ヒプノの世界 6






●過去世退行


私たちの中にはたくさんの物語があります。そのなかには、別の人生のようなイメージもあります。事実かどうかはべつとして、過去世退行はとても役に立ちます。


まず、過去世のストーリは現在自分の身に起きていることと似ています。それは単に過去の話ではなくて今に関することなのです。今起きていることが、よりわかりやすいかたちで出てきます。ふたつの点を結べば線になるように、ポイントがわかりやすくあらわれます。「何がおきているのか」「どういう気持ちだったのか」「どういう行動をとったのか」「ほんとうはどうしたいのか」などを今世に生かしていけばいいのです。


もうひとつ、とくに過去世退行が優れているのは「安全さ」という点です。たとえば子どものころのひどい事件を思い出すよりも、過去世で殺されていたことを思い出すほうがよっぽどマシな気分です。過去世になぞらえて感情解放できるので、浄化作用があります。しかもイメージがホントかどうかわからないのでかえっていいのです。


さて、イメージの世界はその人が持っている素材やイメージを通して表現されます。だからその人の持っている素材によって限定されるともいえます。


鳥はこの世界を5原色で見ているそうですね。そのおなじ世界を人間は3原色でとらえます。新しいものごとを理解するときに、自分が持っている素材でとらえる傾向が私たちにはあります。たとえば石器時代の人に「テレビ」を見せたら「人が石の中にとじこめられている!!」というかもしれません。「自分が知っているイメージでいえばこういう感じ」ということなので、過去世も単にそのまんま受け取るのではなくて、シンボリックに読みとく目を持っておくといいです。


もしも過去世が豊臣秀吉だったとしても(そういうことがヒプノででてくることはありませんが)、「実際そうだった」というわけではなく、「いってみれば豊臣秀吉みたいな生き方をしていたのだ」と思えばいいのです。豊臣秀吉をどう見ているかで意味も違います(「頭のいい人」「ずるい人」「忠臣の人」など)。


同じ理由から、インディアンの文化に詳しい人のほうがインディアンの人生を細かく思い出せます。絵をかく人のほうがカラフルなイメージを見ます。自分が持っている素材を通じてあらわされるからです。


だから、最近見たものが素材として使われることもあります。そういうとき私たちは「最近見たからでてきただけで、自分勝手に作っただけなんだろう」と思ってしまいがちです。でも、色々なものを見ているのになぜそれを選ぶのか、というところに自分を理解していく鍵があります。同じ本を読んでも、同じ場所に行っても、印象を受けるポイントは人によって違います。そこにメッセージが含まれていたり、自分が表されるのです。「なぜそれをわざわざ今思い出すのか」というところに意識を向けていくと、支離滅裂に思えたイメージと現実が意味をもってつながっていることがわかってくるでしょう。