以下は、2003年4月5日(土)に、名古屋の中枢にある栄広場で行われた平和集会でEsamanが呼び掛けた文章です。同広場では現在、反戦のアピールのために、金・土とテントを張り、座りこみを続けています。→デモとかやってる不戦へのネットワークのページへ


−−タイトル無し−−

 いま、バグダット近郊の空港に米軍が突入し、住民は電気の無い暗闇の中で死を待っている。
妊婦が乗用車に乗り、装甲車両に乗り重火機で武装した米兵に絶望的な自爆攻撃をしかけている。

 私は、全ての侵略戦争に両手を上げて反対である。だが、ここでかんがえよう。

 まだ爆弾の落ちてこないこの日本でも、毎日80人(年間3万人)が自殺している。戦争に反対する私達は、同じく人を殺している日本社会のあり方とも闘うべきではないのだろうか?
自殺に追い込まれていく人々の声を聞き、共に手を取り合う活動は、今、ここで行われている反戦行動と何が違うのだろうか?私や、あなたが、あるいはその隣人が、生き難い世の中である事を変えようという行動は、イラクの人々を殺す事に反対するのと、違う所があるだろうか?

 たとえば、同じ仕事でも女性は男性より賃金が安いのは仕方のないことなのか。就職活動の際、つきあっている人がいるかなどの私生活の事まで聞かれるのはあたりまえか?野宿生活者が襲撃され、家を撤去さたり放火されたりするのは仕方ないのか。近所で働いている外国人が、滞在資格がない、或はただ外国人というだけで、不当な就労条件や虐待を放置されるのはやむを得ない?森林を破壊して「自然との共生」を謡う万博を行う愛知県の無茶な姿勢は放置していいのか?在日朝鮮人に選挙権がないのはあたりまえか?民族学校の出身者に大学入学資格がないのは仕方が無いか?在日米軍の80%が沖縄に集中しているのは放置して良い?満員電車に痴漢が出没するのはやむを得ないのか?同性が好きであると不利益を被ることがあるのは仕方が無い?先住民族を酷使し死滅させた島が「日本固有の領土」なのは仕方が無い?戸籍に男女の別の記載を強制するだけでなく、嫡出であるかどうかを記載し前時代の差別を再生産し続けているのは放置して良い?性労働者を差別し、仕事をすると逮捕されるのを放置するのは当たり前か?アイヌの墓を暴いた研究者の業績が評価され続けているのは仕方が無いことなのか?

 …これらはすべて、ここにいる私達の問題である。あなたの、そして私の。

 これを見ているあなたには、身に覚えががないだろうか?

 仲間のために、会社のために、組織のために、運動を進めるために、口をつぐんでこなかったか。
上司や同僚の犯す間違いに、目の前で行われる不正に、目をつぶってはこなかったか。「●●との仲だから」といって、本当は見過ごしてはいけないものを、見過ごして来なかっただろうか?

 繰り返される毎日の中で呟かれる、無数の「仕方が無い」「時間が無い」。
私達の小さな「手抜きと先送り」の降り積もったてっぺんに、ブッシュがいて、小泉がいる。
人殺しのかれらを支えているのは、実のところは、私達なのだ。
そして、その私達のありかたが、今の社会の問題の多くを生産し、保持し続けている。

 だからこそ、いまここで、向き合おう。私達のおかしている過ちと戦うために。そして、私達一人一人が変わっていく事で、私達の社会のありかたを、ほんとうに変えていく力を得るために。

 話題にするのを避けるのを止め、顔を向けて話し合おう。あなたの職場の中、家の中、運動の中にもある不正に。声をあげるデモ隊の中にもある、差別と無理解を。いま、この場所にもある、誤魔化しと裏切りに。それどころではないと、おざなりにしてきた多くのことを。

 あらゆる人の心を、体を、私が、あなたが、踏みにじるのを、やめるために。そして、いまだけでなく、他のことはさておきではなく、あらゆる戦争と抑圧に、ほんとうに反対していくために。

 あなたの生活の場で、耳を済まして聞こう。くりかえさる日常の中で、日々の喧騒の中で、かき消さてれていく声を。流されていく思いを。私の耳に届かなかった、精一杯の声を。二度と聞くことのできない、あの人の話を。この場所では話す事ではない、それも仕方が無いと、ずっと見殺しにされてきた思いを。二の次にされてきた大切な記憶を。絶望のため息を。

 私達が、ほんとうに、かわっていくために。多くの問いかけを無視してきた、あるいは先送りにして来た、言い訳を用意して来た、自分自身のありかたと向き合うために。

 そして、私が、あなたに向けて引金を引いてしまう前に。

西暦2003年4月4日

「新大陸発見」によるアメリカ大陸の先住民族への侵略開始から511年、
北海道を支配しようとした和人政権に対するシャクシャインの武装蜂起から334年、
日本の北海道併合から134年、琉球諸島併合から124年、朝鮮半島併合から93年、
AIM(アメリカインディアン運動)のウンディド・ニー占拠より30年、
メキシコのサパティスタの武装蜂起から9年、
そして、アイヌ新法制定運動が、文化振興法に摩り替えられてから5年。

空襲の無い、この日本の空の下。わたしたちの暮すこの日常も、侵略と抵抗の最前線の一つである。

oripakEsaman(kewtum uekarpa) imeru-kampi: esaman@anet.ne.jp
URL: http://www.alles.or.jp/~tariq/



追記:この文章は、イラク攻撃前に、日比野真さんが書いた文章に触発されて書いております。
とはいえ、構成は真似ていますが、表現、特にサビとオチの部分を大幅に変えているので、「パクった」とは、あまり思ってはおりません。元ネタの文章ソースを公開しなかったのは、ヒビノオリジナルを、しばらくの間、ウェブ上で見る事が出来なかった為であります。
ひびのさ〜ん、声明は、すぐ公表しましょうよ。…って、あの人のページの、アイヌに言及した部分とかも、随分昔のものから、変わってないしなぁ。


このページは、アイヌ民族の生活と現在を考えるHP、Ainu puyarA上にあるページです。}{}{}{Ainu puyarA}{}{}{へ戻る {*}