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デビューアルバムとは? 解体。 記念すべき1stアルバムにしてバンドとして「過渡期」を迎えていたとは恐るべき内部リーク。周知の事実だとしても、「関係筋」から改めて言葉として聞いて(読んで)しまうと、五臓六腑に正体不明のスパークが走る思いだ。しかも「解体」しているとは。 『ムーンライダーズ』というアルバムの位置づけは一体何だったのだろうか。前年(1976)に発表された『火の玉ボーイ』は慶一氏が敢えて強調しているように、あくまで「ソロアルバム」だったのであり、ムーンライダーズ正式発進までの準備体操だと見る向きは多いと思う。事実こんなことは今さら言うまでもない「常識」なのだろうが。 音楽的自我が目覚めてからというもの、デビュー・アルバムのタイトルには、そのバンドの名前が付けられるモノである、というパターンは、筆者の中では暗黙の了解事項の一つになっていて、コレが自己紹介的な意味を持ちつつも、結果として、そのバンド・イメージを勝手に作り上げてしまう極めて単純な「流れ」があった。そんなこともあってか、お気に入りのバンドのベスト・アルバムを選ぶ場合、往々にして初期の作品、特に1stアルバムが多くなってしまったり(但しムーンライダーズの場合はコレまた違うのだが)、「やっぱり、ファーストの頃が一番いいよなぁ」なんてセリフをいろんな所で吐くことにもなり、時には物議をかもすことにも加担している。 幸か不幸か、今でもこんな単純な考えは健在で、『ムーンライダーズ』というアルバムは筆者にとっては、彼らのデビュー・アルバムなのであり、前途揚々たる船出の作品なのだ。ところが、「解体」なんて言葉が出て来ちゃうと、恥ずかしながらこれまでの認識が砂上の楼閣だったことに愕然とする。 ただ、『ムーンライダーズ』の発表後、オリジナルメンバーだったギタリストの椎名和夫氏が脱退し、白井良明氏が加入するなど、今から思えば当時のムーンライダーズがとても「一丸」となっていたとは考えにくく、そういう意味では「解体」していたということになるのであろうか。 さてこんなジタバタさを棚に上げて言ってしまうが、どうやら『ムーンライダーズ』という作品はムーンライダーズのデビュー・アルバムである、という表現は正確ではないようである。正確には、椎名和夫氏在籍時を第一期とすれば、第一期ムーンライダーズのデビュー・アルバムである、という表現が正しいことになる。と同時に、「ムーンライダーズ」という言葉はやはり「コンセプト」だったことを再認識してしまった。それは細野さんが『はらいそ』を発表した時点で「イエロー・マジック」というキー・ワードを既に使っていたのと同じように。 つまり『ムーンライダーズ』発表時点では「ムーンライダーズ」という「コンセプト」が発表されたのであり、実体は厳密には「鈴木慶一とムーンライダーズ」だったのだ。『ムーンライダーズ』というアルバムは「ムーンライダーズ」という「コンセプト」の予告版に過ぎなかった、ということが言えるのではないか。そしてその「コンセプト」そのものが、以降彼らが発表し ていく作品によって明らかにされていくのである。 ※Text by KRAFT.WARTZ (樫の会) ※1996.11.23にniftyserve(現@nifty)内のFBEAT ムーンライダーズ会議室への発言 内容に加筆。 ※2004.07にアップ。 ※文中敬称略 |
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