小川 隆吉（北海道ウタリ協会教育相談員,札幌市）

白老や函館の博物館に寄贈されている児玉作左衛門による墓盗掘品を,何故この時期にわざわざ
《児玉コレクションに見るアイヌの世界》と銘打って各地で展示するのか納得出来ない.
彼が掘り起こした我々の先祖の頭骨もアイヌに返したというが,32体しか還っておらず,
北大納骨堂の正式名は「研究資料室」だ.今だに北大が管理していることに変わりはない.
頭蓋骨を含め児玉コレクションをアイヌに返すべきだ.

長谷川 修（レラの会,山梨県）

特別展開催に考えること

仕方なくあきらめるんだと云ふ心
哀れアイヌを亡ぼした心」 違星北斗 遺稿 コタンより

新しい法律「アイヌ文化振興法」の成立過程,と言うよりも『北海道旧土人保護法』撤廃の経緯のなかで誰もが願ったことは,”歴史認識を正しくする”ことでした.それは,アイヌ民族が先住民族であることを認めることであり,同時に日本の侵略を認めることでありました.
しかし真摯な姿勢を示さずにひとつの区切りをつけてしまいました.その時,アイヌは旧法の撤廃にこだわるのでなく新しい法律の成立に意義を持とうとし選択しました.
『仕方なくあきらめた・・』と私は受け止めました.しかし,それは自分があきらめた訳ではありません.むしろ反対に歴史認識を正しくすべきであることをアイヌウタリにさらに日本社会に向けて啓発して行くことの出発点であったと思います.

今回の特別展で『素晴らしさ』だけを伝えるのでなく,コレクションの背景を明らかにしつつ展示をしていくことは最低限の主催者側の良心であると考えます.そのことがアイヌ民族の誇りが尊重される社会の実現につながることではないだろうか.

違星北斗遺稿コタン

「アイヌ研究したら金になるか」と聞く人に
「金になるよ」とよく云ってやった

違星北斗アイヌの心を想う.私もひとりのアイヌとして付き従いたいと考えます.

山本一昭・北川しま子さん等（ピリカ全国実行委員会、札幌市）

連帯のメッセージ。

｢児玉コレクション｣とは、アイヌ民族の墓などから盗掘したものが基本です。
北大医学部がいまも管理する｢アイヌ納骨堂｣のロッカーのなかには１０００体近い頭骨（人骨も含む）があり、これら頭骨とともに刀や首飾りなどの埋葬品をもちだし、自分のコレクションにしたものです。絶対に許せません。ただちに人骨も含めて、アイヌ民族に謝罪のうえ返還すべきです。

アイヌ民族は、死者をとむらう場合、生前に大事にしていたものを持たせます。
刀、首飾り、耳飾り、着物などを持たせます。
それらを｢アイヌ研究｣と称して、勝手に墓をあばき、持ち出したのです。
なかには、死者のもぐるみを剥いだものもあると言い伝えられています。
それらを｢コレクション｣と称すること自体、アイヌ民族の人権を蹂躙し、侮辱するものです。

児玉作座衛門（北大医学部解剖学教室）らは、アイヌ民族にたいして
｢いい着物だねえ、アイヌ文化の研究のためになるからちょっと貸してくれ｣などと言葉巧みに持ちかけて、集めたものもあります。

アイヌ民族の文化は、民族の歴史の総体はもとより大地、生活、自然観などと切り離して考えることはできません。着物や首飾りなどをガラスケースの中にバラバラにして展示すること自体が間違っています。そこには｢滅び行くアイヌ民族｣という姿勢がつらぬかれているからです。また、全体としてのアイヌ民族の文化の豊かさを抹殺する役割を果たしています。

今回の集会などをとおして、アイヌ民族から奪ったものは、謝罪のうえアイヌ民族に返還させる運動になるように、私たちも努力します。日本国家、三井や三菱らの独占資本、ズルシャモ学者たちのアイヌモシリ侵略・支配を弾劾し、アイヌ民族の自決権をかちとっていくうえでも、文化的侵略（文化財の強奪も含めて）を弾劾するとりくみは必要です。

団結してがんばりましょう。

２０００年９月２２日
｢北方領土の日｣反対！　｢アイヌ新法｣実現！　全国実行委員会（略称・ピリカ実行委員会）
代表・山本一昭　副代表・北川しま子　事務局次長・白川ただし

釧路市A.T.

