〜キラーインスティンクトゴールド〜 機種:アーケード、ニンテンドー64 |
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●アメリカのゲームってのは知名度が妙に低くてねえ海外のゲームがお好きな方は、名前くらいは聞いたことがあるかもしれません。純粋培養の日本製ゲームしか遊んだことのない方は、たぶん存在すら知らないでしょう。はい、このゲームはアメリカであの「モータルコンバット」を作ったMIDWAY社と任天堂が手を組んで作った格闘ゲームなんです。 アメリカ製、というと、具体的な情報を持ってなくても「クソゲーだらけ」という印象が強いことと思いますが、実際そんなことはなく、かなり遊べるものがけっこうあります。いや、どれもすごく難しいってのはほんとですが。この「キラーインスティンクト」もそんなうちの一本です。
●途轍もなく難しいのだけは閉口ものですがなんといいますか、はじめて見たのはナムコ直営のゲーセンでですか。大好きなモータルコンバットみたいなアメリカの格闘ゲーム、てんで遊びにいったんですが、いやあこれがルールは分からないコンピュータは強い、吊り橋のステージでアッパーカットを食らわせても落ちないと「あーもう、なんじゃこりゃあ」という感じだったんですね。ところが、別の場所でうまい人が遊んでいるのを見かける機会がありまして。そこには、通常の試合中に13ヒットのかっこいい連続攻撃、フィニッシュには68ヒットの美しい連続攻撃が展開されるものすごい世界がありました。しかも、その連続攻撃は最初に一つコマンドを入力したらあとは見ているだけ、なんてものではなく、明らかにプレイヤー自身が何か入力を行っているという。その瞬間から、「このゲーム、すごいぞ!!」というように認識が変わりました。 その後、電気街でこれのスーパーファミコン版(アメリカ製)が売られているのを見かけた私は技表といっしょにこれを購入し、以来楽しく遊んでいたりするわけです。64版、掲題のゴールドなんかは売りきれてばかりで、ようやく入荷したのを確認して買いに行ったらなんと金が足らないという悲劇的な事態もありましたっけ。……あれは泣けた、いやマジで。
●技のルールを理解できると面白くなります さてこのゲーム、アメリカ製とはいっても格闘ものですから基本的な部分はほとんど日本のものと同じ感覚です。たぶん制作の際にいろいろ研究したんだと思います。システムはパンチとキックでそれぞれ弱中強の6ボタン、レバーを後ろに引くことで防御、という実にスタンダードなタイプ。分かりやすいですね。ただ、日本の格闘ものでは考えられない、非常にユニークな要素がこのゲームにはあります。それが、連続攻撃に関するシステム。
●ほんとにもう、18ヒットで体力8割強とかやめて欲しいですよ日本の格闘ゲームでは、普通は通常技キャンセルや目押しによって連続攻撃を組み立てます。システムとして連続攻撃が組まれている場合でも、せいぜい目押しによる繋ぎがしやすい程度。つまり、今現在ゲーセンで眺めることのできる信じられないような連続攻撃の数々は、全てプレイヤーの技量(※1)によっておこなわれています。 ただ、そういった連続攻撃を防ぐことができた場合(または強制的、連続的に防がされて受けに回ってしまう状況)への対応策は存在しますが、攻撃がクリーンヒットした場合の対策は完全に存在しませんので、小技からそのまま連続攻撃を始められてしまい、非常に威力の小さい小技一発が致命的なダメージにまで膨れ上ってしまった、ということもざらに起こります。
●ハメ前提の技って一体……こんな状況なので、最近の格闘ものでは最初の一発を受けないようにするしかないのですが、そういう場合に限って攻め手にとって非常に有利な攻撃パターン(※2)があったりしますのでどうにもなりません。一応、連続ヒットの回数などでダメージを減らしていったり気絶ポイントの加算を緩めたりして調整を取ってはいますが、無限にヒットし続ける連続攻撃が組めたり、強制的に気絶させてしまう攻撃が連続技に組み込めたりするという時点でそんな調整にはまったく意味がなくなります。 このことについては、個人的には完全な調整不足だと思うんですが、まあそんなことを言っても全然はじまらないので諦めます。願わくば、思いつきだけでとんでもない仕様にしてしまったがために、初心者の金を無情に吸い上げるようなゲーム(※3)は作らないで欲しいですね。……ああ、今さら初心者は格闘ゲームなんかに手を付けようとしないか。見るからに駄目に見えるし。
