2020.4.30
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トランジスタでCPUをつくろう!
トランジスタで8080をつくってしまおうというまさにびっくり仰天、狂気のプロジェクトです!
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見事にできましたら、もちろんTK−80モニタを乗せて、それからBASIC、CP/Mを走らせましょう!
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[第235回]



●「トランジスタ技術」誌が特集!

CQ出版社「トランジスタ技術」2020年5月号でトランジスタ版CPUの製作記事を特集しています。
なにしろ超多忙状態が恒常化しているためもあって、このところずっと「トランジスタ技術」とはご無沙汰しておりました。
ですのでまさか「トランジスタ技術」でこういう特集が組まれているなんてことは、私は全然知りませんでした。
実は5月号が発売されるよりも前に(発売日は毎月10日)以前からのお客様のM様から発売予告記事のコピーを添えてメールで知らせていただきました。
「内容がそっくりなので、ひょっとして中日電工がからんでいるとか?」
いえいえ。
中日電工は全く無関係です。

私自身が、もう寝耳に水といいますか、そもそもまさか「トランジスタ技術」がこんな特集を組むなんて、予想も想像も全くしておりませんでした。
大体今どきトランジスタでCPUを作ろうなんて発想自体が、どこかおかしいんじゃないの?と言われるのが落ちでありまして。
ですので当記事でも自虐的に「狂気のプロジェクト」と書いております。
自分でもときどき自身が正気なのかどうか、ふと気になったりしながら当記事を書いております。
その伝でいきますと「うわあとうとうトランジスタ技術編集部も気がお狂いめされたか」というようなものであります。
ま。しかし、天下の「トランジスタ技術」様が狂気の特集記事を組まれるわけはありませんでしょう。
そうしてみると、私がこうやって毎日狂気と戦いつつ書いておりますことも案外「まっとう」なことかもしれませぬ。

なんたって同誌5月号の特集はハンパじゃありません。
しっかりリキがはいっちゃっています。
広告を除く本文170ページほどのうちなんとこの特集記事に100ページ以上も割いています。
おまけにCDROMもそしてプリント基板付きというのですから驚きです。
M様に教えていただいてから5月号が発売されるのを毎日心待ちにしておりました。

そして、待ちに待った発売日。
実際に手にしてみた感想はといいますと。
うーん。
心待ちにしていただけに…。
えっ。
付録基板って、これ?

ま。
期待が大きかっただけに、正直なところ、ちょっと気落ちしてしまったのは事実ですけれど。
付録ですものね。
こんなものでしょう。
まあ、つっこみどころもいろいろありますけれど。
しかし。
天下の「トランジスタ技術」様がこういう特集を組んだということは、なんだか思わぬところから援軍を得たという気持ちで、非常に有難いことと思います。
「トランジスタ技術」5月号特集についてお教えいただいた大阪府のM様、タイムリーな情報をお寄せいただき有難うございました。
今後ともご支援いただきますようお願いいたします。

ところでM様。
最初にいただいたメールにすぐご返事を差し上げたのですが「Undelivered」ということで戻ってきてしまいました。
再送したのですが無事届きましたでしょうか。
はじめての方でも、どなた様に対してもメールをいただきましたら遅くとも翌日にはご返事を差し上げるよう心がけております。
もし2〜3日経っても返事が届きませんでしたら、私がうっかり見落としてしまっているか、あるいはサーバーのトラブルなどが考えられますので再度ご確認のメールをいただきますようお願いいたします。
最近携帯などからメールをいただくことがありますが、携帯宛にメールでご返事をさしあげても、設定によっては着信者に知らされないまま勝手にゴミ箱に捨てられてしまう場合があるそうです。
そのあたりも含めてご確認いただきますようお願いいたします。

さて。
「トランジスタ技術」特集についてですが。
上にも書きましたように付録として小さなプリント基板がついています。
代表的なロジック回路(ゲート回路)をトランジスタ化した回路基板です。
全部で10回路あります。
1枚の基板を24枚の小基板にカットできるようにVカットラインが入っています。
小基板1枚には1回路(1ゲート回路)が載っています。
この基板のみで20通りの実験ができるそうで、そのためでしょうか、同じロジック回路基板が複数枚含まれています。
どういうロジック回路なのか、下に列記してみます。
参考までに、相当すると思われる74HCシリーズ名を付記しました。
74HCシリーズのゲートICは1個に複数の回路が入っていますが、上に書きましたように1枚の小基板にはそのうちの1回路のみが載っています。

1.NOT(74HC04)
2.シュミットトリガNOT(74HC14)
3.2入力NAND(74HC00)
4.2入力NOR(74HC02)
5.2入力AND(74HC08)
6.2入力OR(74HC32)
7.3入力NAND(74HC10)
8.3入力NOR(74HC27)
9.2入力EXOR(74HC86)
10.スリーステートバッファ(74HC126)

回路を構成するトランジスタはNチャンネルとPチャンネルのMOSFETで、回路構成はコンプリメンタリ(相補型)です。
うむむ。
これって、ウチのトランジスタロジック組立キットの「まんま」では?
おお。
もうあれから5年も経ってしまったのですねえ。
ほんとに月日の経つのは早いものです。
ま。
CMOSICのゲートをそのままトランジスタ化すれば誰が考えたって同じような回路になるといえばそれまでですけれど。
あらためて確認してみました。
5年前に発売開始しましたトランジスタロジック組立キットを上の付録回路基板と比較してみました。
74HC00、74HC02、74HC04、74HC08、74HC10、74HC27、74HC32の7キットです。
うーん。
確かに似てますよねえ。
74HC14、74HC86、74HC126は未発売ですけれど。
74HC86については[第58回]あたりで書いています。
74HC126は最近の記事にありますいくつかの回路で実際に使っています。
74HC14は今まで考えたことがありません。
トランジスタ版ロジック回路のシュミットトリガ回路についてはそのうち書くつもりです。

