〜ヘラクレスの栄光3、4〜
機種:スーパーファミコン
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●実は名作?

 一見ドラゴンクエスト的な印象を持たせつつ、その異様なゲーム内容にごく一部で話題を呼んだシリーズ(※てきとー発言)のスーパーファミコン(以下スーファミ)発売作品ですね。私は先に4をやりまして、2000年の明けに3を購入という、時代の流れに逆行するかのような行動を取ったのですが。いや、どちらもかなり面白いです。名作、と言ってもいいのではないか、と思いましたよ。


●ファミコン版は……

 実は私、この「ヘラクレスの栄光(以下栄光)」シリーズには一通り手を付けてます。うち、解けなかったのは1だけですね。パスワードを母親に捨てられ、その直後に高校受験でファミコンが手元から去り、ようやく返ってきたと思ったらソフトが死んでいて永久に解けなくなってしまった、という(再購入、という考えはありません。最近なんかファミコンソフトって高いから)悲惨な状況になってしまったものですから。きっとこれからもずっと解けないままでしょう。

 2は、なんかまさにドラゴンクエスト、といった風情で一回解いたらもういいや、というような、敵の絵が妙にファニーだったこととゲーム開始にいきなり「さびた盾」を破壊されて最高の盾がもらえなくなったことくらいしか印象に残らない、さびしいゲームでした。遊んでいた当時はけっこうハマっていたんですがねぇ。あーでも音楽はすごくいいんですよ。フィールドとペガサス騎乗の音楽が大好き。


●4のお話 〜愛しき人々〜

 で、4なんですが、特徴的なシステムとして「トランスファー」というものがあります。道端を歩いている人に接触した際、波長が合えば「ピカッ」と来ます。そうしたらしめたもの、その人の体はもうあなたのものなのです。どういうことかと言いますと、主人公は諸般の事情で魂だけの存在なんですね。で、ゲームの開始直後に世界滅亡の予防策の探究を神々から言いつかってしまうんですが、「体がないでは仕事にならん」ということで与えられたのが波長の合う人の体を借りてしまう能力、すなわち「トランスファー」なわけです。波長の合う人は当然一人ではなく、またそれぞれに特技や特徴がありますから、状況によって乗り移り換えていくということが可能であり、また必要とされるわけです。感覚としては、ファイナルファンタジー3、5の「ジョブ」のような位置付けと思っていただければ、だいたい当たりです。もっとも、こちらは戦闘中にでも乗り換えが利きますが。

 しかし、乗り移ることのできる相手はファイナルファンタジーのような勇者たちではなく、ごく一般の市民、たとえば哲学に凝ってるじいさんだったり、八百屋の親父だったり、果ては野良犬だったりするわけで、ファイナルファンタジー以上にクセがある、言ってみれば使えない奴ばかりなのがデータイーストっぽいですね。職業軍人でさえも弱い奴がいたりするんで気が抜けません。この辺に2では見られなかった奇妙な味わいが見えて、個人的には嬉しい限りです、はい。


●奇抜なセンス炸裂

 また、このシリーズはロールプレイングですから当然戦闘を行うのですが、戦闘中に表示されるテキストにも妙な味わいがあります。例としては、八百屋の親父の”突然大声を出した! 「んがーーーー!」”とか、船大工の”得意技! のみ投げの威力を見よ!!”、発明家の”秘密の発明品! その名はヘナルゲン!!”とかが秀逸だなぁと、そう思うわけです。

 なお、これらすべてランダムとかではなく、自分の意思をもって発動させますし、状況によっては実際に高い成果を上げます。中にはお色気を漂わせて仲間を発奮させる「チラッ」とか、お付きの用心棒を呼び出す「シルド/ゴルド」など、無制限に使用できるわりに異常に高性能なものがあり、使いようによってはボスを一瞬で撃沈したりします。まあ、どう使ってもダメなものも多いんですが、それでも、ダメならダメなりに(というより、使えない体を無理やり使って)一所懸命に戦おうとしているな、ということは伺えますので、怒らずに見守ってあげましょう。

 また、このシリーズ、1作目の時点から「攻撃、ダメージの時にセリフが入る」という要素があって、これが栄光2の時点では数少ない自己主張でもあったんですが、栄光4では主人公のものに限り、10文字くらいで自由に入力することができます。ここに、プレイヤーの好みやらセンスやらがさらけ出されますもんで、誰か知り合いにこのゲームを持っている人がいたら見せてもらうとよいかも知れません。


●「世界のために」より「自分のために」

 物語のほうも、秀逸にできていると私は思います。この辺は個人それぞれなんで一概には言えませんが、私はドラクエのような「君、選ばれた人だから、はい、この銅の剣でもって魔王の討伐に行ってね」で始まって魔王を倒した時点で「はいはい、君のおかげで平和が戻りました。ありがとさん」というような物語はあんまり好きでないので、このゲームみたく「誰のためでもない、自分のために俺はさまよっているんだ」というような話に好感を持ちます。その冒険の結果、世界を救ってしまってもそれはたまたまなのさ、という方が、なんだか人間らしいと思いません? 前者だと、桃太郎みたいじゃないですか。いや、そんな話も嫌いじゃないですけど。

