〜ブシドーブレード、同弐〜
機種:プレイステーション
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●もう一年以上前か。早いものだ

 もうずいぶん前の話になりますが。あるとき、以前の勤め先に聞き慣れない会社から小包が届きました。なんだろうと思っていたら、社長が個人的につきあいのある作曲家さんから「昔作曲したゲームのサントラができたので聞いて欲しい」とて送られてきたとのこと。早速開封してみますと、ジャケットに輝いていたのはブシドーブレードの文字でした。

 いやあ、驚いたものですね、あのドラゴンセイバーの曲を作った人がブシドーブレードの作曲もやっていたなんて思いもしませんでした。へー、そんな人と知り合いだったんだ、社長。いや、そんなことよりもあのドラゴンセイバーの曲を作った人から直接モノが送られてくるなんて、と自分宛でないにも関わらず妙に感激してしまったかつての自分。


●しかし、基本的に風の音とかだけなゲームなのになあ

 そんなわけで、会社にてかけてみました。や、懐かしいもんですね。特に、対戦シーンの曲なんかを聞いていると、ズビュシという音と「むグわ!!」という悲鳴(声:井上真樹夫)、続いて「再戦」を選択したときの「ドン!」という太鼓の音が勝手に頭の中で追加される始末。行き過ぎてますね。

 というか、たかだか5年程度前のゲームに「懐かしい」なんて感情を抱いている自分がなんだか寂しくなりましたよ。もう歳です。


●あれからもう5年以上……早いなあ

 そんなわけで、今回はこのブシドーブレードとその続編である弐について喋ってみましょう。まずは初作からですね。

 当時、専門学生でした。昼飯の買い出しで学校の近所のコンビニに足を運んだんですが、そこに今は昔のデジキューブがございまして、それでこのゲームのことを知った次第。コマーシャルを見る時点ですでに何か妙な気配を感じてはいたのですが、実際に遊んでみたらその期待を裏切らない出来栄えで、妙に嬉しかったものです。もちろん、とっても面白かったですよ?

 どうでもいいんですけど、このコンビニ店員の態度が最悪でして。無愛想、つっけんどんなものの言い様、釣り銭を放って返すなど、客商売にはおよそ向かない人間でしたね、アレは。


●個人的にはギルティギアの開始5秒で即死ってのも良かったなあ

 このゲーム、「一撃で死にます」っていうのが謳い文句でしたが、その他にもいくつもフリーキーな要素があってですね。舞台が現代ってだけでもけっこう衝撃でしたが、ほかに「敵にいきなり背を向けて遁走」とか「微妙な卑怯者判定」「俳句」「鉄砲」など、なんというか個人的には大好きだけど、一般にはどうかというような要素で彩られています。

 まあ、そういうフリーキーな部分がすべて密接に絡まったおかげで「クソゲーだー」と言われつつもこんなに有名なのかも知れませんね。


●おら見ただ、背中に旗指物しょった黒い侍が城跡をうろついてるのを

 どんなふうに変か、っていうのはわざわざここで言い直さなくてもいいかな、とも思うんですが、本当のラストボスが変な侍の幽霊だったとかヤクザみたいな奴が乱入してくるとか、そういう込み入ったところにある変な話には誰も触れてないようなのでここで喋っておきます。

 侍の幽霊、てのは「夕霧」という刀に取りついてる亡霊だそうでこのゲームのストーリーに深く関わる、という話なんですが、いま一つピンときません。また、ヤクザみたいな奴ってのは「本郷」っていう人で近所の暴れ者みたいな感じらしいですが、これも脈絡なく現われるので何とも言えません。結局こいつら、正体は次回作の弐になるまでよくわからないのが痛いところ。そのうえ、結局隠しボスだなんつっても台詞が終わった瞬間に払い突きをかければ簡単に死ぬ、というのが更に彼等の印象を薄めます。正直、「なんだったんだ、ありゃ?」という感じでした。


●海外行くときに、刀なんて持って出られるんだろうか

 あと面白かったのが、風閂(かんぬき)というキャラクターのラストボスですか。このゲーム、本当のエンディングに行き着くためには5人の仲間全員を斬ることなく(4人まではオッケー)自分の足で特定のポイントまで逃げきり、そのうえ無傷で残りの刺客を倒す、しかもインチキ武士道(=俳句)というレギュレーションに引っかからないというなかなかに込み入った手順が必要になります。これを満たして通常のラストボス、反崎氏をばっさりやると先ほどお話ししました武士の幽霊やら本郷先生やらの登場、となるわけです。

 ところが、この風閂の場合、この手順を踏んで出現するのが仲間の一人、黒蓮(イギリス人の日本かぶれ。声:井上真樹夫)なんですな。仲間の一人ですから、逃げ回る最中に敵を一人一人斬っていれば自然に敵として出てくる人です。そこで私、考えました。「こいつを普通に斬って、それから本当のエンディングに行き着いたらどうなるんだろう?」 要するに、ラスボスになる前に一度登場させて斬ってしまおうと、そういうことです。では、いざ実行。

全身大負傷状態で登場しました。

 なんて健気な奴! 一度斬られて、また殺られに出てくるなんて!!

