フランス・食べ飲みある記

中 西 健 二



第一幕

 さて、5/17〜19と以前メールでお知らせしましたように、BourgogneとLyon 食べ飲み、ワイン購入ツアーに行って参りましたので、以下に勝手なレポート をさせて頂きます。

 5/17日は朝から天候に恵まれ、これから8時間はかかるドライブをするものに とっては幸運ということになろう。 さて、AM8:00、拙宅の前にて集いし我等”グルメ7人の侍”(なんじゃそ りゃ?)はドイツはフランクフルトから、フランスのリヨン近くのVienne (ヴィエンヌ)まで、いざ出陣!というところである。 そもそも今回の旅行のきっかけは、私と同僚のワイン好きグルメ夫妻がせっ かくフランスに近いんだから、Paul Bocuseなり、TroisgrosなりPyramideなり 一流のレストランに行って見たい!という、若輩の我々にしてみれば、いささか 背伸びの、分をわきまえない計画ではあった。それに2組の駐在員夫妻が加わり。 7人の侍となったわけである。(おお、ご婦人方まで侍になってしまった、、)
フランクフルトをアウトバーンA5で南下し、途中アルザス付近でフランスへ入り、 フォアグラ/アルザスワインの街ストラスブールを経て、ミュールーズまで南下。 ここからマスタードで有名なディジョンの南まで西南に下りるオートルートA36 をひたすらぶっ飛ばす。ディジョンに近くなるころ、Cotes du Julaの地域をかすめる 。 そういやここのワインは飲んだことがないなあ、などどおもいつつ、すぐに Cote de Nuits、Cote de Beauneなど、”王様の土地”を指を咥えながら通過。帰り には絶対寄るぞ〜!! Macon, Beaujolaisを超えると、もうLyon。あと30kmでVienne。 VienneはPaul Bocuse, Troisgrosなどを生み出したといっていい巨匠Fernand Point氏 のレストランde la Pyramideがある。
Point氏は1955年に既に他界されたが、 1989年からはPatrick Henrirouxをシェフに迎え、ホテル/レストランとしてかつての Pyramideの格を維持している。今回は初日にPyramideで宿泊、Dinnerとなる。
Lyonで道路工事による予想外の交通渋滞で一時は間に合うか?とも思われたが、なん とか無事Vienneに到着。果たして細かい地図もなく、無事にPyramideまで辿り付け るか?の心配もよそに、そこら中に案内の看板(といっても日本のようなものでは無 く、さりげない交通標識のようなもの)があって、なんとも簡単に到着。おお、これが Pyramide!! Piont氏が戦時中にも客を迎えるのにわざとひなびた土地に作ったとい うだけあって、なかなかの落ち着いた田舎町にある。

七人の侍(LA PYRAMIDE にて)

さて、チェックインを済ませ、長旅?に疲れた我々は、お飲物でも、ということで Pyramideのバーでキャフェ・タイム。コーヒーはまずまず。(注)まずまずとはまずい のでは無い。”侍”の中には食器の専門家も居り、食器を熱心にみている。当然乍ら、セー ブル である。ここで驚いたのは、手作りチョコレートをサービスしてくれるのだがその美味 しいこと、ベルギーチョコ以上のものである。数量も一人あたり3個以上もあったのだ。ウ レシ! Vienneには遅れてついたものの、Dinnerまではもうすこし時間があるので休むこととし た。 シャワーをあびて気持ちよくなったので、つい寝入ってしまった。スースー。 と、とりあえず、食事もワインもまだ登場しませんが、第一幕はここまでとさせて頂き ます。
Bon appetite!!


第二幕

さて、スヤスヤと切気持ちよく寝入ってしまった私は、起きたとたんに、あれっ? ここ、どこや?と旅行に来ているのも忘れる程、熟睡していた。 そろそろ、時間ですよ!なので、ロビーに降りる。
『7人の侍』が揃ったところで、給仕スタッフが、アペリティーフの注文を取りに 来た。私はブルゴーニュのクレマン(発泡性白ワイン、シャンパンに似ているが、 シャンパンとはシャンパーニュ地方のものだけを指す)とバナナリキュール?を 割ったものを頼んだ。アミューズグールは3種で、ラタトゥイユの冷製、にんにく 風味のフロマージュ・ブラン、鰯のマリネ。どれもとてもおいしく、これからの 料理を期待させてくれる。
もっと欲しくなるが、このあとの食事の事を考えて、我慢、我慢。 見開きA2サイズはあろうかと思われるお品書き(当然フランス語のみ)を食い入 る様に見ながら、一応?給仕氏に英語で解釈を添えてもらう。 料理はa la carteはやめて、ムニュ・セゾン(FF430)とムニュ・ピラ ミッド(FF530)から、旬という言葉に弱い私はムニュ・セゾンを選択。
続いてソムリエ氏登場。たぶん在庫のすべては網羅してないであろうワインリストを 見ながら、ソムリエ氏と色々相談の上、以下の3本とした。

a) Pouilly-Fuisse, Ch. Fuisse 1994 (FF290)
b) Morgon, "cote du py" Dom. Princess Lieven1993 (FF150)
c) Clos de vougeot, meo camuzet1990 (FF740)

