トランジスタでCPUをつくろう!
トランジスタで8080をつくってしまおうというまさにびっくり仰天、狂気のプロジェクトです!
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見事にできましたら、もちろんTK−80モニタを乗せて、それからBASIC、CP/Mを走らせましょう!
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[第4回]
●MOSFETの利点
前回は消去法で最終的にMOSFETが残りました。
しかもそれがMYCPU80を構成しております、74HCナンバーの汎用ロジックICに使われているトランジスタでもあったことから、もうそれしかない、という結論になったのでありますが。
ここはもう少し慎重になって、MOSFETはほかのバイポーラトランジスタと比べて、どのような利点があるのかということについて、念のために整理しておくべきでありましょう。
利点その1)MOSFETは電圧駆動である
2SC1815、2SA1015などのバイポーラトランジスタに比べて最大の特徴にしてかつ最大の利点はなんといっても電圧駆動であるという点です。
バイポーラトランジスタは電流駆動ですからベースエミッタ間に電流を流さなければなりません。
もっともたとえば2SC1815ではhFE(電流増幅率)は最低でも70倍もありますから、ベース抵抗を25KΩ(Vcc=5Vのときにベース電流が0.2mA)にしてもコレクタエミッタ間には少なくとも14mAは流せる計算ですから、理屈の上では、それならなにも電圧駆動にこだわらなくても、バイポーラトランジスタでも十分使えそうではないか、という気がしないでもありません。
うーん。
よく考えてみると、そうですよねえ。
たとえばトランジスタを5000個使ったとして0.2mA×5000=1000mAですから、それならなんとかぎりぎりセーフかも。
5000個!
ええ。
おそらくは、そのくらいの数は間違いなく使うことになりそうです。
とんでもないプロジェクトなのであります。
それはそれとしまして。
その程度の電流で済んだとしましても、それはトランジスタのみのお話です。
そのほかにLEDの消費電流も考えなければなりません。
ちなみにMYCPU80では約300個のLEDを使っています。
1個あたり1mAは流れます。
もっともこの全てが常時点灯するわけではありませんが、全点灯すれば300mAを消費します。
そのほかにTK−80回路もつけるつもりですから、その分の消費電流も計算に入れておかなければなりません。
あ。
今回は「8080をトランジスタでつくる」という企画でありますから、TK−80の回路はトランジスタでは作りません。
こちらについてはMYCPU80と同様に、ROM、RAMと汎用TTL、HCMOSICその他で構成するつもりです。
ということになりますと、電源は+5V2Aは必要になるでありましょう。
うーん。
やっぱりぎりぎりといいますか、ちょっと苦しいかも知れませんねえ。
その点MOSFETを使うということですと、理屈の上では、バイポーラトランジスタの場合に必要なベース電流の分を除外できますから、そのメリットは絶大であるといえましょう。
しかしこの点につきましては、思わぬ事態の展開によりまして、あとでまた考察しなければならなくなります。
利点その2)入力インピーダンスがきわめて高い
これは電圧駆動であることから当然に導き出せることなのですが、入力インピーダンスがきわめて高いため、回路が簡単になりますし、負荷を考えないで設計することができます。
これは楽です。
利点その3)バイポーラトランジスタと同じ感覚で使える
ゲートをベースに、ソースをエミッタに、ドレインをコレクタに読み替えれば、バイポーラトランジスタと全く同じ端子接続で使うことができます。
これはとても有難いことです。
特に今回のようにとんでもない数のトランジスタ回路を考えなければならない場合に、今まで慣れ親しんできたバイポーラトランジスタと同じ感覚で使うことができるというのは、とても助かります。
利点その4)スレッショルド電圧が約2Vである
データシートによれば素子によってかなりばらつきがあるようですが、だいたい2V近辺でONになります。
これはバイポーラシリコントランジスタの約0.8Vに比べてかなり高い値です。
ということはノイズマージンがかなり大きく取れることになりますから、設計が楽になります。
この利点は74HCシリーズが74LSに対して有利であることと同じです。
使う上で気をつけなければならない注意点もあります。
1)逆接続はできません
バイポーラトランジスタでは、たとえばNPN(2SC1815など)の場合、通常の使い方とは逆にエミッタを+に、コレクタを−に接続してもトランジスタとして動作します。
ま、そんな使い方にどんな利点があるのかはよくわかりませんが。
しかしMOSFETでは、たとえばNチャネルの場合に、ソースを+に、ドレインを−に接続することはできません。
これは製造過程でドレインソース間に寄生ダイオードができてしまうからです。
[出典:Fairchild Semiconductor社 2N7000 Datasheet]
上の右図を見ていただくとわかりますように、ソースからドレインに電流が流れる向きにダイオードが入っています。
これは意図的に入れたものではなくて製造過程で出来てしまう寄生ダイオードとのことです。
このためNチャネルではソースを+側に、ドレインを−側に接続することはできません。
逆にPチャネルMOSFETではソースを−に、ドレインを+に接続することはできません。
ま。
あえてそのような使い方をすることはないと思いますが、誤って逆に取り付けてしまうと寄生ダイオードを通して過電流が流れて素子が破損してしまうかも知れませんから、注意して取り付ける必要があります。
2)ゲート端子オープンに注意
ゲート端子の入力インピーダンスが高いため、ゲート端子をオープンにしないように注意する必要があります。
特にコンプリメンタリ回路では入力がオープンのまま通電すると、ノイズ的動作でPチャネルとNチャネルの両方のトランジスタが高速でON−OFFを繰り返して、過電流が流れて熱破壊に至る可能性があります。
このことは74HCシリーズのICにも共通する注意事項です。
さて、以上のような注意点もあるものの、それ以外はまるでよいところばかりのように思えます。
そんなよいとこづくめのように思えるMOSFETなのですが。
なんと。
MOSFETにはとんでもない致命的な欠点があったのでした。
トランジスタでCPUをつくろう![第4回]
2015.3.7upload
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