〜デッド・オア・アライブ2〜
機種:ドリームキャスト他
●全体indexへ ●indexへ



●そんなに揺れるもんなのか!?

 俗にいう「乳揺れ」の頂点に立つ一種伝説の格闘ゲーム、その続編です。一作目の時点では、「おいおいそれはやりすぎだろう」というくらいにぐわんぐわんと胸が揺れ、家庭用では海外発売向けに「胸揺れ 入/切」という異様なスイッチがつけられるほどだったのですが、今作ではそこまで異常な揺れ方はせず、まあ落ち着いたかな(何がかは不明)、という具合ですね。


●いやマジで、いやいやマジで

 なんだかしょっぱなから終末の雰囲気が漂う書きだしですが、私の言いたいのは別に胸揺れのことなぞではありません。このゲームはそんな「乳揺れ」などという見かけだけの要素では終わらない「迷作」加減を見せているのです。あ、いや、もちろん格闘ゲームとしても出来はよいのですが。


●何でなんでしょうねえ、これ

 前作にはなんだか「悪い金持ちがよりいっそう悪いことを企むために開いた、見世物的格闘大会」というようなバックストーリーがあったそうなんですが、その金持ちは前作のエンディングで死んでしまいました。で、最近発売されたこの続編でもまあ物語はあって当然なのですが、私はアーケードゲーム雑誌などには微塵も目を通しませんからどんな物語があるかなんて知りません。まあ、これは格闘ゲームですから物語なんて知らなくたって遊べますし、どういうわけかこういうポリゴンを使った格闘ゲームというのは「設定だけあってエンディングはないものが多い」というお約束のようなものがあるようですので、物語などはあったところで意味がない、という場合の方が多いのです。

 それでまあゲーセンでこれを見かけまして、「あ、出たんだ。じゃあ遊んでみよう」という具合にお金を入れてみたのですが、最後の段になって我が目を疑いました。


●暴れん坊天狗!?

 「全ては!! 我が!! 戯れ言なり!!」というインパクトたっぷりな字幕の後、最後の試合場に立っていたのはなんと天狗なのです。

 一応、前作の最後にはちょっと人間じゃなさそうで一応は人間というキャラクターが据えられていたのですが、まさかこんな人間外の、それも伝説の存在が最後の敵に納まっているとは思いませんでした。こうなると、俄然物語に対する興味も湧いてきます。「悪い金持ちから、どういう経緯があって天狗になるんだ?」 ということで、さっそくあれこれ読んでみました。おお、あったあった。どうれどれ。……?

 要約しますと、前作の悪い金持ちが死んだ以上、誰がこんな見世物大会を開くのか分からない。でも、大会は開かれてしまい、前作同様それぞれに思惑を秘めた暴れん坊たちが集う。後に、これを「世紀末天狗禍」と呼ぶ、とかいう感じのことらしいです。なんですか「世紀末天狗禍」って。アホだなあ、おい。


●これも何でなんでしょうねえ

 すでにこの「天狗出現」の辺りで世界観が崩壊していますね。それで、ちょうどゲーセンにこのタイトルが出てから少し経ったくらいだったかな、雑誌に小さく「北米でドリキャス版発売」という記事が出てたんです。そうなると、これはもう買うしかない! と日本での発売発表を待ち望んでいたんですが。

 はい、皆さんご存じでしょうが、このタイトルは1999年の始め頃にゲーセンに出まして、それから昨年の夏頃にプレステ2に移植されています。で、ドリキャス版の発売が2000年の始め……。おもいきり肩透かしを食った感じです。「なんでじゃあ、なんでドリキャスを先に出さんのじゃ」ってしばらく騒いでました。


●12時間も飛行機になんざ乗ってられるか!!

 まあそれもあるときゲーセンでボロ負けしてからちょっと忘れぎみだったんですが、私2000年の夏頃にちょっと用があって、欧州に行きました。いろいろ名目はあったんですけど、そのうちに「海外ゲームが欲しい!!」というものがありまして、それで向こうのゲーム屋に連れてってもらったんですね。

 そしたらそこでドリキャスの展示やってまして、映っていたのがこのデッド・オア・アライブ2だったんです。驚きました、完全に日本語のままじゃん。画面下に英語の字幕が入ってるんですよ(※1)。まさか海外まで行って忍者の「御免!!」という声を聞くとは思いませんでしたね。向こうの人達って日本語なんかは完全に分からないそうなんですが、そんな彼らに忍者の「しからば御免」という台詞はどんなふうに聞こえているのか、非常に興味のあるところです。

 ちなみに、その記念で買ってきた欧州のゲームは日本では完全に動作せず(なんかツールの類があれば動くそうですが)、コントローラーは動作するもののやけに扱いづらくでほとんどお金を無駄にしたような感じでした。


●テクモってこんなメーカーでしたっけ?

