〜ウルティマVI 偽りの予言者〜
機種:スーパーファミコン
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●なんとか、改善しなければ……

 最近はゲームといってもレッドストーンや東方花映塚ばかり、まあ通常の生活において何かとストレスの大きい状況になってきてて少しふさぎこみがち、というのも原因の一つのような気がしますがあまりゲームをやってません。

 そんな状況なんですけども、レッドストーンを遊んでいるとどうしても過去自分が遊んでいたウルティマオンラインとの比較をしてしまうんですよね。もともとレッドストーンというのが怪物を倒してナンボのディアブロ系のゲームなのに対し、ウルティマオンラインはそれこそ電子世界に実現したテーブルトークの世界、というような具合でそもそも立ち位置も違うんですが、どうしてもレベル上げるための経験稼ぎの最中に「ああ、あんなことができたらなぁ、ウルティマだったらできるのになぁ」とかそういう嫌らしい方向に考えが行ってしまうわけで。


●ねーねーまた無料やらないのー?

 そんなだったらウルティマをやれ、というのが一番簡単な答えなんですが、非常に残念ながらウルティマは有料の世界でしてね。対してレッドストーンは別のとこでもしゃべってる通り無料、金のない私にはひっじょーに大きな違いです。仕方ないから、ギルドメンバーに「ウルティマというゲームはこんなことができた、こうだった」と年寄りじみた話をして楽しむ次第です。

 前置きが長くなりましたけど、そんな話をしていたら過去楽しく遊んでいたこのゲーム、「ウルティマVI」のことが思い出されました。音源こそよくなかったもののきれいな音楽が多かったということ、またテーブルトークを遊び始めたばかりで基本的に一本道の似非ロールプレイングしか遊んだことのなかった私にとっては非常に新鮮なゲームだったということがあって、とても印象に残っているゲームです。一応ずいぶん前に遊んだときには一通りクリアはしてまして、それから専門学校に入った辺りでもう一度購入はしてあったんですがなかなか手が行かず、今日まで来てしまった次第。


●目的の見えない旅路、はマイトアンドマジックもそうだった

 このゲームは、中学二年くらいのときに、従兄でもありいい友人でもある「ないとらんさ」氏が遊んでいたのを自分も遊ばせてもらったのが出会いです。最初見たときは非常に地味で、何が面白いのか分からなかった(ないとらんさ氏にも今ひとつ分かっておらず、惰性で適当に遊んでいた、というのが今思い返したときの印象です)んですが、実際に遊び始めて分かってきてから大いにはまりました。

 何がそんなに面白かったんでしょうね、なかなかうまくまとまらないので整理しながらお話しします。まず、このゲームの目的は舞台となるブリタニアの大地に突然始まったガーゴイルと呼ばれる種族の侵攻、その原因を突き止めて侵攻を阻止することです。が、だからといってガーゴイルを根絶やしにすればいいという単純な話でもなく、主人公である遊び手は「どうすれば侵攻を止められるのか? なぜ彼らは侵攻を開始したのだろう?」というのを探るところからはじめなければなりません。

 だから、まずゲームの基本は情報収集です。もちろん当面の目的はいくつかあって、それを達成するうえで戦闘も幾度も発生はするんですけども、事態の正確な把握や次々と発生する目的を達成するための手段の模索など、何においても情報収集が欠かせません。


●ボート使ってると、いつの間にか流されてるし

 ところが、このブリタニアの大地は恐ろしく広いのです。町や洞窟、草原などがすべて同寸で表示されているというのもありますし、何よりもともとが非常に広い世界ですから町から町へ移動するのに最低でも5分10分、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーのようにあっという間に世界一周、などという小さな世界とはまるっきり訳が違います。

 しかも、非常に短いサイクルで昼と夜が移り変わり、そして住民のすべてはそのサイクルに応じて各々の生活パターンを持っています。だからある町のとある人物に話を聞かなければならない、というときにその町までたどり着くのに実時間で15分、ゲーム中時間ではそれこそ4日も過ぎ去りしかも到着したときには真夜中、目的の人物は寝ていたなどという事態が頻繁に発生します。

