展覧会主催者,財団の返答
『馬場・児玉コレクションにみる北の民アイヌの世界』展開催に関する
財団としての考え方について

new.gif(行方不明の盗掘品・北大にて発見さる!!)児玉教授の『業績』に関する新聞記事・雑誌記事


拝復 残暑の候,ますますご清祥のこととお喜び申し上げます.

日頃,当財団の事業に格別のご理解を賜り厚くお礼申し上げます.

9月10日に承りましたお便りにつきましてお返事申し上げます.

当財団は,アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り,併せて我が国の多様な文化の一層の発展に寄与することを目的として,アイヌ文化の振興やアイヌの伝統等に関する知識の普及・啓発を図るための施策を推進してきているところであります.
アイヌ工芸品に係る展覧会事業は,国民に広くアイヌ文化を理解していただく機会を提供し,アイヌ文化の普及・啓発を図るとともに,展示資料を通してアイヌの人達の伝承意欲の向上に資するため,平成9年度から全国各地で実施しております.
今回の特別展『馬場・児玉コレクションにみる北の民アイヌの世界』展の開催については,当財団内に設置しているアイヌの関係者を含む事業運営委員会において検討の上,学術的に大変貴重な馬場・児玉コレクションによる展覧会を行なうこととし,さらにアイヌ関係者や有識者で構成する評議員会,理事会の承認を得て開催することとしたものであります.

お便りで御指摘のあるとおり,児玉教授が,北海道大学医学部在任中に日本学術振興会の第8小委員会(アイヌの医学的研究)の委員に就任し,学術調査として行われたアイヌ民族墳墓の発掘調査に中心的な役割を担った事実は承知しております.
児玉教授がアイヌの人骨調査を行う以前から,国内外の研究者により人骨調査が行われており,当時の社会的な状況の中で児玉教授についても医学的・人類学的見地から発掘調査を行ったものと認識しております.
児玉教授が私財を投じて収集したアイヌ民族資料は,民族学的な価値が高く,アイヌ民族文化を調査研究する上で貴重な存在となっており,昭和45年児玉氏の没後,遺族は生前児玉氏が強く望んでおられた『収集資料の活用』を実現するため,多数のアイヌ民族資料を平成10年に市立函館博物館及びアイヌ民族博物館へそれぞれ寄贈を行っております.

両館では,『児玉コレクション』を広く一般に公開し,多くの人々にアイヌ民族の優れた文化等を理解していただく一助として,また,アイヌ文化を研究,伝承するうえでも貴重な資料として研究者のみならずアイヌ民族の文化伝承者,地域実践者の方々にもひろく活用されていると聞いております.

今回の展覧会は,アイヌ文化に馴染みの少ない中国地方や中部地方での開催ということから,アイヌの世界観を含めたアイヌ文化全般について理解していただくため,信仰・世界観,衣文化,食文化,住居,生業をはじめ,和人も含めた周辺諸民族との交流などについても広く紹介することにしております.
そのため,アイヌ文化全般を網羅する馬場コレクション及び児玉コレクションを出展資料として選定し,『馬場・児玉コレクションにみる北の民アイヌの世界』と題して開催したものであり,お便りにあります児玉教授と人骨問題の関連やコレクションの成立の背景などを説明するのが本展の目的ではないことを御理解願えれば幸いです.
今回の展覧会により多くの方々にアイヌ文化について理解を深めていただけるものと考えている次第です.

敬具

平成12年9月13日
財団法人 アイヌ文化振興・研究推進機構
理事長 佐々木 高明 印


注:上記の文章は,以下の手紙に対しての返答です.

「アイヌ特別展を考える集い」に、皆様のご意見を

現在、名古屋市博物館にて、9月9日から10月9日まで「馬場・児玉コレクションに見る、北の民アイヌの世界」が開催されています。
これは、最大のアイヌ・コレクションである児玉コレクションを中核に、あらゆる民具・工芸品を集め、昔のアイヌの世界に迫る一大企画です。
別に今の多くのアイヌ(特に都会のアイヌは)は、アイヌ語で日常的に話しているわけでも、こういった工芸品に囲まれているわけでもないのですが、今回の展覧会の事業の元となっているアイヌ文化振興法に、「民族の誇りの源泉たるアイヌ語やアイヌの伝統文化」と謳われているように、心の拠り所として、民族の自覚のもととして、大変大切なものであります。
私のような、伝統文化をさほど身につけていないアイヌにとっても、こういった展覧会を通じて先祖の偉業に触れる機会があること、そして多くの和人の方にも、我々の素晴らしさを理解していただくきっかけになることと思いますので、大変嬉しく素晴らしいことです。
ですが、そこで一つ忘れてはならないことがあるのです。
今回の展覧会の中核になっている「児玉コレクション」の収集者である児玉作左衛門教授は、我々の先祖の墓を暴き、遺骸を持ち去った人物であります。
児玉教授の残した膨大な数の資料「児玉コレクション」は、たしかに素晴らしいものです。
どのような経緯であれ、いまここにこれらの品々が残っていることは凄いことだ。
それは確かに偉業かもしれない。
しかし、いかに貴重で偉大なコレクションとはいえ、彼の名前を堂々と冠し、何の批判も経緯の説明もなく、展覧会を開くのは、果たして良いことでしょうか?
あのコレクションの価値が高ければ高いほど、展示内容が素晴らしければ素晴らしいほどに、私はアイヌの一人として、恥ずかしく思います。
まして、何の経緯の説明も無く、ただ「素晴らしいコレクション」という側面だけ紹介されるのは、とても腹立たしい。
児玉教授は一体何をしたのか、「児玉コレクション」が成立した背景には何があったのか、そして、いまここにこうしてその収集物を公開するにあたり、何について考えねばならないのか?
そこには、和人とアイヌの関係をよりよいものにしていくために、決して忘れてはならない大切なものが含まれていると思います。
そこで、「アイヌ特別展を考える集い」を行いたいと思います。
この集まりに対して皆様のそれぞれのお立場からのご意見を頂戴したいと思います。
いただいたご意見は、この集い当日に、私が責任を持って参加者に紹介させていただき、話し合いの参考にさせていただきます。
皆様よりの忌憚のないご意見を、お待ち申し上げております。

呼びかけ人 : oripakEsaman
imeru-kampi :
esaman@anet.ne.jp
}{}{}{ Ainu puyarA }{}{}{ : http://www.alles.or.jp/~tariq/


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本集会に寄せられたアイヌからのメッセージ
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(2001 2/3)考える会を終えて、ご参加いただいた皆様からのメッセージ
(2001 9/15)「アイヌ特別展」を色々な立場で考えた結果の、要望と意見
「児玉コレクション」の収集者,児玉教授の「業績」に関連する新聞記事
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