〜攻略本アレコレ〜
=ものによってピンキリ=
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●昔は「必勝本」って名前でしたね、何に勝つってことだったんだろう

 今日は、攻略本というものについていろいろ思ったこととか面白かったことなんかのお話をしてみます。

 そも攻略本の定義というのは、たぶん「特定のゲームに関してクリアに必要となる情報、有用な情報を掲載している冊子」ってことになるんじゃないでしょうか。どこにどんな要素があるのか、例を挙げてみれば「どういう敵がいるのか」「このアイテムはどんな効果を持っていてどこにあるのか」「ステージの仕掛けはどうなっているのか」などなど。おおむねこんなとこで間違いないと思います。

 昔っから攻略本はありましたけど、やっぱりその利用価値が出てきたってのはロールプレイング系のゲームから、そんなふうに思います。ああいや、アクションものなんかでももちろん役に立つものはいっぱいありましたけどね、ファミコンの「グーニーズ」や「ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大魔境」、その辺は実に役に立ってくれました。おかげで20年近く経過した今でもこれらのゲームは相応の腕前である、少なくともそのつもりではいます。

 まあそんなこたどうでもいいとして、やっぱりロールプレイングだとゲーム中に込められた情報の量が多いですからね。迷路の構造、武具の所在や威力、魔法の効果、どこにどんな敵が出現するのか、どの町でどんな品物や情報を扱っているのか。独力ではどうしても見つけられない、抜けられない。どれほど注意深く当たっているつもりでも、所詮人間ですから大切な部分を見落としていたりして、そういう状況は出てきてしまうわけですから、やっぱりこういうヒント集はあったほうがいいなと。それに、最近のロールプレイングはともかくウィザードリィ辺りは武器の効果が具体的に目に見えませんから、そういう面でデータ集はあったほうがいいな、そういうところが需要のもとになってるんだろうなー、と思います。


●キングスシリーズは、実は4以外攻略本が稀少品です

 えーと、そんな「定義がどうこう」とか頭使う話がしたいんではないんです。私も昔からいろいろ攻略本の類は買ったり読んだりしてずいぶんお世話になってきています。やっぱりあったほうがいいですからね、行き詰ったときに「どうしよう、どうしよう」と延々悩んで進めなくなった。そんなときにも攻略本があれば解決してしまいますものね。女神転生2やドラゴンスクロールなんかも実は攻略本首っぴきで解いてまして、ええ今はほぼ全部覚えてますから攻略本見ないでもほとんど問題ないですが、その記憶も攻略本あってのものであると。

 でも、最近ちょっと考えが変わってきました。以前にもお話ししていますが、キングスフィールド3を遊んでいたときのこと。どういうわけかこのゲームは攻略本なしで進めていましてね、それで「ハイエルフの遺跡」というところでずっと行き詰っていたのです。行けるところは一通り巡っても、先へ進む道が見つからない。地図を見れば、未踏のところは多いししかも実際に「どこかへ繋がっているに違いない」と考えられる道が見えるのです。断崖の向こうに見える未知の領域、あそこへ至る手段は必ずあるはずだと延々悩んでいたのですが、あるとき以前の仕事の関係でほとんど徹夜せねばならない状況にしてしまいまして。ただ、コンピュータの処理を待つ時間の方が作業時間よりも圧倒的に長かったため、しばらく寝て時折様子を確認するために起きる、そういうことの繰り返しだったんですね。

 んでいい加減眠れなくなったんで、起き出してプレステ繋いで、未知の空間の探索に出たんです。ヒントを探すくらいのことはできるはずだと。そうしてしばらく遺跡を探索していて、ふと気づきました。「この崖、少し狭くなってる。飛び移れないかな」 ほかの場所のような、あからさまに「落ちるよ?」という幅ではなく、「行けそうかな?」というくらいの幅でした。データは保存してあります。死んで惜しいことはない! ならば駄目もとで、ゴー!!