 さて、ようやくにしてドリキャス版が発売されました。最初買い控えも考えたんですが、実際遊んでみるとやはり面白く、結局購入することに。

 それからこのゲームが遊び放題、ということになったわけなんですが、やはり全ては天狗に尽きます。マニュアルによればこの天狗「五百峯万骨坊」って名前らしいんですが、天狗一族の大悪党だそうで、なんでも天狗のボス「鞍馬山魔王尊」を殺して脱走してきたんだとか。それでなんか好き放題始めちゃって、人間の世界に大迷惑がかかっていると。世の害悪はすべてこの天狗の冗談で、人間なんかが彼に立ち向かうのは自殺行為、なんだそうです。読めば読むほどいい感じ、というか、やはりバカです。「鞍馬山魔王尊」ねぇ……。天狗が聞いたら泣くんじゃないか?

 だいたい、このゲームにはかの「忍者龍剣伝」で世界を3回ばかり救っているはずの忍者「リュウ・ハヤブサ」が出演しています。個人的には、邪鬼王だとか凶魔天帝アシュターだとか土偶の邪神だとかが、天狗一匹に劣るはずもないように思うんですよねえ。龍剣はもうないらしいんですが、そんなもんなくても忍術があるだろ忍術が


●これ、けっこう面白いんですけどね

 そんな感じに、すべてが「天狗」のインパクトに押され気味なこのゲームですが、ゲームとしての出来もなかなかどうして、素晴しいものがあります。このゲームには、格闘ゲームには珍しく全てのキャラに「受け返し攻撃」と言えるようなものが装備されています。要するに相手の攻撃を受け流しつつ反撃する、というもので俗に「当て身」(※2)とか言われているものですが、一部の格闘ゲームでは一握りのキャラだけが装備していたために大きくバランスを崩す原因ともなっていたこの手の技が、飛び道具不在の世界にきてまともに効果を発揮するようになりました(要は、普通の格闘ゲームにおけるこの手の技の効果が強すぎたんですね)。

 で、その結果「打撃⇒受け返し⇒投げ⇒打撃」というふうに三すくみができました。この影響か、どう見ても投げが先に発動しているのに後だしのパンチに投げが負けるという場面も結構見かけたりするんですが、その辺の真相についてはしっかり研究したわけでも研究する気もありませんからツっこみは無用です。


●つうか、減りすぎ

 それはさておき、この三すくみがゲームの流れに結構な緊張感をもたらします。自分が地上にいる限りは(これ重要)どれだけ殴られていようが受け返しを発動させることができますから、相手にとってはいつ攻撃を受け止められるかわからず、また攻撃を止められてしまうとカウンター扱いになって巨大なダメージを受けてしまいます。また、受け返しばかりに頼るような相手でしたらそのタイミングを読んで投げを打てば、これもまたカウンター扱いになって巨大なダメージが出ますので、地上戦である限りは常に相手の動きに気を使っていなければなりません。

 まあもっとも、私自身そんな器用な真似ができるほど大した人間ではありませんから、そういった意味ではメーカーの意図したであろう楽しみ方はしていないんですけどね。


●大の男があんなに浮くかぁ!!

 それから、私が遊んでいてちょっとこれはどうかと思ったことなんですが、このゲームに限らずポリゴンを使った格闘ゲームにはほぼ確実に「浮かせ」なるものが存在します。要するに相手を特定の条件で殴った場合、相手が空中に高く打ち上げられるというものなんですが、これをやられてしまうと落ちてくるまで完全に無防備で、かつ落ちるまでの時間を短縮できないという非常に危険な時間が生まれます。

