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恋人が眠ったあとに唄う歌

ご案内の通りムーンライダーズには

「物は壊れる、人は死ぬ 三つ数えて、目をつぶれ」
「彼女について知っている二、三の事柄」
「A FROZEN GIRL,A BOY IN LOVE」
「DON'T TRUST ANYONE OVER 30」
「涙は悲しさだけで、出来てるんじゃない」

等、いわゆる長文タイトルソングがある訳だが、このシリーズも91年の『最後の晩餐』あたりを最後に、なりを潜めた感があったものの、ここへ来て、またもや復権、したようで、慶一さんになんぞの心境の変化でもあったんだろうか。ニュー・アルバム『月面讃歌』のタイトルも四字熟語然とした初の漢字タイトルだし。

さて、

「恋人が眠ったあとに唄う歌」が何なのかって事はこの際おいといて、作詞・作曲が共に「ケーイチ」コンビによる本作品。もうひとりってのはサニーディ・サービスの曽我部恵一氏。で、プロデュースが斉藤和義氏。アルバム・テイクはまた違うんだろうか。いずれにせよ、たかがシングル盤にこうした外注状況ですよ。もうムーンライダーズの空洞化は否めません。ついに来たか黒船!ビッグ・バン!ってところなのかしらん。

硬質なかしぶちスネアの連打のよるモータウンっぽい導入部。その間隙をまさぐるように、岡田氏だろうか、オルガンが右往左往。やがて重なる慶一ヴォイスは糖度100%。これからはハニー慶一って呼んじゃうゾ。打ち込み禁止という戒厳令下だけあって、冒頭から一発録りに近いスタジオの音場感がヒシヒシと伝わってくる。C/Wの「酔いどれダンスミュージック」といい、この音場感は「B.Y.G HIGH SCHOOL B1」に匹敵するんじゃないだろうか。好きです、こういうの。

それにしても、楽曲自体非常に口当たりが良いんで、古くからのファンにしてみれば、いろんな意味を込めて「なんでぇ、なんでぇ、こんなに日和やがって。ちょっと違うんじゃないのぉ」って嘆きが聞こえてくるようで、本心は複雑って向きが多いのでは。

確かに楽曲のフィニッシュ・ワークを他人にお願いするっていう制作方式はライダーズにはあまり例がない事だけども、だからと言って、これがムーンライダーズであってムーンライダーズではない、と言い切るのもどうかなと。だって少なくとも楽曲の作詞・作曲はメンバーの手によってるんですから。要するに魂までは外注してない訳だ。

まぁ、いつもと違うライダーズを聴いていることは間違いないとは思うのだが、こういう空気感はとても心地いい。

※Text by KRAFT.WARTZ (樫の会)
※1998.05.31にniftyserve(現@nifty)内のFBEAT ムーンライダーズ会議室への発言
  内容を加筆修正。
※2004.07にアップ。 
※文中敬称略
   

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