 ……行った!! 一瞬がくんと視点が下に落ちかけたものの、無事に向こう岸に飛び移ることができたのです。ほんとに嬉しかった瞬間でした。「さあ、これからだ。未知の旅路が待っている!」 最後のコンピュータの処理が終わっても、しばらくオルラディンの城の探索は続けられていました。言うまでもなく、翌日は眠くて眠くて仕方なくて大変な一日でしたが、それでも満足した眠気だったものです。あー、その仕事も作ったものの内容はともかく(私の担当だけレベルが格段に低いので、その話は忘れ去りたい自分)無事に発売されてますよ。アレ画面解像度が640×480でないと動きませんが、クレーム行ってないかどうかちょっと心配です。今どきそんな解像度のマシンなんてないでしょうし。


●達成することの喜び

 このときから、「最初から攻略本に頼ると、あんまり面白くないぞ」と思い始めたのですね。長いこと悩んで、ようやく分かった答え。それが独力で行き着いたものであるならとても嬉しい「手探りで進むことの面白さ」、ゲーム遊びはじめてからゆうに15年以上が経過して、やっとそのことに気づけたのです。

 それに、考えてみると割に最近のロールプレイング辺りは難易度そのものが下がってきてます。真・女神転生はカセットといっしょに攻略本を借り受けて必死で歩いたものですが、真・女神転生2は発売日直後に購入してますから攻略本なんてなくてですね。一緒に買った友人とところどころ情報を交換しつつ、結局攻略本出版前に解ききってしまいました。ケテル城なんかもカテドラルに比べればとても小さかったですし、エデンもさほど広大というわけでもなく。属性もどっちつかずで進めてれば選択式になりますから、初回でいきなりニュートラルクリアです。それでしばらくしてから攻略本が出版され、「何か知らないこと載ってるかな」と思って1,000円出して買ってみればケテル城で解説中断してますしね。もうがっかりものですよ。でも唯一良心として感じられたのは、ラストボスとの戦いについてこっそりヒントが載っていたところ。冥界波や天罰が有効、あのヒントがなければまた戦闘中にバグでハングアップして嫌になってたでしょうね。

 要するに、昔のパソコンで発売されてたロールプレイングならともかくファミコン以降の大半の作品、特にドラゴンクエストやファイナルファンタジーといった類のシリーズならば攻略本なんかなくてもどうとでもなる難易度であると。冷静に考えれば、マイトアンドマジックだって注意深く情報に当たってマップを隅から隅まで埋めて、目に付いたクエストを潰していけば、攻略本なくてもエンディングに行き着ける作りをしているはずです。特にラストダンジョンの「MY NAME IS ……」の仕掛けなんかは、自力でマップを埋めて行っていれば感動ものの仕掛けのはずです(自分ではそこまで行けてません)。まあそれがなかなかできんのは、あのゲームに限って言えば戦闘に関する難易度がべらぼうに高いからだろうと思いますけども。「進め、英雄たち」(※1)になっても表に出たとたん赤子のように捻られる世界ですから。それとさんざん苦労してクエスト解いても子供の駄賃程度の報酬しかもらえないとかね。ダスクなんて、エルキューンの次の目的地にしては遠いし敵強いし、およそ行けたものではないと思いますが。


●発売日にいきなり攻略本売らんでくださいな

 そんなふうに考えるようになったあるとき、非常に馬鹿馬鹿しく映ったのが「ファイナルファンタジー10、最速攻略本出版」のニュース。ほとんど発売と同時でしたっけ? 確かに速いは速いですが、でもそういうのは決まって情報が中途半端で終わってます。そりゃそうですよ、メーカーだっていきなり全部公開されてはたまったものではないですからね。

 公開の話というと、「ストリートファイターゼロ」の隠しキャラ、ダン。あれは一番後まで隠されていたキャラでしたが、出し方が通常では思いつくものではなくまた非常にシビアなのにも関わらず、雑誌に乗る前からすでにあちこちで情報が出回っていましたね? 聞いた話ですと、開発元の社員が「俺は知ってるんだぜ」とばかりにゲーセンでやっているのをギャラリーに覚えられ、そこから情報が波及してしまって周知の事実になってしまったと。本当は別のメーカーの「キングオブファイターズ94」の発売に合わせてダンの使用法を公開し、客を少しでも引き戻そうという目論みだったそうですが、それが一部の社員の守秘義務違反で台無しになってしまったため大問題になった、ということらしいです。伝聞系ですから事実かどうかは分かりませんが、まあ大変な話ではありますよね。

