ゲーム雑感録
=アーマードコアシリーズ=
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●ナインボールという戦士 〜マスターオブアリーナ〜

 ナインボールシステム。企業やレイヴン、テロリストなどをある目的のために裏で操り、従わない者は闇に葬ってきた存在。人によっていろいろ解釈や呼び方はあるだろうけど、私は彼をそう呼んでいる。彼とはシナリオの都合上決着を付けなくてはならない流れとなり、またそこに至るまでの過程において彼のやり方は少々目に余るものがあるため物語にのめり込むタイプの遊び手は概ね彼には好感情は抱かないだろう。

 ただ、彼との邂逅の直前に聞こえる「私は守るために生み出された。……私の使命を守り、この世界を守る」という言葉。そこに私は、彼の「いくさ人」の意地のようなものを見たように思う。なんとしても守らなくてはならないもの、それが傷つけられようとしたとき、何を投げ捨てても戦わなければならないこと。そして彼は封印された技術の結晶「ナインボール・セラフ」を駆って「守らなくてはならないもの」のために戦場に立つ。その守るべきものの是非は問わず。


 先ほど「いくさ人の意地」と私は言ったけども、もちろん彼にそんな意地などあるはずない。彼は冷徹に、極めて冷徹に使命をこなそうとしているだけ。それでも私は、彼の言葉、戦いが終わったときのあの姿にその意地を感じる。戦闘力を喪失し、膝を突くセラフ。機体からこぼれ出したオイルにスパークが火をつけ、やがてセラフは焔に包まれる。それでも彼は辛うじて動く左腕のレーザーキャノンを構え、撃とうとする。収束、続く爆発。肩から落ちる左腕。完全に為す術を失った彼は、いかな心持ちで、いかな表情を浮かべて焔の中に倒れ臥したのか。

 すべては否定されて然るべきこと、でも私は彼の最期の瞬間に、彼の無念の視線を感じたように思う。これまでやってきたことやその強引無比なやり方など、彼は確かに邪悪な存在だったかも知れない。しかし、敬意を払うに十分値する「戦士」ではあった。


●ムーンライトソードとタロスブレード 〜アーマードコア ネクサス〜

 久しぶりに私をレイヴンに戻してくれた「アーマードコア ネクサス」。このゲームには、今や定番となった最強の光線剣「WL-MOONLIGHT」、ここではムーンライトソードと呼ぶがそのムーンライトソードのほかに「YWL03LB-TAROS」、過去のシリーズでスティンガーというアーマードコア乗りが愛用していた光線剣が登場する。この光線剣、ここではタロスブレードと呼ぶが、この剣はかつてムーンライトソードにも匹敵するすさまじい切れ味を有する剛剣だったのだ。その威力たるや、仮に空中からの斬撃を受ければ体力値が一息に5000程度減る、そのくらいのもの。機体の防御力によって変わってくるとは思うけど、一撃で5000ダメージというのは並大抵のことじゃない。


 このスティンガーという人物、低音のよく響く稀有な美声どんどんおかしくなっていくその性格、口癖の「面倒は嫌いなんだ」など非常に印象に残る人物だった。腕前としては当時の舞台に存在したレイヴンアリーナ、その上位の連中と十分比肩しうる程度。空中からの斬撃をかなりの頻度で使用するためうかつに格闘戦に持ち込むとあっさり斬殺されるという、意外なところで強敵なのであった。

 さてこのタロスブレード、当時はスティンガー専用剣であってプレイヤーは使用できなかったのだが、今回ネクサスにおいてスティンガーの愛機・ヴィクセンが構成可能になったこともあってついにプレイヤーの手に入ることになった。重量こそ重いもののその他の要素は相応に高いレベルでまとまっているというなかなかの好パーツで、同様の特徴を持つムーンライトソードに比べて多少軽く、また刀身も少し長い。引き換え、他の面では少しずつ劣っている。……というのは性能比較画面で確認できる、額面の上での評価。


 実際使ってみると、確かに使い勝手はいい。いいのだけれど、タロスブレードは他の剣に比べて構えなおすまでの時間が実に遅い。ソフトバンク社の攻略本では「リロードが遅い」という表現だったらしいが、たとえばムーンライトソードが4回振れる時間でタロスブレードを振ることができる回数は恐らく多くて2回、そういうレベル。つまり、「一度食いついたら燃料の続く限り敵を滅多斬りにする」という格闘戦主体の戦闘スタイルにはまるで向かないのだ。どちらかといえば相手をかく乱しながら高速で近づき、一撃斬り付けてすぐに離れる、そういう戦闘スタイル向けの使い方が相応しい。射撃、格闘のどちらにも長ける人向けということか。

 私の場合は「一度食いついたらどちらかが死ぬまでガチンコ」という、準軽量級の機体構成の割にストロングスタイルという機体のコンセプトを無視したような戦い方なので、ならば剣は高威力にして攻撃回数も多い方がいい。剣を構えなおす時間の違い、これに気づくまではタロスブレードを使っていたのだが、剣そのものへの思い入れもある(『ムーンライトソード』という呼称で分かる人は分かると思う)ため今はムーンライトソードを振るっている。どのみち大した腕前でもないけれど、こういうゲームなのだからやはり自分の納得いくように機体を組みたい


 ところで、最新作にしてプレイステーション2最終作となるラストレイヴンでは、新規に二種類の光線剣が追加されている。そのどちらもがムーンライトソード、タロスブレードをはるかに上回る使い勝手を持つため、この二首の剣は存在意義をほとんどなくしてしまった。そのうちの一方である「CR-WL06LB4」は攻撃力に多少の減少を見せるものの、その他の部分においては改善の方向で調整されており、特に1.5倍の剣範囲は威力を落として範囲を強化した「WL14LB-ELF2」にも迫る勢いである。