●アメリカ人、ときどき着眼点がナイスですよ で、この「キラーインスティンクト」に関しては、前述のような悲惨な状況は「ない」と言い切ることができます。ちゃんと対策があるんです。ある程度の技量を要求されますので普遍のものではありませんが、少なくとも試合開始直後の弱パンチ一発から延々殴られ続け、結局放してもらえたときには残り体力は数ドット、などというとんでもない事態は絶対に起こりえません。
●突き詰めれば対戦も面白くなるはずざっと簡単にご説明しましょう。まず、このゲームの連続攻撃、以下コンボには「最初の一発」があります。「スターター」と呼ばれるものですが、これはジャンプ攻撃や特定の必殺技、特殊攻撃などがそれにあたります。それがヒットした後に、「次の一発」があります。これはスターターに対応したボタンを押すことで自動的に2〜3発の攻撃を加える「オートダブルス」、またレバーの入力などを伴ったりオートダブルスの対応表から外れた特定のボタンを押すことで発生する「マニュアルダブルス」がそうです。 この後、高ヒット数&高ダメージを期待するなら「繋ぎの一発」、すなわち「リンカー」を使い、さらにオートまたはマニュアルダブルスを決めて「とどめの一撃」となる「エンドスペシャル」で締め、ブレイカーを警戒して安定感を期待するならそのままエンドスペシャルで締めてしまう、というのがコンボの概要です。他にもいろいろあるようですが、これは別に攻略記事でもありませんしどうせ私には英語は読めませんので割愛、ということで。 ……しかしコージ君、なんで画面に表示されてることなのに「分からない」の一点張りですか……。
●心眼を修得すれば、百発百中で返せますよ(無理)ここで、攻撃される側に与えられたコンボ回避策が、今出てきた単語、「ブレイカー」です。先ほど説明しましたオート、マニュアルダブルスにはそれぞれ一定の法則があり、スターターに何を使ったかでダブルスと認められる攻撃が決まるのですが、ここでダブルスに使用されたボタンがパンチかキックかを見極め、コンボを受けている最中に相手の攻撃に対応するボタンを使ってコマンドを入力することで、相手のコンボを阻止することができるのです。 実際に相手の攻撃を見極めるのは大変なことですが、よく考えれば攻撃側のダブルスに使えるボタンだってパンチかキックの2種類しかないわけですから、駄目もと感覚で決め打ちでコマンドを入力してみるだけでもだいぶ違ってくるはずです。また、見極めが大変とは言っても、コンボが長くなればそれだけブレイカーを狙う機会も増えるわけですから、攻め手も長い構成のコンボばかりは使えません。 もっとも、この辺はプレイヤー同士の技量、センスの問題となってきますので(ついでに作品ごとにブレイカーの発動条件が違うし)絶対とも言い切れないんですがね。少なくとも、「これを繰り返していれば勝てる」というようなイージーかつ強力、ノーリスクハイリターンというようなふざけた攻撃パターンがないことは断言します。
●さぷれーいむ・びくとりぃぃ(ナイスフィニッシュ時のボイス)それから、そのコンボシステムにともなったある種の見せ技として、「ウルトラコンボ」「アルティメイトコンボ」というものが存在します。私が最初に見た、フィニッシュ68ヒットというのは今思うとこれだったんですね。 相手の体力が残りわずかになり、赤く点滅を開始したときに実行可能になる(相手の体力が、という辺りに注意)この2つは、コンボのエンドスペシャルをそれぞれのコマンドに入れ替えると発動します。「ウルトラコンボ」は通常のコンボから続けて猛烈な連続攻撃(日本で言う『乱舞』を軽く越えています)を加えるというもので、だいたい10数ヒットはプラスされます。特定の行動からコンボを長く伸ばすこともできますので、うまく繋ぐことができれば最終的に60、70ヒットは軽く叩き出せるという代物。こいつを極めればギャラリーが群がること請け合い、というようなすごいものです。 私の見かけたコンボで「美しい」と思ったものは、相手の攻撃を打ち返してコンボ継続時間を伸ばしたうえでコンボを開始、乱舞の途中で相手を上空へ投げ上げてさらに連撃を加えてから地面に叩き落とし、そこからスライディングで倒れた相手を捕らえてウルトラコンボへ接続、というもの。まさにドラゴンボールの格闘シーンのような非常に美しいもので、「こんなことまでできるのか」と心から感心したものです(※4)。 また、「アルティメイトコンボ」は通常のコンボの後にいきなり画面を暗転させて相手をブチ殺してしまう、というもの(なお、ウルトラコンボでも対戦者死亡になります)。