世界一優雅なオーベルジュ(と思う)

 

1998年4月12日

この週はイースター休暇ということもあって、またまたアルザスへ(というか月に

一度はアルザスへ行ってるな)食い倒れ、ワイン買い出しツアー。

 

今回も、NIFTY serveのFSAKEで知り合った(そんなんばっかやなあ)パリ在住の

バイオロジストのRさんに同行してもらうことにした。

このRさんも、なかなかのワイン好きで、パリのアパートメントで夜な夜な独りで

フランスワインの古酒をのんでいる強者だそうな。

 

ワイナリもイースター休暇で閉まっているところも多かったけど、私が

以前、葡萄のつみとりを手伝わせてもらったBarrのLeipp-Leiningerと、

日本でもお馴染みのRiquewihrにあるHUGELでワインを買うことができました。

 

Leipp-Leiningerには96年に手伝いにいって、そのとき雨の中を寒いと震え

ながら摘んだPinot Noirがコルマールのワイン品評会で金賞を取りました。

最後の旨いとこ取りの手伝いでしたが、嬉しいものです。味は確かによかった。

 

しかし、なんといっても今回の旅行の目的はアルザスで一番のレストラン、

ミシュランでも古くから3つ星であるAuberge de l'Illで食事をすること。

このレストランは1989年の世界最優秀ソムリエコンクールに優賞した、

セルジュ・デュプスさんがいることでも有名。

 

しかし、お昼にRiquewihrの町にあるHUGELの店で、デギュスタしすぎたのと、

ミシュラン1つ星のLa Table du Gourmetで大変素晴しいイースター特別メニュー

とTRIMBACHのRIESLING1989を頂いてしまったので、大丈夫か(お腹の具合と、

味の満足度)?とおもいつつ、入店。

 

残念乍ら、デュプスさんは忙しそうで、他のソムリエさんでしたが、なかなか

接客態度のいい、好感のもてる人でした。さあ、食事は???と考えたあげく、

 

Rさん:   フォアグラのテリーヌ(アルザス特産!!)(220フラン)

      オマールの"Prince Wladimir"風 (300フラン)

私:    カエルのムース、エーベルラン風(辻静雄さんも絶賛したらしい)(200フラン)

      鳩のパイつつみ黒トリュッフ入り(240フラン)

 

さて、アペリティフにクレマン・ダルザスを頼むも、クレマンはボトルになるという

ことで、シャンパーニュに方向転換。

さて、さて、ワイン。やはり品ぞろえはすごい!!40年代のものも

結構ある。全部のみたい!!しばらく、Rさんと悩んで、やっぱり地のもの、

 

HUGELのRiesling Vendange tardive 1945(ドイツでいう、ベーレン・アウスレーゼ)

 

にしようと、ソムリエ氏と相談、氏曰く、大変力つよく、かつやさしく、大変

素晴しいものだ!とのこと。早速決定。1,500フランでした。結構安い、、、か?

そもそもアルザスの古酒なんて、そう滅多にお目にかかれないですからね。

 

(96年アルザスのアンドローの畑にて)

もう、こうなると、アペリティフの事はどうでもよくなって、この53歳のリース

リングの事しか頭にない、、、

 

ソムリエ氏、ワインと共に再登場。品質確認のデギュスタをする顔もウレシソウ。

コルクを抜いたところ、1979年にリコルクされていた。ここはHUGELから20Kmも

ない距離にあるので、HUGELによりちゃんと行われたものでしょう。

色を見、匂いを嗅ぎ、ちょっと口に含んで、ニンマリしている。これで安心。

 

さて、前菜も来て、待ってました!と、残るシャンパーニュを余所に、リースリン

グを、やはりここでも『名物!!火星人グラス』に注いでもらう。

 

色:もう、なんというか、キャラメルですな。大変に熟成してます。こんな色に

  なるんやなあ。

香:最初はちょっと冷やし過ぎだったようだが、グラスのせいか、それでも、もの

  凄く自己主調をしてくる。ベリー系、あんず?蜂蜜、??グラスから溢れでる。

味:とても53年も経っているとは思えない力強さ。大変に濃縮されていて、

  リースリングであることはわかるが、変な例えだけど、ホワイト・ポルト

  の様な感じ。だけど、ものすごく繊細。

  ワインと言っていいのか?ちょっと別もの。

 

もう、大変に幸せになれるワインです。そもそも、これだけのエージングに耐えら

れるものとは思っていなかったし、デザートまでこれ1本で通せる、レンジの広さ

には、平伏すしかありません。もちろん1945年がアルザスの最良の年であった

ことも要因の一つでしょう。  

ああ、また飲みたい。イケナイものを飲んでしまった。(^^;)

そうそう、今回初めてソムリエさんの為に、ワインをちょっとボトルに残しました。

これなら、よろこんで飲んでくれると思う。我々は言うまでもなく、グラスの

最後の一滴までおいしく頂きました。

 

料理は、やはり流石(味、量とも)としかいいようがなく、また今回選んだものは

このワインにも大変よくあいました。フォアグラもアルザス地元産の最高のもので

舌の上でとろけるようです。カエルのムースも前から食べたかっただけに、来て

よかった!!もので、鳩も味がしっかりしておいしかった。ただ、最高のコンビネ

ーションと読んでいたオマールは、塩が強くて残念でした。でもオマールそのもの

の質は、すばらしい。また違う料理も食べてみたい。

でもデザートは、さらに凄く、フジヤマ・アルザシアン!とか言って茶目っ気まじり

で持ってきたアイスは、もうびっくりする程大きくて、半分食べるのが精いっぱい

でした。でも味はとってもよく、筍のストロベリーソースがとっても濃厚。

明日のティータイムにでも出してくれ〜〜。

 

ここは、オーベルジュということで、宿泊もできます。1泊1500フランということで

恐れをなしましたが、行ったことのある人の話では、大変すばらしかったとのこと。

機会があったら、泊まってみたい、、、、が、あのワインリストを見てしまうと、

その分ワインに注ぎ込みたいなぁ、、、、

きれいに手入れされた庭があり、そこには自然の川が流れ込み、レストランの窓から

四季折々の風景が見えます。とても落ち着くし、スタッフのサービスが素晴らしく、

また料理も、ワインも素晴らしい。世界でも最高のオーベルジュだと思います。

 

この日の午前、HUGELで1983の(これまた良い年)Riesling Vendange tardive

と、1986のTokay Pinot Gris Vendange tardiveを買ったので、あと40年くらい寝

かせて飲んでみたいです。(家にはそれだけ持たせるセラーがなかったな、、、)

 

 

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制作・著作:中西 健二
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