あとから思うと、ここでは存分な在庫があるというシャトー・グリエも選択肢のひとつ だったのだ。失念していただけに残念。
さて、ムニュ・セゾンの内容は。

1) グリーンアスパラとスモークサーモンのムース、ソバ製ブリニとハーブ無酵母パン  の4種スパイスと柑橘類のソースがけ。
2) 白身魚(名前失念)のタルトアーティショークのプチ・バトーのせ、バルサミコと  オマールエキスのソース。
3) ブレス鶏のバロティーヌ、黒オリーブ詰め。じゃがいものクロスティアン、トマト  よせ、ハッカソース。
4) チーズ各種。
5) プチ・ケーキ各種(種類も量もたくさん)。
6) カシスのシャーベット。
7) 特製マシュマロ4種(これはなんなんだ??)
味は、そうですね。どれも素材の味が全面に押し出してくることはないが、全てにお いて他の素材と見事に調和して、優しく、奥が深い味わい。盛りつけも上品で美しく、 そういった意味でも同行の女性陣には大変受けが良かった。 ここで素晴しいとおもったのはパンのサービスで、なんと10種類以上のパンが サービスされるのだ。ごまパン、トマトパン、ナッツパン、などなど、そのため、 厨房には専門のブーランジェが一人いる。

ワインは、まず、
a) のプイイ・ヒュイッセ、Chateau Fuisseは同AOCの中でも 高級な部類に入るのと、94年は良い出来ということも幸いしてか、これなら、 コート・ドールの白とも対抗できる、とは言いすぎか。
色は緑がかった薄い黄色、香りも大変ナッツィーで、奥行きのある味わい。アフタ は短く、さっぱりとしている。
b) のモルゴンは、確かにボジョレの中では素晴しいものの一つではあるが、明らか に力不足。香りは若さをもっているが、味に奥行きがなく、アフタもない。残念。
私が最も印象に残っているのはブレス鶏と
c) のClos de vougeotの相性の良さで しょうか?このワインは、もうテイスティングの時にイッてしまった。 色は黒みのあるガーネット。香りは複雑、果実の熟、スパイス。 口の中で広がる、果実味あふれるまろやかな味はなんともいえない。シアワセ〜〜。
しかし、このムニュでFF430=約¥9,500(当然ワインは別)は絶対に得!!
店の雰囲気も全然威圧的でなく(最近改装したのかモダンーシックな内装)スタッフ も愛想笑いではない笑顔で対応してくれて、気後れすることはなかった。

翌朝は庭を散歩してたら、シェフのM. Patrick Henrirouxがこちらに気付いてくれて、 現在ピラミッドで修行している日本人の料理人に厨房を案内させてくれた。 思ったよりは小さな厨房に効率良く設備が配置され、お昼の仕込に皆忙しそう。 で、なんとこの決して広くない空間に、12人の料理人、3人のパティシエ、1人の ブーランジェがいるというのだからすごい。そのうち2人の料理人は日本人。
ワインカーブも見せてもらえるはずが、丁度業者がワインの納入に来て、残念乍ら 見せてもらえなかった。これは遠回りな断わりであろうか? というのは、以前ゲストにカーブ見学をさせたところ、何を誤ってか、100万円は するであろうロマネ・コンティーを見事に割ったそうでそれからあまりカーブ見学 はさせてくれないらしい。
充分に楽しめたPyramideでした。


第三幕

さて、翌日は昼をピザで軽く済ませ、はやる心を抑えつつ、夕方になるのを 待ち、ソーヌ川沿いにどんどん上っていき、はいはい到着しましたPaul Bocuse。
予約の19:30より少し早くついたので、Paul Bocuseの建物の有名なハデハデ ペイントをみていましたら、壁にフェルナン・ポワンや辻 静雄さんなどが 描かれてるんですね。なんか、ここへ来て辻さんにお目にかかれるとは光栄で、 日本人としていい気分でした。
南国風のドアボーイ(となんかの本に書いてあったが)に案内されて中へ、 当日一番目の客ということもあり、メーテル・ドテル以下スタッフの視線が 集中。なんか緊張であります。
キア・ロワイアルなどいただきながらアミューズの冷製トマトスープを楽しむ。 さて、料理は、やはりムニュですな、とこれまた旬のムニュ、ムニュ・プラン タン(FF710)に決定。そ、そこへ、探偵エルキュール・ポワロを思わせる名ソムリエ のYann Eon氏が登場し、ワインの選定となる。

a) Saint-Veran(Paul Bocuseオリジナル)1995FF200
b) Vosne Romanee Malconsort Frantin-Bichot 1991FF550
c) StEmillion Chateau Canon demi bouteille 1986FF265

