〜レイフォース〜 機種:アーケード、セガサターン |
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●あのときは、とても楽しかったいつものごとく、学校の帰りしなに行きつけのゲーセンに寄った。ゲーセンというか、パチンコ屋の2階にある狭いスペースにゲーム台を置いているだけのお世辞にもきれいとは言えない場所で、照明は暗いし空気も悪いところだったけれど、そこでいろいろな人物と会ってゲームを通して仲良くなったのはよく覚えている。 そんな薄汚いゲーセンの片隅に、シューティングゲームを並べて置いているところがあった。まあ、すでに格闘ゲームが大いに幅を利かせている時期だから、シューティングなんて誰も遊んでいない。人も寄らない、さびしいスペース。でもその日は、違うものがあった。 照準を合わせた敵を追う、赤い光。艦隊戦の後の静けさを破り、空間を捻って現れる巨大な防衛システム。破壊された防衛システムは、大気圏に落下して燃え尽きていく。正直ゲームでそれだけの描写って見たことがなかったから、「これはすごいな」と思った。お金を入れて、スタートボタンを押してみる。 それから10年、今でもそのゲームとの付き合いは終わってない。そのゲームの名前は、レイフォースといった。
●最初は2面程度で壊滅していたものです……もう10年ですか。早いものですね。 いつか別のところでも少しこのゲームには触れていますね。まあ出会いは今言ったような感じで、ちょうどマクロスの本とか読んでた時期だったから敵が「フォールドアウト」してきたことに妙に感激していた記憶があります。フォールドアウトってのは要するにワープアウトってことです、でも本当はデフォールドっていうんでしたっけ? まあスーパーロボット大戦αを遊んでみれば嫌と言うほどマクロスの話は拝めます。 それでお金を入れて遊んでみたはいいのですが、私もともとシューティングなんてファミコンのゼビウスとジャイロダイン、それに……エグゼドエグゼスくらいしか遊んだことなかったもんで、それはもう下手っぴで、ろくすっぽ進めなかったように記憶しています。そりゃあ最後にシューティング遊んだのが6年前とかだと、どうにもならないですよね。でも音楽のきれいさは最初に遊んだ時点でよく分かりました(そこのゲーセンはこのゲームの音量はなぜか大きかったのです)から、すぐ後に発売されたサイトロンレーベルのサウンドトラックは発売日に購入してしっかり聞き込み、「先の音楽を聴くんだ! エンディングを見るんだ!」と何度も何度も遊んでいたものです。
●Operation RAYFORCE =希望の力=これも以前にお話ししていますが、このサウンドトラックにはゲームの物語と戦闘機やその他についての設定が掲載された小冊子が同梱されています。ところがこの掲載されている内容というのがどれを取っても悲惨なものばかりでして、とりあえず物語は概ね以下のような感じです。 繁栄を極めた人類はやがて資源の無限再利用システムとそれを管理する超AIの開発に成功、このAIに人類そのものの管理を委ねる。しかし長い時間を経てAIが暴走、人類に対して牙を剥いた。人類は必死に抵抗を試みるがAIに管理を委ねてすでに長く、またAIが綿密に人類消滅に向けての計画を遂行していたこともあって、すでに人類にはAIに立ち向かう力など残っていなかった。 この最終作戦というのが、「残存艦隊を全て陽動に割き、その間に戦闘艇を地球中心部まで突入させ、AIの存在する管理施設を消滅させる」というものでして、簡単な話、囮を立てて敵の目を引きつけているうちに地球の真ん中まで爆弾を持って行って爆発させましょうというようなものです。要するに作戦参加者で生き残る者は一人もいませんし(陽動部隊の行く末は、ステージ2ラストにおいてご自分でご確認下さい)、地球そのものも消滅します。 さらには遊び手が操る戦闘艇「X-RAY」も基本設計そのものに問題を抱える代物で、「有機物と無機物の整合性理論」なるものに基づいて作られたその操縦形式は操縦者を脳を除いて機械に改造し、脳にケーブルを直結することによって各種情報の直接伝達と脳波操縦を実現するというもの。最終的には性能試験において操縦者が暴走し、データ観測艇を消滅させた後自爆するという恐ろしい結果に終わっています。 そんな機体ですから、当然常人には操縦することなどできないのですが、……この操縦者も悲しい存在で、オープニングに登場するパイロットの女性は実はアンドロイドという設定になっています。が、彼女の人格を設定する上でかつて実在した女性の人格をベースにしたため、パイロットとして行う戦闘行動のすべてにその人格モデルの良心が反発し、訓練期間中から最終局面に至るまでにどんどん不安定になっていくという、物語とは違う「ライン」があるのですね。作曲はこのライン、パイロットのメンタルバランスの揺らぎを表現して行われていると作曲者のコメントにあります。 心を大きく揺らがせながら任務の達成、逃れられない「死」へと突き進むこの「女性」の姿には、言い知れない哀しさが漂う。私はそう思います。エンディングの最後に入る、大破したX-RAYの状況ウインドウに映る「作戦成功」の文字、そしてぷつん、と途絶える視界。彼女はこのとき、どのような表情を浮かべていたのでしょうか?
