経理の窓・税務の壷


経理や税金についての、ちょっとしたお話を掲載したいと思います。

知らなかったでは済まない事もあります。 また、誤解されている事もある様です。

公開の場ですので、個別的、具体的問題に直接、言及する事は 出来ませんが、公正な視点から、考えたいと思います。


会社分割・株式交換/H21.1.25

会社法(商法)の改正により、企業組織再編が法制度化され、事業の分割(会社分割)、持株会社化が大変、利用し易くなりました。
たとえば、建設業と不動産業をともに事業化している橋本工務店という株式会社があるとします。
不動産業は安定して収益を見込めますが、建設業は景気や公共事業に大きく左右されるので、 建設業を子会社化して管理したいという判断があるものとします。
方法としては、A方法(主に不動産を分離する方法)、B方法(許認可事業を分離する方法)と2つのアプローチが考えられます。
A方法としては、まず、橋本工務店の株主構成と同じ株主構成とする新会社を設立します。
その後、分割型吸収分割により、 不動産事業を新会社に分割します。(分割型新設分割でも結構です)
尚、分割型は会社法上では明示されていないので、少し、工夫が必要です。
新会社は、橋本管財などの商号とします。
会社分割後、橋本管財の株と株式交換により分割法人(橋本工務店)を承継法人(橋本管財)の子会社とします。
これにより、橋本工務店は従来通り建設業を継続し、かつ橋本管財の子会社として存続する事になります。
次に、B方法としては、橋本工務店の建設業事業を分社型新設分割します。
建設事業を100%子会社化して、親会社の外に出してしまいます。
この場合、建設業許可申請は、新規に取得する事になりますが、経営事項審査等の項目は、過去の実績が引き継げます。
行政庁と分割計画段階から相談を継続する事により、遅滞なく許可申請、入札参加資格が得られるようにします。
新会社の設立後、新設会社の商号を橋本工務店に変更するとともに、分割法人の商号も橋本管財などへ変更します。
上場会社などでは、B方式によって事業を分割した例が多いようです。 会社法によって明確に規定されているので、法制度的に安定性があるからだと思われます。
尚、A方式で不動産等の資産を会社分割によって移転した場合、登録免許税は租税特別措置法により2%から0.8%へ 軽減されています。
不動産取得税は会社分割により免税となります。(B方式でも同じですが)
一社で複数の事業部門がある場合や、不動産を所有している会社などは、会社分割、株式交換、株式移転などによって、 事業毎に資産を整理して、管理体制を構築する事が出来易くなりました。

マネジメントの卵

 

 

スタートアップ期

急成長期

成熟期

安定期

売上高

0〜5億円

3〜10億円

10〜75億円

75億円以上

従業員数

1〜10人

10〜75人

75〜100人

100人以上

マネジメント

自ら行動する

直接的管理

管理職の管理

経理

会計事務所依存(自前要員1名でも可)

自前経理スタッフ(責任者1名とスタッフ1,2名)

責任者1名と若手経理担当社員数名

経理課長が実務の中心

出典「ベンチャー制度の理論と戦略」ジェフリー・A・ティモンズ著

 

上記はベンチャー企業に関しての考察ですが、ベンチャー企業のみならず、それ以外の一般企業にも当てはまる様に思われます。

この分類基準に準拠して、私ども会計事務所の役割を申し上げますと、次の様に言えると思います。

  1. スタートアップ期‥‥自計化できる様にフォロー
  2. 急成長期‥‥‥自前経理スタッフの育成を支援
  3. 成熟期‥‥‥‥経理システムの強化、内部統制の充実
  4. 安定期‥‥‥‥事業承継対策、ディスクロージャーの充実

 

スタートアップ期(売上高5億円まで)は、会計事務所に経理を依存する事はできますが、急成長期になりますと、自前の経理担当責任者が必要になります。

急成長期の企業の弱点としては、経理を会計事務所に外部委託していて、社内に経理を把握できる人材がいない事です。月次損益も、会計事務所の入力作業を待って判明する様では、月中での進捗状況を把握できないので、経理がブラックボックスになってしまいます。

