2002年九月から十二月

書名・作者・出版社 日付・内容・感想など
マレー鉄道の謎
 有栖川有栖作
 講談社
九月三日
「国名シリーズ」の最新作、やっと図書館に入った。
今回は火村助教授とアリスがマレーシアの高原リゾートで事件に巻き込まれ、解決して急いで帰る話。
本当は知らない
 高里椎奈作
 講談社
九月四日
「薬屋探偵妖綺談シリーズ」、このシリーズも図書館で借りて読んでいるため、順番に読んでいるわけではなくしかも間が何冊かとんでいる。
今回は宗教とインターネットがからんだ殺人事件がおこり、いつもの三人とはぐれ刑事とハッカーが協力(?)して解決する。
ドードー鳥の小間使い
 柏葉幸子作
 偕成社
九月四日
「霧のむこうのふしぎな町」の作者である。
ドードー鳥が小間使いになるのかと思いきや、人間がドードー鳥の小間使いになっていた。そのドードー鳥がまた性格が悪くてわがままで出来るだけお近づきになりたくないタイプだが、ドードーだと思えばすべて許せる。
最後に悪人で魔法使いでバンパイアのコレクター(もともとはもちろん敵役)と小間使いの少年とドードーが一緒に飛行機に乗って魔法にかけられた仲間を探しに行くのだが、そこで終わっているのが非常に残念だ。是非続きが読みたいものである。
本当に困っている人のためのゴキブリ取扱説明書
 青木のぼる著
 ダイヤモンド社
九月四日
相手のことが気になって気になって片時も心を離れない、それは恋にちょっと似ているがけして恋ではなく、どちらかといえば憎しみに近い、おかげでとうとうこんな本まで借りてしまった…相手はもちろんゴのつく例のアレである。
あまり期待せずに読んだのだが、意外とまじめで読みやすいゴキの研究書であった。
しかし、ご家庭における撲滅が不可能に近いということもよーーーく分かった。しかしとりあえず今日はホウ酸団子をしかけてみた。
雪は天からの手紙 中谷宇吉郎エッセイ集
 池内了編
 岩波少年文庫
九月五日
中谷宇吉郎は寺田寅彦の弟子で実験物理学者、雪の結晶の研究などが有名である(らしい)。
寺田氏の近辺には勉強好きで家族思いで陽気で愉快な人達が集まったんじゃないかと勘ぐってしまうが、世の中そんなに甘いはずは無いし、また大変な時代であったはずだ。それでもエッセイは明るく陽気で前向きで真面目で専門的なことはよくわからないがおもしろい。
王国 その1アンドロメダ・ハイツ
 よしもとばなな作
 新潮社
九月五日
ものすごく久しぶりによしもとばななの本を読んだような気がする。
この作者の書く主人公はたいてい自分の居場所を探しているが、今回もそう。
読んでいて全然肩のこらない話。
大おばさんの不思議なレシピ
 柏葉幸子作
 偕成社
九月七日
一頁目を読んで「これは昔読んだことがあるはず」と思ったら、やはり大昔の月刊MOEに掲載されていた作品だった。
ぶきっちょな主人公が大おばさんのレシピを使って裁縫や料理をすると、それが必要とされていた異世界へ時々飛ばされてしまうのだが、ちゃんと仲介人(デスクワーク)がいるところがなんともおもしろい。もちろん主人公はその世界で問題を解決して帰ってくる。
人生の知恵12 ハイネの言葉
 井上正蔵訳編
 弥生書房
九月八日
読んだといっても、集中して全頁読んだわけではなくて、どちらかというと拾い読みである。
十九世紀のドイツの詩人ハイネの残した言葉をテーマにそって集めてある。
