〜セガエイジス 北斗の拳〜
機種:プレイステーション2(セガマークIII)
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●そのうちメガドラのゲームも蘇るのかな

 最近なんですか、セガがむかーし出してたゲームなんかをちょいちょいリメイクしてプレステ2に出してますね。タイトルの選択もナイスみたいで、スペースハリアーとかファンタジーゾーンとか、好きな人なら喜びそうなものばかりです。特にファンタジーゾーン辺りはある友人にやらせたらそれこそ半日でも戦っていそうな感じがします。

 ま、この「北斗の拳」もそんな感じで発売されたものです。ただリメイクだけで終わってたら絶対買ってなかったと思うんですが、そんな筆者をして買わせたのは「オリジナル版の完全収録」という黄金の言葉でした。


●アナタ、相当なマニアだったんですな……

 古い話になります。筆者には床屋を営む従兄弟がいる、とはどこかで話したような気がしますが、住んでいるところもそう遠くなく、また歳も近い彼ら兄妹とは数多い従兄弟連中の中でももっとも行き来がありました。この従兄弟のうち兄貴のほうがゲームが凄い好きな人でして、まあ結論から言うと私にゲームを教えたのはこの人です。

 それでですね、あるときこの従兄弟の家を訪れたらば彼が何かでかい包みを持って帰ってきたんです。あいさつもそこそこに彼は自分の部屋にこもり、何かがちゃがちゃとつなぎ始めました。何でしょう、と思っていたらそれはどうやらセガマークIIIでして(そんなハード、当時は名前も知りませんでした)、そしてテレビとの接続を終えた彼が取り出して始めたゲーム、それがこの北斗の拳だったのです。確か筆者が小学校三年くらいだったと思いますから、彼は中学生程度でしたか。そんな時期にハード一つ自腹で買ってくるんだから、相当根性の入った話だと思います。そういやタイニーゼビウスってなんのハードで動くゲームでしたっけ? これも彼に見せてもらったんだわな。テープメディアで読み出し30分、シークエラーでまた30分読み出しなおし。伝説にしか聞いたことのなかった世界がこんなに身近にあるとは思いませんでした。


●考えてみたら、この時期からゲームに関する文章を書くのが好きだったのかも知れません

 当時私は北斗の拳という漫画は全然知らなかったんですが、ゲームの出来がよかったからか原作は知らずともすぐにハマりまして。どのくらいハマったかと言えば、夏休みの課題で出されていた「夏休み中最も印象に残ったこと」に延々このゲームの話を書いたくらいです。原稿用紙2枚分いっぱいに「雑魚は殴っても蹴っても爆発して……」とか「4人目の中ボスはハートで……」とか、そういう文章を書き詰めて提出された当時の担任の胸中はいかばかりだったのでしょうか

 実は今でもまだよくつかめないんですけど、このセガマークIII版におけるハート様(※1)というのは倒せるタイミングが固定でしかも結構そのタイミングが厳しいんですね。当時の私にそんなことが分かるはずもなくて結局当時は運で倒すしかなかったんで、行きつけてもシン(※2)までだったという記憶があります。そのシンも倒し方がどうしても分からず、だから感想文の締めは「1面のボスはシンですが、私はこいつが未だに倒せません」だったんですよね、泣ける話です。いや、担任にとってですが。


●でも、ジャッカルはいなかったね(登場しようもないけど)

 このセガマークIII版、聞いた話によるとファミコン版よりも前に発売されたらしいんですが、後で遊んだファミコン版に比べるとどうしてもこちらのほうが優れて見えますね。原作にいたシンの部下もきっちり全員登場してますし、ステージ2がゴッドランド、ステージ3がデビルリバースと普通ならカットされそうな(事実、プレステ版ではゴッドランドがカット、ファミコン版では両方カット)エピソード(※3)が入っています。まあ見た目的な部分は別としても、やっぱりファミコンの「迷路をさまよう」よりは「ひたすら右に進んでいって悪党を殺して回る」の方が分かりやすいし、何より雑魚を殺したときの気持ちよさが違いますもの。単純かつ面白い、やはりゲームとしてもこちらのほうがよく出来ていたと思います。雑魚を殺したときの「パゴォン」という効果音も爽快でしたし。

 ああ、そう考えると原作の「スプラッターな、あからさまに『殺している』という感じは極力読者に持たせないようにする」というコンセプトにもよくマッチしていますね、この雑魚の死に様は。「殺している」よりは「壊している」という感じですからね。まあ原作も死ぬほど面白い(特に雑魚が)ので、絶対読んで欲しいところです。いいから


