〜ゴジラ 怪獣大決戦〜 機種:スーパーファミコン |
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●こだわりは全てに勝る? この「ゴジラ」という単語にどのような印象をお持ちであれ、その名を知らない日本人はいないのではないか、というくらい有名な怪獣を題材にした格闘ゲームです。スーパーファミコンで格闘ゲームが乱造された時期の末ごろに発売された、と記憶していますが、このゲームは一味違います。なにがと言いますと、その凝りよう。以前、ゲーセンで「ジョジョの奇妙な冒険」の第3部が格闘ゲーム化されましたが、あれは作者が「こいつはジョジョを理解している」と言ったほど原作に対する思い入れが渦巻く快作(怪作)でした。断言しましょう、この「ゴジラ」も「ジョジョ」と同じくらいに、いえそれ以上に原作への思い入れが渦巻いています。
●ゴジラの声はチェロの音が元らしいですね内容は簡単。気に入った怪獣を選び、他の怪獣を殴りあいの末に倒すだけの単純なものです。ゲームシステムなども、多少のくせがあるとはいえそこらで見かけるようなものです。しかし、怪獣でなければできないことがシステムに組まれており、唯一にして無二の個性を見せています。それが、「雄叫び」システム。 「使用すると敵の気絶ゲージを上昇させる。敵との距離が近ければ近いほど効果が高いが、雄叫び中は無防備なので高い効果を期待すればそれだけリスクも上昇する」というようなもので、実際はかなり使いづらいシステムなのですが(コンピュータは絶妙の使い方を見せるのがむかつきます)、それでも怪獣が戦闘中に吠えあう、という行為にきちんと意味を持たせた、という点で凄いと思ったもんであります。 ●か、海底軍艦!?さてこのゲーム、キャスティングが凄いです。発売時期が割に新しいんで平成版(※1)の怪獣だけで埋めつくされるかと思ったんですが、きちんと過去登場の怪獣たちも出演してるんですね。さすがにバラゴンとかゴロザウルス、チタノザウルスとかジェットジャガーとかキングシーサーなんていう地味すぎる連中(※2)はいませんでしたが。 平成版からはゴジラ、モスラ、メカゴジラ(ガルーダあり、なしの2パターン)、ビオランテが出演。昭和版からはキングギドラ、ガイガン、アンギラス、メカゴジラ1号機、メガロ、そして別映画からのゲストで轟天号が出演しています。キングギドラやガイガン、メカゴジラ1号機なんかはまあ有名だろうと思いますけど、他の連中は今の子供たちにはほぼ知られてないんじゃないですかね。特に轟天号なんかゴジラシリーズには一度も出演してないわけだし。 ただ、残念なのはヘドラがいないこと。昭和版の映画において、サシで戦った相手としては間違いなく最強であっただけに、とても残念でなりません。または、ヘドラがだめならスペースゴジラとか。ガルーダなしのメカゴジラなんかより、そっちのほうがよかったなあ。え、発売時期がスペースゴジラ上映より前?
●腹の丸ノコの使い道怪獣といえば口から吐かれる光線や熱線、通常考えられない形状をした手足などによる肉弾戦などがお約束です。このゲームはその辺の再現もきちんとクリアしていますので、ファンの方でも安心。特にメカゴジラ1号機は装備されている兵器がすべて再現されており、知っている人なら感動すること請け合い。全兵装攻撃の描写といったらもう涙ものです。 他にもガイガンのジェットカッター(腹の丸ノコ)、メガロの地熱ナパーム、アンギラスの体当たり、轟天号のアトミック冷線など、各怪獣の特徴が忠実に再現されています。あんまりにもこだわってるんで、このゲームで初めて遊んだとき、ゴジラ好きっ子の私は感動しっぱなしでした。 よく調べ上げたものです。
●あ、メーサー殺獣光線車だ!!演出面もファン泣かせです。自分の持ち怪獣を選択し、それから日本の各地に散らばる怪獣を選択して戦いを挑むのですが、暗転した画面に浮かび上がるのは映画のロゴと見まがうような怪獣の名前! 全部の怪獣が映画のときそのままの書体で表示されますので、「ガイガン VS メカゴジラ」なんていうゲームの中だけの夢の対決が、まさに映画になったかのような感じになります。ううん、感動。 そして、背景なども完璧です。以下に対応表を作ってみました。原作の名前、ちょっと当ててみてください。
どうでしょうか。遊んだことのある方、全部分かりましたか? アンギラスなんか昭和30年の映画ですからね、今の子供には分かるはずがないという。ちなみに、轟天号については「海底軍艦」のビデオそのものを見かけることがないため、原作との対応が分かりません。たぶんもともとの舞台は深海だったと思うんですが。あと、メカゴジラについては胸の装甲板の配列で「1号機」と断定する理由としています。 また、音楽なんかもとてもいい感じ。何がと言われるとちょっと困りますが、全体に映画のイメージを再現しているというか、何というか……とにかく、「あ、実際に映画で使われてそう」という感じなのです。もともと映画の音楽を独自にアレンジしたようなのですが、全体にとてもいい出来だと思いました。個人的には横須賀ステージと大阪城ステージ、東京湾ステージがお気に入り。