ハイネというと、「四季の歌」にもあるように愛を語る詩人というイメージが強いのだが、その言葉は実はかなり辛辣である。
エミリー
 嶽本野ばら作
 集英社
九月十一日
苦手だ苦手だと思いつつまた読んでしまった嶽本野ばらの本。今回も、思わずどつきたおしたくなる人物のオンパレードだった。
なのになぜ結構おもしろく読んでしまうのか?洋服のブランドに対するこだわりはある程度理解できるし、なんだかんだいいつつ、主人公達の救い様のない弱さとどうしようもなさに共感する部分もあるんだろうな。
ちなみに、物語自体は前向きである。
虫眼とアニ眼
 養老孟司・宮崎駿対談
 徳間書店
九月十二日
解剖学の教授とスタジオジブリの監督、頑固ジジイ二人の対談集。
細切れに読んでいたため、いまいち内容がつかみきれなかったが、対談なんてそんなものかも。
父・寺田寅彦
 寺田東一他
 太田文平編
 くもん出版
九月十六日
寺田寅彦の五人の子供たちが書いた父親の思い出が集められた本である。
妻に何度も先立たれ、子供達が小さい頃はよく病気をしたこともあって、この時代の父親としては大変マメで子煩悩な人だったと思う。
長い旅の途上
 星野道夫著
 文藝春秋
九月十八日
写真家星野道夫氏があちこちに書いたエッセイをまとめた遺稿集、世界に美しいものはたくさんあるけれど、この人の残した言葉と写真は文句なく美しい。
あなたの隣の怖い噂
 宇佐和通著
 学習研究社
九月十九日
副題は「都市伝説にはワケがある」で、その名のとおりさまざまな都市伝説の出所を探った本。
結局本当のところは分からない話が多いのだが、本としてはなかなかにおもしろかった。
魔法使い百科
 ティム・ディドブロス著
 金原由紀子訳
 原書房
九月十九日
副題は「マーリン、ガンダルフからハリー・ポッターまで」。
だいたい歴史上の魔法使いと物語上の魔法使いに分かれているが、どちらにしても資料としては中途半端でかたよりすぎ、軽い読み物の部類に入る本。
ネコとの対話
 早坂優子著
 視覚デザイン研究所
九月十九日
なんとなく借りたネコの顔のアップが多い写真集、血統書のついているようなネコはほとんどいなくて、そこいらの道端にいるタイプばかりである。
ネコの鼻はピンクなんだなあ…としみじみ気がついた。かわいい、というよりは、いい面構えで、私が猫派だったならもっと楽しめただろう。
マーヴェラスマインド・光輝く闇
 C・マタス P・ノーデルマン作
 金原瑞人・代田亜香子訳
 あかね書房
九月十九日
「マインド・スパイラル3」シリーズ三作目である。はじめて読んだときあんなに違和感を覚えた文体にもすっかり慣れてしまったようだ。
話はあいかわらず最初から続いていて、今度は結婚式をあげるためにコリン王子の国についてからの物語であるが、当然のようにまた式を挙げそこなっている。
しかもまた当然のようにレノーラ姫のせいであるが、この姫は自分の引き起こしたことをきっちり自分で収めるたくましい人である。ツメは甘いしまわりにとっては大迷惑だけど。
パロサイ・ホテル 上・下
 島田荘司作
 南雲堂
九月二十一日
御手洗のパロディ・サイトシリーズの二作目、今回も分厚かった。
今回は石岡くんと里美ちゃんが、閉館してあるホテルの各部屋の引き出しに残された御手洗のパロディ小説を鍵にしてホテルの地下の金庫の謎を解いて行くのだが、パロディ小説の中にでも御手洗がいて、石岡くんに話しかけて、時々はやさしいのがうれしかったりする。
虚しい…。謎はちゃんと石岡くんが解く!