 話をファイナルファンタジーに戻しますと、まあ私の場合は多少遅れて遊んだものの、物語を進める上ではほかにヒントをもらう必要もないくらい苦労のないゲームです。通常落ちてる宝箱も、よく探せば見つかる程度のレベルですし、寺院の試練も時間かけて頭捻れば抜けるだけなら誰でも出来ます。なのに、攻略本? しかも発売直後に? どういう情報を求めてそんなの買うんでしょう。アイテムとか怪物のデータはある程度、ですがゲーム中でもガイドが出てきます。それに、そういうデータガイドを期待するならもっと後まで待った方が賢いに決まってます、掲載情報が不完全だと初めからわかっているんですから。まさかシナリオガイドとしてじゃないですよね、そんなの期待するくらいだったらもっと注意深くゲーム内の情報に当たったほうがいいです。攻略本だって安い買い物じゃないんだから。


●図鑑コンプリートにおよそ半年、長かった……(黒歴史コード、ほぼ未使用)

 中途半端な攻略本、ていうと面白い思い出がありましてね。ガンダムのG-GENERATION Fですか、アレの初期発売の攻略本も開発ルートが中途半端で終わってます。それでね、ゼータガンダムとザクを設計で組み合わせるとゼータザク(※2)という機体の設計図になるんですが、攻略本のリストを見たところなんと今作ではこのゼータザクから発展経路ができました。で、発展先は情報不完全のため?マークになってまして、こうなると俄然興味がわいてきます。ということで、一所懸命戦闘データを蓄積させて発展させてみたのです。

 なんとザクヘッド(※3)になりました。

 なにもゼータガンダムのボディからわざわざ頭だけはずして、そんなのを作業用ポッドに仕立てなくてもいいでしょうに。つうか頭だけ外して改造したんだったら、余ったゼータのボディもこっちに還元できるだろ。返せ

 知らない人のために説明しますと、このG-GENERATIONシリーズは各モビルスーツにも「戦闘データの蓄積」ということでレベルが用意されています。で、レベルが最高になると「その機体のデータや構造から、新しい方向が模索できる」ということで、その機体を潰して新しい機体に作り換えることができるんですね(『開発』といいます)。例えばザクをより陸戦向けのグフに作り換えるとか、ガンダムをフルアーマーガンダムに作り換えるとか、そういうことです。機体レベルを最高にするまで機体を再生産するための設計図は取得できませんから、「開発」で作った機体はそれはもう大事にしないとなりません

 それで、二つの機体の構造を組み合わせて新しい方向を模索する、というのが「設計」でして、こちらは機体のレベルは関係ありませんが自分たちの技術力が必要になります。例としてはギラドーガにファンネル搭載機のアイディアを組み合わせることでギラドーガ・サイコミュ試験型の案が出来上がったが、技術レベルがまだザクしか作れない程度なので設計図として形にできなかった、そんな感じ。

 ともあれ、このゼータザクからザクヘッド、はかなり笑わせてもらいました。よりにもよって、頭だけかよ! って。このシリーズ、こういう無茶な開発案とか設計案を平然と通すから好きなんですよ。アッザムにザクの頭つけてアプサラスとか、作業用マシンにアシュラガンダムの腕6本を合わせてサンドージュとか。


●答え見ながらクロスワードやってるみたいなものかな

 それでまたファイナルファンタジーの話に戻しますと、シナリオガイドを期待した場合、概ね本を読んだ時点でゲームを遊んでたどるべき物語の流れも分かってしまいませんか? 「どこでナニしてここでコレして」なんて作業の流れを見れば、たいがい主人公たちがそのように動く理由も見えてくるでしょう。先に攻略本読んでしまってたら話の大筋も分かってしまうわけで、果たしてそんな「あらかた分かった話を改めて見る」というのはどんな感じなんでしょうか。こういうのは映画化された小説なんかではよくあるでしょ。指輪にしろポッターにしろ、そういうもんですよね。で、私のようなひねくれ者は「小説とどう違うか、小説の表現をどう映像化してるか」とそういうところに着目したりするわけですが、でも攻略本であらすじ知ってそれから本編をたどる、というのはコレとはちょっと違う気がしますよ。それとも、ゲーム進めながら横に攻略本置いて、随時見るんですかね。

 でもまあ、この「大筋が分かってしまう攻略本」というのは作り手がまずい、という気もします。最近の攻略本ってなんだか嬉々としてシナリオ上の展開にまで言及したりしてますけど、攻略本ってその気になれば物語に一切触れることなしに作れるものなんですよ。難しい部分のヒントだけ列記していくとかさ。あるいは、シャドウタワーみたいにアイテムとモンスターのデータを羅列するだけとかでもいいのよ。