 パソコン版では寝ている人物に「アウェイク(目覚めろ)」の魔法をぶち込んで無理やり起こすこともできたようですが、残念ながらこちらではできない、というかそもそもそういう強引なやり方は聖者にふさわしくないですし。一応徳を極めた聖者、という設定ですから自分は。あ、この徳っていうか聖者の話は後でしますね。


●「旅すること」の楽しみ

 傍から見ると、こんなのはゲームを進める上での障害にしかならないんですけれども。ただ、このブリタニアの世界にはものすごく多くの人が、それぞれの生活、仕事を持って、時間に応じてきっちり「生きて」います。王様でさえ、夕飯時には食堂に行ってパンをかじっている世界です。旅慣れてくると、そういう人々の「生活」を眺めるのも楽しくなってくるんですね。

 もちろん魔法の移動アイテムはあります。それを駆使すれば、それこそ一日でクリアしおおせることも可能でしょう。ですが、その「生活」を眺め、このゲームの「ルール」に身を任せることが楽しくなると、どうしても自分の足でとことこと数日かけて、野盗や怪物の襲撃を退けながら目的地までたどり着きそして目的の人物が眠っていたなら自分たちもキャンプを張って夜が明けるまで待つ、そういった「旅の風情」を楽しみたくなるのです。

 なんと言うんですかね。ウィザードリィが戦闘と略奪、死線をくぐることを楽しむゲームだとしたならこのウルティマVIは探索と達成、のんびりした旅路を楽しむゲームなんだと思います。非常に、むやみにと言ってもいいくらいに広いマップもそのため。また、どうでもいい人物とさえ世間話ができる、ただ単一のメッセージを繰り返すだけではないという楽しい会話システム(仲間とさえ世間話ができる!)もその楽しさを増すためなのだと考えられます。

 アレですね、ウィズがスターウォーズみたいな感じで常にヒロイックな活躍を見られるのに対し、このウルティマはホビットの冒険のような「これぞまさしく『旅』!!」という感じなのかも知れません。この辺は、オープニングの主人公の心情なんかからも伺えますけれども、ちょっと後にずらしますね。

 そういえば、私はこのゲームを先にやってからウルティマオンラインに入ったのでした。だから、基本的な地形は知っているようなものだったんですけど、重要なのはVを経て地殻変動が発生していて多少地形が変わっているということ、そしてウルティマオンラインはこれに輪をかけて広いということでした。

 だから、私は地形の概要というか、世界地図は知ってるんだけど広さを知らないというような状況で。知ってる人だけ分かる話ですけど、ヴェスパー(これはVIでは消滅している町です)からユーまで歩いて行こうとし、その異様な距離の長さに大層惑わされて道を失い、最終的に知らない人に道を聞いてユーの宿まで連れて行ってもらったという思い出があります。


●コズミックフォージは……バランス悪すぎだろ、どう考えても

 これの会話も、面白いんですよね。特定の人物に話しかけると、まずその人物の出会いの口上が始まり、それがひとくさり終わると「こちらから質問したいこと」のリストが表示されます。名前、仕事、また世間をとりまく状況のことや、それらについて何か知っていること、はたまたその人物の周りでは何が起こっているのかなど。

 これはいろいろ試していくとどんどん新しい選択肢が現れてくるので、少なくともドラゴンクエストやファイナルファンタジー、ひいてはパソコン版において同種のシステムを採用しているウィザードリィ5、6の移植版などよりもはるかに「会話している」気にさせてくれます。ウィズなんか、キーワードを順繰りに勝手にたどっていくだけになってるんだもんなあ、あれはひどいよな。

 たとえば、王様ロードブリティッシュ。はじめに話しかけたときにはブリタニアを襲っている苦境のこと、そして主人公が再びブリタニアを訪れてくれたのはうれしいということを話してくれ、それからこちらの選択肢になります。名前や仕事、先ほどの話には出なかった現在の状況のもう少し細かい説明などについての質問ができ、またほかの特定の人物に特定のキーワードをたずねておくことでさらに選択肢が増えます。特に王様付きの道化師から「ミスターノーズ」というキーワードを聞いておいて、それを直接ぶつけると「おお、そなたにだけはそれは言われたくなかった!!」と嘆くなど、ほんとになんだか「会話してるんだな」という気にさせてくれるんですね。王様、わし鼻なのを気にしてるんですよ。本物のリチャードギャリオットもそうなのかな?


