2015.4.20
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トランジスタでCPUをつくろう!
トランジスタで8080をつくってしまおうというまさにびっくり仰天、狂気のプロジェクトです!
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見事にできましたら、もちろんTK−80モニタを乗せて、それからBASIC、CP/Mを走らせましょう!
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[第43回]


●犯人は誰だ?

この道に入ってからもう30年以上が経ってしまいました。
その間ずっと忙しい忙しいで過ぎてしまいましたので、ろくに読書もする暇さえありませんでしたが、若いころは好んでSFやら推理小説やらを読んでおりました。
ことに推理小説は私は洋物が大好きでエラリークイーンから始まって、アガサクリスティに嵌まって(はまって)しまいました。
クリスティはさすがにミステリーの女王と呼ばれるだけのことはあって、とにかく最後までいかないことは犯人がわかりません。
大抵最後には衝撃の結末が待っております。

おお、おお、そういうことだったか。
やられたな、こいつは。

で、もう一度、最初から読み直していきますと、「おお、こんなところに伏線が」なんて気が付いたりいたします。
2度読んでも3度読んでもますますおいしいというのが本格推理小説の醍醐味であろうかと思います。
大体において全然怪しくなくて最初から捜査の対象にされていないような人物が意外な犯人だったりいたします。

さてこのところの推理物といいますか怪奇ホラー物と申しましょうか、その主人公はもちろんかくいう私であります。
その役どころは残念ながらホームズではなくてわれらがワトソン博士であります(私はドクターでもありませんが)。
ああ。
もちろん私は最後の結末までたどりついておりますので、今回の意外な結末もわかっております。

しかしそこに至る途中では、なにしろワトソン博士でありますから、カフェで犯人が隣の席でお茶を飲んでおりましてもまったくそれに気が付かないという体たらくでありました。
のみならず、次から次へとあらわれる情報に振り回されて、物事を筋道立てて考えるという科学の基本をつい忘れてしまって、パニック直前になってしまったりしておりました。

前回はこういう写真をお見せしました。

バラックでBS250と2N7000をつないで作ったNAND回路の出力信号です。
で。
あれ?
この波形は2SA1015のとき([第38回])と同じでは?
と思ったのですが、その「あれ?」にはもう少し別の気持ちが入っておりました。

そもそもBS250を単体でテストしようなどと思いついたのは、その前にBS250を使ったオープンドレイン回路でこういう出力を見てしまったからでした([第40回])。

このときこういう波形ではなくて、上でお見せした[第38回]と同じ出力波形でありましたならば、あるいはそこで納得してしまって、ついに意外な結末は見ることなく終わってしまったかもしれません。
なんとなく運命のいたずらとでもいったような、ちょいとそんな何かにからかわれているような気がして、それで「あれっ?」と思ったのでありました。

振り向いたら誰もいなくて、ただ風が…。

いやあ。
そのように考えますと、ちょいと大げさですが、人生はドラマやなあ、という思いについ駆られてしまいます。

しかしそのときの私はもちろんそんな筋立てなど知る由もありませんから、もう何が何だかわからずに、パニックパニックでありました。
前回書きましたように、先に作ったジャノ目基板のBS250回路を試すと上の写真と同じ出力波形になります。
それでまたバラックのBS250回路で試しますと、もうひとつ上の2SA1015のときと同じ出力になってしまいます。

もう目が血走っております。
むむ。
さてはBS250が、こっ、壊れたかっ。
おお、BS250などいくらでもあるぞぉ。
こ、こうなったら、こいつの首をちょん切って、新しいやつとすげかえてくれるわ。
もう血まみれのホラーであります。

ニッパーを握り締めてあわや流血の惨事になろうというところでありましたが、そこをぐっとこらえまして、まま、落ち着いて。
首を切るのはもう少し、しつこく試してからでもよろしかろうではないか?

で。
しばらくジャノ目基板で試して、それからバラックのほうを試して、というのを繰り返していましたら。

あっ。
出たっ。
ついに。
バラックのほうの回路でも、ジャノ目基板と同じ出力が出現しました!

BS250は壊れてなどいなかったのでした。

そして、今またまた思うのでありますが。
たまたま今回に限ってBS250をバラックで組んで試してみたために、ここまでたどりついたように思います。
おそらくジャノ目基板でだけ試していましたら、同じ回路のはずなのに異なる2つの出力波形があるなどというおかしな現象には出会うことがなかったかもしれません。
そしてそうならば今回の結末にも至らなかったかもしれません。
人生はそういう幾重にも重なった偶然の上に築かれていくものなのかもしれません。

こんなバラックの回路だからこそ。

異なる2つの出力波形に出会ってしまったというその意味は?

次回に続きます。

トランジスタでCPUをつくろう![第43回]
2015.4.20upload

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