●キャラごとの容赦ないコメントがナイスです

 一番感心した攻略本ってのがありまして。ファミコン通信編集部から出版されてる「ヘラクレスの栄光4」の攻略本なんですけど、これ最初から最後まで全部読んでもシナリオの展開はほとんど分からないんですよ。なぜかというと、そういう箇所についての言及をほぼ完全に排除しているからなんです。例えば、ストーリー上重要なイベントとか人物とかいますよね。普通の攻略本ならそういうところも嬉々として書き出したりするんでしょうが、このヘラクレスの攻略本ではそういった要素をすぱっと切り捨てて構成しています。文中では「一回限りの回復」としか書いてないところで、ストーリー上重要なイベントが発生したときにこの攻略本のコンセプトのすごさを認識したものです。この作りなら、少なくとも物語に関しては先に知ってしまうということはあり得ませんから、純粋に攻略本として頼りにできます。記事も面白いしね。

 実際、このヘラクレスの攻略本は「ゲーム進行中に参照してもらうことで真価を発揮する」ように作られたそうです。ストーリー関連のネタばらしを徹底して排除しているためゲームを進めながら参照しても興を殺ぐことがない、そういうことなんですね。いや、ほんといろんな人に読んでもらいたい攻略本ですこれは。特に、最近の攻略本メーカーにはね


●サバッシュ2のアルキリオンの婆さんだって、知らなければ感動ものだった。……知らなきゃよかった……

 あれこれしゃべってますけど、攻略本に関する個人的な感情としては「使ってもいいけど使わないほうがいろいろ面白いよ?」てなところですかね、特にロールプレイングの場合は。使うにしても、私の場合は道具や魔法のデータ集としてのみ、もし本編に関する記述とデータ集が切り離されてなければ、よほどのことがなければ買わない。そういうふうにしてます。もちろんどうしようもない場合は攻略本買ったりネットで攻略サイト探してみたり質問掲示板探してみたり、そのくらいはしますがでもできるだけ独力で、ね。

 なんで手探りがいいか、と問われれば「面白い仕掛けに行き会ったときの驚きを殺がないで済むから」と答えます。物語が売りのゲームなんかだと、特に顕著になりますこの違い。先に仕掛けを知っているか知らないでいるか。どちらが面白いか? てなことで。分かりますよね、言ってること。

 手元の漫画で、興味深く、素晴らしいコメントがあります。引用してみましょう。

 ぼくたちライターは、自分が心底惚れ込んだ作品の素晴らしさを伝え切れないもどかしさと常に闘っています。その中でも、この「ウィザードリィ」は最高に手強い相手なのではないでしょうか。

 キャラクターの作り方。迷宮のマップを掲載する。アイテムの効力を解説する。モンスターの強さを公開する。武器や防具のデータを紹介する。これらでゲームのおもしろさが伝わるのでしょうか。遊びやすい環境を生むことは可能でしょう(もちろん、その代償として読者の方から何割かの楽しさを奪うことも確かですが)。しかし、これだけでは「ウィザードリィ」の魅力は語れません。

 ゲームは遊ぶために存在します。遊んでこそ、その真の力を発揮します。遊ばずにそのゲームの持っている魅力のすべてを味わってもらうことは不可能なのです。

 だから、ぼくたちライターは苦労します。ゲームの楽しさを如何に文章で表現するのかを。

 モンスターやアイテムが多いから。マップが広く、長く楽しめそうだから。有名人が制作に参加しているから。そんな理由ではなくて、作品の根底に隠されている、骨太なおもしろさを感じさせ、興味を持ってもらわなくてはならない。これがゲーム雑誌の、そしてライターの務めだと思います。ゲーム雑誌は単なるカタログではないのですから。

=JICC社「ウィザードリィ友の会 総集編」 p60、61の手塚一郎先生(※4)のコメントより抜粋=


 ……なんかものすごくいいコメントですね。読み返してほんとに素晴らしいこと言ってるなと思いました。とりあえずこの場では、「読者から何割かの楽しさを奪う」というところが私の言いたいことと合致してます。

 もちろん、武器のデータから何からかにまで全部自分で調べる、というのは厳しい部分もあります。だけど、自分でできそうなことくらいは自分でできるだけやってみたほうが後々満足行く、これは絶対そういうものだと思います。別に遊びなんだから、そう遊びなんだからどんなスタンスで当たろうが構いませんが、でも楽しみを求めるのが遊びであるならば、より楽しく! ってほうがいいじゃないですか。エンジョイ&エキサイティング!