爆笑問題の日本史原論
 爆笑問題著
 メディアワークス
九月二十二日
爆笑問題というのは、今売れている漫才コンビの名前である。
漫才で読む日本史入門編、馬鹿にすることなかれ、意外と詳しく読みやすい。
爆笑問題の日本史原論 偉人編
 爆笑問題著
 メディアワークス
九月二十三日
同じく偉人編なのだが、二冊目になるとそろそろ飽きた。
あと、下ネタはやめたまえ。
読み忘れ三国志
 荒俣宏著
 小学館
九月二十五日
世の中には二種類の人間がいる、それは三国志を読んだ者と読んでいない者だ…というわけでもないが、三国志こぼれ話である。
かくいう私もずいぶん前にざっと通しただけなので、かなりの部分を忘れているのだが、友人から借りて聴いた三国志のドラマCDのシリーズがあって、これはそれなりにおもしろかった。孔明の声が塩沢さんだった…。
不肖の息子 歴史に名を馳せた父たちの困惑
 森下賢一著
 白水社
九月二十七日
だいたい19世紀から20世紀の各界著名人の困った息子達について書かれている本なのだが、何よりその誤植の多さに驚いた。しかも御丁寧なことに、誤植(年号を百年単位で間違えているものが最も多い)の横に控えめにも鉛筆で訂正が書かれているのだ。誰が書いたのか?大変マメである。
私はもとは編集者なので、誤植にはちょっと厳しいのだが、最初の原稿の時点で間違っていたものを内校者が気がつかず、ゲラの時作者がまともにチェックせず、印刷に回す前にさらに編集者が見つけられなかったものと思われる。全もってぼけなすぞろいであるが、内容は興味深くおもしろい。
さらば、ガク
 野田知佑著
 文藝春秋
九月二十八日
本屋で偶然見つけて中を見て五秒で購入を決めた。幸いにも文庫版であった。
私の大好きなカヌー犬ガクの写真集、ガクはカヌーに乗る犬で、そこいらへんのへなちょこな人間よりもはるかに賢そうである。
これで、野田さんや椎名誠さんの著作にガクに関しての記述がないか眼を皿の様にして探さなくても、少しは気がすむかもしれない。
ダレン・シャン6 バンパイアの運命
 ダレン・シャン作
 橋本恵訳
 小学館
九月二十八日
十月四日発売予定だったのだが、全国的に超フライング発売されているようである、早く読めてラッキー。
五巻からの続きで一番気になっていたのは、やはりカーダの行く末であったが、ほぼ想像どうりであった。
しかし、ダレン、またポンですか…。
吸血鬼伝説
 ジャン・マリニー著
 池上俊一監修
 創元社
十月二日
ずいぶん前に購入してさくっと読んだ後実家に置いてあった本を持ってきて読み返した。もちろんダレン本のネタさがしのためなのだが、普通の吸血鬼とダレンシリーズのバンパイアとはいろいろ違いすぎて参考にならなかった。
それよりも、生まれつき身体に特徴のあるもの、例えば暗い目をしているとか、反対に明るすぎる青い眼をしているものが死後吸血鬼になりやすいというくだりが、別のジャンルの参考になるなーーーと思ったりする。
お嬢さま練習帖
 ノエル・クリアリー ディニ・フォン・ミューフリング著
 鈴木リサ訳
 竹書房
十月三日
もう少しシャレのきいた本かと思ったら、案外お堅い内容だった。「お嬢様になるにはどうすればいいか」小うるさいおば様に説教をたれられているような気になるのは、やはり自分がお嬢様とはほど遠い人生を送ってきたからだろうか。ああ、お嬢様じゃなくて悪かったね!