とりあえず、アメリカ人てのは相手が死なないと決着だと思わないみたいですね。まあ、死ぬことが確定した状況での見せ技ですから、どうせなら派手に行こうや、という感じなんでしょうか。面白かったのは、ロボットの「全身を銃砲に変形させて大乱射」と液体宇宙人の「どこでも底無しプール」。 ついでに、特定のステージの特定の条件で相手を打ち上げるようにしてとどめを刺すと、ステージの外に落下していく様が見られます。特にゲーセン版の2なんかは、海の底に沈んで行く様子がこれ以上ないくらいのインパクトで表示されますので、機会があったらマジで必見とお薦めしておきましょう。それとか、対戦時のみのステージ「空」においては、画面端で空中に打ち上げられるだけでこの「高所からの落下」が発動し即死になる、ということも言い添えておきましょうか。
●ゥオウリャァァァァ!!(ジェイゴー氏の雄叫び)さて、ここまでの文ではしごくまっとうな格闘ゲームのように思えるでしょうが(そうでもないか?)、そこはもうアメリカ製のゲームですから、やはりというかなんというか、変な奴ばかりです。いや、「日本だったらきっとヒーロー」とか「日本だったらきっとアイドル」みたいな奴もいるんですが、何ぶん顔が濃いもんで、ちょっとねえ……といった感じ。システムはいいんだから、これの唯一の問題はキャラの顔だと思うのです。中には日本なら間違いなく美少女キャラとして脚光を浴びそうなキャラもいるんですが、これがまた顔が異常に怖いもので日本ではまず人気は出ません。 例としては、ちゃんと訳したわけではないので間違いなどあると思いますが、主人公のような感じで「チベットの修行僧かつニンジャ」がおります。「エンドクゥゥケン!!」「レックゥゥケン!!」など、やけにきれいな発音でしゃべるのでたぶん日系の人が声を当てたのでしょう。こんな人に爆殺された後に、「成仏なされい」とか言われても、とても死にきれません。また、この人の場合はスプリームビクトリーとかオウンサムビクトリーの時に見られるCGムービーもすごくてですね、刀を構えて顔を前に出し絶叫します。64版には入ってないのが実に残念でした。 他にも、「人間に戻してやると騙されて両腕を改造されてしまった狼男」や「悪会社製の最新戦闘ロボット」、「間違ってまた地球に来てしまった超低温液体の宇宙人」、「変な骸骨」などなど友達には死んでも欲しくない方々が勢ぞろい。そんな異常な連中が、スーパーファミコンの「ドンキーコング」を作ったRARE社の手による超絶美麗なレンダリング画像で描かれているんですからもうそのインパクトは絶品です。
●絶対これ面白いってコンボシステムについては、日本の格闘ゲームをやり込んだ人には「自分で連続攻撃を組み立てていくのが楽しいんだ、そんな決まりきった連続攻撃なんか面白くない」と言われるような気がしますが、しかしまあ最近の日本の格闘ゲームが何か変な方向(※5)に向かっている気がしてならない私としては、いっそこのくらいデフォルメされているほうが心地いいです。少なくともハメまがい(※6)の連続攻撃を食らい、怒り狂って椅子を投げつけたりするような心配はありませんからね。 なので、もし日本製の格闘ゲームとその対戦の光景に「疲れた」とか「飽きた」とかとにかくそんなネガティブな感情をお持ちの方は、このシリーズを試されるとよいでしょう。まーもっとも、なかなか見つからないと思いますけどね。 ああそうそう、ちなみにこのタイトル、「殺戮本能」って意味です。なんとも相応しい名前を持ってきたもんですね。
※1 プレイヤーの技量正確には少し違い、「システムを利用したプレイヤーの技量」となります。 当り前ですが、いろんなゲームにはそれぞれの仕様がありまして、それと同じ数だけゲームシステムの抜け道のようなものがあります。えてしてそういう経緯で編み出された連続攻撃は凶悪なものが多く、例えば「餓狼伝説スペシャル」には『弱パンチを当て、少し歩いてまた弱パンチ』というこのゲーム独自の連続攻撃が存在します。 あるキャラなどではこれが無限に続けられるなどというふざけた事態も発生しまして、これなどは「弱攻撃のヒットバックが少なめ、攻撃ヒット時ののけぞりが長め」という仕様に目をつけた人間が編み出したものです。まあ要するに、システムという受け皿を最大限に利用していると言えるのでしょう。やられる方にとっちゃあたまったものではありませんが。 事実、やられた方はもう完全になにもできなくなるような連続攻撃などもざらにあります。「100%ダメージ」なんて、洒落にならないと思いませんか?