●険しい山こそ上り詰めたときの達成感は大きい、そういうものでしょ?

 楽しみってところで思い出しました。先日、ゲーム文を扱ってらっしゃるサイト「続・薔薇はあこがれ。」にて、面白いお言葉を拝見したんですね。「ゲームとは苦しい思いをする場なのだ」と。

 なるほどな、と思いました。あのサイトの筆者の方がどう思っているのか、何を求めてゲームをしているのかは分かりませんが、一種共感はおぼえます。苦しい思いをし、それを乗り越えたとき、きっと「より楽しい」から。それを味わうために、おもちゃを使って苦労するのだと。たぶん、そのお人も苦しい思いをして修練して、そしてその修練が実を結んだときの満足感が欲しくてゲームやってるんではないでしょうかね。

 だから私も、好きなゲーム、好きになれそうなゲームでは攻略本はできるだけ眺めず、行けるところまでは独力で「戦い抜く」こと。最近、特に情報を交換できるような仲間がほとんどいなくなったこの現在において、それを自分に課すようになりました。いつかも言っていますね、それがゲームに対する誠意の表現なのだと。ここのところは特にその辺が極端になってきてて、「答えを眺めるのは敗北」と、そう感じるようになってきてます。……逆なのかな、私の場合は「せめて好きなことだけには」と思ってゲームはヒントなしで行こうとしてるのか。まあよく敗北してますけどね

 でも、最近の子供はどうもそうじゃないようなんですよね。苦労して、自分で考えて乗り越えるんじゃなくて、物語をヒントつきで、最初から攻略本を眺めながら辿っていくのが楽しい。映画観たりするのと同じ感覚なんでしょうか。それとも、遊びごときで苦労するのは欠片ほどだっていや? ……その辺はよく分からないんですけど、でも友人が言っていた「仕事で忙しいからね、自力で挑んで苦労するよりはとにかくヒントでもなんでも横に置いてさらさらっと流して、そうでもしないとゲームなんて遊べんよ」という言葉を思うと、今の子供たちも似たようなものなのかな、とは思います。

 ……しかし、おっさんどもはともかく、子供らはいったい何が忙しいんだ、そんなに? 身にもならん成績上げに腐心してないで、もっと遊びなさいな。もっと楽しみなさいな。ゲームでも本でも、まあ悪いことはいけませんけど何でも楽しんで、そのほうがたぶん人間として立派になると思いますよ。私は成績なんか二の次で遊んでましたけど、就職もまあできましたし前の仕事ではこれでもお客さんに評判よかったんです。対応、実績ともにね。自画自賛でなく、本当に。今はもう腐り果ててますが、「お前は要らん」とか言われたこともないし、まあまだ使い物にはなるってとこですか。

 まーとりあえず、子供らは面白い本いっぱい読みなさい。漫画だけじゃなくて、いろいろ。江戸川乱歩「少年探偵シリーズ」に北杜夫「どくとるマンボウ航海記」、見川鯛山「医者ともあろう者が」はいろいろ勉強にもなりますから。ね。


●でも、ゲーム中にもちゃんとした説明ないのは酷いよね

 そうそう、攻略本の話題に関連したことだと思いますから、ついでにお話ししておきますね。よく攻略サイトというものがありますよね。まあ私んとこもそういうコンテンツはありますけど、作るときに気をつけてることがあるんです。それが、「攻略本の丸写しにはしない」ってこと。自分で遊んで得たものも混ぜ込んで、少しでも読めるものにしようと。

 どんなもんでもそうだと思うんですけど、カタログ的にたださらさらっとやっつけてるだけのものよりも、筆者の経験などが「生きてる」文面のほうが読んでて楽しくないですか? 仮にメーカーから情報もらってても、それを掲載するだけじゃなくてちゃんと自分の手でプラスアルファをつける。例えば、こないだ私んとこで取り上げた「ベルセルク 聖魔戦記の章」。剣技というスキルがありますが、ゲーム中の解説見ただけだとたぶん効果が分かりません

