「危険」な遊び
=とあるエロゲームの恐怖=
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●しっかし、「仕事」ってやっぱ楽じゃないよな

 最初に断っておこう。私はたとえば女性との恋愛を目的としたり体を重ねることを目的としたような、特定の性別を主軸においたタイトルに関しまったく触ってみようという意欲を持たない。有体にいって、嫌いだ。現実に女性と話もしないような人間がゲームでは色男に変身して女性を口説く、そんなもので遊ぶということは私には潔くないことと思える。「ラブストーリーよりもキルストーリー」、ゲームに求めるものがそうである以上今後も一切その手のタイトルに関わることはないだろう。ま、人が遊ぶのはどうでもいいの。遊んでみたら面白いのかも知れないしね。でも私には関係ない。どうせ愛情なんて嘘っぱちなんだしさ。人間といっても所詮犬畜生とまるで変わりない、なんてのも今更再確認する必要はないだろう。そんなことは十分すぎるくらい知っている。

 ではなぜそんな人間がこんな話をしようと思い立ったのかというと、ちょっとあまりにも強烈なインパクトを感じる話を見かけたからなのだ。いや、別に小難しい話じゃないよ、いつもみたいな馬鹿話。

 先日、とあるデザイナーさんのサイトを眺めていたらばその方のお手になるイラストということであるエロゲームが紹介されていた。どんなものかと思ってそのゲームの公式紹介サイトを眺めてみる。だいたいこの手のゲームはパッケージの裏など眺めると壊滅的な物語が展開されていて実に笑えるのだが、今回のコレは……一種、恐ろしいものを感じたのだ。いや、笑えることに違いはさっぱりないんだけど。


●キルストーリーばかり見ているとどうしても感覚がそちら方向に最適化されていく

 物語はだいたいこんな感じらしい。きっちり読み込んでないしそのつもりもないけれど。

 成績優秀、容姿端麗、周囲からの評判も上々。金持ちの子息ばかりが通う学園において、それがあなたの扮する少年。彼は学園のトップを飾る女生徒4人にも愛されていた。しかし、少年は人にはとても知らせられない異常な性嗜好を持っていた。

 ある日、彼は悪友どもに自分の秘密の性癖を知られ、邪悪な計画に強制的に加担させられることになる。学園トップの女生徒4人、彼女らを目標にしたその計画は「悪友どもが少女を拉致して肉体を蹂躙し、その最中彼女らの想い人である自分が姿を現して真相を語りながら行為に参加することで心も踏みにじってしまおう」というものだった。内に秘めたどす黒い欲望が目覚め、知らずのうち邪悪な期待に身を震わせる少年。呪わしい計画、その結末たるや?

 あー、話の内容が恐ろしいってことではさっぱりない。まあ確かにあまり巻き添えにはしてほしくない計画だが、そもそも常人には丸っきり縁のない世界での物語だ。人を無為に傷つけるというのも正直好みではないが、それも今回は関係ない。

 私は、こういう作られた世界においては「金持ちの親父は基本的に子煩悩」という基本原則がありそうだな、と思う。特に目標にされている少女たちはことごとく大財閥の令嬢という設定のようだ。恐ろしい、といったのはここである。

 夢枕獏先生の「サイコダイバー」シリーズだったかな、「大財閥がそうなれたのは、いいことばかりしてるからじゃない。裏で悪どいこともしこたましてるからさ」という台詞を見かけた気がする。なるほど、納得のいく台詞だ。この辺から考えは進んでいく。ついでに、悪人は人の家族を潰すのは屁とも思わないくせ自分の家族をちらっとでも傷つけられるのは極度に嫌がる、そんな話も十分にありそうだ。どうせこういう親父は自分の娘は蝶よ花よ、かわいがりにかわいがって育てているだろう。そんな娘が、身も心もずたずたにされたとして一体何ができるだろうか。日々泣き暮らすしかできなさそうだ。いきなり警察に行って事情を説明するような鉄の女ではまず計画から除外されるだろうし。発生するリスクが少ないと踏んだから対象になるわけで、まあ要するに相手を舐めているから妙なことに巻き込もうとするということだ。


