〜封神領域エルツヴァーユ〜 機種:プレイステーション |
|
---|---|
![]() |
![]() |
●一風変わった格闘ゲームはいかが? だいぶ前に「簡単操作と派手な演出」というような感じの売り文句で発売された格闘ゲームです。どちらかというとゲームとしてよりもアニメ要素の人気が高いようですが、なかなかどうして、ゲームとしてもいいところを突いていますよ。
●簡単操作で、気短かな方々にも大人気(マジで) まず、売り文句の通りに操作が異常と言ってもいいほどに簡略化されています。十字キー左右で前進と後退、十字キー上下で奥・手前への移動。ボタンは攻撃、防御の二つだけ。ジャンプは上キーとボタンのどちらか、投げは下キーと攻撃。必殺技は下以外の3方向のどれかにキーを入れて攻撃ボタンを押すだけです。どうですか、簡単でしょう? 私、このゲームは雑誌で見かけて興味を持ったんですが、この操作系統が発表されたとき、あんまり単純なもんで「俺、騙されてんのかな」と言い知れぬ不安を感じたものです。まあ、そんなことがなくて一安心ですが。
●駆け引きのお話とかで、このゲームの驚いたところは、駆け引きの要素が非常に強く出ていることです。操作を極端に簡略化している分、そちらで対戦が楽しめるように作ってあるんでしょうね。ゲームシステムの関係上、どちらかというと近距離戦よりも遠距離戦に主眼が置かれているんですが、ここに駆け引きの要素が山盛りなんです。 必殺技は上記の通り3種類しかないのですが、それらの全てがボタンを押す回数により効果範囲を変化させます。1回押しで正面に向かって光波が飛ぶなら、2回押しでは左右に分かれて飛ぶ、といった感じに。範囲変化を行ったとき、この例なら正面には攻撃判定はなくなります。要するに、相手がサイドステップで光波をかわす、ということを読んで範囲変化を行う、という使い方が可能なのです。 それから、このゲームは全員怪しげな能力の持ち主ということで、直接接触していなくてもそれぞれの能力を駆使して相手を捕縛することができます。簡単に言えば「どんな遠くにいても投げが使えるよ」ということでして、まさに「どこにいようと投げが飛んでくる」というシステムになっています。それについてもこの「二択」が適用されており、相手の真下に投げ判定を出現させるやりかたと、相手の周りにだけ投げ判定を出現させるやりかたがあります。前者は動かなければヒット、後者は動けばヒットです。 まあ他にもいろいろあるようなんですが、まとめ切れないんで割愛ね。ともかく、そういった基本システムの設計の裏に見えるのは「理不尽な勝負がないようにする」というコンセプトです。遠距離投げのおかげで「逃げ回って云々」ということはしづらいですし、接近戦のルールのおかげで他のゲームでよく見かける「一方的な攻め込み」というものからも縁が遠いので、ある意味本当にストイックな対戦にはもっとも向いているゲームかも知れません。
●命を削って力を溜めてまた、巷の格闘ゲームでは体力が一定値を切った時点で使いたい放題になり、ゲームバランスを大きく崩す原因(※1)となっている「超必殺技」ですが、このゲームはそこもちゃんと考えています。 ボタンを押しっぱなしにすることでチャージが行われ、体力ゲージの現在値と同じところまでチャージゲージが行き着いたら超必殺技が一回使えるようになります。この「体力ゲージの現在値」ってのがミソで、要するにダメージを受ければ受けるほどチャージゲージが溜まりやすくなるんです。これは結構いいところを突いてるな、と正直に思いました。そういえば、ダメゲー扱いの「闘神伝3」でもこの辺に関してはちゃんと対策を考えてまして、あちらは「一回超必殺技を使ったら、体力ゲージに変動があるまで使用不能になる」というこれもまたいい感じのシステムになっていました。
●吹っ飛んだキャラクターたちさてこのゲーム、先ほど「アニメ要素の人気が高い」と言いましたが。どうもはじめからそっち方面の人気を狙っていたようで、各キャラごとの持ち味がやたらと濃いです。 その人選たるや、宇宙刑事、女子の中学生戦士、ピアノが特技のバウンティハンター。他にも陰険極悪陰陽師、クレイジー人斬り、胸で思考してそうな陽気な傭兵お姉ちゃん、人間の限界をぶっちぎっちゃった少女(10010歳)など、どっちかっつうと一般ユーザーの方をあまり見ていないようなキャスティング。一応全員オリジナルキャラなんですが、なんというかキャラ全員があまりにもそれらしすぎますから抵抗を感じる人も多いのではないかと。いや、私は嫌いじゃないですが。 それでまあ、このゲームのウリの一つにストーリーモードがあるんですが、その吹っ飛んだキャラ各人にそれぞれ違う名前、違う内容でそのキャラの性格に合わせた「番組」が割り当てられてます。それぞれのキャラを主人公にしたアニメ番組、というようなノリなんですが、これの出来もまた凄まじいものがありまして、もともと濃いキャラの味が、これでさらに濃縮されてしまいます。あんまり濃すぎてノリについていけず、置いてきぼりを食ってしまう人もたくさんいたようで。 また、ややこしい専門用語がやたらにちりばめられているのも特徴で、そういうのが好きでない人はさらに置き去りにされるという暴走ぶり。これだけ暴走していると却って気持ちいいくらいですね。
