〜ドラゴンクエスト〜
機種:ファミリーコンピュータ
●全体indexへ ●indexへ



●もしかしたら、もっと早かったかもね

 初めてこのゲームに出会ったのが、確か小学校の3年か4年か。それから月日が流れることおよそ20年、ようやく完全な独力でのエンディング到達を果たすことができました。長かったなあ、ほんとに。

 スーパーマリオがあって、このゲームがあって、女神転生があっての私の人生ですからやはり忘れられないゲームなのは間違いないですね。やっと、解きおおせた。そんな、感慨のようなものがあります。


●ポートピアも結局手が出なかった

 確かこれがファミコンで一般に認知された初めてのロールプレイングゲームだったと思うんですけれども、そうだということはそれまではほとんどのものがアクション、せいぜい「ポートピア連続殺人事件」などがほんの少し姿を現しはじめた頃だったと思います。当然我が家にも「ゼビウス」や「ソロモンの鍵」、「ゲゲゲの鬼太郎」などといったアクションものしか存在せず、ただただゲームといえば「継続性のない」ゲームを遊ぶばかりでした。

 そんなとき、今は王子で床屋を営む従兄「北斗の拳」のかの人物ですけれども、彼が夏休みのほとんどを潰して我が家に泊まりに来たのでした。私は彼といえばゲーム、という思考をしていたのですが、そんな私の期待を裏切らずに彼が持ち込んできたゲーム、それがこの「ドラゴンクエスト」、以下ドラクエだったのです。

 最初は何がなんだかさっぱり分からなかったのですが、少し遊ばせてもらううちに「これはすごいぞ」と思っていました。横で従兄の言った、「少しずつ強くなっていくのが分かる。それってなかなかいいもんだろ?」というような言葉、それがそのまま実感できていたのでしょうね。

 それに、パスワードによって自分が積み上げたものが残しておける。これも、「一度電源を入れて遊び、終わったら電源を切る。すると総ては初めからやり直しになる」というゲームしかなかった私には衝撃でした。「アルゴスの戦士」なんて一体何回死んだ? アレも一度始めたらデッドorアライブ、解くか死んでやめるかのどちらかだったですからね。まあアルゴスはもっともっと後の話なんですけれども、当時のゲームなんていったら友達が持ち込んできた「影の伝説」だの「ソロモンの鍵」だの、やっぱりデッドorアライブなものしかなくて。


●しかし、鍵を買ったとしても5レベル程度じゃ何もできないんだよな

 もっとも、当時の私はじっくり腰を落ち着けて取り組むということには(あらゆることにおいて)まったく縁のない子供でして、レベル5までは上げてみたもののそこから先はどうしても辛抱がもたず、銅の剣を買うにしても資金貯めは大変だ、レベルを上げるにしてもドラキー相手に戦い続ける埒のあかない生活はもう嫌だと無理してリムルダール近辺まで脚を伸ばして何度も何度も、数え切れないくらい死んだものです。

 ただ、それでもなんか楽しかったんですよね。敵が出てこないと分かっていても、いや分かっていたからこそ安全だと言ってたいまつを持って勇者の洞窟に何度も石版を読みに行ったりして。ちょっとした探検気分、それをそのまま家で楽しめる。そんな感覚もあったのかも知れません。あのたいまつ使ったときの、自分の周りだけぼばばっと明るくなるあの風情、忘れようのないものです。


●一月くらいうちにいたのかな

 これは未だに申し訳ないという気持ちでいっぱいなんですが、その従兄も自身の家ではやはり突き上げを食っていた(15年くらい経ってから聞いたんですけどね)そうで、それで叔父さんの家なら突き上げはあるまいということでなんとか話をつけてうちに来たそうなんですけども。なんでそんなことしたかと言ったなら、そりゃドラクエがやりたかったんでしょうね。

 しかし、その横には小うるさいガキがいるわけですよ。なんとかそいつを黙らせながら、て私のことですけどね、自分もなんとかレベルを上げたり武具を集めたりしていたのです。そんな彼はレベル14、銀の竪琴はすでに回収していてよくぼろんぼろん鳴らしていた記憶がありますけれど、どうも当時の目標はドムドーラの街で悪魔の騎士を倒し、ロトの鎧を入手することだったようなのですね。何度も何度も挑んではラリホーで眠らされて為す術なくスクリュー死に、そういう光景をそれはもう繰り返していました。

 んで、そんなある日、どういうものだったのか、彼はなんと悪魔の騎士を倒せたんです。嬉しかったでしょうね、私がリセット押すまでは


●つうかなんでお前が怒るんだ

 あー、これは完全に自分の至らぬ記憶、みっともない話なんであまり思い出したくないんですけどね、ドラクエの話になるとこれは避けてはならない話なので最後までしましょう。私としては「終わった? よかったね、じゃあもう大丈夫なんだ。代わってよ」という気持ちでやったことなんですが、ぜんぜん良くねえよパスワード取ってないだろうが。そこまで頭が廻らなかったんですね私は。