●あの時見せてもらったラオウの倒し方、実行してみて通用するのだろうか……

 その後、この従兄弟はずいぶん遊びこんだようで、エンディングまで見せてもらうことができました。特に印象的だったのはサウザー(※4)を倒したときの「北斗有情拳」で、空中に向けて拳を数十発繰り出すその様は実に美しかったとそう記憶しています……が、もしかしたら全然記憶違いかもしれません。いや、俺がそこまで行きつけないから確認のしようがないんですわ。奥義の名前もこのリメイク版買うまで「天破活殺」だと思ってたし。

 それからこのゲーム、ハードごと譲ってもらったんですが、今思うと非常に惜しいことに、私もこのハード手放してしまったんですよね。アレックスキッドとかもあったんだし、取っておけばよかったなあ……。ポーズボタンが本体についているという恐ろしいハードでした。


●不落のカサンドラ伝説はこの俺の伝説でもあるのだぁーっ!!

 で、それから20年近く経った今の腕前はというと、実のところあまり変わらないというかどうか。ホント敵の隙を見抜くことが大事なゲームで、進めればステージ5までは行き着くようになったんですが、進めないとステージ1のハート様に短いお御足で蹴り殺される始末です。ここまで時によって進行具合が違うゲームって、シューティングでもそうはありません。まあその辺は学習していくしかないんでしょうけど、しかしハート様を確実に倒すタイミングってのはどうなってるんでしょうね。

 それとこのゲーム、ステージ3のボス「デビル」をノーダメージで撃破してからステージ4の冒頭(スクロールさせないことが条件だそうです)で斜め方向にハイジャンプするといきなりボス「トキ」のところまで行けるという裏技があるんですが、最初この技が使えない状態でステージ4まで行き着いたことがありました。そしたらなんか、ステージ難易度がめちゃくちゃ高いんですな。鷲(おお、獄長のペット!)は無尽蔵に飛んできますし、雑魚は例によって群がってきます。そしてなんとか猛攻を凌いで中ボスまで行ったら獄長めちゃくちゃ強いでやんの。画面の外から猛スピードでタックル(蒙古覇極道!!)してきて、然る後に鞭振り回して大暴れです。誰か、獄長の暴走をどうにかするやり方を教えてください


●お前はもう! 死んでいる!(声:神谷明)

 そろそろアレンジ版の話もしてみますか。こちら、最初は「どうせそんなに力の入ったゲームでもあるまい」と多寡をくくっていたんですが、いざ遊んでみるとこれもかなり面白い。まあ冷静に考えると「この仕組みってどうなのかな」と思える部分もないわけではないですが、元がもと、進んでいって殺して回るというゲームですからして、アレンジの際にそのノリを壊さなかったのは英断でしょう。制約付きながらガードもできるようになった、少しながら奥義も使えるようになった、この辺もなかなかよい感じです。キーコンフィグが使いづらいというのと、操作受け付けのタイミングがちょっくら厳しめ(特にダッシュ攻撃)なのがつらいところでしょうか。ジャンルが振るっています、「世紀末バイオレンスアクション」。「ワシの鉄拳で血の海を渡れ!」というのは別のゲームの台詞ですが、この「北斗の拳」にも実に良く当てはまる言葉です。

 また、特に「素晴らしい」と思えたのがですね、見た目的な話なんですがレイ(※5)の扱い。このお人の操る「南斗水鳥拳」は敵をすぱっと切り裂くのがミソなんですが、プレステ版では残念なことに「北斗神拳同様一瞬の間をおいて爆発する」という描写だったんですね。まあ容量の問題とかちょっとしか使えないキャラにわざわざそんな手間かけてられないというのが実情だと思うんですが、こちらのアレンジ版では敵がきちっと切り裂かれて散ります。しかもアニメにあった「シピュゥーン」という効果音も入りますし、これはもう声当てをされていた塩沢氏が亡くなられてしまったのが非常に惜しいところ。でも、声増やすと値段も上がるのかな。


●死にやがあ……れっ!?(声:戸谷公次または大塚周夫)

 このアレンジ版、全体に見て「やりこんで極める」とかそういう要素はかなり薄く、どちらかというと「気晴らしに世紀末悪党を解体する」とか「手っ取り早くジャギ(※6)と戦いたい」とか、そういう用途にこそ向いています。クリアするだけなら、強攻撃とボタン同時押しの回避攻撃を繰り返していればいくらでも進めるゲームですし。でもまあ、ゲームってのは何も眉間にしわ寄せて根詰めて遊ぶばかりのものでもない、とも思いますのでね、実にいいではないですか。……そういえばアレンジ版、ガードを発動させると壊れるオブジェがいっぱいあるみたいですけど、あれ全部壊すといいことあるとかそういうおまけはないですか?