●壊れた番組 しかし、物語をたどっていくにつれ、プレイヤーの心に修復不能なくらいに巨大なダメージを与えていくキャラがいるという恐ろしいユーザートラップはなんなのでしょうか。
みんなもエリルにモエモエしてね★ ……言葉もありません。声優さんがうまい分、ダメージもひとしおです。掛け合いを聞くに、確信犯ですねこれは。このキャラクターに関しては聞いていて赤面するような調子でずっとゲームが続きますので、罰や嫌がらせに最適です。例:「MoeMoeエリルをノーミスでクリアするまでやめるんじゃねえ!!」……まあ、たぶん一面か二面で音を上げると思いますが。 それと、陰陽師の番組がかなり面白いです。ステージ間の語りで「背を伸ばすなら、牛乳です。一日1ガロンがお奨めです」なんて善人みたいなことを言うくせ、その背景に対戦相手の頭を踏んでる絵が出たりして言葉と画面のギャップが甚だしいです。宇宙刑事もかなりよし。 ああ、最後に。 あと、「俺は死んだから次には出られねえ」というような発言が某所にありましたが、それを言ったらあの少女も200%ばかり死んでいますよ?
●「抵抗するしないに関わらず、容赦……しません」 渋いんだか馬鹿なんだかそれから、キャラクターの持ち味に合わせて声優さんもやけに豪華です。友人いわく、「女の人の声優は全部主役級だ」とのことでした。すげー。 で、声優さん全員持ち役がそれなりに気に入ったようで(仕事だからか?)、ゲーム全般において激しい熱演を見せてくれます。個人的には、「痛い? 痛いィ? ねェ、痛かったァ!?」とか、「無駄ァ! そして無駄ァ!」(イントネーションが最高)、「断・罪! バァストゥ!!」辺りの台詞がいい味を持っていると、そう思うわけです。いや、声優さんって楽しそうに見える分大変なんですね。
●操作を複雑にすればいいってもんじゃないよまあ、こんな感じでかなりいい出来だと私は思います。モデルが粗いだとか、せっかくのボイスがかなり劣化しているだとか、リングサイドがうっとうしいとかいろいろまずい点も見受けられますが、まあ損はしないと思います。ノリについて行かれれば、ですが。 それから、よく言われている「コンピュータの強さ」ですが、基本的に動いていれば負けません。「射撃から続けて遠距離投げ」の悪名高いコンビネーション(※2)にも引っかかりませんし。あと、これは後半学習されますが、相手を遠くにぶっ飛ばしたあと、相手が駆け出したのを見てから遠距離投げの範囲変化を行うだけでもかなりイケます。最後に「何をされても怒らない」、明鏡止水の境地に達しましょう。これだけ守ればオッケーです。 なお、このゲームはクリアごとにオプションが増え、オールクリアした時点で全ての項目が出現します。さんざん苦労を重ねたその果てに何が待っているかは伏せますけども、とりあえず、期待しすぎると肩透かし確実、とだけ覚えておいてください。 こんな具合のこのゲーム、今でもけっこう高いですが、格闘ゲームの一つの境地を拓いた変わり種として遊んでみるのもいいかと思います。
※1 ゲームバランス崩壊の原因 超必殺技を搭載した2作目「餓狼伝説2」から、超必殺技は使用条件を満たした時点で使いたい放題になっています。この餓狼伝説2の時点ではそれぞれに一長一短があってまだマシな方だったんですが、「餓狼伝説スペシャル」になってテコンドー使いの超必殺技が異常に強力になり、連続技に組んでよし、削りに使ってよし、相手が超必殺技なのでリスクがでかすぎて反撃も狙えないというふざけた代物になってしまいました。制作者自ら「このテコンドーの強さに合わせるために他のキャラも強くした」と語っています。分かってんなら直せよ。
射撃を牽制に使い、防御の硬直中に投げを滑り込ませてくるという嫌らしい連携のこと。 このゲーム、投げはタイミングよく防御ボタンを押すことで回避できます。しかし、射撃を防ぐために防御ボタンを押してしまうとどう頑張っても投げの回避には間に合いません。まあ事実上のハメなんですが、プレイヤーが同じことをやろうとすると射撃直後の行動不能時間の関係で投げが間に合わず、したがって回避不能なタイミングでのこの連携はコンピュータのインチキとなっています。これを回避するために、「常に動け」と言うわけですね。
|