自前の経理スタッフで自計化できる様にしないと、成長が阻害される恐れがあります。経理担当者のフォローは会計事務所が引き受けます。

自前の経理担当者のレベルとしては、日商簿記2級以上の資格と実務経験が3年以上ある事が望ましいと思います。給与計算や支払業務も行いますので、企業規模に応じて、スタッフが他に数名必要になると思います。そのスタッフはパートタイマー、アルバイトでも可能と思われます。

 

自己責任/H13.6.30

自己責任は、投資や保険に限った事ではありません。
税金・納税も自己責任なのです。
当たり前の事だとお思いでしょうが、納税の前提となる、税金の知識、記帳手続、証明責任も すべて自己責任なのです。
税金の知識はあるもの。記帳はできるもの。経費は立証できるもの。
という前提で、日本の税金、すなわち自己申告制度は成り立っています。
「税金の事なんて学校で教えなかったじゃないの」
「記帳方法なんで習わなかったよ」
と仰いますが、 少なくとも、義務教育で日本語を習っている以上、税法の条文は読める訳ですし、税務署に備え置いてある 税金の手引き等のパンフレットも読める訳です。
読まない人が不利益を被ってもそれは自業自得ですよ、と言う のが、税金の制度、すなわち自己申告制度の建前になっています。
しかし、この事は、逆から考えれば、自分で税金の勉強を積極的に行い、毎月記帳し、証拠を収集しておけば、 不当な推計課税や、一方的な課税の更正を受ける事は無い、と言う事を意味します。
自分の責任において、記帳、申告することは、確かに面倒で、時間が掛かる事ではありますが、自分の権利を守る 為には、最低必要な事です。
自己責任は義務ではなく、権利なのです。
不当な課税処分を受けない為に、自己責任で経理処理を行う事、これは商売をする人の基本です。
商売は旨くても、経理がメチャメチャでは、長く商売は続けられません。
3年以上商売を続けたいのなら、経理・税務といった間接部門に目を向けないと成長しないと思います。
間接部門がネックとなって、10年商売を続けても、余り儲かっていない会社があります。
開業当時のどんぶり勘定体質から抜け出せず、いつまで経っても社長が勝手にお金を自由にしてしまう会社です。
これも悪い意味での自己責任ですが、早い時期から会計事務所のアドバイスに耳を傾けて貰えば、こうにはならなかった のではないかと思います。
単に税金がいくらになるのか、という話だけではなく、請求システムはこれでいいのか、支払いシステムはどうするか、 といった事務処理全般に渡って、税理士・公認会計士から助言を受ける事も、有益だと思います。
自己責任のパートナーとして、会計事務所を利用するのが肝要だと思います。

家業を営む上で、経理の役割/H13.3.25

家族だけで事業を営む場合や、年商1億円未満の事業経営の場合、はたして「経理・会計」が必要 なのか、というプリミティブで奥の深い問題があります。
年商1億円未満ですと、社長もお金の出し入れがある程度見渡せるので、「経理は簡単なもの」という印象 を持つ様です。「経理に時間やお金を掛けても売上げが上がる訳じゃない」と言うのが根拠です。
素人の人ほど「経理はもっぱら税務署に申告する為にやるものだ」と思っています。
せいぜい請求書と領収書さえ保管していれば、会計事務所が勝手に帳面を作るものだと思う様です。
とくに、最近はコンピュータ処理なので、数字さえ入力すれば、「コンピュータ」という機械が勝手に 帳面を作って、税金を計算してくれる事が「会計・経理」なのだとお考えの方がほとんどなのが現実です。
コンピュータで帳面を作る程度で、何で会計事務所に、70万円とか100万円とか支払うのかという ご不満を聞かされる場合もあります。
売上げが毎年安定していて、経営上の問題も特に無く、それなりに安定した生活が過ごせていれば、 そういうお考えで何ら問題はありません。
そんな家業をお持ちの方は、大変恵まれている 事に感謝される事でしょう。