●「ダメージャー剛」という馬鹿読み物が実に印象深いですところで、「ゲームランド」って雑誌、ご存知ですか? 確かこの名前では6冊程度出版されていまして、そこまで出したところで雑誌の名前がほかと重複するから変えろということで「ゲームチャージ」という名前に変わっています。でも名前変わってからもあんまり振るわなかったらしくて、結局すぐに休刊だか廃刊だかになってしまったという、ちょっと寂しい雑誌でした。もしこの名前知らない人でも、餓狼伝説スペシャルの「キャンセレーション」という冊子なら聞いたことあるかも知れませんね。 いやこの雑誌、とにかく力のあふれた雑誌でね、ゲームに限らずジュースの話だのタレントの話だのいろいろ詰め込んでいたんですが、なんか記事の割付をぶっちぎって文章が展開されていたり、写真サイドの注釈のところに、割付時に当たりで入れた「キャプキャプキャプキャプキャプキャプ……」という文字がそのまま残っていたり、実に強烈な雑誌だったものです。 ただ、そういう荒唐無稽なだけの雑誌だったかというとそうではなく、ゲーム関連の記事なんかは「しっかり遊んで書いているな」というのが実感できる内容でしたし、また攻略ヒントなども実際に遊んだがためにできるアドバイス、しかもいわゆる「達人」などではない、我々と同じ1人の遊び手から見たヒントという感じで本当に好感度の高いものだったのです。なんといいますか、「解くために書いた文章」ではなくて「好きで、楽しくて書いた文章」ということが伝わってくる、そういう文章でした。この雑誌は筆者のそれぞれが本当に好きなように記事を書いていた、ということなんだろうなと思います。……多少行き過ぎてあんなめちゃくちゃな編集になったのかな、と。 それで、なんでいきなり雑誌の話かといいますと。この雑誌にレイフォースの記事が載っていましてね、これも先の話題にもれず実にヒントとしていい具合のものだったのです。まあ当時生きていたアーケード雑誌なんかに比べれば攻略情報としてはまさにヒント程度のものだったのでしょうが、それでも「この辺りはこんな感じにヤバめ」とか「この辺りではこんなふうに立ち回ると生き残りやすい」、そういう情報は非常に有効に働いてくれたものです。いや逆に、変に完全な情報を与えられるよりも断片的だったからこそ現在これほど印象に残っているのではないか、そんな気がします。自分で頭ひねって戦いを切り抜けるほうが達成感がある、これは以前言いましたよね?
●初挑戦はなんと最初のステージで死亡! なんだこりゃ!!他にもこの雑誌には、当時アーケードで元気に稼動していた「龍虎の拳2」に関して大変お世話になっています。遊んだ人なら分かると思うのですが、アレはちょっと冗談にならないレベルでコンピュータが調整されていまして、こちらのレバー入力などを覗いて即座に反応を返してくるなんていうのは標準装備、また遊び手の不意を実にうまくついた攻撃などを仕掛けてきたりしますので、最近の格闘ゲーム、そうですねキングオブファイターズの99とかその辺以降の格闘ものしか遊んだことないよというような人々が遊べば、まず2面、3面くらいで壮絶な悶え死にをさせられること請け合いです。まあそんな強烈なコンピュータルーチンを備えたゲームだったのですが、この雑誌に掲載されたのですよそのルーチンに有効な対処法というのが。 もちろんある程度は遊び手にも修練というか当てはめるための調整が必要な手段ばかりでしたが、「接近してくるその顔先に置いておくように蹴りを出すと勝手に当たる」とか「わざと蹴りを防がせると後ろに退いた後飛び込んでくるのでそれを叩き落す」とか、よくこんなの見つけたなというような、しかし確かに有効な方法が一通り並んでいまして。おかげさまで私でも隠しボスまで行き着くことができました(全ステージにおいて一度も敗北してはならないというのが条件。抜け道はないわけじゃないが、普通は選択できない方法)。ああこの隠しボス、最近発売されたキングオブファイターズのネットワーク対応版のラストも務めてますね。感動してしまいましたよ、デッドリーレイヴとかエクスプロージョンボールとかが「今」見られるということに。初めて見たとき、一人でけらけら笑っていました。 キングオブ〜の話はともかく、龍虎の拳2にはそんな懐かしい記憶がありますから、今でもゲーセンで見かけるとついお金を入れてしまいますし、人が遊んでいるようであれば「この人はどんなパターンで立ち向かうのだろうか」と興味津々になります。何かで見かけたんですよね、「このゲームは対戦なんかやるよりもコンピュータ相手のパターンを組むほうが面白い」って。まったくその通り、とりあえずスライディングキックで滑っていれば勝てる敵がいたというのは今では考えられないんじゃないですか? ま、見かけたら最近の格闘ものに自信ある人は遊んでみてくださいな。それで、どこまで知識なしで進めたか、私に教えてください。