 また、「WL16LB-ELF3」は威力、剣範囲においてわずかな減少のみ、その他の部分においては大きな改善が加えられている。少し短くなった剣範囲が気にならなければ、携行性から考えてもこれが最も使いやすい光線剣ということになろう。なお、このどちらもハンガーユニットに格納可能、銃撃戦主体の構成にも非常用武装として組み込むことができる。格納できない先の二首の剣は、こういうところでも趣味の剣になってしまっている。

 もとよりネクサスの時点で光線剣は半分趣味、対AC戦闘ではかなり扱いにくい武装になってしまっている側面はあったが、こうなるとこの二首に関しては完全に趣味のものと思える。私自身、ブレードの扱いが上手い人間ではない(そもそもこのゲーム自体がうまくない)のだが、どちらもそれなりの思い入れがある剣だけに、少々寂しい。


●機体表面温度とか 〜アーマードコア ネクサス〜

 プラットフォームがプレイステーションから同2に移るに当たって、このシリーズにエクステンションとインサイド、それにラジエータや温度関連の要素が加わったというのももう懐かしい話かも知れない。私はプレステ2を買ったのが遅かったというのと、友人にアーマードコア2を少し遊ばせてもらったときに感じた多少の違和感(ちょっと機体の挙動が重くなっているかな、という具合)、そして初期のミッションにおいて防衛用の無人機関砲座の大群にあっさりと「焼き殺された」(機体表面温度の異常上昇でベリーベリーウエルダンな状態にされてしまった)のが功を奏してしまい、完全に見送りモードに入ってしまったのだけども。

 まあ、ここでするのはアーマードコア ネクサスの話。今回も例に漏れず、すでにおなじみ生体兵器が登場する。今回のこいつらはなんか自爆が基本になっていて、わさわさ寄ってきては近くで自爆するというはた迷惑な行為を好んで行うのだが、この自爆、巻き込まれると機体表面温度が恐ろしい勢いで跳ね上がる。3体にでも連続して爆ぜられれば、温度は2,500℃と「何の冗談か」と言いたくなるような記録を打ち立ててしまう。確か太陽の温度が6,000℃だったと思うが、大雑把に見てもその半分程度。機体はおろか、中の人間も助からないのではないんじゃないか、と要らない心配をしてしまうことしきり。というか普通は機体がバターのように溶けるだろう。


 そういえば、生体兵器をロックオンするのには生体センサーという頭部パーツの一要素が必要になる。が、プレステの初期シリーズでは生体兵器は最初のアーマードコアにしか登場せず、またマスターオブアリーナでは新規追加の頭部パーツに一応生体センサーが搭載されていたもののこちらでも生体兵器はご無沙汰。これ以降プラットフォームが移ってセーブデータの引き継ぎができなくなってしまったため、なんのためにわざわざ新規パーツにセンサーを積んだのかよく分からないという結果になってしまっている。また、どの作品でも生体兵器の登場するミッションはかなり稀で、2に至っては登場しなかったりする(どこかで出る? 私は覚えがなかったなあ)。ディソーダーが代わりなんだろうか。

 そんな具合なんで、生体センサーなんてよほど変な構成のミッションでもなければまず気にしない要素なんじゃないかな、とは個人的に思うこと。ちなみに3の「耐性生物駆除」とサイレントラインの「ウィリアス植物研究所探索」はその変な構成のミッションに含まれると思うので、これだけはセンサーつけたほうがいい。まあ研究所云々は解くだけならばセンサーなくてもいいけど、全体のクリア率上げるのには全滅が必要になってしまうからね。


 ……で、唐突にネクサスの話に戻す。生体兵器が爆発したときって外気温はどうなっているのかな、と思って試してみたところ、外気温にこそ変化はなかったものの、ひたすら爆発を受け続けてみたらばなんと機体表面温度が6,500℃を突破!! 太陽を突破してしまった。機体はともかく乗っているレイヴンはどうなってしまうというのか。「やっと人間と判別できる程度に焼け焦げていた」(Byバンコラン少佐)とか? まあ、そこでゲームオーバーにはならないから大丈夫、なんだろうけど、少なくとも私はそんな状況は願い下げだなあ……。

 この生体兵器ども、ラストレイヴンでは斬り倒しても爆発しなくなっているため機体温度の上昇は心配しなくてもよくなっている。やはりあんな勢いで爆発されまくっては、使う方もたまったものではないと思ったのだろうか。


●お金の話 〜シリーズ全部〜

 このシリーズ、各ミッションで使った弾薬の費用とかぶっ壊した機体の修理費とか、報酬金額の少ない序盤はとかく金に困る。でも、それも情報が出揃ったり腕が上がったり、一度クリアしてフリーミッションモードに切り替わったりするといきなり金が腐るようになる。パーツを全部そろえてみるのもいい、一回のミッションでいくらまで被害金額を叩き出せるか試してみるのもいい。それでも、最終的に金はごっそり余るはず。

 ちなみに、前者はやると読み出しが異様に遅くなったり音楽がスローになったりして何かと不安を煽られ、後者は少なくともプロジェクトファンタズマの時点では100,000クレジットという金額を叩き出せる。本部襲撃のミッションに超追尾型の大型ミサイルを両肩に積んで出撃し、壁を挟んで敵を狙うことで全部撃ちつくす。補給が行われたあとも同じことをやってついでに死んでみれば、いい額の請求が来ることだろう。

 だいたいアリーナの存在するタイトルは、アリーナに勝ち残っていくと報酬金額が異常に高騰していく(最終的には数十万の世界になる)から金がほんとに腐ってしまうのだ。ネクサスだって、チューニングという無駄遣いポイントが加わったけどミッションごとの報酬金額が異常に大きいからあっという間に金がたまるし。9回もクリアしようものなら持ち金およそ5千万。こうなると、少なくともプレイヤーが世界一の大富豪なのは間違いないだろう。