 アレは要するに、レベル2でロックオン時にレバーを左右に入れておくことで出せる連続攻撃を修得、レベル3でさらにレバー上下方向に入れながらの連続攻撃を修得するというものです。全部別々の連続攻撃が出るようになってて、レバー右で「斬り上げから斬り下ろし始動」、レバー左で「殴り、右斬り始動」、レバー下で「剣を立てて宙を飛んでから左右振り始動」、レバー上で「走りこみ突き始動」となってます。ちゃんと敵をロックできる状況でないと使いにくいですが、サシのバトルになるボス戦では攻撃に幅を出したり、遠間から斬り込んだりするのに役に立ちます。……ね、ただ「左右方向への連続攻撃を修得」「上下方向への連続攻撃を修得」って言われるよりも読み物として見られるでしょ?

 それに、すでに公開されたりしてることをただ並べるだけじゃ芸もないでしょ。そんなことは誰でもできるし、やる意味もありません。だったら、自分だけの色をつけたほうが自分でも楽しいし、読む人を「なんだ、丸写しじゃん」と失望させない。私はそう思っています。


●一度は見て欲しい、これらの攻略本

 そういう面から見て実に素晴らしいと感じた攻略本だったのが、電波新聞社の「オールアバウト」シリーズにアクセラ社の「ソウルキャリバー オフィシャルガイド」。「オールアバウト」シリーズはおおむね格闘ゲームを題材にしてまして、正確にはオールアバウト・〜〜とゲームの名前が入りますが、その名の通り取り上げたゲームに関してものすごい調査結果が見られまして、メーカーにも好評だという話を聞いたことがあります(カプコン社では『参考書』と呼んでいる、とインタビューにあったと思います)。とりあえず手元には「ヴァンパイア」と「キングオブファイターズ94」の冊子がありますが、技表や対戦対策など通常考えられる要素にもさらに細かい解説があったりしますし、ほかに各種裏技(バグを含めて掲載してます。キングオブ〜のバグは特に面白いものが多かったので見ものです)やテキスト類全種類、さらにはゲーム中でかかる曲の譜面(自分たちで採譜したそうです)まで載ってまして、ただ読むだけでも面白いんですね。キングオブファイターズ94の「即死連続攻撃一覧」は大爆笑ものの出来で、実践すると最初の1セットで敵の残り体力がもう4分の1、そういう世界です。

 で、「ソウルキャリバー オフィシャルガイド」。こちらは格闘ゲーム「ソウルキャリバー」のガイドですが、なんですか凄まじいことに、ほぼ全部の要素を独力で調べたという筆者の方のコメントがあります。なぜ凄まじいと言ったか、それは内容をひと目見るだけで分かります。このゲームはキャラクター1人につき攻撃がおよそ100種類から存在するゲームなんですが、その総てにおいて攻撃判定、攻撃発生時間から持続時間、ヒット、ガードさせたときに相手に与える影響、さらにコメントや有効活用法までつけられているのです。キャラ数は全部で16人。共用部分もあるとはいえ、この人数を相手にこれだけ精緻なデータを調べ上げるとは……。

 そしてこれだけでも凄いのに、この本「技レベル」なる単語がそれぞれの技に付されています。聞き覚えのない話だったのでよく読んでみると、「攻撃と攻撃が打ち合ったときに、どちらの攻撃がもう片方の攻撃を弾くか、それを決める数字だ」とのこと。レベルの段階はゼロを含めて全部で16、15レベルの攻撃は防御不能攻撃のみ。レベルの高い攻撃が低い攻撃を打ち落として相手をよろめかせることができる。そして、ソウルチャージで技レベルをプラス1することができ、それでレベル15になった攻撃は弾き返すことこそ可能なものの防ぐことはできなくなる、などなど。……よく調べたね……。これを凄まじいと言わずして何をそう言えばいいのか、ちょっと分かりません


●悪いね、付き合ってやれんで

 この「技レベル」では少々面白い思い出がありますね。地元の田舎ゲーセンにも一応ソウルキャリバーが入ってた時期がありまして、それで私もジークフリートというキャラが好きだったのでよく遊んでました。でも対戦はほぼ行われず、あったとしてもある一度を除いてお互いレベルの低い戦いを繰り広げるばかり、そんな状況でした。もう後期になると「どーせ誰も入ってこないんだから、いろいろあそぼ」と思ってジークフリート以外の、使ったこともないようなキャラクターで遊んだりしてたんですが、16人のキャラクターのうち「突進技のレベルが14」という凄いキャラがいたのです。で、そのキャラを使ってドスーン、ドスーンと相手の腹に忍者刀を突き刺していたのですが、なんかそんなときに限って乱入してきちゃうんですね。もともと私は「入ってくるな!」という人間ですからして、まあこれにも嫌な思い出があったりしますが、とりあえずそのときは「対戦を楽しもう」ではなくて「障害を排除」、完全にそう思って臨んだんです。知ってれば返してくるだろ、そう思ってましたし。