●こういうシーンはベルセルクがすごかったよね、あの嬉しそうな解説ぶり

 本題はここから。日々泣き暮らす娘の姿を見て、父親はいい加減事情を問いただす。最初は言いたがらないだろうが、子煩悩な父親のこと何としても聞き出すだろう。当然、怒髪天だ。大事に大事に育てた娘が、得体の知れない馬の骨に踏みにじられたと知って怒らぬ父親は(まあ、普通は)いない。怒り狂った父親は、有り余る金を駆使し、合法的な手段、非合法な手段を総動員して娘の仇を探させる。いかに自身たちも相応の金持ちの子であるにしろ、たかがガキにこれだけの追跡の網を潜り抜けることなどできはしない。早晩危険な方々に拉致されることになるだろう。

 先ほど名前を出したサイコダイバーシリーズ、これに登場する「花房財団」は巨大な非合法勢力「神明会」の下部組織で、下手につつくととてつもなく危険な事態になる。わざわざ拷問担当の名医を抱えているくらいだ、仮にこんなのに拉致されたらさぞかしいい思いができることだろう。VIP待遇は間違いない。作中でも拷問の描写がすでに「笑える」レベルにまで突っ込んでいて、とてもじゃないがお世話になんてなりたくない。

「お前さあ、煮えた油の中に足を突っ込んだことはあるか? ……俺はある。あれは熱いというより痛いぞ。足の指の爪がはがされているところなんかは、もう、感動的な痛さだ」
「感動したのか」
「した。お前、足の煮えていく音も聴いたことがないだろう。俺はあの音が一番感動的だったなあ、じゅうじゅうごとごという音が足の骨から脳天まで響いてくるんだぜ」
「お前は大した奴だ」


 恐ろしげな男たちに追われ、囲まれ、さんざん殴られて連れて来られた山奥の大きな屋敷、そこで少年は他の悪友たちも同様の目に遭っていたことを知る。衣類をすべて剥ぎ取られ、両手両脚を鎖で縛られた少年たちの前に現れたのは温和そうな初老の紳士。

「君たちには私の娘がずいぶん世話になったそうじゃないか。そのお礼がどうしてもしたくてね、ここに招待した次第だよ」
「何が招待だ、ふざけやがって! すぐに外せよ!」

 悪友の一人が叫ぶ。その口に、紳士が手に持っていたステッキを叩き込んだ。スイングが鋭い。血と、歯が飛んだ。

「何をしたのかは、君たち自身が一番よく分かっているはずだね。ここで一月ばかり、バカンスを楽しんでもらいたい。心から、歓迎するよ」

 その言葉に重ねるように、部屋にいろいろなものが運び込まれてくる。テーブルの上には鋏やメス、釣り鉤。大型のコンロには巨大な鍋がかけられ、火が入れられる。紳士の後ろで、大柄な男が刃物の刃を打ち合わせ始めた。

「なに、学校にも家族にも警察にも、適切な処置はとってある。心配せずにゆっくりしていくといい。今、君たちのために準備しているところだから、もう少し待ってくれたまえ……」

 数分後、刃こぼれさせられた刃物が少年たちの皮膚を薄く削ぎ始める。絶叫。悪夢は、始まった。


 ……なーんて、ちょっと書いてみたけど。女4人全部相手にするのなら、下手すりゃ拷問4連発だ。ま、自分たちの行為、行動によって発生するリスク、その見積もりはしっかりやらないといけないね。どんな場合でもそう。物事を甘く見ると意外なところで脚をとられる。二度と歩けないほどに。私のいた学校にもあったよ、他の学校とトラブル起こして拉致されて、なんか数日間倉庫みたいなところに監禁されて熱湯かけられたりタバコ押し付けられたりっていう話が。ほんとかどうかは知らないけどね、相手を甘く見すぎたってことだろうね。そんな犯罪行為に走る相手も相手だけど。少なくとも、巨大財閥が合法的な手段ばかりで大きくなっているとはあまり考えていないので、そういう勢力を向こうに回す気概というか無謀さは私にはないね。むしろ願い下げ。ついでに、表題で「危険」といったのは「自分の命が危険」という意味なので取り違えなきよう。


●自身では触ってみるつもりは毛頭ないのでね

 ほんとはその手の「エロゲー」とか言われるものはここには取り上げたくないんだけど、あまりにも可笑しい話になってしまったので取り上げた。まあ重っちい感じになった気もするけど要するに笑い話だから、適当に笑って頂戴。でも正直、そのゲームの結末は本当にこうなるんじゃないかと思っている。タイトルなんかは調べたくもないけど分かる人には分かるんだろうから、結末知っている人でお暇な方はちょっと教えてくれると嬉しい。