 で、私が最初のアーマードコアからずっと思っていたこと。「ゲームには一切関係なくていい、ただ名前だけでもいいから何かに投資させろ」ということ。土地を買うとか、ビルを買うとか、別になんの意味もなくていいから、とにかくクレジットの数字の蓄積だけじゃなくて「これこれこんなものを買える、そこまで金持ちになりましたよ」という何かが欲しいのだ。あんまり凝りすぎると別口のゲームになりそうなんだけど、ここまで「想像の余地」のある稀有なゲームなんだから、こういう要素がちょっとあるだけでも更に想像の余地が広がる、そんなふうに思えてしまう。自分だけの物語、そういうものを考えている人はいっぱいいることだし。とりあえず、パーツを買うのと機体修理費以外の金の使い道。これはほんとに欲しいところだった。

 余談ながら、この辺の「資金を機体のみならず、ほかのいろいろなことに回せる」という要素は、アイレム社の「ポンコツ浪漫大活劇 バンピートロット」にて実現されている。アパートを借り、家具や装飾品を自分の好きなように揃えて配置する。各企業の株を買うこともできる。楽器を買い揃え、自分の所属する演奏団に幅を持たせることもできる。いざとなれば、巨大な地上戦艦を買い込むことだってできる。もっとも、戦艦は990,000ユーロッチ(一回の交易で稼ぎ出せる最高の粗利が1,600ユーロッチ程度)と異常に高価だが。

 もとより余るほどの収入もなかなか得られないゲームなので、あちらでは交易をこなしたり楽団の演奏をこまめに行ったりして資金を稼ぐ必要は出てくるが、とにかく自分の好きなように振る舞い、金を使ったりできる。アーマードコアにおいて夢想していた部分がこうして実際に形になっているのを見ると、やはりゲームは進歩しているのだな、と思える。


 それから、特定のミッションにおいて車を踏み潰したりすると特別減算としてその車の修理費(全損間違いなしなので、ことによると新車の購入代かも知れない)を請求されることがある。その代金たるや、なんとたったの500。で、その踏み潰した車ってのは見るからによさそうな、ちょっと大きめの乗用車。「中大型セダン」なんていう種類でいいのかな。……えーと、ちょっと眺めてみたけど車って最低でも100万円くらいは堅くない? 「中大型セダン」だと最低ラインが200万円くらいみたいだし。てことは、簡単に考えて車が200万円=500クレジット。1クレジットが4000円、でいいの?

 とすると、アーマードコアってめちゃくちゃ高いね。ネクサスにおける最安価パーツで稼動状態に仕上げた場合(武装はコア内蔵のエクシードオービットのみ)の金額が223,800クレジット、とのこと。……およそ9億円、ですか? 最低稼動状態、ほぼ戦闘不能(やってやれないことはないらしいが)とかいう状態でこの金額だから、通常戦闘が可能な状態にするとどう考えても50万クレジット程度は必要になるだろう。20億円。いくらなんでも高すぎるな、車の値段ももう少しするか?


 でも車の値段を1000クレジットにしても億単位の金額に突っ込むのは間違いない。実際兵器というものはとんでもない値段のもの(戦闘機が一機数億円の世界)らしいので金額的には不自然さは少ないようだが、しかし個人資産ということを考えると大変なことになっている、という感じはする。レイヴンというのはどうも金持ちみたいだね。これだと2にいた「低所得者が共同出資でアーマードコアを購入」というのも頷けてしまう。俺も一口出資してみようかな、とか思ってみたり。

 しかしよく考えてみると、2とか3では明らかに未成年ないしそれに近い年代の女性がレイヴンをやっていたりすることもある。エネとかレジーナとか。……どうやって9億円調達した? 特に前者は家族の手術費を稼ぐためにレイヴンになったという触れ込みだから、9億円も持っていたならそれをそのまま手術費に回せば済むだろう、という悲惨な話になってしまう。まあ、組織から回される最初期の機体は一種サービスのようなもの、と考えるのが普通なんだろう。受験費用だけ支払って、合格さえすれば機体は無償提供とかそんなところなのかな。なんせ落第=死だし。9億円も払って死んだらかっこ悪い


●強化人間のこと 〜シリーズ全部〜

 強化人間。この名前を最初に使ったのって、たぶんZガンダムだと思う。概ね人体を改造したり精神改造をかけたりして人間をより兵器に近づける、そういう存在。ロボットなどを題材にした物語には名前こそ違えども大概これと同種の存在が見かけられる。どの作品でも完全な実用化には遠く、身寄りのない子供や捕虜、また一部の志願者などを活用して人体実験を繰り返しているというのがだいたいお定まり。そりゃあ、人体改造計画なんてそう簡単に実用化されてはたまらない

 で、このアーマードコアシリーズでもそれは例外ではない。初作からすでに存在している。このシリーズでもお約束どおりに実験段階なんだけども、作とやり方によってはプレイヤーも強化してもらえるのだ。どうするのかというと、私の知っている初期プレステ三部作ではなんと借金を重ねること。金がないなら身体で払えと言わんばかりだ。実際やってみると、

助手:「どうも金の支払いに困った傭兵みたいですね」
医者:「夢破れたり、ってとこか。ま、手術がうまくいけば新しい人生が開けるだろ」
助手:「生きてれば、ですがね」