●だめだ、通じなかったー!(2004.04.23追記)

 それからさらにがんばって、なんとかサウザーを撃破した筆者。というか、サウザーはダメージポイントさえ事前に知っていればルーチン自体は相当甘いのですね。下手したらシンのほうが強いくらい。空中に打ち上げて拳をひたすら叩き込む奥義「北斗有情拳」は記憶どおりでほっと一安心。んで、表題どおりラオウには過去見せてもらった戦い方というのはうまく実行できなかったんですけども、まあそれは追々がんばってみましょう。

 それでですね。忘れていたんですが、セガマークIII版には海外版がありました。これは、確かピンポンにあったゲームだから、……中学2、3年のときに見かけたゲームですかね。「ブラックベルト」という名前で、ケンシロウが顔はほとんどそのままで空手着に身を包んでいる(名前は『リキ』)というビジュアルに変身していました。なんか回復アイテムとして寿司が飛んできたり、シンが変な怪しいヒゲのおっさんに差し換わっていたり(大佐は怪しいピエロ)、デビルがなんか相撲取りに変わっていたり。でも雑魚の死に方は変わってないもんで、「お前空手と北斗神拳は違うぜ!!」という突っ込みが自動的に入ってしまうというオチがつきます。

 まあ、要するにそれだけなんですけども、実際のところ海外に持っていくというだけで作りから何から変えてしまったらそれは海外版ではなく別のゲームと呼びますから、当然ちゃあ当然ですね。しかしそれだけでずいぶん怪しく思えたものです。特に相撲取りはルーチンから差し換わっておりまして、当時デビルに勝てなかった筆者はこちらでもステージ3を越すことはできず、なんとも無念な思いに身を焦がしました。それと、とどめの奥義はステージ1が「鉄拳制裁」、ステージ2が「悪党撃破」、以降は残念ながら未到達のため不明です。すげえインパクトですよね、北斗百烈拳が鉄拳制裁に化けるとは。ステージ3以降の奥義の名前も非常に知りたいものですが。

 ああ、ピンポンというのは地元にかつて存在したゲーセンで、古いゲームは一回20円で遊べるというなかなか気の利いた店でした。が、ヤンキーと店員が結託していて、カツアゲが行われるときは店員は必ず姿を消しているという違った意味での気の利き方もしていまして、それがためか6、7年ほど前に潰れてしまいました。要するに悪店舗だったわけですから当然なんですけどね。



※1 ハート様

 シン(後述)の部下で、シンの率いる暴走集団「KING」の幹部。すんごいデブチンで見た目にものすごく怖いが日ごろは優しく、配下のチンピラどもが町人をいたぶるのを見ると止めに入る素敵な人。しかし、ほんの少しでも血を見ると暴れ出す、やっぱり危ない人。その体型は単なる見かけに終わらず、なんと人体にして軟質ゴムのごとく衝撃を包み込み吸収するというものすごい特異体質である。

 「別に様はつけなくてもいいはずなんだけど、なぜか付けたくなる」という話がどこかにあったが、どうやらそれはゲーム製作スタッフもそうらしくパッケージにおいてもなぜかこいつだけ様付け。末期の「ひでぶ!」は未だ語り継がれる伝説の名台詞の一つだ。


※2 シン

 南斗六聖拳の一人、南斗孤鷲拳を伝承する男。本来は善良な人物であったのだが、主人公のケンシロウと同じ女性を愛してしまい、しかもその女性はケンシロウを選んだという事実に苦しんでいたところをジャギ(後述)に付け込まれて豹変。力づくで想い人をケンシロウから奪い取り、暴走集団「KING」を組織し、暴力に支配された巨大な街「サザンクロスタウン」を建設するまでに至る。後に己のこれまでの業を知り、敢えてそれを抱えたままケンシロウとの決着に臨む姿は宿命の星である「殉星」、また自らの修めた拳技である「孤鷲」の名に相応しい哀しさを漂わせる。

 なお、南斗孤鷲拳の名は劇中には登場せず、ラオウ編が終了する辺りになって集英社から出版された設定資料のようなものに一行だけ記されているのみである。南斗孤鷲拳は見たところ、手刀や脚によって敵を突き刺し貫く拳技のようだ。あとみんな間違えちゃ駄目だぜ、孤鷲拳の「こ」は孤独の「こ」で狐の「こ」じゃないからな!?


