〜闘神伝3〜
機種:プレイステーション
●全体indexへ ●indexへ



●過去の栄華も今は昔

 闘神伝といえば、プレステ発売当初は「すごい作品だ」ともてはやされたものですが、作を重ねる度に評判が落ちていき、最近ではダメゲーム扱いさえ受けています。どんなものかな、と思い先日ひっさーしぶりにこの闘神伝3を起動してみたんですが、いやコレいいですね、大馬鹿なゲームでした。あ、いや割といい意味で。久しぶりです、ほんと笑ったのは。


●ゲーセンにもあったのね

 私、闘神伝はゲーセンにあった2をちょっと遊んでいたくらいで、その時点から「あー、こりゃダメだね」と思っておりました。やけに重いキャラクターの動作、カメラアングルの調整不足、ダメージバランスのいい加減さ、コンピュータの異常な強さ。もう、まさに嫌がらせ。「強い」とかじゃなくて、すでに「理不尽」でして。騎士の「早く立たないか!」(声:故・塩沢兼人)に戸惑う相手を見たときくらいしか楽しいとは感じませんでした。

 いやね、このゲームでわざわざ乱入してきた「勇者」がいたんですけれども。その相手はゲージを貯めて使う必殺技が異常に強力なキャラクターを選択し、かつ戦闘中もあからさまにそれを狙う素振りを見せていたのですが、私の選んでいた騎士の「早く立たないか!」はその必殺技ゲージをゼロにするという恐ろしい効果を持っていたのです。かわいそうに、知らなかったんだろうね。結局彼は何もできないまま数回連続で敗北を喫してしまいましたとさ。倒れるたびにゲージをゼロにされては切り札も使えませんものね。


●塩沢さんに敬礼

 それでまあ、なんとなくこの闘神伝3も買ってみたんですけれども。とりあえず、2でも使っていた騎士を選びます。あれ、キャラクターのセレクトグリッドに入ってない奴しか敵に出てこない。何事かと思いつつ、何回かコンティニューしてクリアしたんですが、結局見知った顔は隠れキャラだったショウ兄貴(※1)だけ。相変わらず文字だけのエンディングをさっさと読み飛ばしたあと、再度チャレンジしてみると。おや、騎士の下に、騎士と同じ技を使っていた敵キャラの顔が入ってますねー。ということはなにか、この16人程度のキャラクター全部で解くのか

 ええ、解きました。個人的に女キャラは使いたくないのでその辺はそれ専門の悪友に任せ、無我の境地で解き進めました。さあ、一通りそろった裏キャラたちの顔ぶれを眺めてみましょう。


●世界変人ショー?

 海賊、占い師、真面目なセコビッチ、野盗まがいの剣士、曲芸師の女の子、天狗、ロボット、南太平洋の住民、ネイティブアメリケン、子供ジェイソンマイケルジャクソン。なんですかねこれは。ここに並べてない他の連中もまあ似たようなもんでして、要するに冗談みたいな奴しかいないと。

 で、それぞれ元ネタとなったキャラと基本的に同じ技、同じ動作をするんですが、このゲームにはやたらとキラキラした声で喋る、奇抜な衣装を着た可憐な(そういうことにしておきます)踊り娘がおります。こいつに対応する裏キャラは南太平洋の住民なんですが、デザインなんかは別ものというか、既に違う世界の住人となっていまして、そのくせ動きは同じなものだから、両手でだだをこねるように相手をグサグサと刺しまくった後「バカー!」と突き飛ばす技などはまさに悪夢の中の光景です。ご丁寧に、「バカー!」のところは「やってもうたぁ〜!」に差し替えられておりました。勝ち台詞は「グェ〜、やったモンだビィ〜!」。……確かに「やってもうたぁ〜!!」なのは間違いないが、しかし何だといって、どういう意図でこんなキャラに?