●頑張れば、いつか、必ず話を戻します。このレイフォース、セガサターンに「レイヤーセクション」という名前でほぼ完全に移植されています。なにが完全じゃないかと言うとご家庭のテレビでは上の方が切れるということくらいで、これは縦置き対応テレビを使えば解消できるそうです(普通はそんなもの持ってないと思いますが)。なんでレイフォースじゃなくてレイヤーセクション、これって開発段階での名前だそうですがそういう名前で発売されたのかはよく分かりませんけど、何か大人の事情みたいなのがあったんですかね。まあ内容が素晴らしいのでまったく問題ないんですが。でも、難易度設定で一番易しいのが標準設定の「ノーマルモード」ってのは強烈だなあ。クレジットも裏技使わないと増やせないし……。 とりあえずサターン持っててレイヤーセクション持ってない人、そしてシューティングが嫌いでないのならこれは購入をお勧めしましょう。このレイフォースの優れているところは、「緊急回避」、いわゆる爆弾などによる保険がないところです。要するにすべて遊び手の技量で回避しろということですが、逆に言えば「すべて回避できるように作ってある」ということですね。どんな攻撃でも、必ず抜けることができるのです。確かに爆弾などによる緊急回避があったほうがやられにくくはなるでしょうが、逆に「緊急回避があるから、ちょっとこの辺は攻撃を厳しくするか」というような作り方もできるわけですよ。私はゲームなんか作ったことないから、メーカーがそうやって作っているのかどうかは知りませんけれども。しかし、この「緊急回避に頼らないでも生き残ることができる」というバランスのとり方は本当に特筆すべきものだと思います。 腕前としては、未だ6面止まり、ほんとに調子よく進んで6面ボス、という具合ですか。要するに、未だに解けてません。どうしても上手にはなれないものですねー、いつかコンティニューなしでクリアしてみたいものなんですけども。コンティニューなしで最後まで解きおおせたら、こりゃきっと感激ものですよねあのエンディングと合わせて。あーあ……。
●姉妹作のお話そういえば、後で「レイストーム」「レイクライシス」という姉妹作が発売されていますね。でも私、この二つは買うだけは買ったんですけど遊びこなせなくて、ストームは収蔵棚で冬眠中、クライシスはすでに手放してしまっています。なんかレイフォースほど気乗りがしなかったというのもありますし、難しくて先に進めなかったというのもありますし。音楽もあまり好きになれなかったしね。でもストームの最終ボスの曲だけは大好き。 このレイクライシスというのが、レイフォースの物語にさらに色をつけましょうというようになっていて、ある科学者が事故で亡くした奥方を蘇生させようとして意識のないクローン体を件の超AIに接続したらそれがAIに変な影響を与えてしまい、その結果人類を保護すべき対象としてプログラムされていたはずがそのクローン体を保護対象として勝手に再設定してしまったと。それで「人類はすでに保護対象ではなく、逆に新たな保護対象にとっての脅威となる」とて始まった大虐殺、そしてX-RAYのパイロットを務めた女性はその奥方をベースにした別のクローン体とされました。レイクライシスは、その事件の発端になった科学者がAIのプログラム内部に侵入しなんとか事態を食い止めようとする、という物語のようです。 ……なんか、あまりぴんときませんね。分からないでもないけど、別になくてもいい話というか。個人的にはパイロットの女性はやはり生体ではなく、アンドロイドであるというのが強く印象に残った理由のような気がしますが。まあ、エンディングで描きなおされたパイロットの絵はすごい美人でしたけど。それよりも、「個人的な理由で人類全部を壊滅に追い込んだ男」というのがすげえなあ、って。
●永い旅路の果てに最後に、サウンドトラックの小冊子に書かれていた文面、パイロットの女性の日記を引用します。 私が死んだら……願いどおり宇宙に流されるだろう。重力の狭間をゆらゆらと漂いながら、一番強い力に呼び寄せられて旅を続ける。気が遠くなるほどの長い年月が経ち、すべてが小さな分子に分解された肉体は、なお私を求め続けてくれたその星にたどり着く。それから、音もなく静かに、そう、まるで雪のようにきらきらと降りしきるのだろう。 なんだか寂しいような、うらやましいような、不思議な気持ちになりました。 |