 とかいった具合のいかにも恐ろしげなムービーが入り、名前も「強化人間==号」みたいに変更されてしまう。まるで犯罪者だ。さらに、もっと借金を重ねることによって捕まっては改造、捕まっては改造を繰り返し、どんどん人間離れしていくこともできる。最大6回、だっただろうか。強化改造を受けるたびに先ほどの「金の支払いに……」のムービーが流れるが、執刀医はいい加減同じ人間に何度も手術を施していることに疑問を感じないのかな、とは当時思ったこと。なお強化改造を受けた人間の外見などについて、友人との間で

「髪の毛全部剃られててさ、そんで側頭部とかにシリアルナンバーが刺青してあるんだよ。ついでに生々しい縫い痕とかもでっかく残ったりして」
「そうそう、絶対そんな感じだよな。頭にレーダー接続用のジャックとか付いてるんだぜ。そこにケーブル何本も差して情報管制をやるんだよ」

 などと薄気味悪い空想を膨らませたりしていたもの。懐かしい、というかそれからまだ6年くらいしか経ってないはずなんだけど。妙なものだね。でも、私は本当に強化人間とはこういうものだろうと考えている(現に、ネクサスでリメイクされたミッションにおいてはどの強化人間も実に怪しげなしゃべり方をする。『人間やめさせられた』というような発言もある)。少なくとも強化人間で美形とかそういう異常な話はないと思いたいね。

 アナザーエイジはやったことないからどうやって改造してもらうのかは知らない。2はやっぱり借金らしいね。3は、変な強化パーツを買って、それを装備したまま特定の条件を満たしていくことでどんどん強化人間と同様の能力が開示されていく、という仕組み。このことに限らず、私は3での大幅な改変を非常に評価している。もっとも、別口のところで「問題だらけだ」とも思うけど。


 さて、このゲームにおける強化人間の能力はどんなものなのか。有り体に言って、反則。最終的に取得できる能力を羅列してみる。

  • 常にレーダーが装備される(機体そのものにレーダーが搭載されていなくても有効)
  • エネルギーゲージの消耗が半分になる
  • 光線剣から超高威力に変化する三日月状の破壊光波を無制限に発射できる
  • 砲の使用に関する制限が外れる

 一番上はともかくとしても、他三つはかなり極端で、一度能力を取得してしまえば通常のスタイルで遊んでいるプレイヤーとは文字通り格段の差がついてしまう。何も知らない人でも、まったく同じ構成の機体で飛行時間が二倍違ったり自分にできないことを相手がほいほいやり始めたらさすがに「なんだこりゃ」と思うだろう。

 実際のところ、どうも「初心者救済」という名目で入っている要素のようなんだけども、これではむしろインチキ助長の仕組みに見えてしまう。へたくそな私が初めて遊んだときでも、強化人間にされる程度の借金さえ負わなかった。また、私よりもゲームそのものについて熱意のない姉でさえ、ゲーム開始直後の試験に目標撃破でパスしている。要するに、このシリーズは(少なくとも初作は)操作の敷居さえなんとかしてしまえば誰でも遊べるゲームということ。普通に遊んでいて強化人間にされてしまった人なんてそうそういるとは思えないしね。むしろ上級者が自分の力の底上げにこの強化人間を使うという状況にさえなってしまっているので、これはかなり嫌な感じがする。所詮は自分の力に非ず、道具に頼った力で何を誇るか


 それと、マスターオブアリーナにおける「チャンピオンアリーナ」にて全国レベルのランカーが手ずから組み上げ、行動パターンなども設定したという敵ルーチンと戦えるんだけど、やはり個人的には強化人間で腕前の優れている相手よりも、純粋に自分の腕前だけで戦う(しかも強い)相手のほうが優れていると思う。強化人間で重量オーバーの相手に砲や光波で殺られるとどうしても「このインチキ野郎が!!」とか悪態が飛び出すけれど、そうでない相手にすすっと忍び寄ってこられていきなり空中剣で斬殺されたりすると「何ィ!? お、恐るべき腕前!!」と思わざるを得ない。まさに舌を巻く思いだ。

 そういう非・強化人間で特に怖かったのはやはりマスターオブアリーナに登場する「炎刃・改 夜刀神」なるアーマードコア。影か何かのようにすっと現れて突然斬りつけてくる。どう走り回っても、いつも背後に、側面にいる。ガンダムデスサイズやプレデターを相手にするとこんな感じなのか、といらない疑似体験までできてしまう。

 本物の腕前がどうなのか、それは拝見したことがないのでなんとも言えないがしかしコンピュータがああなら本物もさぞかし強烈な腕前なのだろう。恐らくは本人が考えたと思しい解説文も、あの腕前なら納得できてしまう。自分はその腕前には遠いが、それならそれで自分に見合う愉快な解説文を考えたいものだね、と思っている。


●変なレイヴンたち 〜シリーズ全部〜

 初作から、このシリーズでは自分以外のレイヴンの姿が「ランキング」や「アリーナ」にて見られる。機体の外観とその乗り手の性格や戦い方などが簡単につづられたプロフィールが表示され、それを眺めて遊び手はときに脅威を感じ、ときに笑ったりするのであるが、私はどちらかというと強い一辺倒の解説しかない連中よりもむしろ「こいつは駄目だ」というような解説を付けられるような連中のほうが好ましい。いや、「弱いから」とかじゃなくて。単純に馬鹿みたいだけど、それでも頑張っていますとか観客を笑わせるために、楽しませるためにレイヴンやってますとか、そういうところに人間味を感じるのだ。実際強いだけの連中はほぼ強化人間能力を持っていたりするため、頭にジャックやらシリアルナンバーが付いているような感じがしてなお印象が悪い