 ああ、あとこれは物語などを見せる手法のことなんですけど、初めに「おまえの記憶を返す」と言われ、そこから自分が今いる場所にたどり着くまでのいきさつを一通り、操作可能なエピソードとして見せてくれるんですが。これ、すごくいいと思うんですね。受け売りみたいになってしまいますけど、

「プレイヤーって、ゲームを始めた直後は何も状況は分からないよね。で、主人公が記憶喪失ってことで、その記憶を『返してやる』と言って今ある状況までの説明を、プレイヤーに遊ばせながら行う。これだと、主人公と一緒にプレイヤーも状況を把握できるんだよね。自分で動かしてるから、自分の体験として実感しやすくなるんだ」
というような文章をどこかのレビューページで見たんです。なぁるほど、まさしくその通り。と、私は感心したもんです。また、追憶のシーンでは敵の襲撃を受けていることもあり、フィールド、戦闘ともに焦燥感を持たせたような曲がかかるのですが、それらを全て終わらせ、スタート地点の神殿から外に出たとき、そこでかかった曲を聞いて「ああ、新しい時代、なんだなあ」としみじみ思ったりしました。私が単純なだけなんでしょうが、作曲者はたぶんそれを意識させるようにあのイントロを作ったんだと思います。たぶんね。


●3のお話 〜素敵な見せ方〜

 3です。これもまた、主人公が記憶をなくしていますが、こちらはラスト直前まで、自分の正体は明かされません。ただ、周りでそれとなくほのめかしたりはするので、そこに至る前に自分が何者なのかの想像はつくでしょう。記憶を取り戻す直前、仲間たちが主人公を急かしますが、そこにあった主人公のためらい、認めたくない「自分の真の姿」を思い出すことへの恐怖は、プレイヤーにも伝わるのではないでしょうか。

 とまあ、こちらは4と違ってだいぶ重苦しい話。世界はいつ滅びてもおかしくない状況に既に追い込まれており、人はいつ来るか分からない破滅の日に怯えています。そんな中、なぜか死なない体を持ち、記憶のない主人公は自分の記憶を求めて旅立つのです。フィールドでかかる音楽にもそんな末期的な状況を実感させるためか、なんだか夕暮れを連想させるような、荒涼としたイメージがあります。ちなみにこのフィールドの曲、本当の目的を達成し、戒めから解かれたある者と並んで空を駆けるときにかなり長くかかります。きっと物語のテーマを乗せた曲だったんでしょうね。
(追記。ここで話題にしている曲は、「失われし時はいずこに」というそうです。CD欲しいなー)

 また、これも物語の見せ方のことなんですが、「記憶の喪失とそれによる自己の存在意義の喪失、そしてそれを取り戻すまで」という部分で題材が重なる、ということでファイナルファンタジー7とこのゲームとの見せ方などの比較を行っているページがありました。とてもよくまとめられていて、非常に納得、共感できる内容でした。もしかすると、先ほどの栄光4の見せ方のお話は、このページで見た栄光3に関する話題の派生だったのかもしれません。


●て、敵が強え!!

 さて、この栄光3、物語は(個人的に)極めていいのですが、さすがに今遊ぶとシステム面でいくらか問題を感じます。まず、フィールド画面の構成。妙な段差がかなり多く、歩きづらいったらありゃしません。自分は不死身なんでガンガン飛び降りてしまっても平気なんですが、帰りは結局遠回りになるんで、敵の出現率の高さ、敵の強さとあいまって面倒この上ないです。画面が見づらいから街とかが分かりにくいし。

 それから、当の敵の強さなんですが、こちらのレベルに合わせてガンガン上がっていくようで、後半出くわす序盤の敵は、文字どおり序盤の3、40倍は強いです。最終目的地で出現する敵ともなれば、もはや強さが下手なボスをはるかに超えているようで、試しに仲間の各自に判断を任せようものならボスに対するよりも慎重な戦いを展開したりします。一回の戦闘、ザコ6匹の集団に対して10分以上時間を取られ、なおかつもらった経験点が稼ぎなしで3万近い、というゲームはこれが初めてでした。仲間呼びまくるしめちゃくちゃ強いしで、もう大変。

 そのくせ、後のほうだけがきついかというとそうでもなく、序盤からけっこうトバし気味の強さなので始めから終わりまで楽に勝てる、という戦いはほとんどありません。下手をすれば強さが固定の中ボスのほうが楽、という状況も出てきます。また、アイテムの整理ができない、持てる最大数が少ない、道具使用時の効果が分からん、などのこともゲーム的にきつい部分でしょう。


●機会があったら……ね

 てなことで、この栄光3はかなり人を選んでしまうのではないでしょうか。最近のこの手のゲームはバランスが甘めに取られているものが多く、そういったものに慣れた人がこれに挑むのは無謀、とも思えます。反面、栄光4はバランスも甘く、システムのほうもかなり進化していますので、今遊んでも十分に面白いです。画面がちっとね……というところはありますが。まあ、どこかの大作みたいに「画面だけはきれいだけど中身がねぇ」なんて評価を下されるようなことはたぶんないんで、まあ興味が持てたなら遊んでみてくださいな。特に、「俺はロールプレイングなんてものには物語性しか求めねえよ」という人にはぜひ挑戦してもらいたいところです。