 それからこの2キャラクター、動きが同じな分性能なんかも基本的にほぼ同じですが、一つ明らかに違うところがあります。踊り娘には飛び道具の類がないのですが、南太平洋の住民には吹き矢が装備されているんですね。でも、弾数制限があるうえにダメージがまったくないという意味のない代物です。「役に立たない飛び道具がついただけでここまで外見がイメージダウンてのもすごいな」とは私の友人の談ですが、まったくその通りだと思います。イメージイラストだと顔立ち自体は悪くないのに。


●愛しき変人ども

 せっかくだから、もう少しお話ししましょうか。主人公に対するライバル的な扱いでスマートなバウンティハンターがいるんですが、こいつの裏キャラはマイケルジャクソンの偽物です。白いスーツの上下に黒いシャツ、白の帽子でボイスは主に「ホーウ」。超必殺技を発動させると股間に手を置いて腰をクイッとひねり、または体をとんでもない角度まで傾けます。入力なしで5分近く放っておくと、「ホウ、ホウ、フー、フー」と踊り出す始末。もう、あからさまに映画を意識しています。このキャラ、飛び道具が投げナイフなんですが、ここまで真似するんなら指先から星をキラキラ飛ばす「ムーンパワー」を飛び道具にすればよかったのに、と残念でなりません。もちろん超必殺技は、ロボに変形してのレーザー全方位攻撃しか選択の余地はありません。ここは吹っ切りきれなかったスタッフに残念賞です。

 この偽マイケル、こいつを「それ専門の悪友」(マイケルジャクソンファン)に一通り動かさせたところ、「これはファンへの冒涜だ」とのお言葉がいただけました。メガドライブの「ムーンウォーカー」はあんなに喜んでたのにねえ。

 まあ他にも、なんかドス低い声で「チョー、エム、エム」とかのたまう変な海賊(これ、真似したら周りに大爆笑されました。なんですか、チョーマジムカツクの略だってほんとですか?)とか、総ての攻撃がダメージによって中断されない、いわゆるスーパーアーマー状態に設定されている子供ジェイソン(でもそもそもの性能がそんな良くないから強くない)、んでこいつの表キャラが武器がチェーンソーの少年という、武器格闘ゲーム史上恐らく最初にして絶後のキャラクターだったり、そんなのばっか。このチェーンソー小僧、戦闘開始前にスターター引っ張るのが素敵です。挑発の「切り札」(拳銃。でもそれが標準装備のキャラもいる)が全然切り札になってないのもナイス。もう少しビシッと締まった性格してたらすげえかっこよかったのに。あとは、女ヤクザの「耳から手ぇ突っ込んで、奥歯ガタガタ言わしたるでぇ!?」という脅しが実に印象深いところ。


●いや、でもヴァーミリオンはほんと好きよ

 ……どうもキャラクターの方向性を決めた人々がふざけてた、としか思えませんね。基本的に、表キャラクターに比して裏キャラクターにはクレイジーしかいないようです。表が変人な場合はさすがに裏は少しまともになりますけど、それでもなあ。ああそうだ、拳銃使い二人は表も裏もかっこよかったですね、表は人情デカで決め台詞が「女房子供が泣いてるぞ!!」、裏はジャンプ攻撃で地面に大の字に伸びたりダッシュ攻撃でごろごろ転がったり、……なんかどちらも微妙ですけど。結局ほんとにかっこいいキャラクターってのはいないんですねこのゲームには。リロードの様子とか早撃ちとか、そういうのはどっちもすごいかっこいいのに。


●宗教の首領がなんで波動拳撃つんだよ!

 さて、裏キャラの他に、使用可能になるキャラとしてボス4人がおります。うち二人がまたしてもコンパチキャラ、であとはショウ兄貴と、バウンティハンターの養女。……なんで小学生にもならない子供がいるんですかね。なんでも親父の技を見よう見真似で覚えたという将来性抜群な子供らしいですが、すると口から火を吐くのも才能の一つなんでしょうか。もしそうなら、私もぜひあやかりたいものです。


●爆ぜよ我が魂!!

