2020.5.4
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トランジスタでCPUをつくろう!
トランジスタで8080をつくってしまおうというまさにびっくり仰天、狂気のプロジェクトです!
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見事にできましたら、もちろんTK−80モニタを乗せて、それからBASIC、CP/Mを走らせましょう!
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[第239回]



●シュミットトリガ回路(2)

前回は74HC04を使ったシュミットトリガ回路について説明をしました。
今回はそのトランジスタ版です。
現在準備中の新トランジスタロジック組立キットで74HC04相当の回路はTR04([第237回])です。
下の回路図は前回の74HC04を使ったシュミットトリガ回路をTR04に置き換えたものです。

74HC04をトランジスタロジック(TR04)に置き換えても前回の説明のようにシュミットトリガとして働いてくれるかどうかということを実際の回路で確認してみるのが今回の目的です。
TR04はまだありません。
今は発注したプリント基板の到着を待っている状況です。
しかしトランジスタ版シュミットトリガ回路の実験はTR04がなくてもトランジスタのインバータ回路が2つあればできます。
今までに作った試作基板でちょうどインバータ2段の回路をみつけましたのでそれを利用することにしました。

写真で見て左側の一列に並んだトランジスタ4個の回路が上の回路図と同じシュミットトリガ回路です。
右側に同じように一列に並んだ4個のトランジスタ回路はフィードバック抵抗なしの普通のインバータ2段の回路です(上の回路図のR1とR2がない回路です)。
右側の回路はシュミットトリガ回路ではない普通のインバータ2段の場合に出力波形がどうなるかを確認するために使います。

左側の回路部分を接近して撮影しました。

既存の回路をそのまま利用したのでご覧の通り「間に合わせ」です。
フィードバック抵抗は最初は回路図と同じ100KΩでテストしたのですがオシロの観測波形がいまひとつわかりにくいものだったので効果をはっきり確認するために100KΩに51KΩを並列にしてつなぎました。
この場合フィードバック抵抗の値は100KΩと51KΩを並列に合成したものになります。
これも中学校の理科で習いました。
1/R=1/100K+1/51K≒3/100K
ですからR≒33KΩになります。
これがフィードバック抵抗R2の値です。
入力抵抗R1は回路図の通り10KΩですからR1とR2の比は1:3.3ですが計算が面倒なのでざっくり概算すれば
R1:R2≒1:3
になります。
前回の計算結果をこの比に当てはめて計算すると、
入力信号がHからLになるときのしきい値は2.5−2.5/3≒1.7Vになります。
逆にLからHになるときのしきい値は2.5+2.5/3≒3.3Vになります。
本当に計算の通りの結果が得られるかどうかを実験して確認してみます。

そのことを実験して確かめてみるためには本当は入力波形として正弦波発生回路があるとよいのですが、そんなものは普段デジタル回路では必要のないものなので持ち合わせていません。
この際作ってしまおうかと思ったのですけれど、簡単なようでいてなかなかむつかしいのですよねえ。
オペアンプを使うとわりと簡単に作れるのだそうですが、仮に作ったとしても普通のオペアンプでは出力電圧が+5Vから0Vまでフルスイングしてくれません。
そうするためには正負電源型のオペアンプを使って±12Vあたりを供給して動作する回路を作らなければならないことになります。
+5V電源で出力が電源いっぱいフルスイングしてくれるレールツウレール型のオペアンプなんてものもありますけれど、そんなものをわざわざ入手してまで作るかということです。
さてどうしましょう。
そんなことで半日もあれこれ考えて空費してしまいました。

おお。
なんてことだ。
やっと気が付きました。
なまじ教科書通りに正弦波なんてものにこだわったためにつまらぬことに悩んでしまいました。
シュミットトリガ回路のテスト用入力信号なら超簡単にできてしまうじゃありませんか。
普通の方形波信号に下図の回路をくっつければよいだけでした。


ということでやっと実験開始です。
方形波の発振回路としては以前に作りました「クロック発生回路キット」([第65回])の出力を利用しました。
下は実験中の写真です。

左下がクロック発生回路です。
出力として977Hzを使いました(約1KHzです)。
上側のジャノメ基板に1KΩと0.1μFでRC回路を組みました。
適当な基板の空いているスペースを利用しています。

比較のために、最初にまずシュミットトリガ回路ではない普通のインバータ2段の回路で実験しました。
上の写真の右側に見える試作基板の右側部分の回路です。
下はその入力と出力の波形です。

上側(CH1)がRC回路を通したあとの波形(トランジスタロジック回路の入力波形)です。
下側(CH2)はトランジスタロジック(インバータ2段)の出力波形です。
L→Hの部分はスレッショルド付近で出力がめちゃめちゃ乱れています。
このときのノイズで入力信号も乱れています。
なんの対策もしていないロジック回路に勾配のゆるい信号が入力されると2SA1015と2SC1815が高速でON/OFFを繰り返すために短時間にかなり大きな電流が流れます(瞬間的に両方のトランジスタがONになっているのでは、とも思います)。
簡単な実験回路で電源ラインもミノムシクリップでつないでいますから、影響が電源回路にも及んで入力信号の波形の乱れにつながっていると考えられます。
H→Lの部分は一見したところ出力は乱れてはいないようですが。

時間軸を拡大してみると、やっぱりこんな感じです。

うーん。
これじゃあ誤動作しまくりで使い物になりませんでしょう。
やっぱり勾配のゆるやかな信号を入力するためにはなんらかの対策が必要です。

ということで、それではいよいよシュミットトリガ回路の測定です。
上のほうでお見せした実験中の写真での測定結果です。

H→Lの入力ではしきい値は2V以下のところにあるように見えます。
出力に乱れはありません。
一気にHからLに落ちています。

L→Hのときのしきい値を見るために水平軸をスライドさせて出力がLからHに上がったポイントに合わせました。

L→Hの入力ではしきい値は3Vを越えているように見えます。
こちらも出力に乱れはありません。
一気にLからHに上がっています。

しかしさきほどの普通のインバータ2段のところでも一見して乱れが無いように見えていても時間軸を拡大したら乱れがはっきり見えました。
念のため同じように時間軸を拡大してみました。
こちらはH→Lの波形です。

やっぱり出力に乱れはありません。
一本線のきれいな波形です。

こちらはL→Hの波形です。

こちらも出力に乱れはありません。

これでトランジスタ版のシュミットトリガ回路でもインバータ2個を使った回路が十分実用的であることが実証できました。
トランジスタわずか4石で簡単に作ることができて、かつしきい値の算出が容易であることが最大の長所でありましょう。
ということで新トランジスタロジック組立キットとしては74HC14相当の回路は用意しませんが、もしシュミットトリガ回路が必要になりましたら前回の74HC04か今回のTR04を使ったシュミットトリガ回路を使うことを検討してみてください。

トランジスタでCPUをつくろう![第239回]
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