確かに似ていますけれど。
「トランジスタ技術」の付録基板は小基板1枚に1回路です。
それにトランジスタもLEDも抵抗も(!)全部面実装チップです。
ま。
確かに基板面積は小さくて済みますが、しかし面実装チップのハンダ付けは難易度が高いですよお。
おまけに付録はプリント基板だけ!
パーツは自分で揃えてくださいということのようです。
果たしてどれだけの方が実際に挑戦されるのでしょうかねえ。
私は作る気はありません。
その暇はとてもありませんし、部品を揃えるのも手間なものですから。

私としては、今後も面実装の組立キットは考えておりません。
やっぱり昔のまま、ディスクリートのパーツやDIP型のICのみでいきたいと思っています。
それから以前の連載記事にも書いていますように、当初は私もトランジスタ版CPUをMOSFETで構成するつもりでした。
でも最近の連載記事をお読みいただければお分かりになりますように、今はもうMOSFETを使うつもりはありません。
昔からのポピュラーな小信号用トランジスタでいくつもりです。

心変わりの理由はいくつかあります。
最大の理由はPチャンネルMOSFETが入手困難ということです(チップは対象外です。あくまで昔の3本足限定です)。
全くないわけではありませんが単価が高くてそんなものを数千個も使うなんて考えられません。
Pチャンネルに比べればNチャンネルはまだ安価ですが、それでも一般的な2SC1815の数倍近くします。
それはコスト面から見た理由です。
実際の回路として考えた場合にも問題がありました。
確かにCMOSFET回路は低消費電力です。
その点は数千個を使うことになると思われるCPU回路としては有利です。
電流動作ではなくて電圧動作であることが低消費電力であることの理由です。
それはよいのですが、とんでもない伏兵が潜んでいました。
MOSFETは入力容量が大きいということがわかってきました。
その入力容量(早い話がコンデンサ)のためになんと出力側と入力側がつながってしまうというどうしようもない現象まで経験することになりました。
結局のところ教科書的には本来不要なはずのゲート抵抗を入れざるを得ませんでした。
そのようにしても出力波形はゆがんだものになりがちで、このような回路を数千個規模に広げることは無理ではないか、と考えざるを得なくなりました。
勿論動作クロックを落とせば問題はありません。
ちなみに「トランジスタ技術」の特集では上記の小基板を使えば4ビットCPUを作ることができるとのことで(何枚使うのでしょうね。使うトランジスタは1738石だそうです)、その製作についても付録CDROMに収録されているのだそうでありますが(忙しくてとても見ている暇はありませぬ)。
本誌の記事によりますと、そのCPUの動作クロックは20Hz!(max200kHz)なのだそうです。
うーん。
だめです。
私としては、せめて1MHzはほしい。

というようなわけで、現在進行中のトランジスタ版CPU回路は2SA1015と2SC1815によるコンプリメンタリ回路で構成するつもりで書いています。
で。
そういうことになりますと、トランジスタロジック組立キットもそれに合うものを用意すべきではないか、と考えてはおりました。
実際に「CMOSFET版のトランジスタロジック回路キットがほしいのですが、今でも販売していますか?」というお問い合わせもいただいたりしているのですが、近いうちにもっと安価なバイポーラトランジスタ(A1015、C1815)版のキットを出しますからそれまでお待ちください、とご返事を差し上げて、でも結局今日までそのままで過ぎてきてしまいました。

しかし。
「トランジスタ技術」にこういう付録がついたということになりますと。
中日電工としましても、出さないでおくわけにはまいりません。
いや。
ずっと毎日読んでも面白くもない記事ばかり書いてきていますので、さぞや皆様も退屈なさっておいでではと、気にはしておりましたものですから。
「トランジスタ技術」に背中を押されてしまいました。

というようなわけで、急遽基板製作にかかりました。
新トランジスタロジック組立キットです。
「トランジスタ技術」様に敬意を表しまして、付録基板のロジック回路と同じロジックのバイポーラトランジスタ版を作ります。
今回はEXORとスリーステートバッファも作ります。
ですがシュミットトリガ回路は除外します。
そのことについては後日書くつもりです。
今回のキットも以前のCMOSFET版と同じように74HCシリーズの相当するICに入っているゲート数と同じだけの回路を1枚の基板に載せます。
ただ以前のキットからできるだけ余分と思われるところを省いて、その分安価になるように努めました。
詳細については次回以降に書くことにいたします。

基本的には「トランジスタ技術」の付録基板と同じ回路のバイポーラトランジスタ版が(シュミットトリガ回路を除いて)全て揃うことになります。
同誌の特集記事によればその付録基板だけを使って4ビットCPUができるとのことです。
勿論24枚の小基板だけではとてもできません。
必要な枚数分の基板を別途購入すれば、ということのようです。

では。
近日発売予定の「バイポーラトランジスタ版新トランジスタロジック組立キット」もそれと同じだけの数を揃えれば「トランジスタ技術」版4ビットCPUと同じ動作をするものを作ることができるのか?
ということなどにつきましても次回以降に書いていくことにいたします。

乞う。ご期待。

トランジスタでCPUをつくろう![第235回]
2020.4.30upload

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