「アイヌ特別展」を色々な立場で考えた結果、要望と意見。

new.gif(行方不明の盗掘品・北大にて発見さる!!)児玉教授の『業績』に関する新聞記事・雑誌記事


この文書は、アイヌ文化振興・研究推進機構が、2000年度、広島・名古屋で続けて開催した「馬場・児玉コレクションにみる、北の民アイヌの世界」
という展覧会の名古屋での開催に際し、この展覧会の展示物の中核をなす「児玉コレクション」にまつわる疑惑と問題児玉教授は墓掘り、等)
について、一方的な批判ではなく、「考える」集いを開きたいと、財団や白老の博物館や、活動家の方々や一般市民なのなどに、
意見表明や参加の呼びかけを行った
「アイヌ特別展を考える集い」に集まった参加者が、集いを持ち、考えた結果作った要望書です。
後半は、同時期に開催された
「アイヌ文化フェスティバル」に参加した、呼びかけ人の個人的感想と意見です。

尚、この要望書に関する財団からの返答は、未だにありません。
電話で問い合わせたところ、担当のT氏によると「(この文書が)返答するような内容ではなかった」との事でした。
返事下さいよ、と言ったら、「内部で協議します」との事でした。


「アイヌ特別展」を色々な立場で考えた結果、要望と意見。

昨年の9月、貴財団の事業である「馬場・児玉コレクションに見る、北の民アイヌの世界・特別展」
名古屋開催を迎えるにあたり私たちが行なった、「アイヌ特別展を考える集い」の呼びかけに文書での
返答
をいただき、ありがとうございました。

あの考える集いには他の多くの方々からも意見や反響をいただき、また当日も様々な立場の人たちにご
参加いただき、考え、語ることができ、大変有意義な会合となりました。

あの集いにいただいたさまざまな人からのご意見とともに、貴財団からの返答も何度も読み返し、十分
に議論致しました。

あの日集った私たちは、いろいろと考えた結果、やはり「児玉コレクション」は、現在もアイヌである
と意識する、あるいはしていきたいと考える私たちの「記憶」にとって、そして、アイヌと共に歩みた
いと考える多くの人々にとって、問題のあるものでしかない、という認識に至りました。

「児玉コレクション」という呼称が「墓暴きの結果の収集物」を含むか含まないかとか、「展覧会の展
示物」に実際の副葬品が含まれていたかとかそういう話は、今回の「問題性」の本質ではないと考えます。

文化人類学者でもなく実はただの解剖学者であり、かの教授が指揮を取って「収集」したアイヌ同朋の
人骨の返還をめぐる問題が今もすっきりとは解決せずに存続していることを考えますと、アイヌからす
るとどう見ても「墓暴き」でしかない児玉教授の収集行為を、あたかも「アイヌの為に努力した功労
者」であるが如きかの展覧会での説明は、アイヌからみると腹立たしくも悲しい「評価」でしかないと
思います。

今後、貴財団におかれましては、未だに多くの問題が存続する背景に考慮せず、無神経に「児玉コレク
ションに見る」
と銘打ったり、かの教授の行為にみられるようなアイヌの人権を無視するが如き行為を
賞賛すると見られてしまうような事業の推進は、できうることならば謹んでいただきたいと思います。
これには、他の人類学者の先生方の過去・現在の研究も含まれます。

ですが、かのコレクションに含まれるアイヌが作った着物や織物や彫り物を始めとする、ありとあらゆ
る作品の数々が持つ「アイヌの誇らしい文化」としての存在価値は、それにいかなる収集経緯があろう
とも、いま現在誰が所有していようとも、決して揺らぐものではないと考えます。

あのコレクションに含まれる膨大な「アイヌの残した遺産」を、今後、貴財団の設立趣旨であると思わ
れます『アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及びアイヌ文化・・(を振興し啓発普及
し)・・アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り』という方針にのっとり、
アイヌの今後の文化伝承に積極的にご活用いただければ幸いです。

その際、児玉教授は、アイヌに対して何をしたのか。
その『コレクション』をかの展覧会のような形で『再評価』するという姿勢は、
『アイヌの人々の誇りの源泉』に、どのような作用するのかについて考え、
慎重に行動していただきたいと思います。

すくなくとも私たちにとっては、名も知らぬアイヌの作ったあらゆる物に触れられるのはうれしいとし
ても、どう考えても「墓泥棒」としての評価しか出来ない人物である児玉教授の、あの展覧会における
評価や説明については、腹立たしいものでしかありませんでした。

今後、あのような人骨の収集行為を行った人物の「功績」を、ある程度でも評価しなければならない、
となると、これから自分たちのことについて、多くのものを学んでいこうと思っているアイヌの子供た
ちに、悪影響を与えることも多分にあるだろうと、確信致します。

「児玉コレクション」を今後色々と活用していくには、その帰属する所などについて色々と問題も山積
でありましょうが、貴財団の設立趣旨を考えますと、「アイヌの人々の誇りの源泉」に悪影響を与えな
いようにその資源を最大活用する義務と、その責任を貴財団は負っているものと考えます。

