2021.2.18
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トランジスタでCPUをつくろう!
トランジスタで8080をつくってしまおうというまさにびっくり仰天、狂気のプロジェクトです!
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見事にできましたら、もちろんTK−80モニタを乗せて、それからBASIC、CP/Mを走らせましょう!
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[第300回]



●トランジスタロジック回路組立キットTR00(3)

[第297回][第299回]はテーマ違いですけれどホームページの画像表示について書きました。
http:からhttps:への画像のお引越しは準備に取り掛かったところです。
引越しが終るまで少し日数がかかりそうです。
不便をおかけして申し訳ありませんがしばらくご辛抱いただきますようお願いいたします。

今回は久し振りの本題復帰です。
[第296回]からの続きになります。
そのときは一件落着のつもりだったのですが、まだなんとなくすっきりしないものが残っています。
そもそもの始まりは、TR00の電流を測ったらまさかの19mAも流れていた、ということからでした。
その後にあれこれ試して測定して計算して、19mAも流れたのは入力が浮き上がっていたためトランジスタの出力が微妙にショートしたかららしい、という結論になりました。
それが[第296回]の結論でした。
しかしそれは入力をVccまたはGNDにすべてつないだら電流が大幅に減ったということから推論して、入力をオープンの状態にしたから19mAも流れたのだろうという、まあ当たり前の結論だったのですが。
まだ本心では納得できてないのですよねえ。
そのココロは。
いくら出力ショートしたってこの回路で19mAも流れるはずはない。
ちょっと流れすぎだろうよ。
というところにありました。

今回は入力が中間電位に近くなるために出力ショートぎみになっていると本当に19mAも流れるのだろうか、という疑問についての検証です。
ちょっとしつこいようですけれどこういうことは徹底的にやっておいたほうが後々のためになると思います。
何事も「たぶん」「だろう」のまま進んではいけませぬ。

あ。
そうでした。
ついでに赤色LEDの電流も確認しました。
[第296回]では「多分青色LEDと同じだろう」ということで済ませていました。
青色LEDの場合はアノード側の電圧が予想していたよりも高めの2.52Vでした。
電流制限抵抗22KΩのVcc側の電圧は3.67Vでしたからそこを流れる電流は(3.67−2.52)/22=0.05mAという驚きの結果になりました。
わずか0.05mAで十分光るのですから驚きです。
それで。
赤色LEDについて測ってみましたところ、アノードの電圧は1.74Vでした。
そうですよね。
LEDは普通のシリコンダイオードを2個直列したぐらいというように覚えていましたから、その電圧は納得できます。
このとき電流制限抵抗22KΩのVcc側の電圧は4.69Vでした。
するとそこを流れる電流は(4.69−1.74)/22=0.13mAになります。
青色LEDに比べれば大きいとはいうものの、こちらもとにかくコンマ以下の電流ですから、最近のLEDの高輝度なことにはとにかく素直に感心いたします。

さて本題に戻ります。
下は[第236回]でお見せしたTR00の1ゲート分の回路図です。
[第296回]でもお見せしましたが説明の助けになると思いますので再掲します。


今回は入力をオープンのままにすると基板全体で19mA流れるというところからスタートして、まずはその状態のとき1ゲート回路に流れる電流を推測してみました。
TR00回路基板にはNAND回路が4回路あります。
以下の説明ではその4回路の入力と出力に番号をつけて、1A、1B、1X…4A、4B、4Xとします。
以下が測定の結果です。
1)全ての入力がオープンのときの全体の電流値は19.1mAでした。
2)1AのみをGNDにしたときの全体の電流値は16.1mAでした。
3)1Aと2AをGNDにしたときの全体の電流値は12.6mAでした。
4)1Aと2Aと3AをGNDにしたときの全体の電流値は8.4mAでした。
5)1Aと2Aと3Aと4AをGNDにしたときの全体の電流値は3.2mAでした。

1)と2)の差は3.0mA、2)と3)との差は3.5mA、3)と4)との差は4.2mA、4)と5)との差は5.2mAです。
うーん。
これじゃあちょっとわかりませんねえ。
入力AかBをGNDにすることでその回路の出力はOFFになりますから出力ショートではなくなります。
その分の電流は減りますが入力をGNDにしたためプルアップ抵抗を流れる電流は増加します。
しかしそれだけではないようです。
そういうことを考慮しても差は一定のはずです。
ところが実際には入力オープンの回路が減るにしたがって電流の減少幅が大きくなっています。
これはちょっと謎なのですがたまたま素子にばらつきがあるのか、それとも相互に何か影響するところが出てくるのかも知れません。

別の方法で測定をしてみました。
今度は1回路のみを入力オープンにしてみました。
上のテストの場合4)は回路4のみが入力オープンです。
そのときの電流値は8.4mAでした。
6)回路3のみを入力オープンにしたときの全体の電流値は8.1mAでした。
7)回路2のみを入力オープンにしたときの全体の電流値は8.0mAでした。
8)回路1のみを入力オープンにしたときの全体の電流値は7.9mAでした。

