〜騎士ガンダム物語 大いなる遺産〜
機種:スーパーファミコン
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●ガンダムでドラクエ?

 このゲーム、ご存じでしょうか? ドラゴンクエストが大好評を博してからしばらく経ったある日、バンダイがファンタジー世界にガンダムを持ち込んで考案した「ナイトガンダムストーリー ラクロアの騎士」というカードダスシリーズが発売されました。基本的に連邦のモビルスーツはプレイヤーキャラや街の人、ジオンのモビルスーツは怪物といった位置付けで作られていて、主人公が「騎士ガンダム」、また最後のボスに当たる悪者にも「サタンガンダム」とガンダムの名前が冠されていました(※1)

 凄いのはキャラデザインの手腕で、ジオン製モビルスーツの無骨なボディラインをうまく作り替え、怪物らしく、かつ原形のイメージを崩さないデザインに仕上げていたものです。個人的なヒットは、スライムアッザム、ヒドラザク、フロッグアッガイですね。次点は魔導士ゲーマルクと魔導士ビグザム。ああ、あとジムヘンソン一家


●ファミコン版は……

 もとがそんな成り立ちですから、当然バンダイはファミコンでロールプレイングとしてゲーム化したりもしていたのですが、容量の問題とカードダスの新シリーズ展開の問題で一本のソフトにはまとめ切れず、何作かに分けて発売していました。そのため、1作ごとのイベントなんかはそれなりに設定通りに再現していたようですが、作間のレベル引継ぎがないなど弊害もあったようです。

 そこで、このスーパーファミコン(以下スーファミ)版の登場です。スーファミならば4本の話をまとめることもできるだろう、とて開発されたのかどうかは知りませんが、ともかくファミコンでは2本のソフトに分けられてしまった話をスーファミでは1本のソフトにまとめてあります。


●スーファミになって

 で、内容のほうはと言いますと。

 システム周りなんかは完全にドラゴンクエスト(ウルティマ、ではありません ※2)と同質です。両手に武器を装備できる、という点とフォントや配色などからくるコマンドウインドウの見づらさ、それからカードダスの戦闘参加システム。この三つを除けば、「まったく同じ」と言っても過言ではないです。せめてもう少し考えてみても。ある程度は仕方ないとも思いますけど、なにも「話す」コマンドで話しかけるところまで真似しなくてもいいでしょうに

 また、ゲーム中の画面についてもかなりひどく、ぼやけた感じのする迷宮や街の中を頭から手足が生えているキャラクターが歩く、といった風情です。各キャラのかっこいいデザインは潰れてしまって見えません。まあ、記号にすぎないんだからいいと言えばそうなんですけど、それにしてもファイナルファンタジー4の後に発売するんだったらもっと考えてもよかったろうに、と思うんです。

 物語のほうは原作のカードダスが4期に分けて販売されたのに倣い、4章仕立てです。1本のソフトにまとまったため、全ての章でレベルやアイテムの引継ぎが行われますが、逆にイベントなどのほうでいくらかカットされた部分があります。

 例えば、ファミコンに登場した戦士ランバラルは今回見事に省略されてしまい、また黄金の騎士と騎士シャアについても思いきり端折られています。ドラゴンベビーは単なる殺され役、シャドウキャラに至ってはバーサルシャドウ以外登場すらしません。もったいない話です。私としては、船大工の子供よりもシャドウキャラを優先して欲しかったところですね。全体的なゲームバランスなどは一部を除いてかなり良好なので、この辺りの部分は残念なところです(文中の固有名詞は別に了解できなくてもいいです。そういうもんだと思ってください)。


●それでも楽しいの

 こうして見ると、単なるマネゲー、とか思われそうです。まあ、実際そうとも言えるでしょう。しかし、このゲームには無茶をやる余裕、余地があるのです。

 ファミコン版では、ある地点でイベントが発生したら、そのイベントを片付けるまで先には進ませてもらえない(物語だけでなく、街までも)という邪魔なシステムがあったそうです。これをユーザーフレンドリーというかどうかは個人の自由ですが、容量不足でしょうか、今作にはこれがありません。また、1、2、3章の全てに稼ぎ場所、といえる場所があります。これは、制作者自ら「稼げ!」と叫んでいる、ある友人はそう受け取りました。私もそれを声を大にして言います。

