医院・病院の会計と経営


医療関係のコーナーです。
会計や経営を中心に雑多な内容になっています。


県内3施設で透析時間短縮/H14.10.9

福島民報によりますと、診療報酬改定で透析報酬が一本化され、採算が取れないため、 福島県内の透析医療機関で透析の時間を短縮する動きが始まったそうです。
県腎臓病患者連絡協議会が実施した緊急調査で判明しました。
県内62透析医療機関を対象にアンケートを実施し、53施設から回答を得ました。県内の三施設が長時間透析の 時間を短縮し、一施設が時間延長をとりやめました。さらに複数施設で短縮を検討している回答がありました。
県腎協によると、県内で透析を受けている人は三千人を越える模様。うち70%の患者は透析時間が4時間で収まっている 一方で、5,6時間という長時間透析をしている患者は20%はいる模様。
日本透析医学会のデータでも透析に時間を掛けた 方が効果が出るとされています。
これまで長時間透析を奨励して来た、いわき地方の医師は、「5時間以上の透析の方が、 たまった毒素が十分とれる。ただ、経営のことを考えると長時間透析をしてあげたくても出来ない状況になっている」 と病院経営者としての悩みを話している。
一方、会津地方の医師は、「4時間で終わらせようという考えは無い。 早く終わらせると患者さんにかなりの肉体的な負担をかけてしまう。従来どおりやる以外にない」と減収覚悟で対応する 考えです。
従来、医療機関にとって、透析は重要な収益源とされて来ました。
診療報酬が手当てされていた為、 透析医も増えて来ましたし、医療施設も整備されて来ました。
厚生労働省としては、透析環境がかなり整備されて来たので、 この辺で、引き締めを図ったという事だろうと思われます。
透析施設はスケールメリットが期待されますので、規模が大きい 透析施設ほど今後の対応が有利になると思われます。
一方で、小規模の施設で透析を行っているクリニックなどでは、透析を 止めざるを得ないクリニックも出てくるかも知れません。
個人的には、病院と診療所で透析報酬に差を付けても良いのでは ないかと思っています。
患者にとって透析はやはり近い所で受けたいはずで、その為にも小規模の透析施設は残って頂きたいからです。

10月から保険の改正/H14.10.5

健康保険法等の改正により、10月1日から次の様な事項が変更されています。
高齢者の患者自己負担の上限額引き上げ、外来での高齢者の定額負担制度の廃止、 老人慢性疾患外来総合診療料(外総診)の廃止、入院患者に対する褥瘡対策未実施減 算と医療安全管理体制未整備減算が新たに導入、1群入院基本料1・2や急性期 入院加算などにおける平均在院日数の要件が短縮。
これら変更点を概略しますと。
 高齢者の自己負担については、診療所のみに認められていた定額制(1回850円、 月4回まで)が廃止され、定率負担のみとなりました。また、一部の高額所得者はこの10月 から、2割負担となります。
 外来の場合で見ますと、上限額については、診療所と病院の別による相違がなくなりました (これまでは、診療所と200床未満の病院は3200円、200床以上の病院は5300円)。
また、これまでは医療機関ごとだった上限額の設定が、今後は個人ごとに定められ、 外来医療費の総額が対象となります。
具体的には、1カ月当たり、 一定以上所得者は4万200円、一般は1万2000円、低所得者は8000円をそれぞれ自己負担します。
なお、上限額を超えた自己負担分については、患者自身が保険者である自治体に手続きしないと、返還されません。 (但し、入院の場合は従来同様に、医療機関ごとに窓口負担額の上限が決められています)。
3歳未満の乳幼児の窓口負担は2割へ軽減されます。この軽減策は、少子化対策の観点から、 現在の3割から2割へ引き下げられるものです。
また、老人保険の対象年齢が段階的(5年間かけて70歳から75歳へ)に引き上げられます。 従来は、70歳から老人保険(保険証と医療受給者証)で診療を受けることになっていましたが、 昭和7年10月1日以降 に生まれた人は、75歳になるまでは国保(保険証と高齢受給者証)で診療を受けます。 (但し65歳以上で一定の障害があり、認定を受けた人は老人保険の対象です)
 褥瘡対策未実施減算と医療安全管理体制未整備減算については、褥瘡対策や医療安 全管理体制の整備を行わなければ、診療報酬が減額。1カ月間の実 績期間が必要なため、10月1日から減額されないためには、9月1日から実施してい なければなりません。
 平均在院日数の短縮に関しては、1群入院基本料1の場合は現行の25日以内から21 日以内へ、1群入院基本料2の場合は同28日以内から26日以内へ、急性期入院加算と 急性期特定入院加算の場合は同20日以内から17日以内へ、それぞれ変更となりました。ま た、二つの加算については、退院指導計画の作成と実施、診療録管理体制加算の届け 出といった要件が新たに加わりました。
 また、9月28日からは、180日超の入院患者に対する特定療養費制度の導入が始 まっています。2002年4月1日以降に入院した患者では、特定療養費の給付率が入院基 本料相当額の95%となっています(2003年3月末まで)。今後、対象患者の範囲を広 げ、給付率も段階的に下げていくことになっています。2004年4月から完全実施とな り、給付率は85%となります。
 なお、2003年4月から、被用者保険(組合健康保険や政府管掌健康保険など)本人 の自己負担率が現行の2割から3割にアップすることが決まっています。また同時に、投与 された薬剤数に応じて支払う薬剤一部負担金が廃止されるため、この分だけ患者負担 は少なくなります。

