〜モータルコンバット〜 機種:アーケードほかいろいろ |
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●これ、知ってますか? アメリカ産のクレイジー格闘です。とかく日本では「ブン殴ると血が噴き出して、試合が終わった後に相手を惨殺するクソゲー」くらいの認識しかされておらず、誰に話しても「何、ソレ?」とか「ああ、あのクソゲーでしょ?」、果ては「知らないけどなんかクソゲーっぽい」などという反応しか返ってこないという現状は一ファンとして非常に憂慮すべきものであると思っております。確かにそういうゲームではありますけどね、結構よく出来てるのよ、これ。
●こんな生い立ちもともとはこのゲーム、ゲ−センで動いているゲームでした。何を思ったかタイトーがちょこちょこ輸入したようで、レアもんではあっても稀にその姿を見かけることはできました。あんまり不気味な雰囲気と馴染みづらい操作性、異常に強い敵のルーチンなんかが客足を大いに遠ざけたようですが。 で、あるときアクレイムジャパンという会社がこれの権利を買い、家庭用ゲーム機に持ち込みました。2を発売したときには必殺技一覧表をおまけにして配ったりしましたし、あっちこっちに宣伝も打ったようですからそれなりに力を入れていたんでしょうが、結局惨敗。この敗北が原因かどうかは知りませんが、以後の作品はアクレイムの手を離れてしまいました。以後の作品はソフトバンクあたりが権利を入手したようで、「黒船サンパチシリーズ」という冗談のようなブランド名にまぜ込んで発売していましたが、これもまたあっさりと消滅し、その後日本では発売されなくなったというのがこれまでのいきさつです。
●なんで実写取込みのゲームは全部変なんだ?さてこのゲーム、キャラクターはすべて実写を取り込む事で描いています(もっとも、最近はポリゴンによる描画に切り替わりましたが)。まあ要するにそれぞれのキャラの衣装を着て、それぞれメイクをして、その姿で飛んだり跳ねたりするところを写真に撮って、その写真をアニメーションとして使っているわけですね。ということでそれなりの俳優さんかなにかをつれて来たらしく、顔だちやスタイルなんかはなかなかのものです。さすがにザンギエフのような人間離れした筋肉や、不知火舞のような通常では考えられないほど見事なボディラインはありませんけども。 しかし、俳優がどんなものであっても、キャラクターが異常ではあんまり意味がないと思います。高天原の雷神(すげ笠かぶって全身スパーク、目は常に放電中)とか、日本国追放の経歴のある犯罪大王(片目が金属の義眼になっている)、中国忍者(説明不能)、魔界在住の怪人(説明不能)、サイバー中国忍者(……)などなど、そんな化け物みたいな奴しかいないんですから。こんな連中が実写のリアルさで殴り合い、血を噴き、首をもいだり頭吹っ飛ばしたり2枚におろしたり自爆したり地球吹っ飛ばしたりするんですから、もう何と言っていいやら。 アメリカではこの辺の気色悪さと異様なバイオレンスぶりが御父兄の神経をゴリゴリと刺激したようで、かなり突き上げを食らったそうです。日本でも血→汗に差し換えられたり、緑色の血を噴く(※1)ようになったりと「お子さまでも安心」モードにされておりました。
●ボスではない、エンペラーだ!!格闘ものにはつきもの、ボスキャラも当然います。ですが、日本に見られるような、どっかの戦時中の魔人みたいな親父だとか、街を仕切る悪者だとか、そんな小さなものではありません。なんせ人間でないですから。 魔界在住の怪獣人間「ゴロー」と「キンタロー」は腕が4本ある頼もしいアニキ、「モタロー」は腰から下が馬みたいなこれもまた頼もしいアニキです。名前がとっても気になりますが、つっこんでもきっと誰も返してこないでしょうから目をつぶりましょう。その怪獣人間を仕切るおじさんは、魔界の大王「シャオ・カーン(※2)」。こいつはちょっと衣装が恥ずかしいですが、まあ人間の形をしていますのできっちり俳優さんが付いています。巨大なハンマーを振り回し、人を指差して「You will die, Mortal!(お前は死ぬのだ、卑小なる者よ!)」とのたまうその姿には、これまた日本のボスには感じられない威厳(バカ威厳含む)のようなものが感じられます。個人的にはオロチとかも全然それっぽくないんで、このくらいブッ飛んだデザインにしてもよかったのでは、とか思ってしまいます。まあ、好みの問題ですからどうでもいいっちゃいいんですけど。