 そんな中で私が好きなのは、やはりプロジェクトファンタズマに登場した「地雷伍長」。何の変哲もない平凡な機体を駆って常に最下位低迷を続ける、ビーハイブ「アンバークラウン」の名物レイヴン。エンブレムも地雷を踏んでぽんと吹き飛ぶ人間のデフォルメ図で妙に愛らしく、非常に好感度が高い。私は最強の敵アンプルールを下した後に、機体構成が同じで腕前だけ最強を更に上回る「本気の地雷伍長」なんか出てこねえかな、とか本気で(今でも)思っている。別にファンタズマにはこだわらないから、この地雷伍長はもう一度出して欲しいな。「本気状態」もつけてね

 この作品には無限軌道型脚部が大嫌いという「ギアクラッシャー」なるレイヴンもいるけど、こいつもなあ、「無限軌道撲滅委員会」だっけ? ああ、「対戦車委員会」か。弱いから夢かなわじ、とかそんな奴。そもそもその何とか委員会だって、下手したらギアクラッシャーの個人サークルです、とか言い出しかねないへっぽこぶりだし。


 また、ネクサスを一通り終えてまた遊びたくなったため3作目を再購入して遊びなおしているんだけど、実はこれのランカーにもどうしようもない連中がたくさんいて実にすばらしい。いわく、カップルでアリーナに挑んだものの彼女のほうが圧倒的に強くなってしまい、今では下位に低迷する彼氏は昔を偲んで涙しているとか、パイロット本人が実にいい男なので人気だけは非常に高いが他はすっきりさっぱり弱っちいとか、完全ストロングスタイルで「回避は弱者のやること!!」と公言してはばからない(でも機体構成は運動性重視でストロングにはさっぱり向かず、何よりパイロット能力が低い)とか、挙げきれないくらい。いや、こういう変な連中、私ほんとに大好きなのね。「回避は弱者のやること!!」、一度は使ってみたい台詞だな。3での極めつけはこれ。「光学兵器は自然に優しい」 ……そうなの?


 そういえば2作目、「ハッスルワン」なる馬鹿たれがいる。「伝説となったレイヴン『ハスラーワン』の後継者を自称するへっぽこ」という意味合いの泣ける解説がついているという。しかも解説によれば似たような奴が毎年出現するとか。……嫌なところに影響を残したな、ナインボールよ。他にも初作でぽっと出てくる新人レイヴン「ファルコン」が2の世界では代々のレイヴン一族になってて今回7代目が引退したから8代目襲名とか、いやあ2にもいいのがいるんだね。この8代目ファルコン、下手な上位ランカーよりもいい動きするしなかなか侮れない。

 あと、数千人の共同出資でアーマードコアを購入し、代表を選んでそいつに操縦を任せて頑張らせるというなんだか宝くじの共同出資のような連中もいるみたいだ。賞金はみんなで山分けの予定、でも代表がへっぽこなので希望の光も消えようとしている、という解説の締め。すばらしい。

 できれば、自分はこういうB級C級、でもインパクトはトップランカー以上というようになりたい。インパクトだけで勝負、じゃないけどさ、人の気持ちにいい意味で残ればそれは腕前とかよりもいい評価だと思うな。これは、このゲームに限った話じゃなくて、人生すべてにおいて思うこと。


 結局サイレントラインも買ってみる。こちらにも変な奴はけっこういるが、面白いのは比較的上位の連中にも変人の匂いを漂わせる奴がいるということ。たとえばランキングの真ん中ちょっと下くらいにフロート脚部の熟練した使い手がいるが、こいつがフロートを使う理由が「フロートは水に沈まないから」。水恐怖症ですか? ああ、そういえば2作目のランキング2位が懲役一億年の犯罪者だったな。いったい何をかましてそんな懲役をもらったんだろうか。

 ていうかさ、日本の法律もこのくらいの懲役を平然と言い渡せるようでないとまずいよ。悪逆極まる殺人を犯した奴がほんの二十年そこらで出てきちゃって、それでまた似たようなことをしでかしたとかいう話があるんだろ? 軽々しく話題に上せてはならないんだろうけど、……本当に、本当に酷い話だ。

 あと、サイレントラインでは特に一部のランカーが試合前に「お前にゃ負けねえ」といったメールを送ってよこすことがあるんだけど、私はアリーナに挑むときは挑めるところまでランキングから画面を切り替えず一息に駆け上がってしまう。ということはメールが来ているという告知が出ないわけで、あるときなんかは挑めるところまで制覇した後で一服、といった感じでメインメニューに戻したら今しがた倒したレイヴンから「お前なんか俺の相手じゃない」というメールが来ていたりしてかなり可笑しい。まさか相手も、挑戦状が読まれていないとは夢にも思っていないだろう。

 他にも新人いびりが大好きな馬鹿たれを倒したらそいつから「お前なんかに負けるなんて何かの間違いに決まっている」というメールが来たとか、あるときは最弱のランカーから「さすが僕のライバルだ。君に勝てるよう僕も精進するよ」というメールが来たりする。またあるときなどは、倒したランカーから「あなたがこれほどの強さとは思いませんでした」というメールが来て、パーツをくれたりした。エクレール、いいやつだな。なんというかサイレントラインはメールが面白いかも知れない。でも新人いびりは2作目の奴のほうが強かったな。


 残念ながら、ネクサスにはあまり面白い奴はいない。解説も戦術などの冷静な評価ばかりで、あんまり面白くない。一番印象に残るのは、せいぜい「機体構成に問題あり」とうそぶいて3度構成を変える「ゴールディゴードン」くらいか。他には四脚からなぜか軽量二脚に変える「ラートシカ武威」(最近知ったが、こいつ『らーとしかむい』と読むらしい)とかかな。「ジノーヴィー」や「アグラーヤ」は印象に残るけど、彼らは「面白い奴」とは違うしなあ。アグラーヤというと、機体にジオハーツというイカした名前があるのにゲーム中では「未確認機体です」と言い切られてしまう気の毒な人、というイメージがあるね。