 彼自身は何も言わなかったんですが、横で姉がものすごい勢いで怒り出しまして。というかうちの姉は昔から「ジョーシキ」やらなんやらを持ち出しては怒る、そのくせ自分は割と平気でその外にいるという人間なんですけれども、何の気なくやったことでいきなりめちゃくちゃに怒鳴られたもので私はもう泣くしかできず。自分の苦労をフイにされた上に、そのフイにした張本人の機嫌取りまでやらされた彼の心中はいかばかりだったものかと今思い返しても痛恨の事柄です。

 しかし、自分に照らして考えるとそんなことをされたらものすごく怒る(ていうか怒った)でしょうに、彼がそんな素振りを見せていた記憶はありません。だから、きっと我慢してたんでしょうね。私より5つばかり上の、中学生になったかならないか。そんな時分の子供としては立派でしょう。

 そんな彼も、もうじきに2人目のお子さんが生まれます。きっとこの先もいいお父さんであることでしょう。つうかそろそろ頭うざいんで行きたいんだけどね、足がちょっと今アレだから行けないんだよね。チャリでも電車でも30分の世界だからね。


●竜王との戦いに薬草持ち出したりもしたなあ(回復力不足で無意味)

 そんな事柄もあったんですが、夏休みが終わって彼が帰ってからもこのドラクエを持っている人間は周りに幾人かいまして。夏休み当時のパスワードは紛失してしまったので私自身の冒険はそこで終わってしまっていたのですが、当時の子供としては結末はなんとしても見たい。だから、カセットと一緒にパスワードも持ってこさせて延々竜王に挑む光景を眺めていたものです。

 しかしまあ、どういうもんだったのか、今思い出してもめちゃくちゃ勝率低かったですね。レベルはそんなに低くなかったと思います(どのパスワードも、最低でも20にはなってたはず)し、すると何がそんなにまずかったんでしょう。回復のタイミングをしくじってたのかな。


●覚えてる、この3本はあなたのものだよ

 それから10年くらい経って、少ないながらも友達も増えて。そんなうちの1人が、私がまた別口のところから受け取ったドラクエ2を遊んでいるのを見て「うちにあったから、やるのなら遊ぶがいい」とこの1、それから3と4を持ってきてくれました。……よくよく考えると私、人のパスワードでエンディングは見てるけど自分の手でエンディングを見られるパスワードは作ってないんだよな。OK、やりましょう。特に1、これはぜひ。

 ということで、正味15年ぶりくらいにドラクエにチャレンジです。かつてのあの苦い記憶を胸に、名前をつけてゲームスタート。


●「竹ざお」は5で「竹のやり」として復活したよね、確か

 アレですね、昔の記憶と照らしてみても結構きつかった、というか成長ペースが遅かったりして辛抱が足りないと投げ出しかねないバランスだったという記憶はありましたけど、今遊んでみても何一つその記憶に変わりはありませんね。レベル2までに7の経験が必要じゃ、とか言われて「7なら大したことねえだろ」と思ったらえらい苦労してスライムと戦うことになったというのが久々のプレイ光景としては強烈で。

 そういえば、開始直後にあなたは何を買いました? 選択肢としては竹ざおに布の服、革の盾かあるいは棍棒に革の服だろうと思うのですが。まあ私は後者です。だからかつて銅の剣に買い換えられなかった私はほとんど初期装備でやって、それで中断したということになるんですよね。

 まあ、今となってはあれから相当時間も過ぎて、少しは人としてもマシになっていますから、序盤の資金貯めも経験稼ぎもじっくり取り組んで。かつての壁だったレベル5もあっさりと突破、銅の剣もささっと購入していました。


●これは絶対に忘れない、ゲームで嬉しかった「達成」の想い

 しかし、考えると棍棒から銅の剣に買い換える、その嬉しさは知ってるんだよな。あの5レベル中断のときは買い替えはなかったから、またどこかでやってたってことかな。いずれにしろ、初期総資産220程度で銅の剣が240でしたっけ? 初期総資産以上の金額を突っ込んで銅の剣を購入したときは「やった!」と思った、そんな記憶があります。姉のデータだったか、あるいは自分のデータだったか。覚えてねえなあ。

 そういえば銅の剣、ドラクエ2だと初期装備なんですよね。さらに竹ざおも檜の棒になってて。「最初から銅の剣なんていいもの持ってるんなら、序盤の戦闘は楽勝じゃねえか!」と思ったのも初めてドラクエ2を遊んだ直後だけのことでした。2の話はまた後で。竹ざおなかったのはちょっと寂しかったな。