●コックは時間がくれば調理場に、鍛冶屋は時間がくれば鍛冶場にちゃんと移動します

 少し話を戻せば、この道化師時間がくるとちゃんと王様の前で仕事してるんですよね。もちろん、どんなときに話しかけても対こちら用の会話しかしてくれないんですけれども、それでもその行動パターンを見ているとそれぞれが生活をしているんだな、ということが見て取れる。これって、1990年当時ではすごいことなんじゃないかな、と思うんですよ。聞いた話なんですけど、最近プレイステーション2で出た「ラジアータストーリーズ」というのも、それぞれが時間に応じて生活しててそれを売りにしてるんだとか? この話を聞いたときの感想は、「そんなのは15年も前に実現されてる。いまさら何を言ってる?」でした。

 まあ、そのラジアータとやらは遊んだこともないですし、これから遊ぶ機会もまずないんでしょうから事実を確かめることもできないんですけどね。とりあえず、パンパイプを作るための材料を買い付けに行って、その卸業者が仕事に出る前に「売ってくれ」と言ったら「仕事前に仕事の話すんな!!」とめちゃくちゃ怒られて、業者が機嫌を直すまで一日待つ破目になった、というのはこのゲームの楽しい思い出の一つではあります。


●一種、戦場経験者の感覚暴走のようなものかも知れませんね

 このゲーム、物語も好きなんですよね。まず、オープニングにおける主人公の心情。さっきも少しお話ししましたけれど、この主人公は……いつからなのかな? 少なくとも4からなのは間違いないんですけど、この人ブリタニアに何度も訪れてその都度ブリタニアを救う大冒険をやってるんですよね。要するに遊び手がゲームに参加するということこそをこういう表現にしてるんだ、と思うんですが、まあそれはいいや。

 で、今作のオープニングにおいても「平穏な日々はすばらしいものだ。だが、やはり何か満たされないものはある。『再び、ブリタニアへ!』 いつしか私はそう考え、ストーンサークルの見えるところに居を構えた」という一文を見せてくれますが、これって実はホビットの冒険から指輪物語に移るにあたり、ビルボ・バギンズが見せてくれた心情とまったく同じなんですよね。やってる最中はほんとにつらくて、嫌で嫌で仕方がない。さっさと帰って暖炉の火に当たりながらのんびりしたい。ああ、こんなとこになんか来るんじゃなかった!

 ……と道中ずーっとそう思ってるんだけど、終わるとなんかあのときの感覚が妙に恋しくなる。私も旅ではないものの、そういう無我夢中の感覚を味わって(味わわされて? はは、ビルボとおんなじだ)ますからなんとなく分かります。ヤでヤでしょうがないんだけどね、どうせならああいう感覚がまた欲しいなあ。そう思うんですよね。


●二つが手を取り合うとき、光の渦が巻き起こる

 さて、結局主人公のその願いは叶い、またしても彼はブリタニアへ足を踏み入れることになりました。そこで待っていたのは例によって遠大かつ困難な旅路、しかし彼の心は浮き立っているでしょう。目的は見えないけど、とりあえずあちこち回って調査していけば、事態も見えてくるさ。そんな感じだったかも知れませんね。

 するうち、主人公は事態が想像以上に大変だったことを知ります。人間ばかりの問題ではなかったのだ、と。だから、物語の終盤では彼は、いえ遊び手は何よりも調和を求めて行動することになります。

 これも、ヘラクレスの栄光3ほどではないにせよ、できれば自分でたどってみて欲しい物語だからここではあまり詳細は語りません。ただ、コデックスの神殿において二つの炎から出る光を中央に寄せ、そしてボルテックスキューブのふたを閉じたときに、私は粗雑な理性なりに「ああ、終わった……」という感慨を得ることはできました。この、「求めるべきは贖罪、そして調和」という、最後の戦いというもののない物語は、徳だとかややこしい事柄関係なしに、なんだか心に響いたような気がします。そうね、とても楽しい旅路だった。最後なんかずいぶん血の気引いたけど、まあ万事丸く収まってよかったじゃん?