 その直接の続編になるラストレイヴンでは全員が強豪という感じで、変な奴というか平和な時代を持て余しているマスコットレイヴンのような奴は1人もいないんだけど、前作でおなじみのゴールディゴードンはまた脚を変えている。残念ながら彼の人生はこの24時間で幕を下ろしてしまうため、彼の愛機レイジングトレントも5代目、6代目にはなれなかった。それから、カラーリングから構成からエンブレムからなにもかもが同じで、乗っている人間と機体の名前だけが違うというジノーヴィーの紛い物のようなやつがいる。こいつとの交戦はまったくの予想外だったのでかなり慌てたが、そのままストレートに勝ててしまったので大したことはなかったと見える。


 ラストレイヴンではアリーナがミッション本編とは切り離されていて、アリーナランカーはすべてプログラム、という形になっている。当然人間ではないので愉快な解説なんかは一切期待できないのだが、懐かしい顔ぶれがずいぶん見受けられる。以下のような感じ。

  • 29位 クォモクォモ → プロジェクトファンタズマ(ヴィーダー)
  • 24位 楊 → サイレントライン
  • 21位 No.2448 → ネクサス(オラクル)
  • 19位 ゾロX → マスターオブアリーナ
  • 17位 Mr.KEEPLESS → アーマードコア(アンファング)
  • 15位 Frip-Frop → アーマードコア2
  • 13位 -1 → アナザーエイジ(ワンダーレイド)
  • 11位 Sir.Fire → アーマードコア3
  • 7位 BJ → ラストレイヴン
  • 5位 Code:Crimson → ナインブレイカー(ナインボール・フェイク)

 要するに、こいつらはこれまでの作品のパッケージACなのだ。括弧書きの中は、かつて名前付きで登場したときの機体名。ナインブレイカーだけやったことないから本当の名前は知らないんだけど、聞いた話だとこんならしい。エヴァンジェは今回構成違うな、と思ったらこんなところにかつての姿が。同じなのは武装と頭部だけで、あとはごっそり入れ替わっている。あの構成を考えると、ああまでの耐久力はないはずなんだが……。

 このうちの半分くらいは「機体構成に過負荷が大きいため、総合性能は高くない」と書かれていて面白い。実際、パッケージACを自分で組むと大概が重量オーバー、そうでなくとも武装が酷く偏っていたりして使い物にならなかったのだ。その辺ストレートに書き出されているのを見て、「ああ、やっぱり開発陣も『これは見た目だけだよな』って分かってたんだなあ」としょうもない感慨にふけってしまった。

 そういえば、今回はACテストで基本構成のACと戦える。が、これが基本構成のくせにめっぽう強い。もしかして地雷伍長の再来か? ついに本気モードか? と思っていろいろ眺めてみるも、残念ながら「こっそり彼のエンブレムが貼られている」という事実は確認できず。ちぇ、期待したのになあ


●最強の戦士 〜シリーズ全部〜

 遊び手が扮することになる「レイヴン」、まあこの世界でいう傭兵のことだけど、このレイヴンにもランク付けがあるとは前にも言ったと思う。今回は、その上位を占める豪傑たちの話。

 作によって時間軸や物語が展開される土地ないし世界が違うため、それぞれの物語の上でこれまで作をまたいで登場したランカーというのは初作とマスターオブアリーナに登場したハスラーワンのナインボール、3とサイレントラインをまたいだサイプレスのテン・コマンドメンツ以外には存在しない。ということで、作品ごとに最強と呼ばれるランカーは別々に登場することになる。


 作ごとの顔ぶれとしては、初作とマスターオブアリーナではさっきも言った通りにナインボール。レイヴン名で呼ぶよりも機体名での呼称のほうが相応しいと個人的に思うので、ここは機体名。理由は、たぶん遊んでもらえば分かる。彼は前にも話したようにただのレイヴンではないので、ちょっと最強ランカーとは違うかも知れない。アリーナでの交戦の機会もないしね。初作で二体登場したのには本当に驚いた。

 プロジェクトファンタズマではアンプルールというレイヴン。黒い飛竜のエンブレムは、ネクサスにおいて高解像度でサンプルエンブレムに加えられた。強化人間能力と重量オーバーというインチキ構成を生かして、両肩に積んだ炸裂弾砲をドカドカぶっ放す迷惑野郎。ただそれしか芸がないので、逆に言えば炸裂弾を全部回避してしまえば(この時点では、これは比較的簡単にできた)あとは楽に料理できる。積極的に狙ってくるわけではないけど、それでもムーンライトソードにだけは注意。


 2はアレスというやつが最高ランク。こいつシリーズで一番むかつくやつで、強化人間のうえに完全に武装に頼った戦い方をするという、腕前以前の問題を抱えるへぼレイヴン。銃と剣光波の威力に頼りきった戦い方しかできない程度で「最強」とは恐れ入る。装備品の力と自身の力とをはき違えた好例だ。ご丁寧に「お前には失望した」などとふざけたメールまで入れてくれるので、本当に腹立たしい。失望などと、それはこちらの台詞だ

 動きを見ていると完全に素人くさく、武装の威力さえなければ凡百のレイヴンと大差ないというのが見て取れるだけに、こんなやつに勝てない自分が腹立たしくさえある。本当に、心の底から悔しい。こんな程度の低い奴が最強の地位を守るとは、火星のレイヴンどもの器も知れる。また、メイトヒースという奴が3のエグザイルのような感じで登場するようなんだけど、私は非常に悔しいことにアレスに勝てないので、まだメイトヒースには会えない。まあどのみちアレスと五十歩百歩の程度の低い存在だろうな、とは思うが。