 実のところ、ストーリー的には風閂のラストに黒蓮、というのは別に変じゃあないんですが、死にかけのところをわざわざまた出てくる、となるとちょっと状況が分かりません。病床を襲って無理やり引きずり出したか?

 ちなみにこの黒蓮、彼のエンディングでは「ヂス イズ! ブシドー!! ……むぐ!!」と言って割腹してしまいました。なんか大変な美学持ち、というのはよくわかるんですが、彼の場合それが大きく空回りしているというか。


●筆者はこれで6人全員エンディングに行き着きました(表裏とも)

 ここでお役立ち情報。なかなか勝てない、というかまともにエンディングに行き着けない人々にアドバイス。

 逃げるのは簡単ですね? 問題は戦闘を回避できない洞窟以降なんですが、ここで傷ついたり死んだりしたら意味ないですし、更にここで勝ちを焦って俳句なんぞ出そうものならひっくり返りかねません。ということで、俳句に引っかかりづらく、それなりの勝率を持つ方法をお知らせします。

 敵がしゃべっている間にぴったりくっついておき、敵が構えたら(気合いを入れるので分かります)中段の構えから←→中、中の払い突きをかけて下さい。敵が転がって逃げたら→→中の走り込み突きで追撃します。敵が死ぬまで繰り返してください。これで大概はどうにかなるはずです。もっとも、この方法で行っても運が悪ければ返り討ちにあったり俳句に引っかかったりしますが、それは今日の運勢が悪かったと思って諦めましょう。けっこう大丈夫だと思いますけどね。あーそうそう、武器は打刀ですのでお間違いなきよう。


●この殺し屋集団ども、忍者も大量に抱えてます

 さて、弐の話にしましょう。初作での「鳴鏡心当流」道場内における師範代、反崎氏の乱心と内部抗争からしばらくたった後、という背景です。ここで、「鳴鏡」には「捨陰党」というライバル組織があったことになります。ああ言い忘れてた、この鳴鏡も「陰」という暗殺者集団を抱えていまして、それに対する捨陰党ということですな。前作での殺し合いはこの陰の内部抗争、というわけです。いいネーミングですよね、陰を捨てる=光を当てる、で「しゃいん」、Shineって。


●壇ノ浦から続く恨みとはずいぶん根が深い

 この話もずいぶんと根が深くてですね、壇ノ浦の合戦におけるA氏一族とB氏一族の因縁から始まっているとのこと。基本的にBはAを根絶やしにしようと企むわけですが、Aも黙って殺られるわけにはいかないとて高名な武人を招き、鳴鏡道場を設立して武力抵抗を開始します。ここでついでに陰も結成されたもので、逆にBが根絶やしの危機に陥りました。困ったBは何人かの党員を身分を隠して鳴鏡に入門させ、鳴鏡神道流を習得させて敵の戦闘力を取り込みます。

 それからしばらくして、ある程度鳴鏡の技を盗み終えたところでBも道場と暗殺者集団「捨陰党」を設立し、またしても公然と戦いを開始しました。戦いの続く中、前作における陰の内部抗争は絶好のチャンスということで開始された捨陰党の総攻撃、これが今回の殺し合いというわけです。なお、前作の亡霊はこのB氏の縁者(もしかすると本人)、本郷氏は捨陰党の構成員、ということになりました。ついでに、「夕霧」はBがAを斬り捨てるために作らせた刀だそうで、そんなもん作ったから陰に狙われることになったのです。


●でも殺し合いは相変わらず(少し改善)

 こんな感じに物語は非常に壮大かつ深遠、しかもえらく気の長い話ですが、ゲームそのものは相変わらずなんで心配はいりません。防御のシステムに変更がかかったのと、脚をやられたときのペナルティ、ついでに喋っている最中にばっさり、という要素がなくなったのを除けばほぼ変わるところはありません。むしろ、前作では大して意味のなかった「投げつけ武器」の一部に一撃死属性がついた、顔に回し蹴りをくれて倒れたところを刺殺、のようなイカした追加要素があるため、より面白い殺し合いが演出されます。


●変な人協奏曲

 特に語っておきたいのは、二つの組織の抗争になったということでキャラクターがグッと増えたこと。いや、それだけならどうでもいいんですが、この増えたキャラクターどもにはまともな奴がいません。想像してみて下さい、ちょんまげで隈取りべったりのフランシスコ・ザビエルと、アフロでグラサン、紫のフリルシャツにパンタロンのダンサーが刀で斬り合いをする光景。他にも代官とか山伏、忍者、フーテン、軍人、ステテコ、そんなのばかりです。こいつらはデフォルト。

