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■2020年3月30日
はじめに |
2020年3月25日付け中日新聞の夕刊「紙つぶて」で、名古屋大教授の渡辺誠一郎先生が、コロナウィルス感染拡大について、わかりやすい解説をしておられました。 一方、自粛疲れからか外出する人が増えた首都圏では患者数が急増し、週末には、外出自粛を訴える都知事の発表もありました。 アメリカでも、フロリダに集まった大学生たちは、取材に対して全く脳天気な「俺たちは若いから」とか、「平気」とかのコメントをしていて、若者を中心に、本当の怖さをわかっていないのでは?と感じられます。 そこで、かんたんな数学モデルを考えて、それを材料に考えてみようと思います。また、統計の数字の見方の参考にもなると思いますので、それについても考えてみましょう。 |
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[1]かんたんな数学モデル |
まず、感染者が一人いるとします。 この一人から、他の一人に感染する確率をpとします。 また、一人の人が、1日にm人の人と接触するとします。 接触人数は、多種多様ですが、簡単に考えるため、たくさんの人の平均がm人だと思ってください。 これで、1日のうちにm人と接触し、一人あたりpの確率で感染させるので、1日では、p×m人の人が感染することになります。 2日目には、そのpm人の人が、それぞれpm人に感染させるので、2日目の終わりには、pm×pm人が感染します。 図に表しましたので、参考にしてください。 すると、感染者数は、 1日目1人 2日目pm人 3日目(pm)×(pm) 4日目(pm)×(pm)×(pm) 次の式では、(pm)3と3乗を表記します …・… となります。 感染者の合計は、 1+pm+(pm)2+(pm)3+…・ ・・・・・・・・・・(1) となっていきます。 図の場合には、1人から2人に感染するような極端な例になっていますが、これだと、 1+2+4+8+16+32+…・・・・・・・・・・(2) となります。10日後には、1024人に感染が広がることになります。つまり、10日で1000倍になると言うことです。これが、渡辺先生が、「指数関数の恐怖」と言い表されていた内容です。 「紙つぶて」の中では、「3日で2倍になる」と書かれていましたので、上の考え方をすると、30日で1000倍になるわけで、かなり短期間に桁が増えていくことに変わりはありません。 また、上の数字で、日々の増加数を前日と比べることで、ちょうど、pmの値がわかることになります。 その数字が1より大きいと、上のような指数関数的な増加となり、1の時には、コンスタントな増加、1より小さいと、次第に頭打ちになっていくかも?と予想ができます。 では、このような増加を止めるには、どうすればよいでしょうか? 上の式の中で、mかpを減らせば、増加を緩やかにすることができます。 mを減らすと言うことは、「一人の人が接触する人数を減らす」ことになり、これが、「外出を自粛してください」と言うことにつながっています。 また、pを減らすと言うことは、手洗いやうがいの励行で、感染防止になると言うことです。 さらに、ワクチンができると、感染した人も減らせることになり、コロナウィルスを克服することになるでしょう。 もう少し言えば、前日と同じ感染者数が出ていては、感染増加に歯止めがかかっていないことになりますし、どのようにすれば、pmがはっきりと1より小さくできるのでしょう? それを考えると、残念ながら、渡辺先生の最後の言葉、「防御を続けながら、ワクチンができるまで時間を稼ぐしかない。ウィルスとの戦いは当面は続く」を、私たちは、自分の胸にしっかり刻み込む必要があると思います。 ワクチンができるまで、半年か1年は少なくともかかると言われる現在、私たちは、ここ半月ほどの我慢ではなく、半年か1年を一つの目安と考えて、正しく恐れて、緩むことなく、ウィルスとの長い戦いをあまり思い詰めず、続けていきましょう。 |
[2]統計数字の見方 | ||
小学校から高校まで、統計について学んでいますが、実際に数字を見たときに、それを、うまく活用しているでしょうか? 統計の数字は、数字という普遍的なものを使っているだけに、いつも、全く正しいと思っていないでしょうか? 次の図に、毎日の感染者数、累積した感染者数、退院者数累積、治療中の人のグラフを示しました。 感染者数累積は、(1)式の合計に当たります。 感染者数の累積から退院者数累積を引いたものが、治療中の人ということになります。 それらを踏まえて、このデータから読み取れることを列挙してみます。 (a)感染者数は、増減を繰り返しながら、次第に増加しています。 (b)しかも、その増え方は、最近ほど大きく、このままで上昇していくと、「感染爆発」(「オーバーシュート」とも呼ばれています)につながってしまいます。 (c)退院する人の数も増えてはいますが、差し引きした治療中の人も増加しており、医療現場の容量を超える事態がおきると、とても怖いです。 (d)感染者の累積は3月29日には約1700人、3月18日には826人でしたから、約2倍になるのに、12日かかっていることになります。826人の約半分だった日を見てみると、3月8日が385人でしたから、やはり11日で約2倍になっています。 (e)この割合でいくと、次の11日から12日で、さらに2倍になるかも?と予測できます。 こう見てきますと、油断していけないだけでなく、とても危うい状態にあるのかも?と思えてきます。 志村けんさんが亡くなって、身近に感じた人が多かったようですが、同じ事態が、自分の身内に起こっても不思議ではないでしょう。 今の状態を悪化させないためには、[1]で述べたように、mの接触人数を減らすこと、pを減らすために手洗いうがいを繰り返すことが、よほど大切だと思います。 mを減らすために、三つの「密」を避けることも効果があります。3月30日の都知事の会見にもありましたが、若い世代では、カラオケやライブハウスへ行くのは、かなり危ないです。 その例として、京都産業大の学生たちも、ヨーロッパ旅行の後の飲み会で十数人の感染がありました。これは、クラスターと呼ばれる集団感染が起きたと思われます。 日々の増加数の中に占める集団感染の数が増えてくると、さらに深刻な状況になります。 このように、ただ、表面の数字だけを見るだけでなく、その数字の出所、性質、その数字の中の内訳などについても考えていくと、見ている事柄の色々な面についてわかってきます。 最後に、[1]の繰り返しになりますが、この状態を悪化させないために、日々の数字に一喜一憂せず、一方では、あまり力を入れすぎて早めに息切れすることのないように、コロナウィルスとの長い戦いを続けなくてはいけません。 遠いところでの出来事と考えたり、無関心でいてはならないのです。発表される数字を見ながら、事態は自分または自分の身内の出来事になり得るのだと、肝に銘じてください。 グラフの数値: 感染者・感染者の累積は labcoat https://labcoat.jp/2019-novel-coronavirus-data/ 退院者数累積は東洋経済online https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/ |
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