 念のため言っておけば、私は2においては1000発搭載のマシンガンと上から2番目の光線剣だけ(ムーンライトソードは見つけられなかった)で2位までのアリーナを全部戦い抜いている。まあ、2位のランカーはどうやら馬鹿だったようで、勝手にエリアオーバーしてしまったので勝ったとは厳密には言えないんだけどね。舞台はほぼすべて闘技場、一部の敵だけ真ん中に柱の立っている砂漠。こんなでも、十分になんとかなってしまう。ちなみに3でもほとんど似たような感じで、武装は基本的に変えてない。ミッションも、両作ともにこれでほとんどクリアしている。


 3ではエース、ないしエグザイル。前者はデフォルト、後者は一度アリーナをクリアすると登場。ただ、私の場合はこの二人よりも少し下につけているロイヤルミストというレイヴンのほうが嫌い。前述の二人は機体構成が軽量で体力がなく、マシンガンででもボボボとあぶれば意外とあっさり落ちる。ところがロイヤルミストは頑丈な構成でマシンガンではどうにも荷が勝ち、しかも純粋なダメージではなく機体表面温度の上昇を狙った武装をしているため手に負えないのだ。私の場合はデコイで懸命にミサイルを散らし、必死に走り回って銃弾を浪費させてやっとこさ倒した。かと思うと、こいつめ巨大兵器と戦うときに丸っきり戦いに参加しなかったり、あっという間に倒されたり。頼りにならん奴め

 エグザイルも、ハードモードだと相当嫌な奴に早変わりする。マジ、ステルス使って上空にぴったりつけてくるのがうっとうしい。お前は蚊か。勝つだけだったら3回負けただけで済んだんだけど、隠し要素開示のために戦うときに間違って先にセンシング強化をつけてしまったため、めちゃくちゃ不利になってずいぶん後悔した。普通レーダーから消えるからステルス使い始めるとすぐ分かるんだけど、変に強化されてるからレーダーに映りっぱなしになってステルス使ってるかどうか分からないのだ。結局こちらもステルスを積んで相手が発動させたらこちらも発動、そんな感じで10回くらい挑んでやっと始末した。あー、二度とやりたくね。もう一つ、あとから出てくるテラとかいう奴。右手の光学手持ち砲がひときわ輝いて見える。……またこれか、もう俺嫌だよこの武器相手にするの。

 サイレントラインはメビウスリングという奴がトップで裏トップがネームレス。どちらもさして苦労はしなかったな。で、ハードでやりなおしてみて今回もまたシルバーフォックスだ。ミサイルはともかく、やはり右手のアレが冗談になってない。残り6発まで逃げることはできたが、どうにもこうにも。頭にきたので前回同様肩に炸裂弾砲を積んで連射。あーもう、相手したくねー!!


 ネクサスにおいては、ジノーヴィーというランカーが最強。という触れ込みだけど、彼も結局アンプルールとまったく同じ理由でさして強くない。腕前というか戦闘での脅威という面では、より高機動型で手持ちの火力が大きいアグラーヤや超重装型の轟のほうがより嫌らしい。ただこの人の場合はミッションに登場したときの印象が非常に強いため、その部分での思い入れがある。

 もともと彼とはある危険な依頼において初めて顔を会わせることになる。パターンは二つあるが、どちらも遊び手を支援する方向で動いてくれ、また首尾よく行った場合には華麗な動きを見せてくれる。また、別の依頼で彼の演習に付き合わされるため実質顔見知りのようになるんだけど、その後さらに別口のある依頼において彼と全力で剣を交えることになる。

 そのときの「この瞬間は、力こそが全てだ! 私を、超えてみろ!!」という言葉を聞くと「目をかけていてくれたのかな」と思え、どうしても「あなたとは、こんな形では戦いたくなかった」と感じてしまう。レイヴンとしての実力はさしたるものではないにしろ、その孤高の姿はナインボールと同じく敬意を払うに相応しかった。全部の作品の中で、私にとって一番かっこよかったのはこのジノーヴィーだ。


 ラストレイヴン。統括組織が崩壊してしまい、直後のごたごたで腕の悪いレイヴンは軒並み淘汰されてしまったため残り24時間の時点で生き残っているレイヴンのほとんどが強豪。前作ネクサスにおいて虫けらのような強さだった奴さえかなりの腕前になっているので、侮れない。そんな中で、強さとは別のところで味わいを見せたのがエヴァンジェとジャック・O。

 前者はただ「俺が最強なのだ」という根拠のない理由のもとこちらに数々アヤをつけてくるものの、「未確認AC撃破」において最後に見せる諦念と闘志は「生きてろよ、後で決着付けようぜ!」と声をかけたくなるくらいに潔い。後者は事情を総て知ったうえで、独自の目的を達成するための隠れ蓑として一般に認知されている行動を起こした、という具合。左腕部をなくした状態で「目的は達した。あとは汚れ役が消えるだけだ」と言って戦闘を挑んでくる姿には、本来の目的を達するまでの覚悟と意志が滲む。実に渋い。しかしこの野郎、前作でポカ踏むと「使えない野郎だ!」とか言うんだよな。まあ、あんなとこで死にかける程度の腕前ならそこまでだってことだろうけど。

 もう1人、ジナイーダというのもいる。こいつは完全にドライな仕事人で、大儀も何も一切関係ない、依頼をこなすのがレイヴンの本分だという考えの持ち主。それはいいのだが、こちらが満身創痍だと分かっている状況において、それでもなお突っかかってくるのは大変困る。日を改めねえか、別に逃げやしねえんだからよ? 持ち出してくる武装のおかげで大変な苦労を味わわされた。で、それをぶん取って自分で使うとガラクタなんだ、これが。

 今作では、アリーナはプログラムとの対戦ツールというふうに設定されている。だから彼らはある意味虚構の存在、実際のミッションには一切登場しないのだが、なんかどこかで見たような連中が雁首揃えてて懐かしい。こちらは勝たないと上位のルーチンが解禁されないので必然的にトップランカーがいるということになるが、ダイ=アモンというその名を聞くとどうも昔あったファンタジー漫画(まだあるはず)の怪しい登場人物を思い出す。「この蒼き爪があの方への忠誠の証ィ!! あの方の次に美しいこのダァイ・アモンが貴様を葬ってやろう!!」 ……だっけ?