しかし、皆さんが恵まれた家業をお持ちとは限りません。売上高が最近減少している、商品展開がマンネリ化 していて顧客離れが心配だ、事業形態が旧式化していて将来が見えない、息子が継ぐ事を期待して改装 したいが設備投資資金が心配だ、と言った様々な問題を抱えている場合が多くあります。
その様な場合に、事業計画を建てずに、問題に立ち向かおうとしても、行き当たりばったりの事業経営しか できないと思います。
あげくは、高金利の商工ローンなどに手を出さざるを得なくなる様な経営になって しまう恐れがあります。
少なくとも、月次ベースで重要な項目は、予算ー実績の比較を行って、毎月、 月次ベースで損益、資金繰りを管理して行かないと、家業といえども、明日はありません。
重要な項目は、1)売上高、2)仕入・売上原価・外注費、3)金額の大きい支出、と言う事になります。
家業や年商1億円未満の事業の場合、月次決算を行う程のマンパワーがありません。そこで重要な項目に 限っての月次予算ー実績比較で足りると思いますので、ぜひ、月次ベースの重要項目管理を行って下さい。
私どもがお勧めしているパソコン経理による自計化も、リアルタイムで、売上の数字は把握できますので、 その一助とする事が出来ます。また、債権債務の管理、資金管理などに有用です。
尚、素人の方は、簡単に月次決算が出来るとお考えの様ですが、月次決算には、毎月の在庫金額の把握、 納品書ベースでの計上(検収ベースでの仕訳入力)、などの作業が必要ですので、経理事務のマンパワー が不足している零細事業所では、実質的に月次決算は出来ません。
よく、会計事務所が、毎月、お伺いして月次試算表を出している場合がありますが、毎月在庫金額を集計したり、 納品書ベースで入力していない場合は、月次の試算表があっても、月次決算ではありません。
会計事務所の事務員が、「月次処理していますから」などと、クライアントの社長に言って、さも会計事務所が 仕事をやった様に社長にアピールしますが、ほとんど意味の無い月次試算表を提出しているにすぎません。 (せいぜい売上高が月次で把握出来る程度)
会計事務所の担当者の言う事を鵜呑みにして、事業主・社長が「家の会社は月次で損益出してるから」 などと自慢していても、実際は月次決算ではなく、単に月単位で伝票処理しているに過ぎない場合が多々あり あります。
会計事務所の事務員が本当の月次決算を知らないか、知っていても素人(事業主・社長)相手なので 適当な事を言って、お茶を濁す事を憶えてしまっているのかも知れません。
もっとも、現在お客様から頂戴している報酬では、月次決算まで人件費をカバーしきれないという 会計事務所側の言い分も分かりますが、それはその様にお客様に説明すべきだと思います。
本当の月次決算には、会社側が毎月適切な在庫棚卸しをしなければなりませんし、会社側が検収ベースで 仕入金額等を集計していなければなりません。
会計事務所の事務員の言う事を鵜呑みににして、「家の会社は月次で損益を出しているから」 などと自慢している事業主の会社ほど、その様な基礎データを把握していませんので、 月次決算など出来ているはずはありません。
「家の会社は、専属の事務員を置くほど余裕はない」と言う言い訳をしつつ、会計事務所に多くを期待 するのは、筋違いかと思います。
もっと会社自身が、事業計画と実績管理に時間とマンパワーを掛けないと、 確かな事業運営は出来ないと思います。
素人の方ほど「経理は簡単なものだ」という誤解(無理解)を持つ訳です。
会社側が何の基礎データも用意せずに、「会計事務所に依頼しているのだから月次決算はやってくれている」 とお考えになるのは、全くの素人考えであって、誤りです。
単に月一回、会計事務所が試算表もどきを出していると言うにすぎないのです。
それも売上高以外ほとんど意味の無い試算表をです。
月次決算には、それなりのコストとマンパワーが必要ですので、家業や年商1億円未満 の事業の場合には、無理な場合がほとんどです。
そこで、月次決算に拘る事無く、むしろ重要項目に関して、月次ベースで 予算ー実績比較を行った方が良いと思います。