今回は大体同じ数値が得られましたがやはり回路1→回路4の順に電流値が大きくなる傾向があります。
極端な差はありませんからたまたまそういうばらつきが出たと考えてもよいと思います。
さてそれで。
いずれか1回路を入力オープンにしたときに全体の電流値は約8mAでした。
全部を入力オープンではなくしたときの全体の電流値は約3mAでした。
するとちょっとアバウトですけれど1つの回路を入力オープンにしたときに出力ショートによって流れる電流は約5mAと推測できます。
これは4回路全部が入力オープンのときの全体の電流量の19mAと符合します。
やはり1回路で5mAも流れることが確認できてしまいました。
回路図を見たってそんなに流れるとはとても思えないのですけれどねえ。
どうにも気持ちが悪いのでさらに追求をしてみることにしました。

[第296回]では2SC1815のベース電流を計算で求めました。
しかし2SA1015については計算しませんでした。
今回の出力ショート問題ではプルアップ抵抗によって2SC1815の側はもともと完全に導通状態です。
そこに2SA1015が中途半端にONになることで5mA流れるわけですから、結局その5mAは2SA1015のエミッタコレクタ間の電流だと考えられます。
入力電圧は3.665Vで2SA1015のエミッタ電圧は4.69V(=Vcc)ですからその差はわずか1Vほどです([第296回]参照)。
シリコントランジスタはエミッタベース間が約0.8Vを越えないとエミッタコレクタ間に電流は流れません。
そこに51KΩのベース抵抗が直列に入っているわけですからそんな状態でエミッタコレクタ間に電流が流れるといってもたかが知れているではないか、と当初は考えたわけです。
どう考えたって5mAは大きすぎる、でしょう。
ま、しかし、まずはそこのところを確かめてみることにしました。
本当は実際の回路で2SA1015のコレクタと2SC1815のコレクタの間をカットしてそこに電流計を挿入すればわかることですけれど、それは最後の手段です。
そういうシロートっぽいことはやりたくありませぬ。

そこでまずは2SA1015のベース抵抗51KΩを流れる電流を求めてみることにしました。
2SA1015(T1)のベースの電圧を測りました。

4.01Vです。
エミッタ電圧は4.69V(=Vcc)ですからエミッタベース間電圧は0.68Vです。
ベース抵抗が51KΩと大きいためベース電流はわずかしか流れませんからこの程度の値かなと納得できます。
それで、この4.01Vが51KΩのベース側の電圧値で抵抗の反対側の値は入力端子の電圧の3.665Vですから51KΩの両端の電圧差は4.01−3.665=0.345Vになります。
そこを流れる電流は0.345/51≒0.0068mAです。
うわあ。
マイクロアンペアじゃありませんか。
すると増幅率(hFE)は?
上のほうで求めた5mAという値はT1とT3のコレクタ電流を合算したものですから片方の2SA1015のコレクタ電流は2.5mAです。
するとhFEは2.5/0.0068≒367(!)。
えええ?
367倍?
そんなにあるのお?
私はせいぜい100〜150ぐらいと思っていました。
これは確認する必要があります。

下は2SA1015のデータシートです。

[出典]Toshiba 2SA1015 Datasheet

hFEを見ると、おお70〜400になっていますね。
Note:にはGR:200〜400とあります。
ひょっとして。
今使っている2SA1015と2SC1815です。

左がA1015で右がC1815です。
東芝製ではありませんが「GR」の文字があります。

そういうことだったのでした。
hFEが200〜400ということならば、わずか数μAのベース電流で2.5mAのコレクタ電流が流れてもおかしくはない、ということになります。
いやあ。
そんなにすごい増幅率とは思ってもみませんでした。
あ。
これはたまたま仕入れたものがそうだったというだけでそんなにすごい増幅率は要りません。
ONのときにせいぜい10mAも流せればよいので、そうするとhFEが100ならベース電流は0.1mAあれば足ります。
ベース抵抗が51KΩでVcc=5Vならちょうどそのくらいです。
そういうことからすればGRでなくてもYでもひょっとするとOランク品でもよいかと思います。

それはともかくとして、これでやっと腑に落ちました。
おお。
そうでした。
hFEについてはもっとダイレクトに測定する方法がありました。
T1だけをアクティブにしておいて出力ショートさせてみればよかったのでした。

今回の最初のところのテストで5)では3.2mA流れました。
その状態でT1のみをアクティブにするためにさらに1BをVccに接続します。
これでT3は結果に影響しなくなります。
また1AがGNDなのでT2、T4にも電流は流れません。
その状態で出力1XをGNDにショートさせて1XとGNDの間を流れる電流を測ったところ26mAでした。
おお。結構流れますねえ。
またそのときのT1のベースの電圧は3.97Vでした。
するとベース抵抗を流れる電流は3.97/51≒0.0778mAになります。
1桁数値が大きくなりました。
それからhFEを求めると26/0.0778≒334になります。
なるほど。
この方法でもデータシート通りの結果が得られました。
あらためて納得です。

トランジスタでCPUをつくろう![第300回]
2021.2.18upload

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