どういうんですかね、「仕掛けられた方にとっては非常に嫌な攻撃」とでも言いますか。例えば、キャラクターは地面に倒れてから起き上がるまで全ての当たり判定がOFFになりますが、起き上がった直後あたりに判定がONに戻る瞬間があります。そこを狙われるとこちらにできる行動は「立って防ぐ」「しゃがんで防ぐ」「無敵時間のある技で返す」くらいしか実質なくなります(『ジャンプする』という選択肢もなきにしもあらず)。ところが、「立って防ぐことはできない」技、「しゃがんで防ぐことはできない」技などを併せ持ち、なおかつどちらも高性能だったりするキャラが相手だと、筆者のような老人にはどうにもなりません。 実際はこれも駆け引きの一つと言えなくもないですし、それに対戦にはそれぞれの心理状態なども関わってきますので一概に「性能が……」とかは言えないのですが、最近のゲームはそういう駆け引きやら何やらに慣れすぎた人間のみをプレイ対象としているため、筆者レベルの人間には非常に厳しいというのが現状です。
最近はどうだか知りませんが、一時期とんでもないゲームが多くありました。コンピュータのルーチンが強すぎる、というものとコンピュータが使ったときだけキャラクターの性能が異常にはねあがる、というものです。まあルーチンはいいとしても、性能の圧倒的な上昇は反則だと思うんですよねえ。 ゲームとしてしっかりした作りであればいいんですが、これがコマンド入力がきついとかそもそもまともにキャラクターが動かないとか、そんな欠陥品だったりするとどうしようもありません。そういった、理不尽な難しさを持ったゲームが格闘ゲームから客を遠ざけた一因だと思うんですが、どうでしょう。ファイトフィーバーとか、ねえ。アレは別の意味で人気を呼んじゃいましたが。
私が見たのはアーケードの「キラーインスティンクト2」の方です。正確な描写ではありませんが(記憶の中の話ですからね)、空中に投げ上げた相手をスライディングで捕える、ということはやっていたように思います。64版ではできるかどうかは不明です。
なんか最近、バランスとかそっちのけで見ためだけに特化していってないですかね。アニメーションが異常になめらかだったり、キャラクターがかっこよかったりかわいかったり声が有名な声優さんのものだったり、そんなことはどうでもいいことではないですか? それよりも、ちゃんと整合の取れてるシステムを作るほうが私は先決だと思いますがねえ。 見ていて面白かったのが「キングオブファイターズ2000」で、実戦に参加するキャラクターのほかに一人サポートマンを置けるんですが、こいつを使った連続攻撃でなんと100%ダメージがはじき出せます。すなわち、「体力いっぱいの状態から即死」ということです。「ふざけてる」という言葉以外思いつきません。「そんな攻撃を行うユーザーがどうこう」以前に完全にメーカーの手落ちまたは怠慢だと思います。そんなだから客が逃げるんだよ。
ルール的にはどうだか知りませんが、そういった「ある程度以上の腕前がなければ対処できない連携攻撃」というものは確実にあるわけで。 それでまあ、腕のある人(または自分の連続攻撃を見せびらかしたいオナニープレイヤー)はお目当てのゲームで誰かが遊んでいるとなればそれこそ見境なく対戦を挑んでいきますね。このとき、挑まれた人も達人だったらそれはそれでいいんですが、たまたま私のようなヒョロヒョロ弾だったりするとそういった攻撃をかわせないから一瞬で負けてはいさようなら、ということになるわけです。これって、めちゃくちゃそのゲームへの印象を落としますよね。何の気なしにお金入れたらいきなり乱入されてかわせない攻撃(素人目にはそう映るんですよ?)連発であっという間にゲームオーバーなんですから。 個人的には、コンピュータの異常な強さとこういったプレイヤー間の腕前のギャップ、またそれに無頓着なメーカーが格闘ゲームから客を遠ざけているように思えてなりません。異常な光景じゃねえか、金入れた1分後にはもう席を立たされてるってのは? だから、メーカー側には「乱入されたときにそれを却下するシステムを積んでくれればいいのに」(マージャンの対戦ゲームにはあるんですよね)と思うわけだし、お店には「達人台と素人台を分けてくれればいいのに」と思うわけです。 |