結論としまして、家業や年商1億円未満の事業の場合、月次決算は必須ではありませんが、 月次売上高や債権債務管理には、経理・会計の月次処理は有用です。
月次経理処理以上に重要なのは、年間営業計画を立てて、重要項目(売上、外注費など)に関して 月次予算ー実績比較を行う事です。
営業計画は、主要なお客様別、商品別に月次で立てる必要があります。売上原価は予定価格を利用します。
営業計画のたてかたをここで記述することは出来ませんが、月次計画を集計したのが年間計画となります。
事業計画の中に、経理事務を位置付けて、予算ー実績比較の一助にする事が、家業や年商1億円未満の事業 所の場合、必要です。
事業計画の中で経理が位置づけられるのが本来の機能です。
「経理なんか税務署の為にしている様なものだ」とか、「経理なんか結局、申告月までにやれば良い」 とお考えの方は、行き当たりばったりの事業しか出来ていないという事ではないでしょうか。
それでもやっていけるのなら、それで結構なのですが。
事業計画は、数字に落としてこそ明確な目標とする事が出来ます。目標と現実を比較するのか、予算実績 比較です。
時代の変化が激しい今日、家業といえども、事業計画、経理を疎かにしていては、明日は危うい という状況になっています。
事業計画さえも会計事務所が勝手にコンピュータで作ってくれるとお思いの 事業主・社長は、本来のの事業主・経営者の役割を果たしているとは言えません。
去年の月次売上高の数字を自分でメモしていない事業主・経営者の方に、まずは営業計画を数字で立ててみて 下さいと言っても無理かも知れません。
しかし徐々にご自分で工夫、勉強を続けて行けば、必ず得るものがあると思います。
事業主・社長の数字に関する姿勢が変わらなければ、家業・事業の業績も変わらないと思います。
自分のビジョン、思いを、月次予算に落とし込んでこそ、予算実績比較が可能になるのです。
会計事務所が作成した事業計画書が、明日を変えてくれる訳では無いのです。

メールでデータのやりとり/H11.7.16

大番頭のデータを、メールに添付してやりとりできるか実験してみました。 いまの所、支障は無い様子です。データ量によって、通信時間が違いますが、小規模企業の場合、 3分ぐらいでやりとり出来そうです。E-mailを利用してデータのやりとりは可能の様です。
ただし、メーカー側は、この様な利用を想定して作っている訳では無いので、メーカーにとっては迷惑な使い方だと思います。 メーカー仕様に則った使い方では無いので、結果に関して私自身、責任を取れません。
実際に運用したい方は、リモート版を購入して、セキュリティー対策してください。
しかしながら、大番頭は他の経理ソフトと比較して、使い勝手が良いと言えるでしょう。
ただ、DOS版の様に、コードNo第一に入力する様に設計してくれるともっと良いのですが。 出来れば、マウスを無視して、キーボードのみの操作仕様で設計してほしいです。

消費税の重税感/H10.10.10

零細企業にとって、今の消費税は、かなり重税感があります。
特に平成10年3月以降の決算において、売上高3千万円前後の零細企業にとっては打撃が大きい様です。

業種にもよりますが、赤字決算で法人税がゼロの場合でも、消費税を40万円から50万円納付する事になるからです。
月末に、50万円もの納税資金を用意するのは、資金量が乏しい零細企業にとって大変なのです。
従来であれば、限界控除制度により、5万円程度の納付で済んだのが、約10倍になってしまったのです。

原因は、消費税の制度改正により、平成9年4月1日以降、消費税率が3%から5%へ増加した為と、
平成9年4月1日以降に開始する事業年度においては、限界控除制度が完全に無くなってしまったからです。
この限界控除が完全に無くなったのが、決定的意味を持ちます。

制度論から言えば、事業者は消費税を預かっているにすぎないので、預かった消費税を納めるのは 当然の事ではないかと言われますが、現実には事業資金と一緒になっているのです。
預かっている税金と言えば、源泉所得税があります。
源泉所得税の場合、給与支払いの都度、事業者が 給与から天引きしているとの意識を持ちえますが、消費税の場合、消費者から「預っている」という意識は持ちにくいと思います。

極論を言うと、そもそも国がすべき徴税事務を、事業者に一方的に押し付けておいて、 あたかも事業者の税金であるかの様に申告・納付させるのは、統治者の究極の知恵と言う訳でしょうか。
過激な事を言いますと、全ての事業者を税務署(徴税)の出先機関として、ただで(無料で)徴税組織に組み込む事に 成功したのが、消費税の実体であるとも言えます。
徴税コストを全面的に事業者に負わせているのです。