※3 カットされそうなエピソード

 ゴッドランドというのはコミックス2巻序盤あたりから始まって2巻終盤で完結する、自分たちだけの理想郷(これがゴッドランド)を作ろうとする狂気に取り付かれたレッドベレーとの戦いの話。デビルリバースは2巻最終盤から3巻最終盤まで続く、連れ合いの少年バットの過去に触れた話。どちらもケンシロウの宿命によるもの、というよりはただ行きがかり上発生した、という雰囲気が強い(話自体は非常に面白い)ためか、どうもカットされがちなエピソードというイメージがある。さすがにファミコン版の3では収録していると思うが……。名台詞「俺の右腕はここにある」や「あべし!」、「ありゃ? メチルアルコールって飲めねえのか」などを生み出した素敵なエピソードだ。


※4 サウザー

 南斗六聖拳の一人、南斗鳳凰拳を伝承する男。厳しくも優しい師父のもとで拳技を磨きながら育てられた彼は、十代半ばの折、鳳凰拳の皆伝を受ける際の試練、初の真剣勝負で師父を手にかけた。サウザー自身は「襲ってくるのは師父である」という事実を伏せるべく目隠しをされたまま試練に臨み、また師父も我が子の成長を見届けたと満足して死んでいったのだが、「大好きだった師父を殺してしまった」という事実は本来優しい少年だったサウザーにはあまりにも重すぎ、結果彼は一切の優しさを投げ捨てて覇道に走った。

 しかし、登場直後の5メートルはありそうなテーブルに満載のご馳走(世紀末の食糧事情は当然ながら最悪)を一口食っただけで「今日のは口に合わん!」と言い捨てて蹴り倒すその姿、「その贅沢ぶり、羨ましいな……」と思ってしまうのは私だけだろうか。南斗鳳凰拳は見たところ、手刀ないし指先で敵を主に十文字に切り裂く技が多い。真髄は、敵の上空を自在に舞いつつその斬撃を披露するところにある。


※5 レイ

 南斗六聖拳の一人、南斗水鳥拳を伝承する男。世紀末の世において力ある男としては珍しいことに、特に野心らしい野心も抱かずに家族と静かに暮らしていたのだが、彼が外出している際に悪党に村を襲撃され、一家は惨殺、妹も連れ去られるという出来事に見舞われる。それ以降、彼は家族の言い残した「胸に七つの傷の男」を追って荒野の餓狼となった。彼自身は非常に善良な男で義にも厚い。しかし、最後はその義のために致命傷を負う事になり、そして彼は残された命を愛した女のために費やした。その高潔とも言える姿は多くの読者、視聴者の胸に焼きついたことだろう。

 南斗水鳥拳は5本の指全てを刃とし、南斗聖拳のなかでも特に細かく敵を切り裂く。蹴り技は基本的に使わない。舞うように動き、返り血も浴びずに獲物を刻んでいくその姿は非常に美しく、魅せられる者も数多い。彼自身容貌に優れた男であった(立ち回り方によっては女と見間違われるほど)ため、その容姿と相まって華麗に舞う姿は非常に印象に残る。故・塩沢氏の「しゃおぉぉぉ!!」という絶叫はアニメオリジナルだが、実に「それらしく」感じられ非常に良かった。もし発見できれば「パンチマニア北斗の拳」で聞くことが出来る。


※6 ジャギ

 ケンシロウと同期、第64代北斗神拳伝承者の候補として先代リュウケンに鍛えられた男の一人。それぞれ養子で、年齢順に長兄ラオウ、次兄トキ、次にジャギが来てケンシロウとくる。それぞれ才能はあったが、ラオウは苛烈すぎる性格ゆえ却下、トキは病身ゆえ辞退、結局技に優れるケンシロウが伝承者となったのであるがジャギはそれを不服としてケンシロウに挑み、逆に殺されかかる。ジャギはそのことを根に持ち、世紀末の乱世においてケンシロウのふりをし悪事を重ねていく。

 いきなりショットガンを持ち出したり含み針を使ったり、またインチキ南斗聖拳を使ったり胡散臭いことこの上ない人物で、悪役の中ではアミバと並んで非常に人気の高いキャラクターの一人である。他の悪役と違って哀しい過去など持たず単純に悪党である、ということとこの作品特有の「悪党はやることから死に際まで徹底している」を特に印象付けるような人物であったからして、その辺がへそ曲がりたちの琴線に触れたのかも知れない。筆者もこいつの悪党ぶりは大好きである。

 なお、勘違いが筆者の身の周りで頻発しているので断っておくが、この人物の名は「ジャギ」であり断じて「ジャキ」ではない。原作を持っており、愛読していると豪語する人物ですらこういう勘違いをしていることもあり、そういう輩はぜひジャギ様に「俺の名を言ってみろォ!」と問われるとよい。