行政が医療情報を提供/H14.8.8

 東京都は、患者が医療機関を選択するため情報提供として、 各医療機関で可能な検査・治療、設置している医療機器、日帰り手術 の有無など詳細な医療情報を、平成15年4月からインターネットを通じて提 供できるようにするそうです。
都内にある全医療機関、約2万軒を対象。
 都は「医療機関情報システム」と呼ばれる医療機関情報のデータベースを所有して いますが、住所や診療時間、診療科目など看板広告程度の情報しか提供されていませんでした。
都健康局医療政策部は、これでは患者が主体的に 医療機関を選択するための材料として不十分と判断しました。
そこで、提供する情報を大幅に増やし、 誰もが365日24時間、インターネットを通じて情報を入手できる新しいシ ステムに変更する様です。
新たに提供される情報は、交通手段、予約診療の有無、初診時の外来受け付け曜日と時間、面会時間、病棟 ごとの病床数、看護体制、外国語対応の程度、医療安全対策の実施状況、セカンドオ ピニオンの有無、クリティカルパスの実施状況、婦人科や泌尿器科などでの常勤女性 医師の有無、平均待ち時間、設備している医療機器の種類、可能な検査・治療法、日 帰り手術の有無、在宅医療の実施状況など。
 提供される情報は、すべての情報を見られる「医療機関 向け」と、情報量に制限を設ける「都民向け」に分ける ことを考えているそうです。都民向け情報の内容は現在、東京都医師会などと検討中だそうです。
情報を提供する側の医療機関が望めば、所属する主な医師の経歴、手術実績、症例数なども提供できれば、 より充実するものと思われます。
但し、都立病院では優秀な医師が多いので、 (私の偏見かもしれませんが)それら医師の詳細な情報を 提供してしまうと、他の医療機関からクレームが来てしまいますから、都立病院の情報提供は、ほどほどに。

診療報酬改定により、診療所3.4%減/H14.7.8

 日本医師会の「緊急レセプト調査」に拠りますと、 2002年4月の患者一人1日当たりの点数は、診療所が694点で対前年同月比3.4%減、病院が1307 点で同0.8%減だったようです。
この調査は、全体で2.7%マイナスという4月の診療報酬改定 による影響を調べる目的で実施されました。
今回の速報結果は2001年と2002年の4月診療分デー タについて、会員の診療所3162カ所、病院318カ所のデータを比較したものです。
 レセプト1件当たりの点数でみると、診療所が2993点(対前年同月比3.6%減)、 病院が1万6930点(同1.6%減)で、患者一人1日当たりの点数と同じく診療所の方 が減少率は大きかった様です。
レセプト1件当たりの日数については、診療所が3.7日(同 0.8%増)、病院が10.8日(同0.4%減)だったとの事です。
診療所(入院外)で診療科目別に患者一人1日当たりの点数を比較すると以下の通りです。
内科 649.3点 (1.6%減)
小児科 471.3点 (1.6%減)
精神科 620.0点 (0.1%減)
外科 472.5点 (3.8%減)
整形外科 331.0点 (6.9%減)
産婦人科 494.0点 (2.9%減)
眼科 541.4点 (1.0%減)
耳鼻咽喉科 346.5点 (1.0%減)
皮膚科 387.2点 (2.9%減)
泌尿器科 1337.7点 (6.3%減)
これから見ると、整形外科と泌尿器科の減少が目立っています。
 診療所(入院外)で院外処方と院内処方の別で患者一人1日当たりの点数を比べる と、院内処方が555点(同10.4%減)、院内処方が491点(同3.3%減)となってお り、院内処方への影響が大きかった様です。
 日医は、4〜6月の3カ月分の分析結果を基に対応を決めるとしています。
こ の調査の最終的な結果は8月中旬に発表する予定だそうです。