私は個人的には、この様な曖昧な徴税方法には反対です。
むしろ完全な売上高税にして、売上の数%を毎月納付させるのが、制度的には安定性があると思います。
または、納税者番号を徹底させて、 インボイスによる完全な付加価値税に移行させるかだと思います。

いずれにせよ、このままでは零細企業からの消費税の滞納がかなりの金額になるでしょう。
滞納対策の為に、現行消費税法は、2,3年後には改正されると思います。
予定納税の強化になるのか、源泉所得税の様に毎月納付が原則となるか、上述の様に 売上高税にシフトするのか、又は完全なインボイス制に移行するのか、それは解りません。
当局は当分の間、消費税の滞納対策に頭を痛めるでしょう。

話を本来の消費税に戻しますと、零細企業の自衛策としては、年間の納付すべき 消費税額を見積もり、毎月納税資金を少しずつ 銀行に積み立てるしかなさそうです。
納税準備預金と言うのがあります。
これは納税目的以外には引き出せない預金なのです。
消費税の納税対策として、私どもでは、この納税準備預金を利用する事をお勧めします。

尚、ご注意頂きたいのは、限界控除制度が完全に無くなった事に伴い、従来3千万円以下の売上の場合、 納付すべき消費税はゼロでしたが、平成9年4月1日以降開始する事業年度においては、3千万円以下の売上 でも、最低2年間は数十万円の消費税を納付せざるを得ない事になったのです。
(基準期間が3千万円を超えているので課税事業者に該当するが、当期の課税売上高が3千万円以下になってしまった場合の事です)
細かい事ですが、この点をご注意ください。

税理士への誤解(節税策とは)/H9.12.30

奥さんが経理担当として帳簿を付けている会社の話しです。

9月決算の会社ですが、9月初めに奥さんから急に、 会計事務所の担当の事務員さんへ電話があったそうです。
「〇〇さん、今期は利益がたくさん出そうです。 先生に節税対策をしてくれる様、言って下さい」と言う事らしいのです。

その会計事務所の事務員さんが、奥さんに状況を伺いますと、 去年から継続してきた仕事が、やっと完工し、 8月末に請求書を出せる様になったとの事。
8月末に売掛金と売上高を計上したら、利益が沢山出てきた ので、節税対策が必要なのですとの事でした。

どうやら、節税策とは、利益が出てしまった時に、 税理士が頭をひねって、利益を先延ばししたり、 経費を作り出したりしてしまう事らしいのです。

かねがね、私どもが申し上げております所の、 「年度計画・四半期補正・申告納税」という「トータルシステム としての経理」をご理解頂けない事から生じる誤解なの です。

一般に、経営コンサルタントが勧めています事業計画書の 作成は、経営幹部と従業員が一体となって共通の経営目的 実現の為に共同し得る経営管理ツールとして、考えられて います。
しかしそれは、経営管理論の見方でして、経理屋である 私どもに言わせますと、節税対策そのものなのです。

計画なき所に、事業はありません。 事業には納税が付いて廻ります。 つまり納税即ち節税は事業計画とリンクしてこそ意味を 持つのです。

この様な事を、小規模事業の社長や奥さんに言いますと、 雲の上の話しの様に受け取られますが、決してそうではない のです。

前年度の実績を基に、確定的な契約、ほぼ確実な契約、 たぶん取れる契約を月ごとに並べて行って、それに対応する 原価、前年実績からの一般経費を、月ごとに集計して見れば、 事業計画(実行予算)が作れるのです。
それを、四半期毎に順次見直してゆくのです。

当然、経理担当の奥さんだけでは、これらの作業は できません。 社長と奥さんが一緒に取り組まなくてはできない事です。

ポイントは、月ごとに並べてみる事です。
一会計期間を12ヶ月分の年表の様にして、書き込んで行く のです。
工期も把握できますので、経理担当の奥さんにも何時、 利益が上がるかが、一目瞭然です。

この様に経理・財務担当の奥さんも、年度計画・四半期補正 に参加しておけば(参加できない場合、その計画書を見せて もらえば)、計画を立てたり、補正した時点で、納税額も 把握できます。
その時点で、合理的な役員報酬の設定もできるでしょうし、 備品購入や設備更新のタイミングも把握しやすいでしょう。