この本のお嬢様の定義はあくまでアメリカ版なのだが、ヨーロッパや日本ではまた事情がかわってくるだろう。
なんだかんだいいつつ、「お嬢様」には興味がないことも、ない。
人生張ってます 無頼な女たちと語る
 中村うさぎ著
 小学館
十月三日
中村うさぎ対談集、中村うさぎ本人も相当だと思うが、対談相手が一筋縄ではいかない女性作家ばかりである(オカマ含む)。
この人達の人生と比べれば、ちょっとやそっとの苦労など、屁のつっぱりでもないような気がして心が洗われるようである。
愛と残酷のギリシア神話
 桐生操作
 大和書房
十月三日
エレクトラとオイディプスがほぼギリシア神話そのままで、ナルシス、ピグマリオン、アフロディテは舞台を近代に移した物語になっている。
装丁に使ってあるのが恋月姫さんの人形で美しい。
縁日お散歩図鑑
 オオカワヨウコ著
 廣済堂
十月四日
イラスト、エッセイ、漫画で書かれた東京のお祭りの縁日の案内本。
毒のない見やすい絵で、読みやすい。
心理療法個人授業
 先生河合隼雄
 生徒南伸坊
 新潮社
十月四日
臨床心理学とは何か?という本。小難しい言葉ではちっとも書いてないのだけれど、やはり小難しく、結局のところはよくわからない。そのわからないということがわかることが大切だとかなんとかかんとかその他いろいろ。
余談だが、後ろに同じ出版社から出ている本のリストが載っているのだが、三十冊中ニ冊読んだことがあった。本の選び方はいきあたりばったりなので、この確立ははたして高いのか低いのか。
お化けと森の宗教学 となりのトトロといっしょに学ぼう
 正木晃著
 春秋社
十月六日
「となりのトトロ」を切り口にした日本の宗教観についての本、宗教と言うとどうしても堅苦しさがついてまわるが、この本は読みやすく分かりやすい。
朗読者
 ベルハルト・シュリンク作
 松永美穂訳
 新潮社
十月七日
分かりやすい話ではあるのだけれど、一度読んだだけではいろいろと分からない話。
主人公の年上の恋人であったハンナは収監後、自分をゆっくりと壊しながらも、長い間学ばなかった文字を覚え、本を読み、手紙すら書けるようになる。そしてかつての恋人が迎えにくる直前自殺するのだが、このハンナの気持ちが分かるようで分からない。
ともに彷徨いてあり カヌー犬・ガクの生涯
 野田知佑著
 文藝春秋
十月十日
人の気持ちなんて分からないものだが、犬好きな人の気持ちは犬好きにしか分からないだろう。
カヌーイストの野田さんが書いた最初で最後のガクの思い出を中心にした本。
ガクは前足の先端がたびをはいたように白く、立派ないいしっぽをした犬であり、カメラが分かってきちんとポーズをとっていた。どうりでかっこいい写真が多いわけである。
花火屋の大将
 丸谷才一著
 文藝春秋
十月十日
丸谷氏の本は、まじめに書かれたものは昔から読みきれない場合が多かったのだが、こういうエッセイはあっさり読めると判明した。
旧仮名遣いで書かれた雑学エッセイ、どうしてこんなことに興味を持ちこういう切り口で説明しはじめるのか、それにしても博学。
ケティー物語
 クーリッジ作
 三木澄子訳
 偕成社
十月十一日
十九世紀のアメリカで書かれた少女小説を子供向けに訳した本である。
実は、今読んでいる別口の本に紹介されていたので読んでみたのだが、かなり省略されているようだ。
君の夢 僕の思考
 森博嗣著
 PHP出版
十月十二日
作者の著書のさまざまな台詞を印象的な写真と組み合わせた本、写真集でもないし詩集でもないし、なんといったらいいのかな。
ああ、この場面と納得できるものもあるし、全く読んでいない本もたくさんあると判明、犀川先生シリーズ以外はあまり読んでないもんね。
最後の方に、作者の飼っている犬(シェルティー)の写真が載っているのだが、この子がまたかわいいんだ!