●これは格闘技じゃない、闘いだ! (2のキャッチコピー)さっきもちょっとお話ししましたが、このゲームの最大の特徴は、対戦相手を惨殺するところにあります。天草降臨? あれは邪道な紛い物です。もう、雑誌で断末奥義(※3)が公表されたときなんか、「うっわ、スケールダウンしてパクってやがるぜ!」とか思っちまいましたよ、ええ。普通にやっててもばっさりいくんだから、わざわざない容量ひねって普通の技モーション使いまわして、そんなどうでもいいような演出を付け加える必要なんかなかったと思うんですがねえ。相変わらず偽アイヌ姉妹には効かないんだし。 話を戻します。「対戦相手惨殺」の本家本元であるこちらは、この惨殺手段、すなわち究極神拳(※4)に大きく気を使っております。一人一人きちんとキャラの特徴を生かしたような見せ方を考え、コマンドはすべて別に作り、間合いにも細かい調整を要求する、このくらいは当たり前と言わんばかりです。全部で50人を超えるようなキャラクターの数なんですが、まあすごいものですね。これだけ気を使っているんですから、当然相手が何者であろうと、お構いなく地獄送りです。年頃の可愛らしい少女だからとお目こぼしをもらうようではいかんのです。もっとも、そんなスイーツなキャラはこのゲームの世界のどこにもいませんがね。
●忍法、地獄送り!! (違う)その惨殺手段も、作が進むにつれ広がって参りました。脊椎引っこ抜いたり心臓ぶっこ抜いたり、というものからアッパーカットで相手の首を三つに増やす、生きたまま火葬、両腕を引き抜く、頭を食ってしまう、さらに生皮を引き剥ぐ、瞬間冷凍、びっくりさせて地獄行き、目から怪光線、ゲーセンの匡体でプレス、しまいには地球ごと爆破という発狂ぶり。3作目あたりから、不気味という印象よりも冗談のような印象を受けるものが増えてきております。さらには4作目からポリゴンになり、あらゆる角度からキャラを見せられるようになったもんで、千切れた首がカメラに直撃したりしてもうすごいことになっちまってます。まあ、どれも一見の価値はありますので、隙あらば御覧になるのもよいでしょう。 ちなみに、ぱっと見にはどれも残虐非道ですが、よく見ると全部人間では実行不可能です。ドラゴンボール的な超人に、常人のひ弱さも装備させるとああいうとんでもない技が実行できるんですかね。真似したい人は、まず10倍の重力に耐えてみましょう。
●オトモダチニナリマショー また、1作目では一人につき惨殺手段が1つのみの装備で一回見たらもういいや、てな感じだったんですが、2作目からどうやら制作者が発奮したようで、惨殺手段が一人2つ、また洒落技を2つ装備と前作に較べて大幅なボリュームアップを見せております。この洒落技がまた壮絶で、ミラーボールを降ろして踊り出したり、帽子からウサギを取り出したり、自分のプロマイド(サイン入り)を渡したり、そのうちエスカレートして影絵を始めたり皿を回したりマシュマロを焼いたりとどんどん壊れていきます。これを実行するのに、防御してはいかんとか蹴りしか使ってはいかんとか、こういうとんでもない制約がつきますもんでなかなか見られんとは思いますが、これも隙あらばご一見を。
●どこにでも死は転がっているもんさついでに、これはどこの格闘ゲームでもそうですが、とんでもない場所で戦わされるのを見た事はないですか? 崖の上にかかった細い鉄橋の上だとか、走行する列車の上だとか、クレーンに吊られた鉄骨の上だとか。どこも一歩間違えば地獄行き確定な場所にも関わらず、よくもああ暴れられるもんだと思いますが、日本の格闘ものでは絶対に落ちません。一つ落ちるゲーム(※5)もありましたが、落とされた奴は足場をやっとこさ掴んで九死に一生、みたいな状況になるんで結局死にません。 しかし、我らがモータルコンバットでは違います。橋の上なら奈落の底へまっ逆さま、毒池のほとりなら毒池にまっ逆さま、駅なら走ってくる電車の前にポイなど背景を十二分に生かした殺し方が用意されてございます。よく考えるもんだと呆れつつも感心します。人間の想像力ってすごいんですね。