医療廃棄物処理装置((株)アイバック)/H14.6.30.

日経によりますと、福島市小倉寺の医療機器製造メーカー、(株)アイバックは、 今秋をめどに、医療廃棄物を短時間で加熱・殺菌する処理装置(ディスポパック)を発売する予定だそうです。
一度に54リットルを3分から5分の短時間で処理。価格は六千万円程度の予定。
病院に年間数台程度を販売したいとの事。
ディスポ(カテーテル、注射針、シュリンジなど)を専用の樹脂の袋に入れ、180度に熱した空気を送りこんで 加熱・溶融・殺菌。完全に滅菌した後、圧力シリンダーに投入。20トンの圧力で圧縮する。
処理は自動化されているので、細菌感染の危険性はない。
医療廃棄物は、通常、金属、プラスチック、塩ビ、ガラスなど、多様なものが混在する。
(株)アイパックの装置は、分別する事なく一括して滅菌・圧縮するのが特徴。
圧縮後も廃棄物を樹脂の袋で覆うので、そのまま埋立て処理できる。
排出される廃棄物はコンパクトな板状となり、一般産業廃棄物として処理が可能。
福島県にも(株)アイバックのような会社があって、嬉しいかぎりです。
また、(株)アイバックの親会社、(株)ジェイバック は、痴呆性高齢者グループホームの設立運営を行なっている会社です。

診療報酬改定を答申/H14.3.28

中医協の答申によれば、平成14年度診療報酬改定は、賃金・物価動向、 最近の厳しい経済動向を踏まえ、診療報酬本体では初のマイナス1.3%の改定となりました。
一般に関係する主なものをあげてみますと、 入院医療の評価の主なものとしては、
1)入院基本料については、「一般病棟入院基本料T」の平均在院日数要件を原稿に25日以内から、21日以内に、
「一般病棟入院基本料U」は28日以内から26日以内に、
「急性期入院加算」「急性期特定入院加算」は20日以内から17日以内に見直す。実施時期は、今年10月からです。
2)医療と介護の機能を明確化して、長期療養に適した医療提供を確保するため、療養病棟入院基本料、 有床診療所療養病床入院基本料について、在院日数による逓減の見直し(初期加算、長期減算の廃止)、
包括範囲の拡大(単純エックス線、簡単なリハビリ等について包括範囲拡大)、
入院配置基準の見直し(看護配置5対1を 標準とし、6対1は廃止)を行うと共に日常生活障害の有無、痴呆の有無を基本とした日常生活における介助の必要度に応じた 評価(日常生活障害加算40点/1日、痴呆加算20点/1日)を新設しました。
3)入院の必要性は低いけれど6ヶ月を超えて長期入院している社会的入院患者については、特定療養費制度の対象としました。 平成15年4月から実施されます。
4)差額ベット割合を、現行の許可病床数の原則5割以下から7割に要件緩和する。
外来医療の主なものとしては、
外来の機能分担と医療機関への受診回数等を適正化するため、再診料と外来診療料に月内逓減制による評価を導入した。 再診料は診療所の場合、74点だったのが、今後は、月の1回目の受診が81点、2回目、3回目の受診が74点、4回目以降の 受診が37点と逓減されます。
全体として、かなり考えた(知恵を絞った)改定となっています。