●考えてみると、強烈な台詞だなあ……

 それでまあ、このゲームといえば別段ややこしい謎があるわけでもなく、迷宮の奥にある銀の竪琴を雨雲の杖と交換したり、太陽の石と雨雲の杖を合わせて虹の雫と交換したり、とかすべきことはそのくらいなんです。まあ、武具を買いにメルキドまで赴いたり鍵買いにリムルダールまで行ったり、毒の沼地の中を延々ロトの印を探してうろついたりというのもかつてのいい思い出ですね。今やったら大まかな場所はほとんど覚えてるし、行き着けないにしても準備万端、引き際まで心得た上でのプレイですからやられるはずもなく。

 で、そのくらいの時期になると、かつての記憶にまた重なってくる場所があるわけです。ドムドーラの街、レベル14。悪魔の騎士撃破。かつての蛮行を考えるならば、その恥を雪ぐ唯一の手段は自分もその目標を達成するのみ。理由はないはずですが私はそう強く確信していましたので、これはなんとしても突破せねばならないと何度も何度も挑戦してはラリホーで眠らされて「死んでしまうとは何事じゃ!」とか強烈極まる台詞を王様に言われたものです。


●金の力で目的達成……12レベルじゃ無理だろ、これは

 これ、実際かなり時間かけて達成しましたけど、だいぶえらい目見ました。最初は魔法の鎧に水鏡の盾、それはいいとして武器。どうせすぐロトの剣が見つかるんだから、わざわざ金出して炎の剣買わなくてもいいだろと思っていたんですけど、鋼の剣じゃ倒しきれないんですねどうも。レベルを上げてしまうわけにいかない以上、強化手段は武具の調達だけですから仕方なしに炎の剣を買ってきましたよ。……まあ、結局鋼の剣も炎の剣も大して変わらなかったんじゃねえかな、というのが達成した後の感想ですが。

 はい、これが達成直後のパスワード。次のレベルまで500切ってますね、ぎりぎりでした。


なぞせせつ ぶあじだだぞご ぢぼかこじ ぬずけ


 うわ、パス短ェ! これなら間違いもそうそうなかったんじゃないか、とは今30近くになって思うことですけど、でも当時はよく「じゅもんが ちがいます」って出たんだよなあ。今の子供らは絶対分からないんだろうなあ、「じゅもんが ちがいます」の衝撃は。あー、今ちょっとここに書くためにパスワードを探してみたんですけど、なんかレベル14の時点だけ4つくらいパスワードが取ってあります。装備強化するたびに取ってたんだろうな。


●ウィズよりもきついかも知れんぜ、ある意味

 しかし、そこまでは順調だった、と言えるのでしょうか。「次はアレを取りに行く」とかそういった目的があって、そのためにレベルを上げたり資金を貯めたりできる。それは目標があるからそんなに苦痛じゃない。問題はいざ虹の雫まで取って、ロトの鎧も取って、そこからです。

 どう考えてもレベル14だの15じゃ竜王には勝てないんですよね。雑魚である悪魔の騎士に叩き殺される世界なんですから、そりゃ無理ってもんです。だからただひたすらに敵を殺してレベルを上げなきゃならんのですが、一回の戦闘で得られる経験点は多くても50、つぎのレベルまでは3500。……あん? 実際、ここらで一度嫌になって中断してるんですよ。ほかにいろいろ発売された(何買ったかは覚えてませんけど)っていうのもありましたし。


●データは消えても思い出は消えない……が、やはりつらい……

 再開のいきさつ。果たして何人が知ってるものか、こないだ、ついこないだファミコンのウィズのデータが消し飛びまして。それが、電池切れじゃなくて明らかに接触不良によるものだったのね。それでちょうど見かけたあるサイトでファミコンカセットの清掃方法とその資材、さらに効果の大きさを説明してるところがあったんで、近所の家財屋で錆取りのクレンザーみたいなのと綿棒を買って来てごしごしやったんです。

 それがまた、効果抜群でして。うちにあったカセットは、100本全部奥まで差し込んでしまうと絶対に動かない。奥まで差し込むのもなんか固くて骨でしたし、差したとしてもなんかちらついちゃってね。で、しょうがないから差し込む深さを調節して、その微妙な深さを体得して。そうやって動かしてたんです。それでも一部のカセット、「ロードランナー」とかはかなりやばかった。10回に1回とかですもんね、起動したのが。

 ところがそんなのが、実にあっさりと差し込めてしかもほぼ1発で動く。これはね、クセになりますよ? ウィズのみならず、このドラクエやら「レイラ」やら「ヘラクレスの栄光3」やら、あれこれ無闇に清掃してしまいました。もちろん全部1発起動、グーニーズは錆び方がひどくて苦戦しましたがこれも1発起動まで蘇生。むうぅ、甲斐がありますねえ