●実は良作?さっきから見た目の部分ばかりに話がいってますが、じつはなかなか面白いアイデアが練り込まれてもいます。例えば、飛び道具が圧倒的に弱いとか。このシリーズでは、飛び道具同士が相殺しません。また、しゃがめば完全に回避できるものがほとんどです。さらに発射時の隙もやたら大きいもんで、日本人がよく考える「待ち」はちょっとできません。「無敵時間」もほとんどないことですしね。 そう、ないんですよ、無敵時間なんていうものは。このゲームでは、倒れていようがどうしていようが、容赦なく攻撃はヒットします。倒れた相手に対して足払いを仕掛ければ、また相手は倒れます。間合いに入って投げをうてば、倒れた相手を引きずり起こして放り投げます。恐ろしいですね、一瞬たりとも気は抜けません。なお、倒れている時の攻撃に対しては、インパクトの瞬間に下段の防御を行う事で防げます。起き上がる前の投げについてはジャンプを入力して逃げましょう。倒れる前から押しっぱなし、では効果がないので注意。倒れた時点で再入力しましょうね。……確かそれで防げたはずです。
●日本の格ゲーが終わってるんだよ!!それと、連続攻撃などによる気絶がないかわりに相手を確実に行動不能にする攻撃があります。はい、日本にもありましたね、こういう攻撃が。連続攻撃に組み込まれると気絶気絶のまた気絶、で金をドブに放り捨てるほうがマシだったという状況(※6)になるんですが、このモータルコンバットでは6ヒットを超えたあたりで気絶技が使用できなくなります。いいですね、こういうさりげない配慮って。何も考えずに新しい技、仕様を作って収拾つかなくなる日本の格闘ゲームとはえらい違いです。 さらに、4作目ではライフゲージの半分近いダメージを一定時間内に与えると「最大ダメージ」と表示され、両者がいきなり倒れて仕切り直しになります。こういうのもいいですね。もっとも、「最大ダメージ」システムは倒れても武器を落とさないからあんまり意味がないようにも思えますけど。でも、日本の格闘ゲームに「最大ダメージ」システム積んだらすげえ面白そうだと思うんですよ。エリアルレイブ中にいきなり攻撃側もぶっ飛んで、プレイヤーが「何だ!」って騒ぎ出すという。開幕直後にいきなり致命的なダメージを受けることは絶対なくなるわけですし、こんなのどうですかね?
●否定的意見だってー実はこのシリーズ、アメリカでは大人気です(今はどうか知りませんが)。御父兄の突き上げもなんのその、てなところですかね。で、このことについて、ある本にこんなようなことが書いてありました。アメリカから来たと言うゲームコレクターの方のお話だそうです。 「モータルコンバットはクソゲーだ。動きは遅いし、血はドバドバ出るし。子供達があれをもてはやすのは、親に反抗するためだ。親がやめろということをすすんでやることで親に反抗してるんだ」 まあ、一面で正しいっちゃ正しいんでしょうけどね。でも、私は思うんです。ほんとにそれだけか? って。これもまたある本に載っていた話なんですけど、アメリカでは通信対戦台でなくても対戦を挑んでくるらしいんですよ。「乱入していいか」って断って。これって、楽しんでいる人もまたいるってことじゃないですか、たとえ少ないにせよ。子供にだっていると思いますよ、好きで楽しくて遊んでる奴。親に反抗するためなら、親の前でだけわざと遊んでみせて、それ以外には遊ばんでしょ。わざわざ金払ってってんならなおさらです。決めつけちゃいかんよ、ってね。
●しかし、ほんとのクソゲーってどんなんなんでしょうね?ついでに、クソゲーと言い切るにはちょっと根拠が弱いと思います。動きが遅いったらゼビウスだって遅いし、血が出るったらほかにもいろいろあるでしょ。コズミックカルネージとかバーバリアン(※7)なんか凄いみたいじゃないですか。 で、思ったんですけど、これって見た目だけのことですよね。ゲームそのものの本質にはあんまり関係ない、ぱっと見で判断できる部分っていうか。ここで言い切りますけど、このゲームに限らず、ゲームには「動きが遅いからゲームとして成り立ってる部分」てのが確かにあります。チャカチャカと早回しのように動き回る、ってことだけでいいゲームにはなれんでしょ。それから血が出る出ないってのは好みの問題です。 クソゲーって評価を与えるんなら、きっちり遊びこんで、もっと本質的な部分を指して言わなきゃだめだと思いません? ぱっと見てだめっぽいからクソゲー、では好みに合わないゲームみんなクソゲーですぜ。 まあ、どんなんであれ元ネタは他人の意見なわけですから、頭っから否定はしませんけどね。私自身ちゃんと調べたわけでなし、そんな状態で「これこそが正しいのだよ」って押し付けたって全く意味ないですし。ま、これもまた一つの意見ってことで。