地域医療計画/H13.12.9

85年の医療法改正によって、病院の新設・増設は実質原則禁止される事となっています。
即ち、都道府県が定める「地域医療計画」によって、病院の医療供給体制がコントロール されています。
これは、供給が需要を作る保険医療の特殊性から、供給を抑制する事によって 医療費を削減しようとした為(大雑把に言えばの話しですが)です。
日経新聞によりますと、2000年三月末時点で、都道府県が 定める全国360の医療圏のうち、214の地域、即ち約6割の地域が「病床過剰」 となっているとの事です。
東京の山王病院は、著名な医師を招聘し、ホテル並みのアメニティを提供する病院として 有名ですが、「二ヶ月先まで入院は予約でいっぱい。ベッドを増やせれば良いのだが・・・」 と、入院を断るほどで、患者の需要に答えきれない状態だそうです。
山王病院も病床過剰地域に立地している為、病床を増やせないのです。
山王病院理事長によると、「地域医療計画は、結果的に、競争力のない病院を保護している。 病院間の競争が働きにくく、医療の質向上への努力も阻害する」との事です。
病床過剰地域での病院の事業拡大は買収による事になりますが、「行き詰まった病院 であるにもかかわらず、既得権にしがみついて、病床をのれん代として評価する為に、 過大な買収価格を要求するので、買収も進まない」と、ある病院グループの事務局長は 言うそうです。
平成13年の医療法改正で、2003年8月末までに一般病床と療養病床との区分が義務 づけされていますが、この病床区分と、地域医療計画を有効にリンクさせない限り、 効果的医療供給体制は構築できないと思われます。
一般病床に関しては、供給制限を 撤廃すると共に、診療報酬によって一般病床をコントロールし、 亜急性期病床の整備なども課題とされてくると思われます。

差額徴収の拡大/H13.11.25

日経新聞によりますと、厚生労働省は、保険診療と自由診療の併用を認める 「特定療養費制度」を来年4月から大幅に拡大する方針だそうです。
現在、病床の半分までは差額ベッドに出来ますが、それ以上は厚労省の承認が必要 とせれています。今回の規制緩和では、大学病院などでは7割から8割までが 承認無しで差額ベッドとすることが出来る様です。
セカンドオピニョンに関しても、情報提供する側の医師は、患者に情報提供料を請求する 事が出来、セカンドオピニョンを求められた側の医師も、患者に相談料を請求する 事が出来る様です。通常の職業専門家に対する報酬としては当たり前の事が、ようやく 医療供給体制の中でも認められる様になります。というよりは、医療供給量の問題から、 供給される医療の質の問題に、医療供給体制の重点が移行している事を 宣言したと言えるかも知れません。
また、患者が特定の医師を指名する 指名料を徴収することも認める方針だそうです。 医師はだれでも同質の医療サービスを提供しているので、診療報酬も同じでなければ ならないという前提が崩される様です。 医師の間の医療技術の個人差を、制度的に認めたものと言えるかも知れません。 この指名料の問題は、ある意味、革命的な事と言えます。導入の名目としては、 大病院での混雑を解消する予約料的な意味として、当面は、医師間で指名料に 格差を付けてはいけないとか、上限はいくら、と言う規制があるかも知れません。 しかし、これを突破口に、医療の質によって診療報酬にも違いが生じるという認識が 一般化する可能性があります。しかし、その前提として、医療機関の情報提供制限 を撤廃する、医師個々人の治療方針、治療実績、医師としての経歴など を開示出来る方向に向かう、医師法・医療法上の罰則を受けた場合はその記録を インターネット上で検索できる様にするなど、条件整備が必要だと思われます。 情報開示が出来ないまま、価格差を認めても、適切な需給調整は機能しません。
他には、大病院での診療待ちを解消する為、診療予約料を徴収しやすく要件を緩和するそうです。
また、大病院から自宅近くの診療所を紹介してもらったにも係わらず、再び大病院での 治療を求める患者には、保険外の再診料を上乗せ出来る様にして、選択にはコスト負担を 伴う事を明らかにするそうです。
以上、指名料の問題でも解る様に、ここ数年、厚生労働省は、小技の部分でかなり大きな舵とりを していると見られます。一方、変えられないのは、医師を養成する文部科学省管轄の医学部・医科大学 での臨床教育体制、医局の論文第一主義かも知れません。これは縦割り行政の弊害です。