 案の定、その相手も腹に無数の刺し傷を作り、あえなく散りました。中でも明らかに防御してるところで防げずに刺された、向こうから声が聞こえましたもんね。「アレ、これって防げない技だったっけ?」 防げなくしてるんです。知らないと損よ。というか、目の前で無防備になるのを黙認してたら駄目だって。まあ当然、ゲーム中でも現実でも排除に成功しました。でも今こうして書き出してみると、割と酷いことしたかな、ってちょっと思いますね。まあ、運が悪かったと思って諦めてもらいたいですな。あー、念のため言うと、このキャラのこの技はドリームキャスト版では見事に技レベルが落とされてます。当然やね。


●人は……ああまで詰められるものなのか?

 ちなみに、さっき言った「ある一度」の対戦。凄い、見るからにキャラの動きが違う人がいたので胸借りるつもりで挑んだら、いやあ見事に1,500円近くやられましてね。一度だけ勝てたんですが、そしたら本来の持ちキャラで本気モードになってしまいまして、もうさっぱり。いやー、ほんとに強い人ってのは私などとは考え方から何から全部違うんだな、と知った瞬間でした。こちらの動きのクセはあっさり見抜かれましたし(それでなくても機械みたいにパターンで動くから何度も闘うとばれるんですが、このときは本当にあっさり見抜かれました)、多少手を変えてみてもまず一つ一つの技の状態から見てるみたいで何やっても的確な反撃が来ましたし。私はもともと対戦向けの人間じゃない、よく分かったです。

 対戦つうと、ずいぶん前になるんですが、池袋でどうみても買い物帰りの若主婦さんにしか見えないお人が「月華の剣士 第二幕」を遊んでいましてね、なんか見てると強いんですよすごく。で、若い兄ちゃんがいかにも「相手じゃないね」というような感じでそのお人に挑んで、3本先取の勝負において1本も取れずにあっさりと敗北する、という光景を目にしました。一緒にいた悪友も挑んだものの、そもそも修練の度合いが違うのがひと目で分かる相手でしたからどうにかなるはずもなく、二度挑むもどちらも惨敗。「馬鹿、普通に挑んで勝てねぇのに防御力落ちる『極』なんかで勝てるわけないだろ」 で、さんざん考えた末、一期一会と思って敗北覚悟で持ちキャラで挑んだところ、なんか大激戦になりましてね。自分がそこまでできた、というのも驚きでしたが、やはり驚くべきはあのお人の腕前でしょう。いつ、どこで修練を積んだの?

 もしぴんと来る人いましたら、「心から感服いたしました」とあの時の相手は思っています。池袋GIGOの地下、示源の「技」で一度挑んで敗れ、次に「力」で挑んでかなり持ち堪えた者です。貴君は初め真田小次郎、こちらに一度負けてから楓で挑んでこられました。


●人のことばっかりは言ってられないね、自分も気をつけないと

 長くなりました。ま、どんなでも楽しむのがいいですが、同じ楽しむならもっと楽しいほうがいい。私はそう思います。なんだかんだ言ったって、手探りで答え探してる、その時間だって楽しいんですから。まあ行き詰って長くなりすぎると却って楽しくなくなりますから、その辺は各自折り合いをつければいいでしょう。でも、「俺にはこれだけのことができたんだ、この謎を自分だけで解けたんだ!」っていうのも悪くないですよ? とても小さな、虚構の満足ですが、もとより大きな満足なんてそうそう手に入る世の中じゃありません。人生のスパイス程度には確実になるはずですから、この話見て「ふーん」と思ったら、ファイナルファンタジー10でもなんでもいいですから一つ試してみてくださいな。ああ、「ヒットマン コントラクト」辺りもいいですね、アレは注意深く当たれば分かるようにできてますし。