でいきましょう。

ムニュ・プランタンの内容は。

1) 黒トリュフのスープパイ包み(1975年エリゼ宮午餐会の試の創作)
2) オマール海老のフリカッセ、ソース・アメリケーヌ
3) マール・ド・ボジョレーのグラニテ
4) ブレス鶏の膀胱包み、フルレットソース
5) チーズ各種
6) クレームブリュレ
7) デザート各種
味の全体的な印象はピラミッドとは対象に素材の味を前に思いきり出してあり、 トリュフにしても(秋ならもっと凄いか?)オマールにしても鶏にしても 素材の力強さを感じました。一番印象強かったのは、お目当てでもあった 黒トリュフのスープですね。出しの良く効いたスープにワカメスープのワカメの 様に入ったトリュフは圧巻。トリュフ自体の香りは少々弱く、筍に食べたらさら に素晴しいでしょう。同席の友人はパイをスープに入れすぎてもはやスープでは無 くなってしまってました。
オマールのソース・アメリケーヌも味がしっかりしていて、オマールのプリプリ、 コリコリの身と素晴しいコンビネーションでした。

ワインは、
a) サン・ベランは初めて飲むワイン。色は薄黄金色。ブーケは なんとも複雑で、わら、フルーツ、土、、??? 味はちょっと酸が強いが、時間がたつと、まろやかさもでてきた。
b) のボーヌ・ロマネは、まだちょっと若く、色は明るめのバーガンディ。 香りは、土、チョコレート、深い果実臭、きのこ。開栓後1時間位ではまだ 閉じていたが、30分くらいして、一気に開いてきた。深みのあるコクと 果実味あふれるワイン。力強さはいまひとつだが、やわらかく上品。
c) のカノンはサンテミリオンの秀作の一つですね。1986は年もいいし、 デキャンタにより酸も沢山含み、10年の眠りから覚めたカノンは充分に 実力発揮。色は黒みを帯びたルビー。香りは樽、しょうゆ?、獣香。 味は、充分なボディー、深く、果実と酸のバランスが素晴しい。 これはシェーブルチーズとも素晴しいマッチング。

で、ブレス鶏に入るときにハプニングがありました。ちょうどテーブルの横で 膀胱に包まれたブレズ鶏を取り分けてくれてくれていたんですが、どの部分が いい?というので、日本語を教えてあげようと、『アシー』とか、『ムネー』 とか言ってよろこんでたのですが、サービス係りもよろこんで、皿をサーブ する時に『ムネー』と言おうと頭の中が一杯で(と想像する)皿を見事に おとしてしまい、友人のジャケットはフルレットソースがけになってしまった。 一瞬、辺りは凍ってました。でも流石?三つ星、あわてる事無く、さほど謝る ことなく、ジャケットお預かりします。とジャケットをもっていっていきました。 そんなこんなでちょっと冷めたブレス鶏も、やさいいフルレットソースで美味しく、 被害を受けたジャケットもさぞ、満足だったでしょう??

Paul Bocuse 氏と
と、たべていると、友人が私の背後をジっと見ているので何か?と振り返れば ムッシュ ポール・ボキューズではないか、最近はあまり店には来ていないと聞 いていたので、しばらく目が点になった。先程のことを気にしてくれていて、 一回りテーブルまわりを終えた後、こちらのテーブルに寄って、すまなかったねえ。 と声をかけてくれて、頼んでもいないのに(^_^;)一人づつ一緒に写真をとって くれました。いやいや、ソースのかかった友人には申し訳ないが、それが幸い したのだった。
最後には本日のメニューと、Paul Bocuseのポストカードセットも人数分頂いて 結構なディナーでした。

当日はスイスから観光バスで40人位の団体さんもみえてて、結構な賑いでした。 レストランから出るときに、団体のスイス人曰く、『味も最高だが、量も凄かった。 お腹が苦しい。』えっ?そうでもなかったけどなあ。きっとチーズとケーキを おかわり自由ということで、目一杯食べたのではなかろうか?