国立郡山病院の統廃合/H13.11.3

私の住む、郡山市には、小規模な国立病院がありましたが、今般の国立病院の統廃合で、須賀川市の国立病院へ統合される事となりました。
その跡地を巡って、どのように活用すべきかの議論がおこっていました。一つの案としては、郡山市は医療機関の激戦区であり、 ご多分に漏れず病床が過剰気味であるため、医療系ではなく福祉系の施設を誘致すべきとの意見がありました。 もう一方の案としては、従来の医療従事者の雇用を確保する為にも、 市立病院を新設すべきであるとの意見です。ちなみに郡山市には市立病院はいまだありません。
しかしながら、最終的には、郡山市が新病院の建設及び医療機器の整備を行い、郡山医師会がその管理運営にあたるという、「公設民営」 方式で病院を新設させる事となりました。
病床は120床ほどで、急性期ではなく、主に慢性期患者に焦点を当てた療養病床を充実させる方針だそうです。診療科目は現在検討中との事です。 総事業費は40億ほど予算計上されています。ただし、従来の医療スタッフの処遇や、新しい医療スタッフの身分・給与体系がどの様になるのか 公表されていない部分があるので、いまいち全体像が判らないといった面があります。国公立病院の赤字体質の主たる原因が、医療スタッフの 給与体系、人事体制にありますので、医療スタッフの処遇に関しては、将来を決する、重大なポイントとなります。
今回は、郡山医師会の先生がたの決断がなかったら、多分、病院は建たなかったでしょう。しかしその一方で、かなりの危険負担を郡山医師会 の先生方は負うことになります。
どの程度の設備になるのか、公表はされていませんが、120床で40億円というのは、かなり高額なものです。
通常は20億円ぐらいでも建設が可能かと思われます。
倍近い予算が計上されていると言うのは、 電子カルテなどの費用も予算化 されているのかもしれません。
市民の一人としては、国公立病院の様な赤字体質に陥らない様、医師会の先生方には、がんばって頂きたいと思っています。

診療報酬の引下げ/H13.10.28

日経新聞によりますと、政府は来年度からの診療報酬を3%程度、 引き下げる方向で検討に入ったそうです。
11月中旬の政府・与党社会保障改革協議会や中央社会保険医療協議会に 、診療報酬引下げの方針を示し、年末の来年度予算編成までに細部を固める方針。
医療費の国庫負担を2.800億円減らす必要から、健康保険組合の患者負担を2割から3割 に引き上げ、高齢者医療の対象を七十歳から段階的に七十五歳に引き上げるなど、 患者負担増で1.000億円削減できるが、それでも、1.800億円ほど削減が不足する。
デフレ経済、リストラの嵐の中で、これ以上の国民負担増は困難と判断し、その結果、診療報酬を 3%程度減らす方向で、医療機関側にも負担を求める事になったとの事です。
坪井日医会長は、先日、診療報酬の据え置きを表明したばかりですが、引下げはとうてい容認できない ものでしょう。薬価改定分を含んだ診療報酬の引下げは、平成10年4月に実質マイナス1.3%改定となりましたが、 それ以上のマイナス改定となる訳です。
但し、医師や専門施設が不足気味の小児医療や、慢性病患者の生活指導など重要性が高まっている分野への報酬は、 他の分野より増やす方針ではあるそうですが。
始めに2.800億円削減ありき、という姿勢がはたして正しいものかどうか、議論の余地があります。医療を他の公共事業 と同列に論じられると、その本質を見誤る恐れもあります。小児医療への報酬引き上げ以外に、ドクターフィーへの評価や、 療養病床の多様性への評価など、他にも評価を認められるべき分野がありますので、始めに2.800億円削減という方向性自体が問題 の様に思われます。