●もう3週間になるんだが……

 そんな具合で再開したこのドラクエ。さっきも言いましたがちょっと今足がアレなので仕事にも行かれず、時間だけは無駄にある私ですからせっかくだからこのまま終わりにしてしまおうと思ったのです。なんとか17レベルまで上げて、さあ次はいくつだ? 「次のレベルまで4000の経験が必要じゃ」 1回25平均で、160回ってことか。長ェなあ……。

 このゲームでもう1つまずい、そう、まずいことですね。そう思ったのは、15レベルを過ぎた辺りから竜王の城の敵くらいしか危険な敵はいなくなります。17レベルを超えてしまうともうその連中も、目的なくただ戦うだけならかなり楽、そういうレベル。どういうことかというと、戦闘に緊張感がなくなるんですよ。ただだるいだけの経験稼ぎ。さっき言った「目標の喪失」と相まって、これはちょっとつまらなかったですね。装備品やらなにやらにももう上がない、そんな状態ですから戦闘そのものがもうつまらなくてつまらなくて。


●17レベルで行けるって? 無理だろそりゃ

 なんとかそんなところで、18くらいで行けるかなと思って竜王に挑んでみたんですけども。駄目ですね、物理的にこちらの体力が足らん。2ターンに1回しか攻撃できず、しかも与えられるダメージは6とかそんなの。1発食らえば40ダメージ前後の世界において、回復魔法を10回も使えない現状じゃ絶対無理です。

 しょうがないからもうちょっとレベル上げて、20にして。うちの姉は21で解いたから、そろそろ行けるかなと踏んだら、こんどはビンゴ。無事に突破でき、なつかしのエンディングを拝むことができました。間違って姫を救出してしまっていたのが痛かったですが、まあ円満ということにしておきましょうか。

「私も連れて行って下さいますね?」
「いいえ」
「そんな ひどい……」
「私も連れて行って下さいますね?」
「いいえ」

 以上10回ほど繰り返し。つうか貴様はなんでそう強引なのだ!? 洞窟から助け出したときも結局意味のない「はい/いいえ」が出たし、なんだっけあの座標知るアイテム。「王女の愛」だっけ? 使ったあとに「私のことを愛していて下さいますか?」とか聞いてきて、いいえってやると「そんな ひどい……」って出てくるの。ドラクエシリーズの「選択肢の体裁をとってるけど実は一択」という伝統はここからなんだよなあ……。

 そういえば2で「復活の玉」を使ってパスを聞かないとやっぱり「そんな ひどい……」って出るらしいですね。取れなかったから知らないけど。あと、ここでのエンディングのときに姫を洞窟の中に放置しておくと、姫の「お待ちください!」から始まるテキストスペースが空白になって、そのまま上に送られていくっていう光景になるんですよね。だから「私の治めるべき国があるのなら、私はそれを自分の手で探したいのです」って出たあとに少し空白が流れて、それでスタッフロールに入るという。


●やっぱりファミコン版が一番いいね

 まあ、長い長いこのゲームとの因縁も、ひとまずこれで落ち着いたというところでしょうか。やっとこさ解けましたもんね。無論私のゲーム人生が終わるわけではまったくありませんが、「最初の」ロールプレイング、最初に手をつけておきながらいまだ解きおおせていなかった、そんなゲームを終わらせることができたというのは大きな節目と言ってもいいのかな、そう思います。

 さぁて、次は3か? いっときダーマまで行ったんですけどね、小学校時分からなぜか「魔法の鍵を取るとデータが消える」という嫌なジンクスがあって、前回もそれに引っかかってしまったので頭来てやってないんですけども。また掃除すれば大丈夫だろ、そのうちやってみよう。

 そういえば、この初作と2はスーパーファミコンで一応リメイクされてますよね。あとゲームボーイですか、まあ当然ながらバランスがゆるくなる方向で調整されているので本来の味わいはどこにも残っていません。悪魔の騎士にラリホーかけられて死ぬまで目覚めなかったとかブリザード4体に吹雪ならぬザラキを吹き荒らされて為す術なく壊滅とか。そういう強烈な出来事、遊び手が実際にした苦労こそが最高の味付けになる類のゲームでしたから、そういう苦労を排除されてしまったらただ味気ないだけのさびしいゲームになってしまいます。

 まあね、昔みたいにきついバランスのゲームが今現在の子供たちに受け入れられるかというとそうとも思えませんのでね、ある程度バランスがゆるくされてしまうのは仕方ないことなのかも知れませんけども、ただ「何がこのゲームの面白さの本質だったのか」ってところは見失って欲しくないですね。超苦労した、超楽しかった思い出のゲームがリメイクされたとたんに「何も装備を買わないでも最終盤まで進めた」だの「一晩でクリアしてしまった」だのとどうしようもないゲームに変貌してしまうというのはもうですから。