パンツが見える 羞恥心の現代史
 井上章一著
 朝日新聞社
十月十三日
導入がいい、「1932年の白木屋火災において、パンツをはいていなかったがために避難できず、焼け死んだ女店員が数名いた」という有名な白木屋パンツ伝説に対する反論からはじまる。
後は、日本においてはパンツが何時頃からどういうルートで普及し、パンチラに対する男性の興味と女性の羞恥がどのように現れたかをまじめに考察している。著者は本業は建築史家なんだそうだ。
地下室からのふしぎな旅
 柏葉幸子作
 講談社
十月十四日
この作者の本は、一つの大きな冒険が終わって登場人物が出揃い、さあ、これから!というときに終わってしまうことが多いような気がする。
それもひとつの手ではあるのだが、ちょっともったいない。
一番続編が出てほしいのは、この前読んだドードー鳥の出てくる話なのだが。
本を読む少女たち
 シャーリー・フォスター ジュディ・シモンズ著
 川端有子訳
 柏書房
十月十五日
副題は「ジョー・アン・メアリーの世界」、タイトルにひかれて読み始めたけれど、かなり時間がかかってしまった。
十九世紀終わりから二十世紀はじめにかけての、英米で書かれた少女小説のまじめでお堅い研究書、宗教観がどうとかジェンダー観がどうとか、一応全部読んではみたものの、実は私はそんなことはどうでもよかったりするので、あまり実にならない読書であった。
ただ、少女小説の時代によっての移り変わりと、書かれた背景についてはちょっと参考になったと思う。
ドラゴンランス1-4
 マーガレット・ワイス トレイシー・ヒックマン著
 安田均訳
 アスキー
十月十八から二十一日にかけて
一巻は「廃都の黒竜」ニ巻は「城砦の赤竜」三巻は「氷壁の白竜」四巻は「尖塔の青竜」という副題である。
RPGの祖といわれているゲームの小説版、一巻から四巻まで図書館にそろっていたので借りてみたのだが、読み始めたら一気だった。ものすごく長い物語らしいが、とりあえずは六巻で終わる。
こういうファンタジー小説を読んでいても一文の得にもならず、時間の無駄遣いだといつも思うのだけれど、やめられないんだよな…。
ハリー・ポッターと炎のゴブレット
 JKローリング作
 松岡佑子訳
 静山社
十月二十四日
発売日から実質二日かけて読んだはりぽたの第四巻、最新作である。
一番印象に残ったのは、終盤のスネイプ先生とシリウスのご対面である。双方、ものすごくいやそうなのに、しぶしぶと一瞬だけ握手するところが、大変大人気無くてかわいらしい。
この巻ではスネイプ先生は、出番は少なめだったけれど、結構おいしい役どころだった、これからの活躍に期待したいし、シリウスと大喧嘩とかしてくれないかな。
おもしろくても理科
 清水義範著・西原理恵子絵
 講談社
十月二十五日
清水センセイが、読者に分かりやすく理科の楽しさを説明しているのだが、サイバラさんのイラストとつっこみが全てを破壊している、大変ためになるまじめな本。
もっとおもしろくても理科
 同
十月二十六日
続き、前の本より段々難しくなっているような気がする。
鳥頭対談
 群ようこ・西原理恵子
 朝日文庫
十月二十六日
作家、漫画家として成功をおさめた二人のかなりトホホな対談集。
自分で稼いだお金なのに、親と税金はついてまわるというのが頭痛の種らしい。
神々の憂鬱
 茅田砂胡作
 中央公論新社
十月二十七日
「暁の天使たち」シリーズの二巻目、一巻はまだ読んでいない。後で後悔すると分かっているのに、図書館にこの本だけ入っているのを見て、借りずにはいられなかった…そして速攻で読んでしまった。
デルフィニア戦記とスカーレットウィザードを完読していることが、このシリーズに進む最低の条件である。この二つのシリーズが物語の前提になっているので、読んでいないと全くわけが分からないと思う。
ぶっかけめしの午後
 椎名誠著
 文藝春秋
十月二十八日