医療機器の価格差/H13.9.30

今、日経では「医療再生」というシリーズ記事を連載しています。 その中で、医療機器の内外価格差に関する記載に興味を持ちました。
ペースメーカーの価格が、日本では、143万円であるのに対し、米国は78万円、 独国37万円、英国22万円から53万円、だそうです。さすが10倍という訳では ありませんでしたが、正直、これほどの差があるとは思いませんでした。 同じように、バルーンカテーテルは、日本では25万円なのに対し、米国で7万円 との事です。
これらの製品の場合、輸入原価は、公定価格の25%程度にすぎず、 流通マージンが60%を占めるそうです。なぜ、そんなに流通マージンが必要かと 言うと、日本では欧米諸国に比べ、一医療機関当たりの手術件数が少なく、医師の 経験不足を補うため、メーカーの技術者がペースメーカーなどを使う手術や検査に 立会う慣行があります。その人件費も価格に含まれる為だそうです。
在庫委託販売と呼ばれ、医療機関が使った分だけ請求する慣行もあり、在庫リスクは メーカーが負います。こういうリスクコストも製品価格にオンされているそうです。
そこで、これらの日本的商慣行を打ち破る試みも行われ始めたそうです。
群馬県高崎市にある循環器内科が専門の、「高瀬クリニック」では、これら技術者の 派遣を断ったり、買取へ切り替えたり、使用品目を絞り込んだりして、カテーテル などの納入価格を通常公定価格の10%-15%引きから、 30%引きへと下げる事が出来たそうです。
専門クリニックだからこそ出来た事でしょうが、卸を抜きにメーカーとの直接取引きという 通常では考えられないルートを創り出したとの事です。 卸の再編が加速中ですが、ドクターにとって何でも頼める従来のSRよりも、 サービスは悪いがより安い価格を提示してくれるSRを選択する、という時代に来ている様です。 SRやMRに対する、ドクター・医療機関側の認識も変わらざるを得ない様です。

市場なき構造改革/H13.8.27

私達が経済学を教わった時には、医療は「市場の失敗」の例として教わって来ました。
市場がなぜ社会的に認知されているかと言えば、市場は価格を決定する機能を持ち、また、情報の伝達機能を持ち、また結果として 効率を達成させる機能を持つからに他なりません。
しかし、医療を市場原理に任せると弱肉強食が正当化され、社会的公平が確保されない事に なるからです。
しかしながら、日本の医療制度は、市場が機能するものとして、制度が設計されてきました。
特に、民間病院が医療の中核を担うものとして制度化されて来た為に、病院間の病床増設ラッシュが市場競争と考えられる様になって しまったのです。
量的拡大競争が、本当に市場競争でしょうか(価格は統制されているのです。情報が制限されているのです)。
戦後、国民皆保険を支えるために、制度的に、民間病院を頼らざるを得ず、市場の失敗に目を瞑って来た為でもあります。
保険診療では、価格(P)が決まっているので、収益を確保するには、量(Q)を拡大すれは良いわけです。
市場の価格決定機能は働かず、量(Q)の拡大競争(病床増設)が始まる訳です。
それはあたかも、冷戦下の軍拡競争の様でもあります。
日本の医療制度では、水平的アクセスだけを尊重するあまり、広告規制が過剰に行われて来ました。
広告規制のみならす、プロフェッショナルフリーダムという名のもとに、医療の質に関する情報提供を過剰に抑制して来ました。
どの医師も、同質の医療サービスを提供しているという仮定、 医療は同質に供給されているという仮定を前提に制度設計している為、市場から情報伝達機能を奪う事になっているのです。
即ち、制度的に患者(消費者)から選択基準 (選択肢)を奪う事によって「患者アクセサビリティ」即ち「フリーアクセス」を確保させようとするのが、日本の医療制度だと言えます。
患者(消費者)から情報を奪う事によって、いきあたりばったりのアクセスを確保する事が、フリーアクセスだと定義したのが 日本の医療制度だとさえ言う人もいます。
水平的アクセスだけをフリーアクセスと定義する為に、垂直的アクセスは全く保証されていません。
この現状で、プライマリーケアを 制度的に確立しようとしても、無理があります。
価格が統制されれば、量的拡大を図るのは自然な流れです。
出来高払い制が病床拡大主義を支え、情報制限により消費者の 選択肢を奪う事によって、患者(消費者)の大病院志向に拍車を掛ける事になるのです。
医療が「市場の失敗」に該当する点に立ち戻り、価格決定機能を欠落する点には量的規制を、情報伝達機能の欠落には医療情報開示の義務化 を、効率化機能の欠落にはインセンティブの管理を、再構築する必要があります。
将来、200床未満の民間病院は更にダウンサイジングされて来ると思われます。
大病院は、特別医療法人化した様なもののみしか認めらなく なると思われます。
その基準が500床か、400床か、300床かは、解りませんが。
病診連携、病病連携は、始まったばかりですが、将来は、ますます機能分化されて来るのは必至です。