 ヒント、というのかな。さっきも言ったとおり、最終的に遊び手が求めるべきは調和です。最後の戦い、というものはありません。「最後はどうするんだ、ガラスの剣大量に持ち込んで殴りまくるのか?」というないとらんさ氏の言葉は逆の意味で印象に残ってますけれども、そればっかりじゃまずいのよ、と。


●割とみんな、聖者に対して冷淡ね

 そうだ、徳とかに関する話。このゲームって、主人公はさっきも言ったとおりにブリタニアにおける聖者扱いです。だから、彼の行動は人々の規範にならなければならないので盗みやらなんやらはご法度、やっても聖者だからまあ見逃してはもらえますけど人々の対応はめちゃくちゃ悪くなります。

 んでね、そんなゲームなのに、このゲームってやたらとアイテムが多いんですよ。しかも使い道ないのばっか 。食料品なんか、全部効果同じなのに10種類以上あるんじゃないかな。一応スーパーファミコンに移植されるに当たり、容量不足からマジでどうでもいいようなもの(骨壷とかとかタペストリーとか壁飾りの剣とかとか)は軒並みカットされてはいるんですけど、それでもやっぱ変なのが残ってるんですよねー。大量カットの弊害として、牛を殺しても「羊の肉」が出てくるのはどうかと思いましたけど。肉って名前でいいじゃん、ウルティマオンラインみたいにさ。

 それでそういう変なものを好奇心で調べて、間違えて「持って行く」とかやっちゃうとすぐさま盗人扱いで徳が下がるんですよね。どこの馬鹿が好き好んで骨壷なんか盗むもんか。あーあとこれもパソコン版ではあったらしいんですけど、シャベルを墓に対して使うと墓を掘り返せて、骨壷だの副葬品だのが出てくると。もちろん持っていけば盗人扱いですし、確か墓堀っかじった時点で徳が下がったと思うんですよね。もちろんというかスーパーファミコン版ではできないはず。少なくとも、私は一度も成功したためしがありません。

 まあ、そういう妙なアイテムが異様に多かったところも旅っぽいというかなんと言うか。そういう無駄な要素が山とあるという部分も、世界を楽しませようという配慮なんだろうなあ、とは思います。ちなみにこういう部分はウルティマオンラインにもしっかり受け継がれていて、それこそ食料なんかは効果が大して変わらない状況で3、40種類くらいありそうですし、ほかにどうでもいいガラクタも山ほどあります。まあ、あちらは家を買ってそこにインテリアとして配置するという使い道がありますけれどね。しかし臓物だの生首だのはどうしようもないよな、普通……。


●ストーンズは俺が作ったんだ。自分で言うのもなんだが、いい曲だよアレは(イオロ談)

 このゲームは、音楽も好きです。タイトルでかかるメインテーマと思しき曲、それに後半、ある土地でかかる曲ですか。オープニングもいいなあ。全般に、笛の音のような民族系の楽器の音を多く使っていて、しかるべき音源で鳴らせばものすごくきれいな曲なんだろうなと思います。ちょっと、スーファミでは音源よくないのよね……。まあ、当時のパソコンよりはマシだったんでしょうけれど。

 あとあれですね、このゲームで進行上入手が不可欠になる「ストーンズ」という曲があるんですけど、この曲はウルティマオンラインでもアレンジされてかアレが本来の楽譜なのか、とにかくストーンズがかかります。うちはどういうわけか最初の環境では効果音だけでBGMは鳴らなかったんですけど、つい最近……いや、もう去年かな? ウルティマオンラインがいっとき無料で過去のユーザーにIDを開放した時期があったんですけど、そのときになって初めてBGMを聞いたという。実に5年越しだったわけですが、「おお、これストーンズじゃん!」とかいって少しうれしくなったものです。


●遠い遠い、しかし楽しい旅路

 結局、このゲームも今の中古の値段を見れば分かるとおり、一般のユーザーには受け入れられないゲームでした。やはり、子供には理解できない世界だったのでしょう。確かに、理解しようとしなければ理解できないというタイプのゲームではありますね。だからといって決してつまらないわけではありません。「これ面白いよ!」とお勧めするわけではありませんけど、もしそういう「旅路」を楽しみたいのならば、ちょうど中古で200円もしないで買えることでもありますし、やってみてもいいとは思います。