 そうだ、言い忘れてました。ロールプレイングを主眼において長々話してきましたが、別にロールプレイングに限った話じゃない、アドベンチャーでもアクションでもシミュレーションでも、何でもそうです。その辺、よしなに。



※1 進め、英雄たち

 マイトアンドマジックのファミコン版では、画面のメッセージウインドウのところに常時「Go Ahead 〜〜」というメッセージが表示されていまして、この〜〜のところに自分たちのレベルに合わせて赤んぼども、戦士たち、英雄たちと英語で入ります。レベル10から英雄たちになりますが、正直その程度のレベルでは表をうろついているトロールたちにはまるで歯が立たず、下手をすれば街の中に出てくる追いはぎどもにすら苦労するというような状況で、とても英雄とは呼べないのが実情だったりします。とりあえず集団攻撃魔法のダメージ計算と通常攻撃の命中率計算さえもう少しゆるければ戦える気はしますけど。


※2 ゼータザク

 「機動戦士ガンダムZZ」において登場した機体。前作「機動戦士Zガンダム」から引き続いて登場しているゼータガンダムですが、とある戦いにおいて頭部だけきれいに破壊されまして、修理が済むまで出撃不能だったんですね。それで主人公たちはゼータガンダムを置いて出撃したのですが、居残っていた主人公の友達がちょうどサルベージしていた旧式機「ザク」の頭をゼータガンダムにすげて間に合わせの修理を済ませ、それで自分も出撃したというエピソードがありました。当時骨董品だったザクの完全版が拾えたと喜ぶジャンク屋の主人公たちや、その修理したゼータガンダムで出撃するときに艦橋に言い残した「ジュドーたちにはゼータザクが出たと言って下さい!」という台詞、直後の「視界が180°じゃきつい!」という台詞が非常に印象に残っています。

 ちなみにG-GENERATIONシリーズにおいては初作からゼータガンダムとザクの組み合わせで設計できますが、性能こそゼータガンダムと大差ないものの必殺武器「ハイパーメガランチャー」が使用できず、また変形もできません。もともとゼータガンダムのハイパーメガランチャーが広域攻撃扱いでガラクタ同然だった初作ではともかく、後期作ではこの「ハイメガランチャーカット」という事実のため戦力としてはどうにも当てにできず、また以降設計素材にもならないし発展経路も存在しない(Fは別ですが、それは本文中で紹介します)ので完全に趣味の機体となっています。まあ、黒歴史コードで作る「首なしガンダム」みたいなものでしょう。


※3 ザクヘッド

 漫画で展開されたガンダム関連作「DOUBLE FAKE」にて登場したという作業用ポッドで、ジャンク品のザクの頭をベースにして作ったものだそうです。ゲーム中では唯一の武装「タックル」は威力こそあるものの、その元になる機体性能が(当たり前ながら)めっぽう低いため使い物になりません。いきなり敵の頭上で宙返りして「ゴン」という吹き出しとともに体当たりを食らわせるというビジュアルは楽しかったですが、まあそれだけの機体ですね。

 実性能としては機体攻撃力、機体防御力ともに8(一般車両クラス)、体力4500(偵察機クラス)、搭載燃料32。一般で使用されている作業用プチモビにしてはそこそこってとこでしょうか。作業用といえばゲモンの愛機ゲゼ、またムーンムーンで崇められていたキャトル辺りが思い浮かびますが、どちらもなかなかの性能を持っていて、一年戦争期の量産型よりも強かったりします。特にキャトルの火炎放射はイケル、らしいですね。

 比較のため、「DOUBLE FAKE」に登場する中でゲーム中最弱の戦闘用モビルスーツ「ズサカスタム」の性能も紹介。機体攻撃力24、機体防御力23、体力10360、搭載燃料70。あーあって感じがしますね。


※4 手塚一郎先生

 ウィザードリィ、シナリオ4の小説化を初めとして、いろいろ素晴らしい作品を残されてるそうです。……私は初期作しか読んでないのでこういう言い方しかできませんが、このお方の書かれる文章は非常に好きです。個人的には「ワードナの逆襲」「弦奏王」が好き。弦奏王、続き書かれませんか? フェイクの恋愛スタンスをこそ至純というのだと私は心の底から確信していますし、デスの一種達観した死の概念も「なるほどなぁ」と思っていますし、まああの人は手段選ばないから巻き添え食いたくないけど。あれは間違いなく傑作ですよ。