私たちは、是非、現在『児玉コレクション』などという括りで扱われてしまっているアイヌの先輩方の
残した偉大な遺産に、もっと納得のいく形で触れる機会がほしいと思います。

アイヌがアイヌのために作った偉大な遺産は、なによりもまずアイヌのために活用されんことを。

今後の貴財団の事業の、さらなる発展をお祈り致します。

2001年 9月15日
アイヌ特別展を考える集い、参加者一同。


せっかくの機会ですから、昨年名古屋市の博物館での展覧会と同時期に行われた、貴財団の事業であ
「アイヌ文化フェスティバル」を見て、個人的に疑問を持ったことを質問してみたいと思います。

このような、アイヌの文化や存在を全国区において本格的に紹介する事業は、少数とはいえ私のよう
に様々な理由をもって移住してきたアイヌやその子孫が生活していることを考えますと、とかく北海
道だけのものと思われがちなアイヌのイメージを、それぞれの地域においても「普及し啓発する」大
変心強いものと思います。
今後とも、北海道以外の巷に住むアイヌのことも視野に入れた、広い意味での普及啓発事業の展開を
希望致します。

ですが、このフェスティバルに参加致しまして、一つだけ、どうにも腑に落ちないことがございました。
埴原和郎さんの講演内容です。
その内容は、文化事業の際の講演に期待される内容とは随分かけ離れたものであったと、記憶しています。

印象に残った話としては・・・
「このホネの絵は、日本では私が始めて公開したんです」と、アイヌの頭蓋骨のスケッチをスライド
上映したり、「アイヌ人骨の調査は、昔の研究者はせいぜい5・6体ですが、私は500体以上調べ
ました。」と言ったり、「歯だったら、生きていても研究できるんですよ。」などという台詞が、大
変印象に残りました。
それぞれ、一体誰の骨、誰の歯かが、大変気にかかるところですが、それは置いておきます。

全体的に、氏の講演内容は、アイヌの頭骸骨の話をしたり、DNAの話をしたり、和人とアイヌの歯
の比較研究の話をしたりと、あまり「文化的」な話ではなかったと、記憶しております。

アイヌ「文化」フェスティバルにおいて、このようにいたずらにアイヌの「人種的側面」ばかりに注
目を集めるような講演を行なう姿勢は、どのような発想で生まれたものなのか、大変疑問に思います。

フェスティバル開催の場所が場所ですから、当日、貴財団の佐々木理事長もおっしゃっていたとお
り、来られた多くの来場者の中には、アイヌ文化やアイヌについて、いままでそれほど触れる機会の
無かった人々も少なくなかったと思われます。
それに、子供連れの方も、けっして少なくは無かったと記憶しています。

そのような状況の中で、アイヌの人種的側面、しかも歯や骨やDNAの研究の話をいきなりするとい
うのは、アイヌ民族の存在とアイヌ文化を、ことさら人種的側面から見るという視点を強く促すばか
りでなく、その後壇上に立たれ素晴らしい舞踊を披露した多くのアイヌを、時を越えて伝えられた伝
統舞踊という視点というよりは「これが、あのスライドにあった『アイヌ人』というものか」という
視点で、人種的見世物として解釈してしまう機会を観客に不用意に促すものではないか、と思いま
す。

「アイヌ文化フェスティバル」という「文化」事業であるはずのこの企画において、氏の講演内容
は、はたしてふさわしい話題であったのか、大変疑問に思う次第です。

アイヌ文化フェスティバルにおける講演者として、かような研究分野(歯なり血なり骨なり)の研究
者である埴原教授を選択された貴財団の見識について疑問を投げかけると共に、貴財団は、アイヌを
人種として見ているのか、それとも民族として見ているのか、この機会に是非お伺いしておきたく思
います。

今年の「アイヌ文化フェスティバル」は、なかなか興味深い企画をされていると聞いております。
今後とも「アイヌの人々の誇りの源泉」を大切にした、意義深い企画を期待致します。

本日行なわれる、アイヌ文化フェスティバルの成功を、心よりお祈り致します。

2001年 9月15日


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(2000 9/9-10/9)馬場・児玉コレクションにみる北の民アイヌの世界
(2000 9/10)「考える集い」呼びかけ文
(2000 9/30)「アイヌ特別展を考える集い」のご案内
本集会に寄せられたアイヌからのメッセージ
協力団体・支援者よりのメッセージ
(2000 9/13)『馬場・児玉コレクションにみる北の民アイヌの世界』展開催に関する財団としての考え方について
(2001 2/3)考える会を終えて、ご参加いただいた皆様からのメッセージ
「児玉コレクション」の収集者,児玉教授の「業績」に関連する新聞記事
衝撃の映像!これが児玉作左衛門教授だ!!
「アイノの人類学的調査の思ひ出」を読んで−アイヌ墓盗掘の先達・小金井良精の日誌−
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