標準TTLだけ(!)でCPUをつくろう!(組立てキットです!)
(ホントは74HC、CMOSなんだけど…)
[第2回]
●なぜTTLでつくるのか?理由についてその2です
このことについては、始めのところでも少し書きましたが、あらためてその他の理由もつけ加えて整理してみます。
FPGAなどではなくてTTLで組む最大の利点は、なんといっても回路の動作が理解しやすい点です。
期待したのと異なる動作をしてくれた場合など、TTLならばオシロスコープなどで前から順に信号を追いかけて確かめることが、FPGAなどに比べればはるかに容易にできるであろうと思われます。
実はFPGAはまださわったことがないので、いいかげんなことを言ってしまってはいけないのですけれど、FPGAなどでは、多分、作り上げた内部回路の動作の確認には、ソフト的なシミュレータを使うしかないのでは、と勝手に推察しています。
中が見えないためのもどかしさにはさんざ苦労させられてきましたから、回路の途中の信号を観測することができる、というのは、この上もない大きな利点であると思います。
つぎに、TTLでつくる場合にはFPGAのようにただ1個のLSIではなくて、個別のICをいくつも組み合わせて、回路を構成していくわけですから、適当な機能単位ごとに回路を分割して複数の基板に分けて作ることができます。
今回の目的はもともとは趣味的なところからスタートしたわけなのですが、趣味だけではなく、こういったものを実際に作ることによって、デジタル回路の基本的な使い方も理解できるようにする、という目的も当然あることですから、基礎から理解する、とか少しずつ学びながら作り上げていく、というような観点から考えれば、部分的に少しずつ理解しながら、徐々に組みあがっていくさまを実際にこの目で見ることができる、ということもこれは大きな利点であろうと思います。
さてさて今ひとつの理由は、これはちょっと悲しいことなのです。これはまだ私のカンというか、ただの推測にすぎないのですが、これから使おうとしているスタンダードのTTLはひょっとするとこの数年の間になくなってしまうのではないか、とひそかに危惧しているのです。事実、かっての「TTL規格表」(CQ出版)に掲載されていたナンバーのうち、店頭で入手できなくなっているものがかなり目立ってきています。この傾向は年を経るごとにより進んでいくのではないでしょうか?
とすると、やるならば、今しかない!のです。数年先にはやろうとしても必要なナンバーのTTLが揃わない、などという事態になりかねない、との不安があります。
●では、何をつくるか?と言えば、やっぱりこれしかない!のではありませんか?
前置きはとりあえずこの位にしておいて、ぼちぼち本題に入ることにします。
で、よし、わかった。CPUをつくる。それをTTLでつくる。そこまではわかった。では、いったい、何をつくるのだ?
おお、きっと、あれだ、Z80なのだ、な?そうだ、それに違いない。
なんだかウェブ上では、こういう場合、Z80を作りたい、と言われる方が多いように思われます。
Z80は私自身、かれこれ25年以上もさわってきています。
でも、これをつくるっていうのは、やめておいた方がいいです。
実際に回路図を描いてみれば、すぐにわかります。レジスタも命令も余りに多すぎて、たいてい、入り口をちょいとのぞいた程度でめげてやめてしまいます。たぶん。
私はこう見えてもプロのはしくれですから、そんなことくらいは、実際に描いてみなくったって、すぐに予想できます。ですから、いくらなんでも、そんな無謀なことは、はなから考えたりはしません。
すると、何を?
そりゃあ、やっぱり、8080をおいて他にはないではありませんか。
6800という対抗馬もありましたが、不幸にして6800は私は一度もさわったことがありませんでしたので、今回は最初から選択の外です。
何だ、8080か、などと言うことなかれ、です。
8080だって決してハンパではありません。
確かにZ80はすぐれた機能をもったCPUですけれど、Z80がやれることを8080が出来ないなどということはないのです。プログラムさえちょいと工夫すれば、Z80ができることは、8080だってちゃんとできる。
それほどに8080はとびぬけて優れたCPUだったのです。
ただ残念なことにハードがいかにも弱かった。スタンダードのTTLが5Vだというのに、8080はなんと5Vのほかに+12Vと−5V(!)が必要だったとか、+12Vの2相クロックが必要だった(この辺はちょいといいかげんです。もう忘れてしまいましたし回路図すら残っていません。全部捨ててしまった)というあたりは、+5V単一電源で動作し、クロックも5Vの1相で済むZ80の比ではありませんでした。
そのほかにも端子から出力される制御用信号もZ80のシンプルさには8080はかないません。
しかしこの8080の弱点は全てハード的なものなので、今回作ろうとしているTTL版の妨げにはなりません。
そこで、決定です。つくるなら、断然8080です。
2008.7.11upload
2008.7.15加筆訂正
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