児玉コレクションは,その収集者,故児玉作左衛門がアイヌの墓を無断で掘って,1000体を越えるアイヌの遺骨を北海道大学医学部研究室に持ち去り,研究のためとして,これを長い期間にわたり研究室の棚などに放置していました.それらの研究報告にもあるように副葬品として人骨と共にアイヌ玉とかエムシ（刀）,または民族衣装などを大量に収集したものです.

これらの行為は言語道断.間違いなく「盗掘」です.

収集品を引き継いだ児玉マリさんは悪い方ではありませんが,やはり父と娘との関係を越えて再考する必要はあると思います.また,児玉コレクションを展示している白老町のアイヌ民族博物館も展示解説に正しい表示をするべきであり,ましてや,アイヌ文化振興財団は,アイヌ文化振興法の「アイヌ民族の誇りが尊重される社会の実現を」という精神とテーマに反しない展示事業を行なうべきであり,実に問題が多いと思います.

（中略）

シサム（和人）もアイヌも,互いにキチンと正しく「アイヌ文化,アイヌ史と向き合うべきです」.
私は７月２３日にこの特別展を（広島で）見ました.
あまりにも問題点が多く,非常に残念でした.
もちろんアンケートとして記入し4枚もアンケート箱に投入してきました.
みんなで考え,みんなで声をあげましょう.

名古屋市O.E.

「児玉コレクション」が,事実として,価値のあるものだというのは私も認める所です.
その資料を使い,アイヌの世界を紹介するという企画,それ自体はいいものだと思います.
展覧会の開催は,むしろ歓迎したい.

でも,現実にはそうはいかない事情がある.

あのコレクションには大変不名誉な疑惑が付きまとっているのですよ.
「多くの部分が墓からの盗掘品だ」「死者の身につけていたものだ」
・・・状況証拠からいくとそんな気がするのですが,
肝心の児玉氏の収集記録がないそうなので,なんとも言えませんがね.
「私財を投じて集められたもので,ホネ収集とは別」と主張されていても,多くのアイヌから疑惑の声が出ていますし,収集の過程の記録がはっきりしない以上「盗掘品でない」という確かな物証がないのも,これまた本当のことでしょう.「別」とはいっても,そうはいかない.

彼はアイヌに対する重篤な犯罪を侵した悪人だ.
仮に本当に「児玉コレクション」が私財を投じて平和的に集められた収集物だとしても,
それとこれは別,というには,あまりにも事が大きすぎるのですよ.

例えば,私やあなたの曽祖父が,
墓を掘り起こされて,額に番号振られて,動物実験室の棚に放置されていたら,あなたはどう思いますか?

気持ち悪いだろう,哀しいだろう,そう思うのが普通だ.
その気持ちはとても大切です.

そして,あれらのホネは未だに実験資料になっているのですよ.
これはいいことか?

あなたは,無数のどくろの前で写真を撮られている教授の写真を見たか?

こんな写真,普通動物のホネ相手でも撮られまい,彼はアイヌを人間扱いしていないのだよ.
「児玉コレクション」は,そんな変質者が集めたコレクションだ.
あれだけのものだ.資料として偉大なのは確かだろう.
でもそれは,731部隊やナチスの人体実験が医学に貢献しているんだよと言っているのと,一体何が違うのか?

貢献したのは事実だ,だからといって,「ナチスの人体実験に見る医学の進歩」なんて展覧会やるか?
731部隊を,「医学の発展に貢献した素晴らしい部隊」などと称えるか?
いまの「児玉コレクションに見る」というあの展覧会のタイトルには,同じ文脈が入っていると思うのだが.

*:本来は全て実名公開でしたが,相手が国の財団の事業であり,各方面からの圧力がかかる事もあるので,あえて匿名とした人もいます.