この「年度計画・四半期補正・申告納税」の「トータル システムとしての経理」こそ節税対策そのものなのです。
この意味で、節税対策は年度計画・四半期補正に尽きると 言えましょう。

税理士は、帳簿上、利益が出てしまった時に利用する ものではありません。
そうなってしまったら、もうお手上げなのです。

よく、リースや保険を使った節税策をセールスする場合 がありますが、私の事務所では全く取り扱っておりません。
中長期的に安定した収入が確実な場合以外は、 結局、損するからです。
ほとんどの会社は中長期的に安定した収入など あり得ないのです。

以上の様な、節税対策への誤解を解く事が、節税への一歩です、 と言うのが税理士としての私の考えです。

所得税の確定申告・経費率の不公正 (岡部騎手の1億円申告漏れ)/H9.2.2

朝日新聞(1月17日東北版)に拠ると、日本中央競馬会(JRA) で通算最多勝記録を持つ人気ジョッキー、岡部幸雄騎手(48才) が税務調査を受け、1995年までの過去3年間で約1億円の所得 の申告漏れを指摘され、約5500万円の追徴税額を受けていたと の事です。

従来から、騎手は収入の35%を経費と見なす「概算経費率」を適 用して申告していたので、岡部騎手はこの慣行によって申告し たが、実際に収支計算して見ると、経費は大幅に少なかった為 に、その経費の差が申告漏れとされた様です。

従来、概算経費率は業種によって何%と考えられていましたし、 今も保険外交員、集金人などに適用されると考えられている様 ですが、ここ数年前から税務署に於いては、帳簿を付けて正確 な経費を計上するように指導しており、経費率に拠る申告など は、公には認められていないと言っても過言ではないと思いま す。

経費率に似ているものとして、サラリーマンの給与所得控除が 在りますが、所得の多寡に応じて40%から5%までクラス分けさ れて経費化されています。

給与所得控除は統計的にかなり合理性を持っていると思います が、5%しか経費化が認められていないのは、1000万円を越える 給与所得の部分です。

一方、概算経費率は収入の多寡に関わらす単一%で、経費を見 なし計算するもので、合理性を持ちません。

1億円の収入がある騎手と300万円の収入がある騎手とでは、実 際の経費は多分同じ程度ではないでしょうか。騎乗時の鞭、ト レーニング服、交通費など、そんなに違いは無いと思います。

300万円の騎手の経費が100万円とすれば、 1億円の騎手の経費 は、1億円*100/300=3333万円も掛かるでしょうか。多分、同 じ様に100万円程度だとおもいます。仮に10倍掛かったとして も(掛かるはずは無いと思いますが)1000万円です。

3333万円を経費として計上するのは、脱税だと見なされても文 句は言えない様に思います。

多分、この概算経費率が説得力を持つのは、収入が300万円から 500万円以下程度の場合であって、それ以上の収入がある場合に は、実額計算した経費しか認められないと言うべきでしょう。

岡部騎手の談話として、「税務署で認められてきた通りに申告 してきたのに、困惑している」とおっしゃっている様ですが、 それは、全くの誤解と言うものでしょう。

騎手は既得権益があるとでも誤解されていたかも知れませんが、 世間の人は、皆、収支計算によって所得を申告し、納税してい るのですから、知らなかったとは言え、非難されるのはやむを 得ないのではないでしょうか。

老婆心ながら、申し上げますと、保険外交員の方で、それなり の収入がある方は、ご注意ください。保険業界への保護行政・ 既得権益も公正性の視点から撤廃されたと見るべきでしょう。

猿にも人件費計上?の誤解(日光猿軍団の源泉 徴収漏れ)/H8.12.1

朝日新聞(11月16日東北版)に拠ると、テレビ等で活躍している、 日光猿軍団を劇場出演させている会社(間中敏夫社長)が、猿 が所属する芸能プロダクション会社(妻が社長)にリース料と して支払った3億円について、源泉所得税 3,200万円の徴収 漏れを指摘され、修正申告に応じたと報道されています。