「個人勘定」のゆくえ/H13.7.19

聖域なき構造改革の一環として、個人がいくら医療保険料を負担し、いくら医療給付を受けたかを集計する個人勘定が設けられる 可能性があります。
経済財政諮問会議が作成した「構造改革に関する基本方針」に記載されている事ですが、「社会保障個人勘定」というもので、 社会保障番号制導入により、国民各位が固有の番号を持つことにより、医療、年金、介護、雇用などの保険料をいくら負担し、 それに対応する給付をいくら受けているかを明らかに出来るというものです。
これにより、過度に負担しているのに給付が少ない、その逆、などという個人間の負担と給付の極端な不均衡を明らかにする と共に、社会保障負担に関する国民の合意と納得を醸成しようとする意図があるそうです。
仮にこれが制度化されれば、カルテ、レセプト、医療保険料もすべて、社会保障番号で統一できるわけで、病院、社会保険事務所、 監督機関をネットワークで結べば、電子カルテ化を前提にすると、かなり革新的な事が出来てしまう可能性があります。
従来、この分野は、「依らしむべし、知らしむべからず」として厚生労働省の高官がコントロールしてきた事で、 国民には一部の例(高額医療費など)しか情報が明らかにされなかった事です。
国民皆保険を前提としての議論であるならば、それは、有益な方向かも知れません。
しかし社会保障番号制とプライバシー保護は、かなり難しい問題を含んでいると思いますので、すんなりと成立するとは 思えません。
個人的には、社会保障番号より前に、納税者番号を制度化すべきではないかと思いますが・・・。
いずれにしても、目が離せない問題ではあります。

病診連携はどこまでいったか/H13.7.7

私が住んでいる郡山市を見ると、診療所の中では、提携先の病院を診療所の壁に張り紙をして明示している所もあります。 しかし、病院側では、どこの診療所から患者を受け入れるのか、明かにしていない(院内に掲示が無い)病院がほとんどと言えます。
病診連携は、もともと、病院に集まり過ぎる患者を、プライマリーケアー医としての診療所へ向かわせる方式として導入が進められた はずです。
現在、病院に足が向いている患者が、「どこの診療所へ行けば、もしもの場合この病院の世話になる事が出来るのか」 明かにしておかなければ(院内に掲示されていなければ)とても、病院から診療所へという流れを作る事は出来ないと思います。
もちろん、病院側も外来重視の立場から、わざわざ選んで来てくれる患者を他の診療所へ紹介する様な事はしたくないかも知れません。 その為に、患者負担分をわざわざ病院側の値引きとして費用負担している所もあるようです。しかし、それら診療報酬の問題はそれとして、 病診連携の立場からは、病院は受入先の診療所名を院内に明示する必要があると思います。 さらに、診療科別に受入先の診療所を掲示するのが本来だと思います。
医療は同質であるという建前を前提にしていると、広告規制が緩和されない反面、患者側は医療機器が揃っている重装備の病院を志向する 様になります。しかし病院では、必ずしもプライマリーケーアー医の役割を担えないというジレンマがあります。
病診連携を本当に制度化させるには、診療所の広報活動を積極的に認め、広告規制を緩和させないと、患者は診療所を選ぶ選択肢が無い 事になりなります。
実際、なぜ診療所では無く病院を選んでいるかと言えば、選択肢が明示されないから、重装備の方が安心できる為に 他なりません。その前提で診療所を選択しなさいと言われても、選ぶべき基準が明示されないので、(近いとか、診療科目程度しか判らない )選び様もない訳です。
医療の同質性の建前とプライマリーケアー医とは、必ずしも両立するものではないかも知れません。 選択肢を明示しない場合のフリーアクセスは、選択権が無いと言う事、「たまたま出会った医師しか主治医に出来ません」と言う事です。
現状では、病診連携はなかかな進まないと思いますが、少なくとも、 病院側は受入先の診療所名を院内に明示させる必要があると思います。