 初めにこういう攻撃を考えた人というのは大したもんだと本当に思いますが、やられるほうにとってたまったものでないのは事実です。実際、「バーチャファイター」なんかでこの「浮かせ」の一発からそのまま致命的なダメージにまで膨れ上る、という状況を何度も目にしてきましたし、このゲームでも同様です。先ほど、「地上にいる限りは」と断わったのは、この「浮かせ」があるからなんですね。


●それ以前に、人間はあんなに浮かねえ

 私の知る限り、こういったポリゴン格闘ゲームで「浮かせ」による理不尽な連続攻撃(※3)から逃げる手段を用意したのはナムコの「ソウルキャリバー」だけです。まったく、どういうことになっているのやら。特に「バーチャファイター」なんかはバーチャル、仮想現実を謳ってるんですからもうちっと考えて下さい。え、「仮想」現実だからいい?

 ああそうそう、ここだけ見てると空中コンボ否定に思えるでしょうが、「ソウルキャリバー」にもこういう空中コンボは存在します。ただ、「ソウルキャリバー」に関しては必ず食らう羽目になるのは一発だけ、そのあとはプレイヤーの意思で逃げられますので多段空中コンボを食らうほうが間抜け、ということになります。ですので、私が言いたいのは「多段」空中コンボは嫌、ということです。そこんとこ、よろしく。

 だってさ、180センチも身長あるような人間が1メートル近くも宙に浮いて、そこから何発もジャブでベシベシ殴られてそれがために地面に落ちないなんてのはどう考えたって変でしょ。ねえ?


●生き恥みたいな衣装もあります

 でもまあ、どうせ対戦やる環境にない人間にはそんな「浮かせ」の話なんてどうでもいいことっちゃあどうでもいいことです。もうゲーセンでも見かけませんし。てなことでこのデッドオアアライブ2、安かったらお買い得といえるでしょう。まあ、1人遊びにはあまり向かないゲームではありますけどね。

 そうそう、それからこのゲームにはいろいろ頓痴気な衣装が用意されています。出すのも容易ではないですが、中にはかなりくだらないものなどもありますのでまあこれも一見の価値ありです。でも、個人的に影牢とかの衣装は胸のでっかいお嬢さんが着るものではないと思うんですよねえ。

 しかしこれ、キャラクターデザインと恥ずかしい衣装にばかり注目されてますけど、戦闘時のキャラクターのアクションなんか死ぬほどかっこいいんだよな。かすみの2回転蹴りやら後転蹴りやら、すごいじゃない? ああいうところ、もっと注目されてもよさそうなのになあ。



※1 字幕

 実は、ここで取り上げているドリキャス版は海外版がベースのようでして、海外版の特徴をいくつか備えています。で、それらはスイッチによる入/切が可能になっているんですねー。字幕を「入」にすると日ごろ聞きなれている台詞が違ったイメージになるため、結構新鮮な感じが味わえます。やっぱかすみさんはお下げの方がいいなあ。


※2 当て身

 なんだか知りませんが、餓狼伝説シリーズで「当て身投げ」なる技が登場して以来、このような「相手の攻撃を受け止めて反撃する」という効果のある技を「当て身技」とかいうようになってしまいました。本来なら、時代劇のように腹とか首筋とかに一撃食らわせて気絶させるもののはずなんですが……。

 なお、「蒼魔灯」で主人公のみぞおちに当て身を食わせて気絶させるというシーンがありましたが、実際みぞおちに一撃食らった場合、のたうち回る人間は山ほどいるが気絶する奴なんかいない、というのが実際のところのようです。


※3 理不尽な連続攻撃

 最初の一撃をもらい、そこからずっと殴られ続けて何もできないまま終わる。最初の一撃をもらう方が悪い、てのは理解できますが、そこから先は別口の問題だと感じますね。この手のポリゴンモデルによる格闘ものの場合で空中に浮かされてしまった場合に逃げる手段を提示したのはソウルキャリバーだけでして、それ以外はほとんど「浮かされたら終わり」というような光景が待っています。

 まあ、いっそそれで完全に開き直って「浮かせることが至上!」というような具合に仕上げてあるのならそれはそれでいいんですが、このデッド・オア・アライブの場合は「ホールド」といういつでも連続攻撃から逃げる手段が存在するという部分とのギャップが気に食わないんですよね。ホールドが駆け引きの要素を持たせているのに、浮かせのせいで全部台無しです。少なくとも私にはそう見えます。浮くなら浮くでいいから、逃げる方法を用意しとけと。