冬でも冷房が必要というなんともすごいものでした。

もうとっくに時効ですから白状しますけれど、機能とかなんとかというよりも、そのいかにもコンピュータという、どでかさに、私はひと目で惚れ込んでしまいました。
社内にコンピュータがわかるものは私ひとりだったことをいいことに、なんだかいいかげんな理屈を並べ立てて、なんと富士通やIBMの最新鋭小型コンピュータではなくて、某外資の中古コンピュータの導入に決定させてしまいました(小型なのが気に入らなかったのです)。

なにしろ中古ですから、ときどき調子がおかしくなります。
電話をすると、じきにサービスエンジニアがかけつけてきました。
まだ結婚前かなあという、若いエンジニアです。
彼は、コンピュータのフロントパネルにずらっと並んでいたスイッチを猛烈なスピードでパチパチ、パチパチやりながら、動作を確認していました。多分2進コードでコマンドをコンピュータに直接入力していたのだと思います(おお、なんと、すばらしいことか!あこがれてしまいます)。

そういえば、修理のときになると、彼はコンピュータの裏に回ってなんだかごそごそしていました。
こちらもその様子をそっとのぞいてみましたら。
なんと、彼はコンピュータ本体から、ずらりと並んだうちの一枚のプリント基板を取り外して、ハンダゴテで、基板の上のトランジスタ(!!!)を交換しておりました。
いつの話だ、ですって?
1977年〜1978年ころのお話です。

2008.11.14upload

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