●映画版のお話 バカな侵略者ちっと話がそれました。はい、知っている方もいるかと思いますが、モータルコンバットは同じ名前で映画になっています。さすがに血ィ噴いたり背骨引きずり出したりというようなデンジャラスな描写はありませんが、この世界の持つ歪んだ東洋観と妙に殺伐とした雰囲気はバッチリ再現されています。アクションシーンもちょっと短かめですが、よくできてると思いますんで、このモータルコンバットがどんなもんかをてっとり早く知りたいのならお勧めです。作中に「Finish Him(ブッ殺せ!)!!」「Fatality(対戦者死亡)……」「Frawless Victory(完璧な勝利だ) ……」などどこかで聞いた台詞もガンガン入ってますからまだ見てないファンのかたも是非。 ついでに続編も出ていますが、こちらは日本では上映されませんでした。やはり「つまらん」と評価されたからでしょうか。しかしレアかというとそうでもなく、ビデオでならいくらも転がっていますので容易に観賞できます。こちらは前作の頑張りぶりから一転、雰囲気こそ受け継いでいるものの登場人物が多すぎて原作を知らない人にはさっぱり、という状況になっています。原作を知っていれば知っていたで今度は可笑しくてしょうがないんですがね。個人的なヒットは、ある中国忍者と魔人シャオ・カーンの会話。 ●ああ、黄昏の季節 今となっちゃあ動いているゲーセンなんかほとんど無くて、さらに家庭用も買ったやつ自体が少ないもんだから中古市場にも流れないという悲惨な状況ですが、我こそはと思う方は探されてはいかがでしょうか。まあ、常人ではちょっとキツいと思いますけどね、難易度的にも雰囲気的にも。理解できない方も多いでしょうから、お勧めはしません。
※1 緑色の血 赤い血を噴かせると販売基準に引っ掛かる、かといってまた汗にするのも……という葛藤があったかどうかは知りませんが、スーパーファミコン版の2作目は血が緑です。却って不気味になってます。これなら出血スイッチをつければ良かったろうに、と思うんですがね。
綴りは「Shao Kahn」。アクレイムは「ショウ・カン」と読んでいましたが、綴りがこうですからあえて。映画では主に「カーン様」。
「サムライスピリッツ天草降臨」で追加された、偽フィニッシュ。ある条件を満たして勝利することで一定時間与えられ、その間に画面に表示されているコマンドを入力することで相手を斬殺することができる。本家に較べて受付時間が圧倒的に長く、コマンドは画面に表示されているため探す必要もない、といえば聞こえはいいが結果見られる死に様があまりにもチープであり、結局はスケールダウンの模倣に過ぎないため本家のような達成感などは全く感じられない。 ちなみに、本家モータルコンバットは受付時間が一秒程度、コマンドはすべて隠しで間合いなども自ら調整しなくてはならないため、情報を知らなければ発動はまず不可能。
アクレイムが日本でモータルコンバットを発売する際に惨殺行為につけた名前。原語では「Fatality」で意味は「死亡」。最近はマニュアルやチュートリアルにコマンドが表示されるようになり、ちょっとフレンドリー。
餓狼伝説3。池に落ちたり沼にはまったり海に落とされたりクレーンからほうり出されたりととにかくよく飛ぶゲーム。奥飛ばし技でとどめをさすと落ちます。手前飛ばし技だと、カメラに向かって飛んでくるという変な凝り具合。
真サムライスピリッツにおいて、敵に杖を突き刺して引き寄せ、気絶させるという技を持っている奴がいました。で、一発それをヒットさせたあと、通常攻撃を一つ当て、それにキャンセルをかけてまた引き寄せを出せばあら不思議、嫌でも相手に勝てます。実際の対戦において本当にこういうことをしてくる奴がいるんですからどうしようもないっていうか。
コズミックカルネージは、以前スーパー32Xにあった「サイバーブロール」のアメリカでのタイトル。多少キャラクターの顔が変わるだけで、基本的には同じものです。これのすごさは「日本人の企画、製作」というところにあって、純粋な日本製のくせに首が飛んだり両手が飛んだり、全身爆砕の憂き目に遭ったりと大変なことになっています。マジで日本製? 面白いのはキャラクターが何者であろうと死に様は変わらないというところで、怪物だろうが15歳男だろうが19歳女(割と美人)だろうが、容赦なく死亡ということ。ははははは、見目いいという理由でアイヌ姉妹だけお目こぼしをもらってるインチキ殺人ゲームとはえらい違いだ。 バーバリアンは昔パソコンにあったという武器格闘ゲーム。手に攻撃が当たれば手がぼとりと落ち、胴に当たれば血を噴いて泣き別れになるというものだそうです。終わった後、黒いローブの死神みたいな奴が死体を捨てに来るんだってさ。 |