 で、実際はそんなふざけた……いや別の意味でふざけてるが、少なくとも漫画のような愉快な相手ではない。強化人間、リニアキャノン160発。こちらの上につけて、ただひたすらリニアキャノン連射。地上に降りればマシンガンとレーザーライフルの雨。初回挑戦は30秒持たなかった。15回くらい挑戦したかな? 正直、勝てたのは運もよかったと思う。こいつとはもう二度とやりたくない。


 そういえば、トップランカーではないもののそれに準ずる腕前のレイヴンとして、初作のロスヴァイセが印象深い。まあ彼女が、というよりもそのインチキチューンのアーマードコアが、ということになるけど。何がと言って、肩に装備されている地獄スラッグガンが恐ろしいのだ。「面」として押し寄せる弾幕に一度捕まったらもはや逃げること叶わじ、これは万の言葉を連ねるよりも実際に味わってもらうしか理解してもらう道はない。遊び手の使えるものとはまったく性能が違うため、ある意味羨ましくすらある。

 この地獄スラッグガンはネクサスにおけるリメイクでもご丁寧に再現されていて、またしても逃げること叶わじ、そのうえ機体表面温度の上昇というおまけまで付いたのでさらに地獄レベルが上がっている。救いは以前ほどこの武器を使いたがらないというところか。なおイラストでは、ロスヴァイセは一昔前の宇宙船乗組員のような衣装を着ている黒髪の美人。メガネ、あったほうがかっこいいと思うけど……。

 ロスヴァイセというのはワグナーの歌劇において名前が出る、12人のヴァルキリーの一員。劇中ではむしろジークムントにつくブリュンヒルデにスポットが当たるため、ロスヴァイセは名前が出るくらいで活躍の機会はない。……他、名前何があったっけ? あとゲルヒルデっていうのがいたのは覚えてるんだけど……。


●Re:必要なもの 〜アーマードコア3〜

>レイヴン、あなたは信じていますか。自分の成そうとすることが、本当に正しいことか。

 正しいことかどうか。無責任なようですが、私にはそれは分かりません。実際に事を成してみて何が起こるのか、正直なところ私にもまったく想像がつかないのです。仮に良い結果になったとしても、それは私の予測範囲外の出来事です。ただ、悪い結果になったにしろ、それはこのまま事態を静観して迎える結末と大差ないだろうな、とは考えています。

 事情を知る人々はどうやら事態を静観したいようですが、ならば彼らは覚悟は出来ていると言えるはずですね。そういう意味では、なぜ彼らが私に対しああいった決定を下したのか、理解に苦しみます。同じ結末を迎えるのなら、その過程がどう変わっても違いはないでしょうに。

 これは申し上げておきましょう。私は、誰かが殺意を持ってこちらに迫ってきていてしかもそれが回避できないのなら、その誰かによる死を甘受するつもりは毛頭ありません。戦えるだけ戦い、そして可能ならば逆に相手を排除します。それが叶わぬにしろ、道連れにはして逝くつもりです。相手が何者であっても。

 もうじきユニオンが解析を終えるころと思います。解析終了のほうが早いか、その前に先日のような事件がまた起こるのか。どちらにせよ、事態の終息はもうすぐでしょう。その先に何が待っているのか、願わくばあなたがそれを見届けることができますように。


 アーマードコア3において、終盤オペレーターから送られてくるメールの件名が「必要なもの」。で、上の文面はそれに対する返信として「私というレイヴン」から送信されたもの、というイメージ。当然ゲーム中にはそんな要素はないので完全に私の妄想、ということになるが、もしあの状況で自分に戦う力があり、そしてあのようなメールをもらったら確実にこう返すだろう、とは思っている。……現実でも、返せるくらいの心の強さを持ちたいものだ。

 ゲームを遊んだことのない人には恐らく何もわからない返信文になっていると思うが、最終盤の状況を知る人、いわば当事者ならば理解はしてもらえるはず。共感を覚えるかどうか、それはまた別の問題だけど。まあその辺は遊んだ人それぞれ、私のように物語に入れ込む人ならばあのメールを見て何かしら感じたことだろう。

 また、3の最終ステージにおいて、「秩序を破壊することで何が得られるというのか」という問いかけがあるが、これにはかつて真・女神転生2においてルシファーが言った言葉を答えとして当てたい。大意ではあるが……。

「神が滅び秩序は失われたが、この地には自由がある。無論、秩序を求める自由もまたある」

 秩序じゃなくて平和だったっけか? まあ、ここで扱う意味合いとしては似たようなものだろう。未来を手に入れられる可能性は秩序を破壊すること、もしそれで先があるのなら秩序はまた作り直せるだろ、という感じかな。すごく簡単そうに言ってるけど。

 3に限らず、このシリーズはこういった「今ある秩序に従う」ということについて一種「あなたはどう?」というような問いかけを含んでいる。ゲームでは強制的にある一方向に進まされることになってしまうが、これが本当に自由に選択の利くゲームだったなら、いったい自分はどんな選択をすることになるのか、考えても答えは出てこない。自分がそれを変える十分な可能性を秘めていると仮定して、あなたなら、疑問を感じつつも今ある秩序に従うのか、それともそれに逆らう方向に動くのか、どうするだろうか?