 章ごとの稼ぎ場所と稼ぎ方は別のところで語りますが、この稼ぎによりゲーム自体の難易度が格段に下がります。だからといってラストボスまで一直線かというとそうでもない(ラストダンジョンに限り異常に敵が強い)ので戦いがいがなくなるわけでもありません。思う存分キャラクターたちを叩き上げ、マイキャラと敵の力のぶつかりあいを楽しみましょう。


●珍しい特徴

 それはともかくとして、先ほどちょっと触れましたがこのゲームには「カードダスの戦闘参加」という一風変わったシステムがあります。これはどんなものかといいますと、カードダスを実体化させて戦闘に参加させる、というまあ読んで字の如しなシステムですね。このゲームのユニークな要素でもあります(少なくとも、私は同じシステムを持つゲームを知りません)。

 詳しく説明しましょう。ゲーム中、50のお金を払って「カードダス」を購入できます。それから戦闘中にカード実体化の魔法を使うことで自分の所持するカードリストから好きなものを戦闘に参加させるわけです。この「カードダス」、実体化にはレベル制限がついたりしてうっとうしいのですが、敵として登場しているものはそのままの能力、カードでだけ登場のものには強めの能力(といってもレベル次第ですが)が設定されており、実体化さえできればかなり頼りになります。特に、闘士ケンプファーやドーベンウルフはラストダンジョンに登場する雑魚ですが、雑魚にしては異常に強く、よって第4章の中盤辺りで実体化できればその強さを遺憾なく発揮してくれます。


●もう一ひねり!

 このようになかなか面白い「カードダスの戦闘参加」ですが、欠点も目立ちます。まず、現実と違い、このゲームでは50という端金さえ惜しいようなきつい財政が待っていますので、序盤ではおいそれと購入することはできません。また、ゲームをある程度まで進めないと実体化させる手段自体が入手できません。ということは、序盤にカードダスを戦力とすることはできないということになります。それから、一度に同じカードを3枚までしか所有できない、ということも気になります。

 以上のことは、せっかく戦闘の幅を広げてくれそうな要素があるのに、それを殺してしまっているとしか思えません。どうせなら、実体化の魔法は標準装備にして、序盤からカードを戦闘に参加させられるようにすれば、低レベルのカードたちにも出番が回ってこようってもんです。さらに、敵もカードの実体化を行う(※3)ようにすれば、戦闘にも一味添えられるんではないですかね。序盤の少ない持ち金の中から無理やり予算を捻出し、現在実体化できる最高クラスのカードが当たることを祈りつつハンドルを回す、そんな現実にもありそうな光景も期待できたと思うのです。


●全体として見るとね……

 とまあ、ぱっと見がほぼ模倣でしかなく、物語も練り込み不足、個性的なシステムと成りえた要素もなんだか中途半端に終わってしまっているようなこのゲーム。せっかくのいい素材(※4)を生かせてないと言えるんでないでしょうか。もったいないの一言ですが、遊んでみればなかなかに面白く、また「稼ぐ」楽しみはたっぷり味わえます。ガンガンキャラを叩き上げて章ごとのボスを瞬殺し、自分たちの強さに酔いしれましょう。……そういえば、青銅のハニワってなんですか?



※1 後の設定

 同じくSDガンダム外伝シリーズの「武者ガンダムシリーズ」において「武者Mk.3」というキャラが定義されました。Mk.の部分が「真悪」といかにも悪そうにされてしまっています。このキャラが秘宝の武具を奪って逃げる途中落雷にあい、「ナイトガンダムストーリー」の舞台スダ・ドアカに善悪2つに分かれて転移してしまった、というのがこのガンダムたちの由来です。悪の心の方が強かったためサタンガンダムが圧倒的に強い、という設定だそうです。


※2 ウルティマ

 ウィザードリィとならぶ、ロールプレイングの本家と言える存在で、見下ろし型のマップにコマンドリスト選択式のスタイルというものです。ドラゴンクエストは戦闘などはウィザードリィ、基本的なシステム周りはこのウルティマに範を取っているそうです。


※3 敵もカードを実体化

 こちらの実体化魔法の入手時期の遅さに加え、敵がカードを実体化する、というルーチンがほぼありません。まったくないか、あるいは極めて稀だったと思います。このことが、カードダス実体化というシステムの印象をさらに薄くしていると私は思います。


※4 せっかくのいい素材

 最初は確かにドラクエをもじったような展開でしたが、第2章の「伝説の巨人」からそういった様子は影を潜め、ショートストーリーとしてはなかなかのものになっていました。モビルスーツのデザインの巧妙さと合わせて、けっこう好きだったんですが……。