 しかも、隠しキャラという扱いで、前作でプレイヤーに衝撃をもたらしたであろう拳銃使いのカッツェ、そしてカッツェに対抗する意味で武器を忍者刀からアサルトライフルに持ち換えさせられたおばさん忍者、更には百斬の間で登場するラストボス「バカ殿」までが使用可能になるのです。もうここまで来ると、武士のイメージなんかはどこにもありません。バカ殿が一応本物の武士ですが、「痛ぁい」「まろは殿じゃ」「死んだでおじゃる!!」とこのようなボイスが戦闘中に飛び交いますのでそんなまじめな雰囲気はピクリとも醸し出されません。


●当時は若かった(全揃えの話)

 まあ、バカ殿は劇中には登場しないのであくまでもオマケ、としてもいいんですが、しかし他の人々はストーリーモードでも阿呆なやりとりを繰り返したりするので、みんな馬鹿みたいなかっこをしていたりするというのはきっと「過去の因縁」というものを曲解しているか、あるいはどうでもいいと思っているかのどちらかなのでしょう。そういう馬鹿なストーリーを見たい向きは、それっぽい衣装のキャラを選ぶと大概ほほえましいストーリーが待っていますのでまあ遊んでみて下さい。個人的には、トニー梅田や空蝉、墨流や五十八辺りがお薦めですかね。

 ただ、いざ隠しキャラを全部出そうとするとこれがけっこう大変だったりしまして。特に殿様と銃火器所持キャラは100人連続制覇モードでノーダメージ、ノーコンティニューとかノーコンティニュー、15分以内にクリアとかいう条件なのでちょっとそっと遊んだくらいじゃ出てくる気配すら見られません。筆者は夜の9時くらいから始めて、結局両陣営の殿様と鉄砲がそろったのが夜中の2時。100人目で斬られて死んだりして、いやあずいぶん頑張ったもんです。


●私は面白いと思いますが

 ところで、このゲームで対戦してしかもそれが面白いと思った人って、どのくらいいるんでしょうかね。いや、筆者は周りにこれの理解者がかなり多かったし筆者自身もかなり好きなので、4時間くらいぶっちぎったりしてますけど。

 なんといいますか、家庭用で遊ぶ限り、この「一撃必殺」というのは私にとっては肯定できる要素なんですよ。しかも、互いにルールを理解さえしてしまえば攻撃・防御の関係もしっかりしているということに気付きますから、ただ馬鹿みたいに剣を振りまわすだけなんていうことにもなりませんし。

 更にこのゲーム、環境の難しさからやったことないですけど、一人称視点での対戦モードが用意されてます。このモードだと対戦マップが迷路化するそうで、そんな状況であなた敵の後ろから拳銃で狙撃をかけるところ想像してみて下さいなもう。これで互いに拳銃キャラなんか選んでしまえば、もはやこれは「ブシドーブレード」でなくサバイバルゲームですよ。もちろん、普通に剣士キャラを使って背中からばっさり、とかでもいいわけです。あるいは、四つ小路で待ち伏せして文字通り辻斬りを狙ってみるとか。どうですか、面白そうじゃありません? ……一度やってみたかったんだけどなあ、誰も本体持って来なかったんだよなあ……(実は筆者、ダイノバイザーを所有しておりますため本体とソフトさえあれば通信対戦が可能な状況なのです)。


●続編を強烈に期待します

 とにかくですね、キーレスポンスがちょっとよくないのを除けばこのゲームは個人的には強烈にヒットなのです。できれば、このテイストをしっかりと受け継いだ新作をやってもらいたいぐらい。モデルをちょっと綺麗にするだけでもいいから、やってくれないかなー……。あ、プレステ2の「侍」とか「剣豪」ってのも、なんかちょっと惹かれるなあ。

 しかしスクウェアから発売されてる格闘ものって、これといいトバルといいエアガイツといい、なにかこう強烈な独特の味わいを持ってますよね。むしろ灰汁が強いとでも言いますか、ために不評になってるって部分もあると思うんですが、まあもったいない話です。エアガイツとか、面白いじゃないかダッシャー猪場。そういやエアガイツも続きの欲しいゲームだなあ、なんとなく……。

 ああそうだ、これってラストボス二種類、戦い方分からないといつまで経っても倒せませんよね。えーと、神主はフリーランニングから攻撃を繰り返してテレポートを連続使用させ、出現位置が近くなってきたら走りこみ突きなどで追い詰めていけばいつか死にます。鎧のおっさんは背中に回りこんで斬りつければ、角度がよければ即死します。まあ知ってさえいればそう難しくはないはずですが、こいつらはルーチン的にも強めなので気をつけて下さいね。神主に膝蹴られて死んだりしたら笑うしかなくなりますから。ついでに、一度も殺されることなくクリアできれば演舞が見られます(勝ち抜きとは違う演舞)。