 キャラクターのことだけで終始するのもなんなので、システムのこともちょっと喋っておきましょう。基本的なシステムは剣攻撃の強弱と蹴り攻撃の強弱、側転の奥、手前と、これまでとまったく同じものです。ただ、デフォルトの試合本数が一本なのと、試合場がカベに囲まれたこと、それからソウルボムという用途不明の攻撃が追加されたことが大きな変更点として目立ちます。

 このソウルボム、ぱっと見には緊急回避に使うものにも見えるんですが、やっぱり何だか分かりません。というのもこのゲーム、全体的にダメージが小さく設定されており、体力ゲージ自体もやたらと長いもんでどんな攻撃を受けてもあんまり痛くないんですね。連続攻撃も分岐ルート固定のチェーンヒット攻撃しか存在しなくなりましたから、前作のような「飛び込みの強剣から何たらかんたら」というようなオリジナルの攻撃及び致命的なダメージを与える連続攻撃は実行不可能です。ということで、緊急回避、という使い方には現実味がないなと。どうせ食らいモーション中には使えないんだろうし。

 ではどうするのかというと、相手を壁に押し付けてそこでボム発動、ヒット回数をチマチマと稼ぐ、といった使い方がベスト、ですかねぇ。そうそう、話をちょっと前に戻しますが、さっきの踊り娘と南太平洋の住人。このソウルボムを使ったときのモーションも同じなんですが、踊り娘がハートの噴水を作るのに対し、南太平洋の住人はドクロの噴水を作ります。空中でボムを使うと、片手を上に高くかざし、もう一方の手は腰に当てて小首をかしげた状態でそれぞれハートのバリアとドクロのバリアを張ります。キラキラキラキラ……という音とともに噴き出すドクロは、きっとあなたの心に忘れ得ない体験として刻みこまれることでしょう。


●表キャラにも変人が結構います。弱外道ガスはマジで必見

 普通、対戦ゲームなんていうと勝ちを争うがために場の雰囲気が荒みがち(※2)なんですが、このゲームに関してはそんなことはありません。勝負もクソもないからです。得体の知れない怪人が居並ぶ「奇人変人びっくりショー」のような世界にストイックにも勝負なんて求めたところで、うまくいかないのは目に見えるでしょ? 奇ッ怪な生き物たちに笑わされて勝負どころでない、ってのがオチです。てなことで、いい加減値段も落ちてきたし、場の雰囲気をほぐすためのぬるま湯としてこのゲームを使ってみるのもいいんじゃないでしょうか、なーんて。だめですか?


●注意:

 実際、こう言いはしましたが、長持ちするもんでもないんで、宴会かなんかで30分限定で起動させる、くらいがいいと思います。長く起動させると疲れるよ。

好きなキャラ:デューク(『早く立たないか!』)、デヴィッド(チェーンソー)、ヴァーミリオン(回転リロード、ワイヤー、連続撃ち)



※1 ショウ兄貴

 1作目からいる隠れキャラで、主人公の兄貴兼師匠。強さを求めて……なんていう、よく聞く理由で行方不明。強さを求めすぎたせいか、2から相手と自分に問答無用で絶大なダメージを与える割腹を修得してしまった。また、同じ名前で効果が違う技を三つ持つ変わり者。声もなにかある度変わる。


※2 場の雰囲気が荒みがち

 だいたい勝ちたがり屋がいるとこうなる。勝てないとどんどん不機嫌になり、しまいに暴れ出すので困り者。以前友人とコラムスをタッグでやっていたら、「俺の連鎖を潰すな」とか始まってどんどん不機嫌になっていき、最終的に一触即発の状況にまでなったことがある。「俺の連鎖」ってそんなことは知らねえよ、なあ悪友。普通、コラムスのことで殺し合いなんてしないぜ。