間中社長の話として「猿にも人件費を支払うのかと驚いている。 」とのコメントを載せていました。

社会面の記事ですので、敢えて新聞社の姿勢をただす必要もない のですが、一般の読者に誤解を招きかねないので、この欄に 取り上げました。

そもそも、芸能人や芸能法人(芸能プロダクション)に報酬等 を支払う場合には、源泉徴収する必要があります。

さらに、所得税基本通達174−2(3)に於いて、ここで言う 報酬等には、 「犬、猿等の動物の出演料 等として受け取るものも含まれる」と規定しています。元々、 税法の条文が、日光猿軍団の様な芸能活動を予想していた訳 です。と言うより、昔からこの種の見せ物があったと言うべき でしょう。

更に条文に於いて、 「これらの物だけを貸与したり、これらの動物だけを出演させ ることにより受ける対価を除く」 と詳細に規定しているのです。

つまり芸をさせる訳でなく、ただそのまま眺めさせるだけであれば、芸能 とは言えないので、源泉徴収の必要はありませんよ、と言う訳 です。

よく子供用イベントの際に、出前動物園と言うのがあって、 山羊やウサギを柵で囲んで放し飼いにしたりしてますが、 あれなんかは、源泉徴収の必要が無い例だと思います。

今回の日光猿軍団の例は、税法の条文がそのまま予定していた 事例でして、猿も税金を納める必要があると言っている訳では ないのです。

むしろ、あれだけの芸を猿にさせておきながら、その支払いは リース料ですよ、と言っている間中社長の方が、何となく、 愛情に欠けている様な印象を与えてしまいます。

基本的に、今回の間中社長(日光猿軍団)の件は、社長が税法 上、条文があるのを知らなかった為に起こった事件だと思いま す。残念な事に、社長のコメントを読むと、今も誤解なさって いる様子ですが。

新聞社の記者も、何故課税されるに至ったのか、その根拠をさらに 記事にして頂ければ、読者の誤解もなくなるのではないかと 思います。

源泉税と言うのは、知らないと恐ろしい税金であるのは、 確かです。

おー恐いですね。

外国人、外国への支払い(源泉税に注意) /H8.11.24

外国人を雇用する場合には、2割源泉することに関し注意が必要です。 建築土木関係や飲食関係で雇用する場合があると思います。 外国人の方も、日本に滞在して、所得を得る以上、認識するしない に関わらす、警察(治安に良さ)、水道(飲み水)、下水(トイレ) 清掃(ごみ出し)、道路(交通の便利)などのサービスを受けている ので、当然に納税すべきだと言うのは、うなずける所です。

但し、この2割源泉は、外国政府の代わりに徴収している様な もので、基本的には、本人が自国政府に納税するのと同じ意味を 持ちます。

何らかの理由で長期不法滞在者を雇用してしまった場合、 当然パスポートの提示等を受けていないと思われますので、 税法上の問題だけで考えますと、居住者であると立証するのは 不可能だと思います。 外国人(非居住者)として2割源泉せざるを得ないと思います。

更に最近、注意が必要なのは、外国会社に支払う使用料に関して の源泉税です。

技術的ノウハウの使用料、デザイン、特許権、著作権等の 許諾料、などが該当しますが、個別具体的には、気がつきにくい ものもあります。

たとえば、アメリカで発売しているコンピュータの ソフトウェアを何本か買い付けて輸入し、日本からその代金を アメリカへ送金しても、その代金は源泉の対象とはなりません。 関税の対象とはなりますが、商品の購入ですので、源泉の必要 は無い訳です。

しかし、日本でコピーして販売する契約を締結し、その100 本分、として送金した場合、ロイヤリティーの対価として、 源泉の対象となる様です。

また、日本市場仕様として、日本語化したり、日本的に内容を 変える作業を日本国内で行ったとしても、そのソフトウェアの 基本を踏襲したものならば、送金の名目が何であれ、承諾料の 実質を持つものとして外国会社へ送金する 対価は、ロイヤリティーとして源泉の対象となる様です。

この様に、外国人(非居住者)、外国会社(外国法人)に支払う 場合がありましたら、くれぐれも、源泉税の観点から検討を 加える事をお忘れ無く。

最悪の場合には、源泉税の徴収漏れ、と言う 事もありますので。