この人は仕事で日本全国、世界中を飛びまわっているらしい。それでエッセイも、旅と食べ物とお酒の話がほとんどのような気がする。
でも、新刊が出ているとなんとなく読んじゃうんだよね。
スカートの下の劇場
 上野千鶴子著
 河出書房新社
十月二十八日
「ひとはどうしてパンティにこだわるのか」というのが副題、パンツではなくパンティである。
説明するよりも読んだほうがてっとりばやい本、パンツというとあくまで実用本意のようだが、パンティというと、男も女も夢を見るんだよね…その夢は全く別のものだけど。
死をめぐる50章
 朝日選書
 朝日新聞社
十月三十日
各界ものかきの死についてのまじめなエッセイ。
だいたい身近な人の死に直面して自分は死をどう考えるかという内容だけれど、ひとそれぞれ。
ドリームバスター
 宮部みゆき作
 徳間書店
十月三十一日
この作者には珍しいジョブナイル、さすがにおもしろいけれど、SF設定の謎が始まったところで本一冊終わってしまうのが残念。
暁の天使たち
 茅田砂胡作
 中央公論新社
十一月三日
運良く見つけたシリーズ一作目、やっぱりこっちから読めばよかった…。
完璧ファンタジーに見えるデルフィニアと完璧SFに見えるスカーレットとを繋ぐとこうなるわけか?とにかく、双方で出たいわくつきの死人が実体となって次々甦りそうなのがなんとも言えない。
怪談徒然草
 加門七海著
 メディアファクトリー
十一月四日
著者の体験した怖い話についての対談集、一番怖いのはそれを録音したはずのMDに何もはいっておらず、さらにはその内容を関係者誰も覚えていなかったことだろう、そりゃ怖いわ。
冗談はさておき、私はこういう霊的、あるいは呪術的な怖さというものにはとんと縁がない、だから実際どのくらい怖いのか分からないが、分からないままでいいです。
原罪の庭
 篠田真由美作
 講談社
十一月六日
建築探偵桜井京介シリーズの前から五冊目、読みたいと思っていた話をようやく読むことが出来た。
最近はすっかり成長していい青年になった蒼の少年時代の物語、とんでもなく凄惨だが、きっちり救いがあるのがかえって珍しいかも。
ささらさや
 加納朋子作
 幻冬舎
十一月九日
この作者の本はいつもやさしくて少し悲しい。
赤ん坊と奥さんを残して死んだ夫が幽霊となって二人を見守るのだが、自分の助けなどなくても奥さんはたくましく人生を切り開いていくことに気がついて成仏する話。
異界談義
 国立歴史博物館編
 角川書店
十一月九日
同博物館で行われた企画展示「異界万華鏡」にかかわった研究者や作家の対談や研究発表の本。
どちらかというと、妖怪研究よりは民俗学よりだが、仕方がないかも。
生まれたときから妖怪だった
 水木しげる著
 講談社
十一月十二日
水木氏の自伝的エッセイ、「生まれたときから妖怪」と言われても、理屈ではなくなんか納得しちゃうな。
風穴をあける
 谷川俊太郎著
 草思社
十一月二十一日
途中で出かけていたせいもあるけれど読むのにえらく時間のかかった詩人谷川俊太郎氏のエッセイ集。
銀河電気譜
 長野まゆみ作
 河出書房
十一月二十四日
一年に一度冬に読む本、この作者の本の中では「魚たちの離宮」の次か同じ位好きな物語である。
人物関係がえらく複雑で、何度読んでも把握しきれないが、そんなことは問題無く文句無く美しい。
サイバラ茸
 西原理恵子
 講談社
十一月二十四日
この前図書館で借り損ねて無念だった本が今日はあった。
原稿も何もかもほったらかして読んでしまった…恨ミシュラン中心の恐ろしい本、おもしろいぞ。
螺旋階段のアリス
 加納朋子作
 文藝春秋
十一月二十六日
大企業を退職したサラリーマンのおじさんが、かねてより念願の探偵事務所を開く、そこに「不思議の国のアリス」から抜け出てきたような美少女がやってきて、いっしょに謎解き、というどちらかというとほのぼのした物語。
ドラゴンランス5 聖域の銀竜
 M・ワイス・T・ヒックマン作
 安田均訳
 アスキー
十一月二十七日
