〜アローン・イン・ザ・ダーク2〜
機種:プレイステーション
●全体indexへ ●indexへ



●闇のなかに独り

 はい、パソコンで有名だったシリーズの移植ですね。1作目は3DOのみの移植、3作目は移植されずとまあもったいない話なんですが、2作目だけはサターン、プレステの両方に移植されました。おかげで、今こうして好き勝手なことが言えるわけであります。

 まあ簡単に言うとかの名作「バイオハザード」(以下バイオ)に良く似た感じのシステム、画面構成でして、口の悪い向きには「パクリだ」という評価をいただけそうな感じですが、当り前です。こちらが先ですから


●怪奇映画テイストたっぷり、しかし……

 で、このゲーム、発売当時かなりの人気を持っていただけあって、面白いです。アメリカ製ゲーム特有の難しさはありますが、それも十分克服できるレベルです。特に、カメラアングルの妙による映画的演出や驚かせる要素の数々は素晴しいものがありまして、それらは見ているだけでまさに恐怖映画を連想させます。ただ、もったいなく、また素晴しいのはそれらの「雰囲気」を完璧にぶち壊してしまう要素が存在することですね。


●アメリケンセンス炸裂!!

 その要素とは、「バカ」です。何がと言わず、もう主人公から敵から物語からシチュエーションから、全てがバカです。

 ちょっと例を挙げましょう。1作目の話になりますが、主人公は一人、主人が自殺した屋敷の天井裏でピアノを調べています。辺りは静寂が包んでいます。警戒を緩めきっているその瞬間、ガラスの砕ける音とともに何者かが部屋へ飛び込んできました! 想像してくださいね、普通なら、普通のホラー映画なら、絶対観客も一緒にビクっとする、そんな状況です。しかし、飛び込んできたのはこんな動物

 ええ、彼はいたって真面目です、真面目にプレイヤーの命を狙っています。しかし、なんと言いますか、彼のその愉快な顔の造作が恐怖よりも先に笑いを呼んでしまうのです。そしてその動物を「こっちに来るんじゃねえ」というような、いかにも嫌そうな蹴りで撃退する主人公。その光景は、もはや喜劇です

 ちなみに、この襲撃を未然に防ぐこともできまして、それは窓をタンスでふさぐことで可能になります。実行するとあら気の毒、彼は勢いよく窓をぶち抜き、そしてタンスに頭をぶつけて地面に落下していきます。なんだか容貌のファニーさから「かわいそう」という感情さえ生まれてしまいます。まあ、そんなことを言っていたら自分の身がもたないんですがね。

 了解いただけたでしょうか。全編にわたり、この調子なのです。当然2にもその味わいは受け継がれています。崖からポイだとか宴会の中で逆さ吊りだとか、火薬庫に誘爆させて自分も船も木っ片微塵だとか、敵が撃ってくる前に必ず「ヘイ、ガーイ」って言うとか、フライパンや洗濯べらで敵を撲殺だとか、ブランデーをボトル一本一息に飲んでヘロヘロになるとか、笑える要素はいくらでもありますですよ。


●俺の前に立つ奴ぁ……死ぬぜ?

 ちょっと解説を。システム回りはバイオと似た感じで、あれに慣れていればこのゲームも違和感なく操作できます。本当は逆なのにこんな言い方をしなくてはいけない、というのはなんだか切ない気分を呼びますが、まあどうでもいいことでしょう。ただ、こちらのほうがかなりクセがあり、攻撃は主にパンチや頭突き、回復は怪しげな薬、その上トラップ的なアイテムもあるという恐ろしい状況になっています。さすがアメリカ。一応銃器もあるにはありますが、何かあるたび作動不良を起こし、場所によっては使うと自分が死ぬなどということもありますので微塵も当てにはできません。

 それからこのゲーム、ボタンを押しっぱなしにすることで攻撃モードあるいは物押しモードに入ります。両モードはプレイヤーが任意で切り替え、攻撃モードでは武器を構えたりファイティングポーズをとったりし、物押しモードでは両手を前に突き出してゆっくりと歩き出します。自動的にモードを切り替えるというサービスは当然ありませんので、ものを押したあとモード切り替えを忘れ、そのまま戦闘に突入してしまったときはたいがい大慌てでメニューを呼び出すことになります。銃弾の雨の中、突然両手を前に突き出してゆっくりと前進を始める主人公の姿は、何というかすでに悟りを開いてしまったかのような印象さえ受けます。「怪奇探偵」は並みのタマじゃ勤まらないんですね。


●ワイルド探偵映画

 今言いましたが、このゲームの主人公は探偵です。1作目の化け物屋敷の怪を終息させて以来、主人公であるエドワード・カーンビィの名前は「怪奇事件専門の名探偵」として一息に轟いた、という設定です。ということで今回の事件、「令嬢誘拐事件」の捜査もやらされることとなったわけです。

 この「令嬢誘拐事件」、内容は字面の通りなんですが、奇妙なことに身代金の要求がありません。警察もさっぱり当てにならない、ということで誘拐された少女の父親は私立探偵を雇うことにしました。金はありますから探偵の中でも最も優秀とされる男をまず雇ったのですが、彼は「犯人の居所を見つけた、これからそこに侵入する」との連絡を最後に消息を絶ってしまいました。

 そこで登場、我らがカーンビィ。父親の必死の依頼を受け、消息を絶った探偵仲間の行方を探すために自分もその犯人の居場所、「ヘルズキッチン」と呼ばれる屋敷、マフィアの巣窟に侵入するのです。さてカーンビィの運命はいかに。……なんだかホラーものの雰囲気から一転して、スパイアクション映画のような風情が漂っています。まあ実際そんな感じですし、だいたいいきなり屋敷の門を爆破するような展開を見せる物語にホラーもなにもないでしょう。ゲーム中でも、化け物に対する恐怖よりは飛んでくる銃弾への恐怖の方が圧倒的に強いですしね。というかそれ以前に、強烈すぎるバカ要素のため、ジョーク映画以外には見えません


●テクスチャー恐すぎ

 それから、私が遊んだのはプレステ版なんですが、オリジナル版が生ポリゴンだったのに対して今作ではテクスチャーを貼ってみました、という追加の要素があります。が、そのテクスチャーがあまりにも不気味で、却って貼らないほうがよかったのでは、と思うこと請け合いです。まあ、その不気味なテクスチャーが本作のバカ加減を強力に押し上げている、という点は確実なのですが。

 また、やはりプレステ版のオリジナル要素で、ところどころにCGムービーが追加されています。結構いい感じの仕上がりなんですが、全部落下していくときの様子を描いたものなのはなぜなんでしょう。「パコンと地面の蓋が開き、落下したカーンビィが地下道にコロコロコロと転がり出てくる」というシーンに追加されたムービーは、「あぁーあぁぁ……」という壮絶な絶叫とともに中蓋に2度ほど頭を打ちつけ、下にあった池にザブンと落ち込み、排水口にはまってまた絶叫、というものすごいコンテになっています。中蓋に頭をぶつけた時点ですでに死んでいそうな気もするくらい壮絶なムービーです。


●もうすぐ4が出るんだって!

 この「アローン・イン・ザ・ダーク2」、だいぶ前にプレステとサターンで発売されています。やはり異常に難しい、と評価されたようで、攻略本も何冊か出ています(パソコン版の攻略本があれば、それで十分事足りますが)。今だと中古で1,500円程度ですので、余裕のある方は試されるとよいと思います。クリスマスの夕べ、ある屋敷の中で繰り広げられる狂気と爆笑の戦いを、あなたも楽しみませんか?



※1 こんな動物(うろ覚え)