●地味な奴は損をする……のか?しかし、ファンには感動的な逸品であるこのゲーム、ゴジラであるがゆえの難点というものも抱えてしまっています。通常の格闘ゲームと違い、戦うキャラクターが全員怪獣なものですからそれぞれ形状や戦闘スタイルも大きく異なっているのですが、そのためキャラクター性能の差が著しいものとなってしまっているのです。 ゴジラやガイガン、メガロなどのオーソドックスなスタイルを持つ怪獣は割に横並びの性能にまとまっているのですが、モスラやアンギラス、轟天号などの特異なスタイルの連中はそういった基準をはるかに飛び越してしまっています。例えば、本来は植物であるビオランテなどは無数の根を絶え間なく動かして移動するのですが、やはりというか異常に動きが遅く、またジャンプもできません。対空攻撃能力などないのも同然です。その反面、モスラは蛾という根本的な性質のため、空を自在に移動します。通常移動でも、少なくとも「グラディウス」の自機の初期スピードよりは速く、そこにダッシュを加えるとかなりのスピードになります。 こんな2体が戦えば、勝敗は火を見るようなもの……とは言いすぎかも知れませんが、とにかくビオランテにはやりにくいことこの上ない勝負となります。全体に、「ジャンプがない」「動きが異常に遅い」という2つのハンディは、ビオランテをこのゲーム中で最弱という位置に押し込めるのに充分すぎたようでして、とにかく誰と戦っても必ず苦戦を強いられるという悲惨な仕様にされてしまっています。まあ、しょうがないのかな。地味だったからね、ビオランテって。一応女の子(※3)なのにパワーはあるから、食いついてしまえばそれなりに行けるんですけどね、運動性があまりにも低いから近づくまでが一苦労。ハードレベルでクリアするのはまるで拷問のようでした。
●あなたも今日から怪獣の飼い主ですが、だからと言ってクソゲー、というわけではありません。キーレスポンスなんかも良好ですし。確かに純粋な格闘ものとして見ると、ダイヤグラムに95:5というような愉快な数字が並ぶような(細かく作れば絶対こうなります。特にビオランテ)めちゃくちゃなバランスになりますが、そんなことはどうだっていいのです。なぜならこれは「怪獣ゲーム」。怪獣を好き放題に動かし、他の怪獣を殴り飛ばす。そういうものなんですから。ストイックな対戦、「俺は強い奴と戦いたい!」なんていうのはよそでやりましょう、よそで。このゲームで遊ぶときは、「今日こそ地球は我らのもの、さあゆけガイガン!」とか「ハンター星雲のゴキブリどもにはこの星はやらん! 行けメカゴジラ!」というように原作に即してノリノリで行くのが礼儀です。 さあ、あなたも怪獣一匹に全てを掛けて地球を侵略する宇宙人の気分を味わいましょう。
※1 平成版昭和29年から始まった「ゴジラ」シリーズは、昭和50年ごろの「メカゴジラの逆襲」を最後にしばらくお休みしています。これが昭和版。それからしばらく、昭和60年ごろに「ゴジラ」という名前で再度銀幕に登場し、その後「ゴジラ VS デストロイヤ」まで続いたのが俗に「平成版」と呼ばれているものです。 科学的考証などはまったくといっていいほど行わず、「そういうもんだ」的な展開を見せた昭和版に対し、平成版はいろいろと劇中で発生の根拠などについて説明を行っていましたが、漫画「宇宙家族カールビンソン」によればどれも荒唐無稽なものだそうで(つうか、マジに変)、確かに「未来人の連れてきたペットが放射能でキングギドラになる」という設定は冗談にしか思えません。過去金星を滅ぼしたキングギドラが泣いてそうです。まあ、ウルトラマンとかもけっこうめちゃくちゃでしたし、面白ければいいと思いますが。
登場が1作品だけで終わっている連中が主にこうなります。バラゴン(地底怪獣と書いてバラゴンと読む)なんかも轟天号と同じくゲスト出演みたいなものだったんですが、ラドンやモスラに比べて印象が弱かったせいで定着しませんでした。 ちなみに、今じゃいかにも「もともとぼくはゴジラシリーズの一員さ」という顔をしているモスラとラドンですが、もともとは彼らもゲストです。そういえばモスラも平成版ができてしまいましたね。
これ以上ないくらい語弊のある言い方ですが、一応性別上ではビオランテは女性あるいは雌、ということになりますか。というのも、テロに巻き込まれて死んだある女性、その父親が娘の遺伝子をバラに組み込んで育てていたんですが、それが枯れかけたというので研究材料として入手したゴジラ細胞の遺伝子を賦活の意味で組み込んでみたら殺人植物に変貌してしまった、というのがビオランテの成り立ちだからです。誰でしたっけ、沢口靖子だったかな。 |