●キャラクターで特に印象深い奴等を書いてみます。いっぱいいるけどあえて絞り込んで。

  • トニー梅田

     変な奴筆頭。ダンサーにして剣士、しかも忍者としての訓練も積んでいてそのくせ得意武器は野太刀と、今一つ謎めいた印象。ゲーム中でも、ほんとに何者だか分からない。絡み技で蹴られた時の、「アウゥチ!(ズボシュ)ぶふぇえあ!!」というボイスは耳から離れなくなる。

  • 空蝉

     年季の入った風貌、声:大塚周夫とめちゃくちゃ渋いおっさんのはずが、着物の裾から覗くステテコが全てを台無しにする。いい加減歳なので、そろそろ腹も出てきた。ストーリーでも「温泉から連れ戻された」と悲惨。五十八とのやりとり、「ほぉぉ、ご老体の登場か」「他人のことが言えるか!!」はナイスな組み合わせ。ちなみにこのおっさんのサブ武器は、クリーンヒットで即死属性を持つ。

  • ハイウェイマン

     意味は「追い剥ぎ」だが中身がアレ(武士道にかぶれすぎて割腹したイギリス人。声:井上真樹夫)なので、実に紳士的かつ武士道にかぶれている。彼なりの事情があって捨陰に属するが、使用する剣技は明らかに鳴鏡、というところが謎を呼んでいる、はずなんだけど、最初に書いたとおりあまりに強すぎる個性が彼の正体を声高らかに喚き散らす。今回は割腹しない

  • 五十八

     「いそはち」と読む。70歳になった現在になってやっと決戦が始まったと聞き、やる気満々で参戦するのだが、味方の誰からも「あまりご無理なさらないほうが……」といわれ、常に頭から火を噴きつづける。衣装がどう見ても軍人のデンジャラスな爺さん

     この爺さんはサブ武器が面白く、突然「くわぁぁぁー!!」と叫び、有効範囲内にいる相手に強制的に隙を作るのだ。飛行速度は文字通り音速のため、回避不能という荒業でもある。が、2回しか使えず、それ以降の使用は「くわぁ、げぇっへっへっ!!」と咳き込むこととなり逆に自分に隙を作る。まさに荒業だ。

  • シュヴァルツ・カッツェ

     前作から引き続き登場している、容姿端麗な拳銃使い。ただ、どういうものかひらひらフリルを好むという嫌な性癖を持っている。前作では「殺し屋の美学」と称してモーゼル拳銃などという100年前の骨董品を持ち歩いていたが、一発斬られて妙なオーバードライブぶりを見せ、以前にも増してひらひらな衣装と大型リボルバーを持ち出して仕返しに現れる。

     前作では涼やかかつ気障な話し方をする、好みによっては超美形のキャラだったのであるが今作では話し方や口にする言葉に異常な味が含まれてしまい、間違いなくイメージダウンしている。「老けたねぇ〜!」 なお、今作では銃弾もタイミングさえ合わせれば防御することが可能となっている。

  • 千尋

     捨陰党党首の息子で、後継ぎと目されている存在。なぜか女装して歩くが、彼の日常生活はどうなっているのか。また、辰美に異様なまでの執着を見せる。

     こいつだけ、ちょっと真面目に解説。実は彼には兄がいるのだが、現在は行方不明となってしまっているためこの千尋が強制的に後継ぎ予定に据えられているという事情がある。ところが、千尋は正直な話、捨陰党と鳴鏡の抗争などにはまるで興味がない。むしろ、兄貴がいなくなったってだけで俺が巻き添え食って人生に束縛を受けるのは願い下げ、そう考えている節さえある。

     だが、現実はそう簡単には変わらない。一家の抱える因縁はあまりにも深く、また父には数多くの同志がいる。そのことを考えると、やはり自分は「党首」という生贄にならざるを得ない、ということは理解していたのだろう。その、自分の願いと立場の板ばさみが、千尋に「自分が女性であれば、こんなことにはならなかっただろうに」という思いを持たせ、またその思いが彼に女装をさせているのではないか、筆者にはそんな気がする。少なくとも、ただの異常性癖の持ち主というわけではないはずだ。

     作中最年少の14歳。剣の腕はみかけによらずかなりのものだが、いかんせん体格面に問題があり(かなり華奢。そうでもなければ女装は無理か)、豪傑ばかりが揃う今回の戦いではかなり不利な立場にある。本来の性格はけっこうシニカルなようで、サザンカとの戦いに勝利した後の「変な人。」という一言が彼の性格を物語る。