この前四巻まで一気に読んだシリーズものの続編、まだ終わらない。
鬱金の暁闇1
 前田珠子作
 集英社
十一月二十八日
タイトルは「うこんのぎょうあん」と読む、「破妖の剣」シリーズの六巻目。
久しぶりに読んだので、登場人物等忘れているかと思ったが、そうでもなかった。
呼ぶ声が聞こえる
 前田珠子作
 集英社
十一月二十九日
「破妖の剣外伝」シリーズの六巻目、なんだかんだで合計十二冊出ていてまだ続いているわけだな。
ベーオウルフ 妖怪と竜と英雄の物語
 ローズマリ・サトクリフ作
 井辻朱美訳
 原書房
十二月一日
サトクリフによる古典の再話シリーズ「サトクリフ・オリジナル」の七巻目。
ベーオウルフは英国最古の叙事詩といわれる英雄物語だが、それを現代風に書きなおしてある。
それはそれとして、訳者の井辻さんのこれまで訳した本の中に、前に読んでけっこうおもしろかった本が何冊かあることを発見、訳者にも相性があるとしみじみ思った。
コーギビルのいちばん楽しい日
 ターシャ・テューダー作
 食野雅子訳
 メディアファクトリー
十二月二日
1920年代の農村のクリスマス風景を、コーギー犬や猫や妖精の住む村、コーギビルにたくして描いてある素朴だけれど美しい絵本。
ウエルシュコーギー・ペングローブ(しっぽの短い方)だらけなので、お好きな人にはたまらないかも。
後姿のかわいいことといったらもう、犯罪である。
魔神の遊戯
 島田荘司作
 文藝春秋
十二月四日
御手洗シリーズで、しかも探偵役が御手洗さんである。
御手洗さんであるだけに推理はなかなかにスマートなのだが、石岡くんが探偵役の時のように、読者も一緒になって頭がぐるぐるする楽しいような困ったような感じは味わえない。しかし、さすがというかなんというか…おもしろかった。
クリスマスの歌
 望月通陽作
 偕成社
十二月十四日
「型染め」という染色技法を使って描かれたイラストが素敵ないろいろな国のクリスマス・ソングの絵本。
賛美歌のような歌ばかりでなく、マザーグースのような歌もあってなかなかおもしろい。
サブリエル 冥界の扉
 ガース・ニクス作
 原田勝訳
 主婦の友社
十二月十九日
新聞の書評で見て、読みたいと思っていた本、重くて分厚かった。
内容はダークファンタジー、父親のあとを継いでネクロマンサーになった少女が、代々の敵と戦い滅ぼす物語なのだが、けっこう犠牲は大きかったかも…それともやっぱり少なかった方かも。「古王国記」というシリーズものの一作目なので、続きが待たれる。
落日の剣 真実のアーサー王の物語 上
 ローズマリ・サトクリフ作
 山本史郎・山本泰子訳
 原書房
十二月二十三日
サトクリフでアーサー王といわれればそりゃ読まなきゃいけないでしょう…と読み始めたのはいいが、やたら時間がかかった。しかもまだ上巻だし。
巷で語られる、というか普通のアーサー王伝説とは全くタイプが違っていて、アーサー、ランスロット、トリスタンといったおなじみの名前も出てこないし(しかしケイはケイのままなのが笑える)エクスガリバーのかの有名な話なんかもない。最初、誰がアーサーなのかと思ったよ…。
しかし、実の姉に呪いをかけられ、実の息子に将来殺されそうなところは同じである。
落日の剣 下
 同上
十二月二十八日
なんとか今年中に読み終えることが出来た。
アーサー王伝説の元になった出来事はこうであったのかもしれないなあ…と考えられて、書かれた物語。
しかし最近、サトクリフの訳本がやたらたくさん出ているな。
備えあれば…の老犬生活
 吉田悦子著
 ネコ・パブリッシング
十二月二十八日
犬を飼っていない、当分飼う予定も無い今この本読んで何になるんだろう…と思いながらも読んでしまった。
さくっと読める厚さ、装丁の本なのに、やたら時間がかかったのは、やはり実家で飼っていた犬を思い出すからである。


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