第四幕

実は19日(月)を買い出しに決めていたものの、アポをとらなかっ たのとフランスが祝日で閉めているワイナリが多かった為、あまり よい買い物はできなかった。
LYONからFrankfurtに帰るにはちょうどBourgogneを北上していくので Beaujolais>>Macon>>Cote de nuits>>Cote de Beauneと通過すること になる、もうじっとしていられない様なルートである。

まず、寄ったのがPouilly-Fuisse。LE GUIDE HACHETTE DES VINS にて評価の高かったDom de la Chapelle(Pascal Rollet)へ。

Dom de la Chapelle(Pascal Rollet)にて

1993のVieilles vignesが目当てであったが1995まで全て完売で 1996の瓶詰したてのものしかなく、まあ、4年は寝かしてね。 とRolletさんに言われて、貯蔵用に、

1996 Macon Solutre Pouilly(AC Macon villages)FF33
1996 Pouilly-Fuisse FF53
を購入。瓶詰1カ月なので評価は難しいですが、Macon Villagesは 花のブーケが強く味はまだ閉まっている感じ。ボディもあまり感じず、 サラリとしている。Pouilly-Fuisseは対象的にブーケはあまり感じないが、 すでに力強さを感じさせるが、奥行きとのバランスがまだとれていない。 色は緑がかった薄金色。Macon-Vil.は更に薄い。 氏曰く、96は近年の中でも傑作とのこと、楽しみである。

その後、一気にCote de Nuisまで行き、日本でも人気のHubert Lignier さんのところに、と思い電話するも、お出かけとのことでした。 まあ折角だからとMorey-St-Denisまで行きLignierさんの近所を物色。 10軒ほど隣のBernard RAPHET et Filleでデギュスタシオンをしてま したので、Morey-St-Denis,Gevery-Chambertin,Clos-Vougeotを試し、 以下を購入。

1990 Clos-Vougeot Bernard RAPHET et FilleFF180
1994 Clos de Vougeot Bernard RAPHET et FilleFF140
結構お買い得な値段なのでどうか?と思ったが、双方共、柔らかいが 奥行きを感じさせるものがあり、更なるエージングでの実力発揮に期待。
ちょっと南にもどってVosne-Romaneeへ。ここにはワインの王様、Romanee -Contiの畑がある、ブルゴーニュの聖地。なぜかそこへ観光バスで、何人 かわからないけど東洋人の団体がやってきましてこの畑の前で記念撮影し てました。ワイン関係の団体かな?
ここでは、Dom. Francoise Gerbetで
1993 Vosne-Romanee "Aux Reas" Dom. Francoise GerbetFF98
1993 Vosne-Romanee Dom. Francoise Gerbet FF84
を購入。もはや時間もあまりなく、デギュスタシオンもそこそこに買うの が精いっぱいであった。
Bourgogneのワイナリへは今回が最初の訪問だったので地理的な不安もあったが、 なんとか位置関係は把握できたので、今度行くときはもっと計画的に飲みまくって 買いまくってこようと思う。

以上、ブルゴーニュ、グルメ7人の侍の食べある記を終わるわけですが、 このツアーを通じて、またまたワインに深くハマって行く自分をみていると、 帰国してからどうなることかと、一抹の不安がよぎる、、、 お読みいただきありがとうございました。


番外編

ちょっと、番外編で、ポール・ボキューズでもらってきた、 ソムリエのEon,Euvard両氏のおすすめワインをご披露しましょう。 これは、ワインカルテではなく、お品書きに沿えられていた特別おすすめ ワイン一覧です。どんなものが、幾ら位で?という参考になるでしょう。

Yann Eon et John Euvard sommeliers ont selectionne pour vous :

VINS DE LA CHAPAGNE

Laurent-Perrier-Brut FF320
Mumm Cordon Rouge-Brut FF320
1992 Moet & Chandon "Brut Imperial" FF360
1983 Philipponnat "Cuvee Clos des Goisses" - Mareuil sur AyFF670

VING BLANCS

1995 Condrieu "La Doriane" -E.Guigal-Cotes-du-RhoneFF530
1988 Savennieres "Clos de la Coulee de Serrant" Mme. A. Joly-LoireFF600
1988 Pessac Leognan-Chateau de Fieuzal-BordeauxFF495

VINS ROUGES

1991 Cote-Rotie "Cotes Brune et Blonde" -E.Guigal-Cotes-du-RhoneFF410
1979 Hermitage "La Chapelle"-Paul Jaboulet Aine-Cotes-du-RhoneFF620
1988 Charmes Chambertin -A. Rousseau-BourgogneFF490
1986 Medoc-Chateau La Gorre-Cru Bourgeois-BordeauxFF250
1984 Pessac-Leognan-Chateau Haut-Brion-BordeauxFF700

VINS ROSES

1995 Bandol "Civee Coeur de Grain" Dom. Ott-ProvenceFF290